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2千円で買えるVRマシン「Milbox」がつくりだす未来のエンタメ

株式会社WHITE 代表取締役社長 神谷憲司

2015年7月、タッチインターフェース搭載型ダンボール製VR(バーチャルリアリティ)ゴーグル「MilboxTouch(みるボックスタッチ)」を発表した株式会社WHITE。2016年2月には、懐かしのゲーム「パックマン」のVR版ゲーム「MilboxTouch ver. VR PAC-MAN」の開発資金をクラウドファンディングのMakuakeで募り、MilboxTouchと「MilboxTouch ver. VR PAC-MAN」を4月上旬ごろ正式販売開始すると発表した。ダンボール製ゴーグルにアプリをインストールしたスマートフォンをセットするだけで、簡単にVR(バーチャルリアリティ:仮想現実)やVRゲームを体験できるサービスをリリースしたこの会社は資本金3000万円を株式会社スパイスボックスが出資し、2015年4月15日に設立。5月に営業をスタートしたばかり。にわかに活気付くIoTや、VRマーケティング市場で、広告マーケティング領域における深い知見やノウハウを生かしつつ、新しいテクノロジーを開発し、「面白い」に留まらない新しいテクノロジーへの希望を膨らませるコミュニケーションを実現している。

 

はじまりは広告代理店のなかに立ち上げられたR&D組織

株式会社WHITEの前身となる最先端デジタルテクノロジー研究所「プロトタイピングラボWHITE」はデジタルエージェンシー(デジタル広告代理店)であるスパイスボックス内に立ち上げられたR&D組織であった。その名前は、「デジタルの白(RGBの白)はすべての色彩を混ぜた色、強い色」ということからきている。現在の株式会社WHITEのURL http://255255255.com の数字はRGBを表している。

「プロトタイピングラボWHITE」の発表したものでは、2015年の3月に発表されたダンボール製ゴーグル「Milbox(みるボックス)」をご存知の方も少なくないだろう。手持ちのスマートフォンに専用アプリをダウンロードし、組み立て型のダンボール製ゴーグルに設置することで、バーチャルリアリティ世界を体験できる。これにより、斬新ではあったが、ハイスペックで生活に落としこむには遠かったVR技術が一気に身近になった。

デジタル技術が開発され、これまでにない体験が次々と可能になるなかで、技術を形にして、企業が使えるかたちにするプロトタイピングが自分たちの仕事です。自社のHPでテックトレンドニュースを出していたので、論文やハッカソンはよく追っていました。そうすると、テクノロジーがどう活用されるようになるのかが見えてくるんです。論文数が増えている領域は、投資が顕在化しはじめ、研究からビジネスになっていきます。

そういった領域のなかから、IoTとVRに絞りました。googleやfacebookも踏み込んでいるような分野に、異業種スタートアップとして自分たちが勝てるのは何かということで、元々はテクノロジーをテーマにした広告代理店ということを活かし、テクノロジーをコミュニケーションツールに落とし込んでいくビジネスモデルを立ち上げました。

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親会社からの独立。デジタルという見えない世界を可視化し、かたちにしていく

起業するときに、スパイスボックス内でも議論はありました。そもそも、IoTとVRが本当に来るのか確信を持てるようなデジタルネイティブが弊社を含めて、取引先などの経営層にいません。また、博報堂から子会社が独立していくという流れはありますが、その多くは親会社の事業を踏襲したクリエイティブ系で、弊社の場合、広告マーケティングというものと事業シナジーが違い、それこそ定款から違うので、完全別事業をやっているようなものなんです。

そこにどうやって理解を求めていったのだろうか? テクノロジーは説明しても伝わりづらいということで、簡易版の「Milbox(ミルボックス)」をリリースした。これは、2015年7月に発表したタッチインターフェース搭載型ダンボール製VRゴーグル「MilboxTouch(みるボックスタッチ)」のプロトタイプに繋がる。

「MilboxTouch」は、WHITEと明治大学 宮下研究室、サンメッセ株式会社との共同研究となっている。Milboxの筐体側面に導電性インクが印刷されたシートが挟まれており、そのパターンを触ることで、ゴーグル内のスマートフォンを操作することができる。このパターンの触り方を変えることで、タップやスクロール、スワイプといったスマートフォンならではの入力操作が可能になっている。特徴的なのは、ダンボールに導電性インクを印刷するというごくシンプルな方法でタッチ入力インターフェースを実現していること。これにより、タッチ機能付きVRゴーグルを安価に大量生産し、タッチ入力を活かしたVRコンテンツを提供することが可能となった。

WHITEのメンバーは、職人とテクノロジストで構成されている。そこに外部コラボレーションパートナーとして国際的に活躍するメディアアーティストの千房けん輔を迎えている。

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千房のようなメディアアーティストは新しいテクノロジーを使って、新しい体験価値をつくる先行プレーヤーと捉え、重要なポジションに入れています。千房が所属しているNYのニューインクで、インキュベート事業をはじめていて、そこと考え方が近いのですが、この点は大事にしていきたいポイントです。

また、テクノロジーを用いた広告は「面白さ」「目新しさ」の一発で終わるものが多いのですが、そうではなく、サービスに汎用性を持たせ、スケーラビリティを持たせることを意識しています。VRはいかに興味深いコンテンツがつくれるかが肝だと思っています。発明であり、商業として成立するサービスを実現していくために、持続可能性という視点で考えています。

取材先:株式会社 WHITE http://255255255.com

 


Pyrenee

「ひとの命を守るものをつくりたい」想いが形になる瞬間

Pyrenee 代表取締役社長 三野龍太

ダッシュボードに置いて使用するクルマの運転支援ディバイス 「Pyrenee Drive Screen」は、運転手の目の前に設置した透過ディスプレイに、地図アプリのナビや情報がリアルタイムで表示される。ハードウェアスタートアップのPyrenee (ピレネー)の三野龍太氏が発表し、2016年にリリース予定だ。

 

ひとの命を守るものをつくりたいという積年の想いが形に

パッと見で、便利そうなナビゲーションシステムだなと思いますが、車の運転支援ディバイス 「Pyrenee Drive Screen」とはどのような商品かもう少し詳しく教えて下さい。

運転席前のダッシュボードに置いて使うデバイスです。ステレオカメラで前方の走行状況を立体的に認識することで、歩行者や車との衝突の危険が迫るとドライバーに知らせます。透過ディスプレイへの表示とアラーム音でドライバーに危険や各種の情報を知らせ、操作はハンドルに巻き付けたリモコンと音声入力で行います。

それだけではなく、スマートフォンの地図アプリによるナビゲーションや音楽アプリなども透過ディスプレイに表示して使用することができます。

Pyrenee Drive Screen

大学では、今の開発に繋がるような専攻だったのですか?

実は大学には行っていないんです。高校を出てから、建築系のメーカーに入り、そこから独立しました。電気が通るものをつくったのは初めてですし。

Pyrenee の前に、雑貨のメーカーを立ち上げていて、Manatee(マナティ)というベッド専用iPadスタンドをつくっていました。これはこれでいいのですが、もっとクリティカルにひとの命を守るものをつくりたいという気持ちがあり、ずっとモヤモヤしていたんです。そこにうまく運転支援ディバイスというアイディアが降ってきたので、一念発起して「Pyrenee Drive Screen」を形にしていきました。

アイディア、市場、ひと…ピースが集まり、ひとつの製品になるまで

ひとの命を守る、ということが、運転支援ディバイスという形になった背景を教えてください。

運転支援ディバイスの形になったのは、免許の更新時に講習を受けたことがきっかけでした。講習で知ったのは、一般的な交通事故の7割はドライバーの不注意によるものだということ。安全装置としては自動ブレーキなどもありますが、それだけでは足りないんですよね。ブレーキもですが、ハンドル操作も事故回避には大きく関わってきます。

カーメーカーでも、クルマのカメラやセンサーが、他の車や歩行者を認識して、事故発生の危険がある場合にドライバーへ知らせたり、車自体が自動で停止するような装置は出しています。例えば、スバルが採用した「Eye Sight」、トヨタの「ITS」やホンダの「SENSING」などがありますよね。でも、車の耐用年数は10年以上あるので、既に購入された車は諦めざるを得ない。なので、私は、その隙間を埋めていこうと考えたんです。取り付けに、特別な工事も必要なくて、ダッシュボードにセットするだけで、 万一ドライバーが不注意状態で事故の危険が迫っても、早く、適切に危険を知らせて、事故回避を促すことができます。

 

プロトタイプが引き寄せるひとや展開

専門ではないけれど、つくろうと決めて、すんなりつくれたんですね。

そうですね。以前から知り合いだったOrpheというスマートシューズをつくっているno new folk studioが、秋葉原のシェアオフィス「DMM.make AKIBA」に入居していて、快適な環境で試作品をつくっているのを見ていました。元々、ものをデザインすることはできたので、そこに入って勉強しながら試作品をつくり始めたんです。

Pyrenee

ドライバーの余所見を防ぐために、まずはできるだけ前方から視線を逸らさずに済む形状や機能が必須です。ナビだけではなく、ヘッドアップディスプレイに車速などを表示して、視線移動が少なくて済むようにしました。

幾ら運転中のスマートフォン利用を咎めても、やっぱり気になりますよね。なので、スマートフォンの画面も出るようになっています。走行時と停止時でできる操作はもちろん違います。

あとは必要な技術を持っているひとや、工場を開拓していきました。例えば、量産は中国の深圳市で行う予定なのですが、今、日本国内より、そちらの方が部品も技術も揃う上に、安上がりだということがあります。そういった知見も、これまでの経歴で持っていたので、動きたいと思った時に、すんなり動けたのだと思います。

「自分はこういうことをしたい」「こういったものをリリースしたい」と言っても、なかなか理解してもらえませんが、プロトタイプをつくる過程で必要なことが見えてきますし、できたものを見せれば、何がしたいのか、すぐに伝わります。

今では、危険予測をもっとスムーズにしたり、「Pyrenee Drive Screen」のデータを活用したりするために、某大手企業と技術提携をしようという話をはじめ、何社か興味を持ってもらった会社とも話をしはじめています。

現状はどんな体制で動いていらっしゃいますか?

現状メンバーは8名で、画像認識や回路設計などのエンジニアが主です。このDMM.Labで出会ったひとや、紹介を通じて、一緒にやりたいと言ってくれるひとたちです。まずは2016年にリリースして、販路を開拓し、普及させることが目標ですが、「Pyrenee Drive Screen」を皮切りに、例えば、防犯防災、ヘルスケアなど、人の命を守るディバイスをつくっていきたいと考えています。

取材先:Perenee http://www.pyrenee.net/

 


flashtouch

スマホの画面だけでデータ送受信 注目を浴びる「FlashTouch」技術

株式会社マッシュルーム 代表取締役社長 原 庸一朗さん

スマートフォン(スマホ)画面が発する光のシグナル情報と、タッチパネルの静電容量によって情報(データ)のやり取りができる「FlashTouch(フラッシュタッチ)」を開発したのが2012年5月創業の株式会社マッシュルーム(東京都品川区)です。iPhoneでは対応していないNFC(近距離無線通信技術)や、電波干渉リスクが心配されるBluetooth(ブルートゥース)などに代わり、スマホの双方向通信システムのスタンダードとなる可能性を秘めた斬新技術。大きな可能性と今後のビジネス展開について、原庸一朗(はらよういちろう)社長に伺いました。

スマホの液晶画面で読み取り、アプリやチップも不要

—— スマホの専用アプリもいらず、画面をタッチするだけでなぜ双方向で情報が通信できるのですか。「FlashTouch(フラッシュタッチ)」は、特殊な電波でも発信しているのでしょうか?

いえ、FlashTouchは電波で通信するものではありません。人間の目ではなかなか見えませんが、スマホの液晶画面は光が点減しています。この点減情報を光センサーで読み取ります。「モールス信号」のようなイメージです。

もう一つ、タッチパネルは指から出る微弱な電流によって入力ができますが、このタッチパネルの静電容量によっても情報をやり取りします。

スマホのウェブブラウザで専用ページを表示していただき、その画面をFlashTouch専用端末にタッチするだけで情報の送受信が可能になります。

そのため、NFC(近距離無線通信技術)のようにスマホ内に専用チップを搭載する必要はありませんし、Bluetooth(ブルートゥース)のように電波を発信することもありません。

たとえば、NFCはiPhoneでは対応していませんが、FlashTouchはウェブブラウザとタッチパネルを持つ端末なら誰もが今すぐ使えるようになる技術です。また、電波を発信しないため、情報を盗み取られるリスクも格段に低くなります。

 

—— スマホと専用端末間で情報(データ)をやり取りする、という技術は、日本が主導するFeliCa方式による「おサイフケータイ」や、世界標準的なNFCが主導していますが、双方が並び立つ状況で決定打がありません。その間隙を突く形ですごい技術を開発されましたね

まだ導入前の実験を行っている段階ですが、大手メガバンクや大手電機メーカーなどから引き合いをいただいています。

たとえば、スマホ内にキャッシュカードの情報を格納しておけば、専用端末のある所でスマホをタッチしていただくだけで決済ができるようになります。スマホさえあれば、わざわざ銀行やATMへ行ってお金をおろす必要がなくなるわけです。

タッチされる側となるFlashTouch用の専用端末ですが、製造には1台あたり500円以下というコストしかかかりませんので、小さな店舗などに無料配布して普及させるのもそれほど難しくないのもメリットとなるのではないでしょうか。

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—— 原社長はもともと研究者や技術者を目指していたのですか

明治大学では農学部で再生医療分野を学んでいましたが、研究者や技術者志望ではありませんでした。2008年に卒業後は、不妊治療を行っている産科婦人科を比較するWebサービスで起業しています。利用者はそれなりに多く、ビジネスモデルとしても高い評価をいただいたのですが、病院側の供給不足が生じている市場ということもあり、1年で閉じました。

その後、2012年に現在のマッシュルームを3人で新たに立ち上げるとともに、自身でもう1社、バイオベンチャーを創設して今も運営しています。

 

―—— マッシュルームでは当初からFlashTouchの開発に取り組んだのでしょうか

最初はソーシャルギフトサービスのようなビジネスを立ち上げています。この「ippy(イッピー)」は、ギフトを送る側がお金を払わずに済み、メーカーや店舗に販促目的で金券を出してもらうというめずらしいスキームでした。

ただ、金券を使う際には加盟店でバーコードを読んでもらう必要があり、加盟店側のオペレーションがボトルネックとなってしまいました。この経験を機にFlashTouchの仕組みが生まれたともいえます。

 

—— FlashTouch以外にも「CHARIO KART(チャリオカート)」というユニークなプロジェクトも行っています

自転車のホイールにコンピュータを取り付け、Apple Watch(アップルウォッチ)によって動きを制御することで、ゲームの「マリオカート」をリアルな自転車で実際にやってしてしまおうと……(笑)

キノコが出ポイントに来ると、実際に自転車が加速し、アップルウオッチから緑こうらを発射すると他のプレイヤーにはブレーキ負荷がかかります。こちらは、当面ビジネスになりそうにはありませんが、リアルなレースゲームとして楽しめますよ。

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—— Crewwではかなり積極的にコラボレーションに応募されていますね

インターネット上でCrewwの存在を知り、これまで5〜6社のコラボレーションに応募しています。もちろんFlashTouchのほうです。大企業の方の前のプレゼンテーションはやはり緊張しますが、出資に関係するプレゼンとは異なり、長期計画や市場の大きさなどが聞かれないのが特徴的でした。

 

—— FlashTouchの技術を使ったどんなビジネスを提案してきたのですか

主にFlashTouchの要素技術を使った新規事業です。ただ、新しい技術ということもあり、そのリスクをとっていただける大手企業が少ないのが残念です。現時点では、どんなコラボの形が最適なのか模索しているところです。

 

—— Crewwのコラボを体感してみて、どのように思われましたか

現状はかなり広いテーマで募集されていますが、大企業のなかで絞られた具体的な課題で募集されていたなら、こちらの提案もより細かな内容とすることができます。

新しいことをやりたい、ということを目的化するのではなく、募集する側の大手企業がゴールをどこに置いているかを見極めなければならないと感じています。

 

―― ありがとうございました

 

取材先 : 株式会社 マッシュルーム   http://mashroo.me/

 

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mana.bo

手のひらに先生がやってくる「スマホ家庭教師」

株式会社マナボ 代表取締役社長 三橋 克仁

学習時にスマートフォンを通じて質問すると、全国各地にいる大学生の“チューター”がリアルタイムで教えてくれるスマホ家庭教師「mana.bo(マナボ)」。教育界に革新を起こすサービスとして、業界内外の大手企業から熱い注目を浴び、次々と提携や協業を成立させている。株式会社マナボ(東京都渋谷区)の三橋克仁氏に、サービスの未来像や大手との提携について聞いた。

 

誰でも高度な指導を安価に受けられるサービス

—— スマホ家庭教師「mana.bo(マナボ)」は、スマホさえあれば、誰でもすぐに高度な指導が安価で受けられるというコンセプトは画期的です

自社で展開する「mana.bo」に加え、ベネッセコーポレーションさんと共同で「リアルタイム家庭教師」という名で2014年4月からサービスを提供してきました。両方ほぼ同じ内容です。

専用アプリをダウンロードし、教科書や参考書などをカメラで撮影して送信すると、チューター(個人指導を担当する教師)である大学生からチャットや音声通話、ホワイトボードを通じて指導が受けられるという仕組みです。問題の解き方だけでなく、勉強法や試験対策、学校や学部選びといった相談も受け付けています。
土日祝日を含め毎日19時から23時まで利用ができ、月に1時間利用いただける基本料金プランは3,500円です。利用時間によって追加購入も可能です。

教える側のチューターは、東大や早慶、国公立などの現役大学生や医学部生などを中心に1,800名以上が評価やプロフィールとともに登録しており、ユーザが自分に合いそうな人を自由に選べます。もちろん、自分が目指す大学や学部に在籍している人に指導をお願いすることもできます。

2015年9月には「東大家庭教師友の会」を運営する株式会社トモノカイさんと業務提携したので、これからチューターの数を増やし、質をさらに上げていく計画です。

mana.bo

世界的なサービスを肩を並べるユーザビリティのための努力

—— 三橋社長は東大大学院の工学系研究科時代に、受験生向けのコミュニティ「東大ノート」を自ら開発した経験を持つなど、マナボは技術者集団というイメージがありますが、mana.boの開発時に技術面で苦労した部分はありますか

インターネット上からリアルタイムで指導を行う、という環境を築くためには、チャットと音声、ホワイトボードがシームレスに繋がる必要があります。多くの人が同時に接続した状態であっても、快適なレスポンスを確保するとともに、生徒側の通信環境も考慮しなければなりません。こうした技術的な課題をひとつひとつ解決してきました。

中高校生のユーザからは、LINEやFacebook並みのレベルで快適に使える環境を当然のように求められます。我々はわずか20名ほどのスタートアップですので、難易度はきわめて高いのですが、そのクオリティに近づけるよう懸命に努力を続けています。

機能追加や改善は常に行っており、現在持っているアイデアだけでも300近くあります。実際に70ほどでは要件定義を行っていて、うち20は実装へ向けて動いているところです。

 

—— mana.boの新たな機能としては、どのような構想を持っていますか

過去に指導を受けた際の音声やホワイトボードのデータをいつでも再生できるようにしたいと考え、開発に取り組んでいます。

また、ホワイトボードに手書きされた文字や図表などのデータを言語化することで、過去にどのような分野のどんな問題で指導が行われたのかということが把握できるようになれば、ユーザの方が投げかけた質問に対し「過去にこんな形での指導が行われています」とレコメンドも可能です。

これまでに10万問の指導実績が蓄積されていますので、中高生向けの教育プラットフォームとして、これを無料で提供できるようにしたいですね。

——マナボが開発した「リアルタイム指導」の仕組みは、中高生向け以外にも展開ができそうです

医療分野や社会人の教育分野など、さまざまな企業からシステムを活用できないだろうか、とのご相談をいただいています。

ただ、われわれには「出自に関係なく、誰もが勉学で道を切り拓くことのできる世界を創る」という大きな目標を達成しなければなりませんので、中高生の教育分野以外へ進出することは今のところ行っていません。

 

スタートアップならではの世界観を伝えるための第三者としてのCreww

—— Crewwに登録をいただいていますが、どのようなことを期待していますか

KDDIのベンチャー支援プログラム「∞ Labo(ムゲンラボ)」の3期生(2013年)なのですが、そこを通じてCrewwを知り、登録をさせていただいています。

Crewwを通じ、サービスや会社の認知度向上や、優秀な人材獲得という面で期待を持っているところです。

 

—— ベネッセをはじめとした大手企業との提携や協業が多いマナボですが、大きな企業と仕事を行ううえで、どのような点に気をつかってこられましたか

2012年からベネッセさんと仕事をさせていただいていますが、サービスを共に開発するうえで、法律やセキュリティ面では苦労もしましたが、こうした経験のお蔭で大手企業の感覚が理解できるようになりました。

当然ですが、大手企業はわれわれのようなスタートアップとは文化やスピード感も異なります。法令順守の姿勢がより強く求められるため、サービスを行ううえでは法務的な部分から厳しい制限を受けることもあります。そうした感覚を尊重しながら、ともに歩み寄る姿勢が重要だと思いまっています。

また、事業部門と法務部門など、会社内の組織で見解が異なることもありますので、どこで折り合いをつけるかの判断が大事になってきます。

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—— 大手企業とのコラボレーションをどのように切り拓いていくべきかに悩むスタートアップが多いのも現状です。最前線で交渉を担ってきた三橋社長からぜひアドバイスをいただけませんでしょうか

「もしかしたら、この人たちはすごいことをやるかもしれない」と思ってもらえるように、スタートアップが実現したい世界観をストレートに伝えることが重要なのではないでしょうか。

最初は組織も小さく、資金も少ないスタートアップですが、目指すべき世界観を伝えることで、「今はまだない未来」に期待感を持ってもらうことがまず大事だと感じています。

—— ありがとうございました

取材先:スマホ家庭教師 mana.bo (マナボ) https://mana.bo

 


hado

AR(拡張現実)とウェアラブルで テクノスポーツの市場を切り拓く

株式会社meleap CEO 福田 浩士

実際にかめはめ波を撃ってみたい! 魔法を使いたい!
幼少の頃に誰もが抱いた夢をウェアラブルデバイスとAR(拡張現実)で実現してしまったのが株式会社meleap(メリープ)が開発した「HADO(ハドー)」です。エンタテイメント界で大きな期待を集める同社には、協業の話も多く持ち込まれているといいます。“テクノスポーツ”という新たな市場の創出を目指す福田浩士(ひろし)氏に、今後の展望やコラボレーションのあり方を伺いました。

ダムや大きな吊り橋のように、「大きな身体」をつくってみたい

—— 福田CEOは東京大学の大学院からリクルートへ就職し、2014年にmeleapを起業したんですね。

明治大学を卒業後、東京大学の大学院に入学し、意匠設計を研究しました。東大は多彩な人材がいるので、とにかく入ってみたいと思っていて、在学中は他学部の授業を受けられるのもメリットでしたね。

修士課程を終え、不動産開発業者への就職という道も考えましたが、私は常にダムや大きな吊り橋のように土木的なスケール感で意識を飛ばしたい、身体を拡張したいとの思いを実現できないと感じ、違う分野に行くことにしました。

リクルートに入ったのは、将来は起業するだろうとの思いから営業の基礎を学びたいとの思いがありました。入社後は注文住宅分野の営業をしていましたね。在職していたのは1年半でしたが、ここで学んだことは数多くあり、今も役に立っています。

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—— リクルートを辞めた後、すぐに起業しようと思ったのですか?

「リアル×バーチャルで面白いことをしたい」という目標だけを掲げ、新木仁士(現CTO=最高技術責任者)と一緒にmeleapをとりあえず立ち上げました。2014年1月のことです。

最初はARを使った「ぐりぐりARカードゲーム」や「プロジェクションペット」など、ARを使ったさまざまな開発プロジェクトに挑戦していくなかで、HADOが生まれました。

HADOはモーション認識やAR、画像処理の技術を組み合わせて生み出したシステムです。プレイヤーがHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を頭からかぶることで、実際に体を動かして「かめはめ波」のような“技”を発動させたり、フィールドを動き回って相手を攻撃したり、自らの陣地を守ったりします。

ゲームというよりも、スポーツに近い感覚なので、われわれはこれを「テクノスポーツ」と呼んでいます。HADOの技術は1年以上にわたって開発を続けてきましたが、今年の夏ごろにようやくサービスとして提供できるレベルに達しました。

 

自信を持てるサービスを携え、いざCrewwコラボに挑戦

—— meleapはこれまでNTTドコモなどのベンチャーイベントでもかなり活躍してきましたが、Crewwに登録したきっかけは?

確か人の紹介でCrewwに登録したと思います。最初の頃はまだ大手企業とのコラボレーション企画も行われてなかったので、当時は「なんだか得体の知れないSNSだなあ」と感じたのを覚えています(笑)

 

—— Crewwでは大手住宅メーカーとのコラボを成立させるなど、積極的な活動をしていますが、大手企業への提案やプレゼンテーションを通じて感じたことはありましたか

大手企業のなかには、4〜5カ月間かけて話し合いを続けていたのに、あえて意思決定をしない、あるいはできないというケースがありました。強い意思を持たずにコラボの募集をしているようにも感じてしまったのは、少し残念でした。

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“かめはめ波”を撃つ「HADO」でテクノスポーツ五輪を目標に

—— HADOのシステムは企業から導入の引き合いや問い合わせが多いようですね

2015年12月、ハウステンボスで導入されました。このほか、テーマパークやゲームセンターを運営する会社、出版社、イベントの主催者などから多くのお話をいただいているところです。

今はBtoBのビジネスが中心ですが、テクノスポーツとして普及を目指していますので、今後はコンシューマ向けのアプリ開発や、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の量産をしていかなければならないと考えています。

 

— ARを使ったコンテンツは、プレーしている本人は没入できるものの、周りの人から見ると何をしているかが分からないという課題がありますが、どうやって乗り越えたのですか?

テクノスポーツとしてHADOを普及させるためには、オーディエンスも楽しめなければなりませんので、魔法を使って戦っている様子を映像コンテンツとして配信したり、大型モニターに映し出したりしています。それにより、プレイヤー以外も楽しめるようにしています。

今は各地のイベントなどを中心にリアルの場で披露し、多くの人に体験してもらっています。全世代に楽しんでいただいていますが、特に小学生の男の子を中心に絶大な人気があります。

将来的にはスター選手を生み出し、国際大会も開きたいですね。2020年の東京五輪時にテクノスポーツ五輪を同時開催することを狙っています。

 

取材先 : 株式会社meleap http://meleap.com

 

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