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日本の伝統文化や美と技術を 組み合わせた斬新な空間演出

株式会社TECHMAC CEO 北口真氏

京都市内の伝統的な”町家”に本社を構える株式会社テクマク(TECHMAC)は、日本古来の和文化や「J-POP」と呼ばれる新たな日本独自文化に、現在のテクノロジーを組み合わせるという手法により、斬新なプロダクト(製品)を相次いで生み出しています。日本ならでは発想で技術開発を行い、1000年の古都から世界へ挑む同社。テクネ(技巧・芸術)に少しのマジック(魔法)をプラスした未来の創造を目指していくという北口真(まこと)社長に、その想いを伺いました。

伝統文化に彩られた京都で起業、町家に本社

―――― 北口社長は大阪に本拠を置くスタートアップとして知られるマインドフリー株式会社の取締役を経て、昨年(2015年)8月にテクマクを創業されています。起業にはどのような経緯があったのですか

確かにテクマクは起業という形にはなっていますが、引き続きマインドフリーでは取締役として経営に関与しています。実は2006年の創業時から参加している共同創業者でもあります。

マインドフリーでも創業以来、新しい表現技術に対して研究開発する部門の責任者をつとめてきましたが、この先のモノのインターネット(IoT)時代を見据え、どんな技術開発を行うべきか、行えるのかということをずっと考えており、新たなプロダクトを開発する部隊として、独立したカタチを別に立ち上げたのがテクマクです。

―――― そして京都に本社を置き、斬新な開発をしておられます

日本の文化とテクノロジーを組み合わせた開発を行いたいと考えていましたので、今も伝統文化に彩られた京都で起業するべきだと考えました。

京都の伝統的な町家に拠点をおいているのですが、こうした場所にいるからこそ、地元の伝統工芸の作家の方などと出会えたのは非常に良かったですし、長い歴史を持つこの街から世界に発信していくことが意義深いことだと感じています。

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「FIGURE STAGE(フィギュアステージ)」での展示例

―――― 先日(2016年2月26日)に都内で開かれた日本テレビによる大型イベント「SENSORS IGNITION(センサーズイグニッション)2016」では、出展した「FIGURE STAGE(フィギュアステージ)」が話題を集めました

この「FIGURE STAGE」は、日本の和と伝統にテクノロジーをミックスさせたプロダクトです。これがどのようなものかは実際にぜひ体感していただきたいのですが、独自のポイントとしては、日本が世界に誇るもう一つの文化でもある「J-POP」を代表する存在であるフィギュアを演出するために開発しました。

簡単に言いますと、20センチ四方のガラスで作られた四角い”ステージ”にフィギュアを置き、LEDによる赤・青・水色・桃色・緑・紫・白の7色の光で演出するものです。ただ演出するのではなく、日本の伝統美を取り入れているのが特徴で、ガラス表現にはフィギュアの美しさを最大限引き出すため、女性的な美を含んだ設計を取り入れています。また、ガラスの外側には、表面に凹凸を波のようにつけて透かせた質感の和紙を用いることで、光がうつろう様子が映えるような繊細な色彩を作り上げました。

テクノロジーの部分ですが、このガラス状となった箱の付近を両手で優しく撫でるように空中を泳がせると、ステージの色や明るさを繊細に変化します。あえて、手から情報を読み取るというアナログなアプローチをとることで、フィギュアと人間のコミュニケーションを図ろうとの意図があります。

―――― 実際に会場で「FIGURE STAGE」を前に手を空中で泳がせてみましたが、なかなか色が変わってくれませんでした。難しいものですね

フィギュアとコミュニケーションをとろうというものですから、やはりそこは心と愛情を込めて手を浮かせなければなりません。まさにフィギュアを愛(め)でるように手を動かすのです。「実際には触れない“ふれあい”」とでも言えるでしょうか。

いまのFIGURE STAGEは、スマートフォンやアプリから遠隔操作できるような便利さや面白さを求めているプロダクトではなく、フィギュアとの関係を深めるために、「手」という最強の“デバイス”を用いることにしました

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愛でるように心を込めて手を動かさないと色は変わらない

―――― フィギュアへの愛がないと生まれない非常に奥深いプロダクトですね。このFIGURE STAGEのビジネス面では、どのような展開を考えていますか

FIGURE STAGEは一つのプロダクトではありますが、これを一つの“モノ”として購入いただくのではなく、FIGURE STAGEを中心に置き、空間を日本の伝統美によって彩り、演出することによる空間体験を訴求していきたいと考えています。これまで海外の方を中心に強い関心を持っていただいているところです。

―――― 確かに「SENSORS IGNITION(センサーズイグニッション)」の会場でも海外から来られている方は、必ず足を止めて興味深く眺めている様子がありましたね

われわれは単にテクノロジーを追い求めるのではなく、組み合わせることが大事だと思っています。それは伝統であったり、ストーリーであったりといったものです。そうした組み合わせを体現したのがFIGURE STAGEです。なので、単純な「箱」ではなく、空間体験という軸で訴えかけています。

―――― 以前からcreww(クルー)に参加いただいていますが、どのようなコラボレーションを期待していますか

crewwには随分前から登録をしており、昨年(2015年)は最先端IT・エレクトロニクス総合展である「CEATEC(シーテック)」で弊社がROHM株式会社さまと出品させていただいた「ときめきセンサ」をご覧、体験いただいたことがきっかけになりました。

コラボレーションについては、アニメや音楽などのJ-POPコンテンツを持っておられる企業の方とご一緒できればと考えていますし。また、「空間」・「場所」をお持ちの企業ですと、我々が演出をすることができますので、空間をアレンジしたいと考えている大手の方とコラボできると嬉しいですね。

―― ありがとうございました。


株式会社TECHMAC・北口真CEOのCrewwページ https://creww.me/ja/account/Makoto-Kitaguchi
株式会社TECHMACのWebサイト http://techne-magic.co.jp/
FIGURE STAGEのWebサイト http://figurestage.com/
ときめきセンサのWebサイト http://tokimekisensor.com/

 


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SENSORS IGNITION 2016 注目スタートアップの先端技術が集結!

crewwイチ推しのスタートアップをご紹介

日本テレビで土曜日深夜(日曜午前1時55分から30分間)に放送中の先端テクノロジーなどをテーマとした番組「SENSORS(センサーズ)」が大型イベント「SENSORS IGNITION(センサーズイグニッション)2016」を2月26日(金)に虎ノ門ヒルズで行いました。crewwでも、ユニークな技術開発を行っているスタートアップの皆さんにイベント会場への出展を呼びかけたところ、多くの方々にご賛同をいただきました。注目スタートアップが大集結した「SENSORS IGNITION 2016」のなかから、イチ推しのブースをご紹介します。

 

<Pick UP 01> オープンソースの可愛いロボットを作ってみよう!

株式会社プレンプロジェクト(PLEN Project)
展示内容:プリンタブルロボット「PLEN2(プレンツー)」
株式会社プレンプロジェクト(PLEN Project)
オープンソースロボ「PLEN2(プレンツー)」を持つ赤澤社長(左)

身長20センチ・重量450グラムほどの可愛らしいロボット「PLEN2」を展示していたのは、大阪市北区に本社を置くプレンプロジェクト(赤澤夏郎社長)。「自分で組み立て可能なオープンソースロボット」というのが大きな特徴で、プログラムや3Dデータはすべて公開されているため、そのデータと3Dプリンタを使って“完全自作”が可能です。「kibidango(きびだんご)」「kickstarter」などのクラウドファンディングでも大きな反響を呼び、多くの出資を集めています。

ロボットを作るには精細な“印刷”ができる3Dプリンタとプログラムの知識が必要なので、ちょっと敷居が高いな……と感じる人のためにはちゃんと「組立キット」も「完成品」も用意されています。3Dプリンタを持っている人向けにはモーターとコントロールボードのセットを販売中です。

株式会社プレンプロジェクト(PLEN Project)
3Dプリンタで「印刷」して組み立てることもできるので教育効果が高い

このオープンソースロボット「PLEN2」の活用が期待されているのが教育現場です。プログラミングの授業を行う学校が増えているなかで、ロボットを作りながら機械制御や電子回路などを学ぶことができ、さらに完成後はロボットで遊んだり、新たなプログラミングを加えて“育てたり”することも可能です。既に小中学校や高校での採用実績も増えつつあり、「面白いし歯ごたえもある!」と好評を集めており、これからの浸透に期待が持たれています。
(詳細はこちらhttps://creww.me/ja/startup/www.plen.jp

 

<Pick UP 02> “世界初”の超ユニークゲームはビジネス面でも有望

株式会社ピラミッドフィルムクアドラ(PYRAMID FILM QUADRA)
展示内容:脳波で動くクレーンゲーム「脳波キャッチャー」
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人の心を乱す(?)映像に心を乱さなければお宝をゲットできるものの、なかなか難しい!

体験者希望者の長い列が続き、ひときわ注目を集めていたのが、Webサイトの企画・制作や映像制作などを行う株式会社ピラミッドフィルムクアドラ(東京都港区、中島章社長)が開発した「脳波キャッチャー」。なんと、人間の脳波をキャッチしてクレーンゲームを行うという“世界初”の超ユニーク企画です。

プレイヤーは、「ニューロスカイ」という脳波計が埋め込まれたヘッドセットを付け、真正面に流れる映像を見るだけ……というゲームですが、画面には美味しそうな料理や、ちょっと変な画像、水着の女性などなど、人の心を乱すかのような映像が1分間流れます。興奮したら左、リラックスしていたら右というふうに、人の内心によってクレーンが動くのです。平常心でいられたら真ん中にあるお宝商品をゲットできるのですが、自分の心の動きがクレーンの動きに連動してしまうので、やっているほうはちょっと恥ずかしいかも。でも見ている人には結構楽しく、ニヤリ! としてしまいます。

株式会社ピラミッドフィルムクアドラ(PYRAMID FILM QUADRA)
ヘッドセットには脳波計が埋め込まれている

やる側も見る側も楽しいゲームですが、たとえば、観光地の風景や街並みなどを見てもらってどう感じるか商品デザインの好感度を測ってみるといったような形で、ビジネス面での応用も大いに期待できそうです。
(詳細はこちらhttps://creww.me/ja/startup/bwc.pfq.jp

 

<Pick UP 03> みんなを笑顔にしてくれる“人間カメラ”の神髄

メディアアーティストのエリック・シュウ
展示内容:人間カメラ「Touchy(タッチー)」
エリック・シュウ
「Touchy(タッチー)」をかぶっている人に10秒以上触れるとパシャリ!

香港出身で東京在住のメディアアーティスト、エリック・シュウさんを中心とするプロジェクトが開発したのは“人間カメラ”の「Touchy」。カメラを頭からかぶるという何とも風変わりなプロダクトで、実際にかぶってみると、昔のマンガに出てくるようなちょっと可愛らしいロボットのようになれます。

そう、これがTouchyの大事なところで、かぶると不思議な風貌になりますが、どこか親しみと驚きを与えてくれるので、「なに、なに? 誰がかぶってるの?」と近寄ってみたくなります。そして、かぶっている人の手や素肌に触れるとカメラのシャッターが開き、10秒間触れると、その場でパシャリ!と写真が撮影されます。そうして撮られた写真はなぜかみな笑っています。ここが人間カメラの神髄で、周りの人を笑顔にしてくれるのです。

エリック・シュウ
開発者のエリック・シュウさんも自ら会場でPR

会社での堅い会議なんかでいきなりかぶっていくと怒られそうですが、見知らぬ人が集まっている場で、みんなの表情が硬いなと思った時に使えば和むこと間違いなしです。アイスブレイクの力強い味方になるリアルなソーシャルデバイス。人が社会的な殻に閉じこもる状況を打ち破り、社会的な不安を癒すという大きな目的を持った開発がどう発展していくのか、今後に注目です。
(詳細はこちらhttp://touchtouchy.com/jp

 

<Pick UP 04> 新感覚「チェス」とiPad上で動くミニロボに興奮!

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展示内容:SPEED CHESS(スピードチェス)&iPadPro専用ロボット「TABO(ターボ)」
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ミニカーを思い出させるようなロボット「TABO(ターボ)」はiPad上で動く

会場で目立っていたのが「touch.plus(タッチプラス)」のブース。インタラクティブコンテンツが得意な株式会社バスキュール(東京都港区、朴正義社長)と、ロボット開発などの技術で知られるプログレス・テクノロジーズ株式会社(東京都江東区、中山岳人社長)の2社がタッグを組んだプロジェクトがtouch.plusなのです。今回は、バスキュール単体での「SPEED CHESS」と、両社の強みを生かした「TABO(ターボ)」を披露しました。

SPEED CHESSでのチェス盤に使っているのは“60点マルチタッチ”と“高速応答性”を併せ持つ大型のディスプレイ。6種16個の駒ひとつひとつに1回動かしてから次に動かせるまでの時間をセットすることで、2人のプレイヤーがリアルタイムに駒を動かし合いながら敵のキングを追いつめていくことを可能にしています。「高次元な判断力と瞬発力が要求される究極のマインドスポーツを楽しめる」というのが大きな特徴の新感覚ゲームです。

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SPEED CHESSは究極のマインドスポーツを楽しめる

一方、「TABO(ターボ)」は、どこかミニカーを思い出させるようなロボットで、これがiPad上を動き回ります。単に動かすだけでなく、2台のTABOをiPadをタップしながら動かして対戦する「相撲ゲーム」を楽しむこともOK。TABOには画面と接するタイヤの付近に超電性プラスチックを用いた3点のタッチセンサが付けられており、これが画面と接することで、画面内のコンテンツと連動する仕組みとなっています。

ゲーム要素をふんだんに盛り込み、わくわく感が多数詰まったこれらの開発。教育現場などでどう活用されていくのかが楽しみなところです。
(詳細はこちらhttp://touch.plus/

 

<Pick UP 05> ガラス・和紙の魅力でフィギュアを彩り“対話”を図る

株式会社テクマク(TECHMAC)
展示内容:「FIGURE STAGE(フィギュアステージ)」
株式会社テクマク(TECHMAC)
愛でる気持ちで「FIGURE STAGE(フィギュアステージ)」の周囲で手を泳がせることが大事

京都市内の“町家スタジオ”に本社を構える株式会社テクマク(京都市上京区、北口真社長)の展示は、先端テクノロジーが詰まった会場で唯一、日本の和と伝統をミックスさせた“異空間”を見事に演出し、海外のメディアからも注目を浴びていました。

今回出展した「FIGURE STAGE(フィギュアステージ)」は、フィギュアを“愛(め)でる”ための空間を創り出すプロダクトです。20センチ四方のガラスで作られた“ステージ”は、和紙とガラスと鏡によって彩られています。LEDによる赤・青・水色・桃色・緑・紫・白など多彩な光がガラスと和紙を通すことにより、柔らかな暖かみのあるグラデーションとなってフィギュアを照らします。

株式会社テクマク(TECHMAC)
「FIGURE STAGE」のブースはマスコミにも注目を集めていました
※同時展示「未来都市(反重力都市 屏風)」:企画制作/(株)京屋吉星 作/John Hathway

FIGURE STAGEの最大の特徴は“愛でる”という部分。和紙で装われた箱状のステージ付近を両手で優しく撫でるように空中を泳がせると、ステージの色や明るさが繊細に変化するのです。いい加減な気持ちで単に手を動かしただけでは、あまり変化が起きません。あえて、手から情報を読み取るというアナログなアプローチをとることで、フィギュアと人間のコミュニケーションを図ろうとの意図があるといいます。また、音楽再生の機能も持っており、フィギュアに合わせたBGMを流すことも可能です。

日本の伝統文化である和紙や光の工芸技術の魅力によって、日本が生んだ新たなカルチャーであるフィギュアとの“対話”を試みる、そんな斬新な発想がすごい! 今後、国内だけでなく、海外市場にどこまで日本文化の神髄を伝えることができるのか。京都の地からテクマクの世界挑戦が始まっています。
(詳細はこちらhttps://creww.me/ja/startup/FIGURESTAGE

 

<Pick UP 06> 「アナログ黒板」をデジタルに変える画期的アプリ

株式会社サカワ/面白法人カヤック
展示内容:ハイブリッド黒板アプリ「Kocri(コクリ)」
株式会社サカワ/面白法人カヤック
スマホを通じ普通の黒板に何でも映し出すことができる「Kocri(コクリ)」

大正8年創業という日本を代表する老舗の黒板専門メーカーである株式会社サカワ(愛媛県東温市、坂和壽々子社長)と、IT技術を面白く活用することにかけては天才的な面白法人カヤック(神奈川県鎌倉市、柳澤大輔CEO)がタッグを組み、生み出されたのがハイブリッド黒板アプリ「Kocri(コクリ)」です。

従来の大がかりな「電子黒板」とは異なり、スマートフォンもしくはタブレットにインストールしたこのアプリとプロジェクター、「Apple TV」の3つがあれば、従来の黒板を「電子黒板」に生まれ変わらせてしまうという、教育界にとって画期的なサービスを会場でアピールしました。

電子黒板は便利ではあるものの、そのコストや操作性の面から今も普及率が高いとはいえません。とはいえ、授業の現場でインタラクティブな動きが欲しいとの声が多いのも事実です。では、今の黒板を使って、そのまま電子黒板にしてしまおう――単純だけどきわめて分かりやすい発想を現実のものとしたのです。

株式会社サカワ/面白法人カヤック
こんな難しい日本地図をチョークで書くのは大変ですが、Kocriで映し出せばカンタン!

スマホがコントローラーとなり、スマホのなかにある教材や動画などを黒板に映し出せることはもちろん、方眼紙や五線譜などを映し出し、その上にチョークで書くこともできます。チョークで書くのが大変な構文や図形などもパッと黒板に映し出すことができるので、先生にとっては授業の幅が広がり、濃密な内容となりそうです。

漢字の「トメ、ハネ」を表現するためには、電子黒板では難しく、チョークで書く黒板が欠かせないと言われています。学校に不可欠な「アナログ黒板」を一気に電子化してしまう、そんなアプリ。学校現場で喜ばれることは間違いなさそうです。
(詳細はこちらhttps://creww.me/ja/startup/kocri