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スタートアップとのコラボは 人と人のつながりから始まる

日本を代表するスポーツ新聞の1つとして知られる「スポニチ」を発行する株式会社スポーツニッポン新聞社は、500万読者を抱える知名度の高さと、66年間のスポーツ・芸能報道で培われたプロモーション力を生かした新たな展開を見据え、積極的にスタートアップとのコラボレーションに取り組んでいる。同社新規営業開発室の内匠俊頌(たくみとしのぶ)さんに老舗スポーツ新聞社が考えるコラボのあり方を聞いた。

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“共感のメディア”ならではの 新たなビジネスモデルに挑む

株式会社スポーツニッポン新聞社
取締役 成田 淳氏

日本を代表するスポーツ新聞の1つとして知られる「スポニチ」。株式会社スポーツニッポン新聞社(東京都江東区)は、500万読者を抱える高い知名度と、66年間のスポーツ・芸能報道で培ったプロモーション力を生かした次の展開を見据え、2015年9月にCreww株式会社のオープンイノベーションプログラムcrewwコラボを実施いたしました。多くのスタートアップから応募を集めた今回のcrewwコラボや新聞業界を取り巻く現状について、新規事業を担当する成田淳取締役に話を伺いました。

“紙”の次にあるモデルを発明する段階に

―― 成田取締役はスポーツニッポンの関連会社である毎日新聞社で、新聞制作の最前線から経営の現場まで幅広い経験を積まれてきましたが、現在の「新聞業界」をどう見ていますか

新聞というメディア自体は400年以上前からあり、毎日新聞社だけを見ても150年近い歴史を持っています。その役割は、世の中にある共通の課題を報じることにあり、スポーツ紙は生きる喜びを伝えるという目的を持っています。これはデジタル化しても変わりません。

一方、業界全体で見ると、紙の形で発行している新聞は、年に3%の割合で読者数が減っており、この15年ほどで社員数も20%減になりました。「紙」というパッケージモデルはなくなることはないにせよ、どこの新聞社も経営的には限界と言える状況にまで来てしまったのが現状です。

とはいえ、新聞社全体では社員数が少なくなっても、現場で取材する記者の数は減らしていませんので、プロのメディアとして、コンテンツのクオリティは落ちていません。課題はこのコンテンツをいかにマネタイズしていけるかです。デジタルに流すだけでいいのか、もっと付加価値を高めるためには何をすればいいのか、“紙”の次のモデルを発明しなければならない段階に来ています。

これまでのビジネスモデルに変革を起こすためには、外のアイデアを取り込まなければならないと考え、スポーツニッポン社として出した一つの答えがcrewwのオープンイノベーション「crewwコラボ」を行うことでした。

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スポーツニッポン新聞社は66年の歴史を持っている

―― 新聞の役割は変わっていないものの、今後のマネタイズ面で課題がある、ということでしょうか

いわゆる「全国紙」と呼ばれる大手新聞社の役割は「国家とは何か」「民主主義とは何か」ということを伝え、考え、守っていくことです。民主主義は“タダ”だと思われていますので、ここにお金を払っていただくのはなかなか難しいですし、“民主主義を守る”という目的で書かれた記事が読まれるとも限りません。

一方、スポーツ新聞は世の中の共通の関心ごとであるスポーツや芸能などを伝える役割を担っています。スポーツニッポン社では「楽しく元気な社会を築く」との目標を掲げているように、一般紙とは違い「共感のメディア」ということが言えます。そういう意味では、イノベーションを起こしやすい環境にあります。

―― 「共感のメディア」であるスポーツ新聞だからこそ、新しいことに踏み出しやすいということですね

一般紙はともすれば理想や理念を優先せざるを得ない面がありますが、スポーツ紙は世の中の本音を引き出し、上手く伝えることに長(た)けています。まずは「何でもやってみよう!」という企業風土ですから、今回のcrewwコラボにおいてもスタートアップの皆さんには「NG項目なし」とお伝えしました。

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―― 今、誰もが情報を簡単に発信できる時代ですが、新聞社の強みはどんなところにあるのでしょうか

ブログなどで発信している一般の方と、新聞社が発信する情報の違いは、膨大な情報のなかから必要な内容を選び出し、パッケージ化できることにあると思っています。また、先ほど、本音を伝えると言いましたが、本音をストレートに伝えると、嫌な思いをさせてしまうことがありますよね。読む人に嫌な思いをさせずに本音を伝えるのが、われわれプロの腕の見せどころです。この価値を生かしたビジネスをしなければと考えています。

一方、これまでの新聞は客観的な匿名記事が中心でしたが、これからは、記者一人ひとりがコンテンツ化していかなければならない段階に来ているように感じています。情報の新たな伝え方を模索しているところです。

―― 今回のオープンイノベーションでは多くのスタートアップから応募がありましたが、どのような印象を持たれましたか

社内からのアイデアは、どうしても旧来の価値観にとらわれがちですので、外の発想やアイデアをいただける素晴らしい機会で、本当にありがたかったです。

一方で厳しい見方をしますと、こちらの想像を超えるような提案がなく、類似サービスを提示いただくことが多かったのも事実です。

スタートアップの方による発想の本質と、スポニチが持つ価値をいかに融合させ、形にしていけるか、これからが勝負だと考えています。会社としては大きな期待感をもってコラボに取り組んでおり、社内に化学変化を起こしたいと思っています。

―― ありがとうございました

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成田取締役(左)とコラボ担当者の内匠俊頌さん

スポーツニッポン新聞社のcrewwコラボページ(2015年9月実施分)
スポーツニッポン新聞社のコラボ担当者・内匠俊頌さんのページ

 
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