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2千円で買えるVRマシン「Milbox」がつくりだす未来のエンタメ


株式会社WHITE 代表取締役社長 神谷憲司

2015年7月、タッチインターフェース搭載型ダンボール製VR(バーチャルリアリティ)ゴーグル「MilboxTouch(みるボックスタッチ)」を発表した株式会社WHITE。2016年2月には、懐かしのゲーム「パックマン」のVR版ゲーム「MilboxTouch ver. VR PAC-MAN」の開発資金をクラウドファンディングのMakuakeで募り、MilboxTouchと「MilboxTouch ver. VR PAC-MAN」を4月上旬ごろ正式販売開始すると発表した。ダンボール製ゴーグルにアプリをインストールしたスマートフォンをセットするだけで、簡単にVR(バーチャルリアリティ:仮想現実)やVRゲームを体験できるサービスをリリースしたこの会社は資本金3000万円を株式会社スパイスボックスが出資し、2015年4月15日に設立。5月に営業をスタートしたばかり。にわかに活気付くIoTや、VRマーケティング市場で、広告マーケティング領域における深い知見やノウハウを生かしつつ、新しいテクノロジーを開発し、「面白い」に留まらない新しいテクノロジーへの希望を膨らませるコミュニケーションを実現している。

 

はじまりは広告代理店のなかに立ち上げられたR&D組織

株式会社WHITEの前身となる最先端デジタルテクノロジー研究所「プロトタイピングラボWHITE」はデジタルエージェンシー(デジタル広告代理店)であるスパイスボックス内に立ち上げられたR&D組織であった。その名前は、「デジタルの白(RGBの白)はすべての色彩を混ぜた色、強い色」ということからきている。現在の株式会社WHITEのURL http://255255255.com の数字はRGBを表している。

「プロトタイピングラボWHITE」の発表したものでは、2015年の3月に発表されたダンボール製ゴーグル「Milbox(みるボックス)」をご存知の方も少なくないだろう。手持ちのスマートフォンに専用アプリをダウンロードし、組み立て型のダンボール製ゴーグルに設置することで、バーチャルリアリティ世界を体験できる。これにより、斬新ではあったが、ハイスペックで生活に落としこむには遠かったVR技術が一気に身近になった。

デジタル技術が開発され、これまでにない体験が次々と可能になるなかで、技術を形にして、企業が使えるかたちにするプロトタイピングが自分たちの仕事です。自社のHPでテックトレンドニュースを出していたので、論文やハッカソンはよく追っていました。そうすると、テクノロジーがどう活用されるようになるのかが見えてくるんです。論文数が増えている領域は、投資が顕在化しはじめ、研究からビジネスになっていきます。

そういった領域のなかから、IoTとVRに絞りました。googleやfacebookも踏み込んでいるような分野に、異業種スタートアップとして自分たちが勝てるのは何かということで、元々はテクノロジーをテーマにした広告代理店ということを活かし、テクノロジーをコミュニケーションツールに落とし込んでいくビジネスモデルを立ち上げました。

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親会社からの独立。デジタルという見えない世界を可視化し、かたちにしていく

起業するときに、スパイスボックス内でも議論はありました。そもそも、IoTとVRが本当に来るのか確信を持てるようなデジタルネイティブが弊社を含めて、取引先などの経営層にいません。また、博報堂から子会社が独立していくという流れはありますが、その多くは親会社の事業を踏襲したクリエイティブ系で、弊社の場合、広告マーケティングというものと事業シナジーが違い、それこそ定款から違うので、完全別事業をやっているようなものなんです。

そこにどうやって理解を求めていったのだろうか? テクノロジーは説明しても伝わりづらいということで、簡易版の「Milbox(ミルボックス)」をリリースした。これは、2015年7月に発表したタッチインターフェース搭載型ダンボール製VRゴーグル「MilboxTouch(みるボックスタッチ)」のプロトタイプに繋がる。

「MilboxTouch」は、WHITEと明治大学 宮下研究室、サンメッセ株式会社との共同研究となっている。Milboxの筐体側面に導電性インクが印刷されたシートが挟まれており、そのパターンを触ることで、ゴーグル内のスマートフォンを操作することができる。このパターンの触り方を変えることで、タップやスクロール、スワイプといったスマートフォンならではの入力操作が可能になっている。特徴的なのは、ダンボールに導電性インクを印刷するというごくシンプルな方法でタッチ入力インターフェースを実現していること。これにより、タッチ機能付きVRゴーグルを安価に大量生産し、タッチ入力を活かしたVRコンテンツを提供することが可能となった。

WHITEのメンバーは、職人とテクノロジストで構成されている。そこに外部コラボレーションパートナーとして国際的に活躍するメディアアーティストの千房けん輔を迎えている。

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千房のようなメディアアーティストは新しいテクノロジーを使って、新しい体験価値をつくる先行プレーヤーと捉え、重要なポジションに入れています。千房が所属しているNYのニューインクで、インキュベート事業をはじめていて、そこと考え方が近いのですが、この点は大事にしていきたいポイントです。

また、テクノロジーを用いた広告は「面白さ」「目新しさ」の一発で終わるものが多いのですが、そうではなく、サービスに汎用性を持たせ、スケーラビリティを持たせることを意識しています。VRはいかに興味深いコンテンツがつくれるかが肝だと思っています。発明であり、商業として成立するサービスを実現していくために、持続可能性という視点で考えています。

取材先:株式会社 WHITE http://255255255.com

 


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