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今だからこそ、家族のためのSNS「wellnote」

ウェルスタイル株式会社 代表取締役社長 谷生芳彦さん

ソーシャルネットワーキングサービスでのコミュニケーションが定着し、知人と会って会話をする以上に、写真や動画などを交えた投稿の共有やチャットで交流する、というコミュニケーションも当たり前になってきた。家族間のクローズドSNS「wellnote(ウェルノート)」がオープンイノベーションをしながら、提供しようとしているサービスは、どんな想いから生まれたのだろうか。ウェルスタイル株式会社の谷生氏に聞いた。

オープンイノベーションのプラットフォーム「creww」を使う理由

——自社だけでも、他企業にアプローチされてきたと思いますが、それとcrewwコラボの違いはありましたか?

crewwを使うメリットは、会う前から論点やトピックをある程度固めた状態でコミュニケーションが取れることですね。Creww株式会社という第三者が入ることで、ベンチャーでありながら、大手の企業とのやりとりにスムーズに入れることです。

——オープンイノベーションやcrewwコラボを進めていく上で、先方にスタートアップに対する理解のなさなどを感じたことはありますか?

それはないですね。企業や担当者の個性や相性だと思います。起業以前のキャリアとして、ゴールドマンサックスに10年間勤務していました。最初の4年間は機関投資家と呼ばれる大手金融機関担当として日本株式を営業する仕事をして、そのあとは事業法人部で、資金調達支援、共同投資提案、リスクマネジメント提案など、経営やファイナンス絡みのなんでも屋をしていたので、そのあたりには難しさを感じませんでした。

 

大学生の頃に描いた夢を10年後に実現

——ゴールドマンサックスでの勤務が10年ということですが、なぜ、起業しようと思われたのですか? 10年勤めたら、環境を変えていくことに躊躇はありますよね?

もちろん、かなり考えましたよ。「外資系金融でのキャリアを本当に捨てていいのか」「学生時代から起業をすると言い続けてきたけれど、なぜ起業するんだろう」といったことから、「幸せとは何か」「どんな人生が幸せなのか」という自分の根幹に関わることも日々自分に問い続けました。

でも、起業しない人生を送れば、死ぬときに後悔するだろうと思うようになりました。新しいライフスタイルを創造するという社会的意義があると確信できるこのチャレンジに挑戦してみたいという想いと、大学生の頃の「起業したい」という夢が重なって決意できました。

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——大学生の頃から起業はしたかったんですね。

そうなんです。当時90年代半ば、インターネットで世界が変わると言われはじめていました。大学の専攻も経営学でしたし、起業のまねごとのようなサークルも運営する中で、ベンチャーの本場であるアメリカのシリコンバレーに留学したいという想いが日に日に強くなっていきました。

大学の交換留学制度を調べてみたら西海岸のシアトルにあるワシントン大学経営学部への交換留学制度があったので、それに応募して、交換留学をしました。

留学していた1997年のシアトルはITバブル前で盛り上がっていました。マイクロソフトのビル・ゲイツはいますし、アマゾンドットコムのジェフ・ベソスもいるんじゃないかとか。彼らのような大きな事業をいつか創ってみたい、と夢がどんどん膨らんで。笑

 
——日本の大学にいた頃はいくつかサークルを運営されていたということですが、卒業していきなり起業はしなかったんですね。起業する前のステップとして、投資銀行を選んだのはなぜですか?

当時アメリカでは、大学で最も優秀な学生たちは、経営コンサルティングや、ウォール街のゴールドマンサックスといった投資銀行に入って数年経験を積んだ後、MBAを取って起業するという流れがあるなあと思ったのがきっかけです。

 

モノやサービスが変えていくライフスタイル

——退社後に起業して、ここまでくるのに順調でしたか?

しんどいだろうとは思っていましたが、順調なことより、大変な時間の方が多かったです。笑

特に何かを準備して辞めたわけではなく、私自身に子供が生まれ、その成長を両親に共有したいということもあり、家族SNSが必要になるだろうという着眼だけで退社したので、サービスの構築ができるエンジニアを探すことから始めました。これがなかなか見付からない。「エンジニアが見つかるまでは、サービスの開発を始めない」と決めていたので、スタートには時間がかかりました。

——2012年に「リアルの場のお茶の間をネット上に再現する」というコンセプトの家族限定のSNS「wellnote(ウェルノート)」を正式に公開されましたが、この手のクローズドSNSは少しづつ増えていますよね。
ようやくそのような新しいライフスタイルが創られてきたと感じます。メールからfacebookなどのSNSやチャットツールに移行し、そこに加えて、カップル間や家族間などのクローズドSNSがより必要になっていくと考えています。関係性やコミュニケーションの内容で、ツールを使い分けが進んでいくのがこれからの流れとなっていくと思っています。

例えば、子育て中のひとが自分の子どもについて、写真や動画を投稿するのはよくあることです。ただ、プライバシーだったり、気分的なものだったり、さまざまなリスクを考慮しなければならない場合もある。いわゆる「SNS疲れ」「Facebook疲れ」などと呼ばれる状態ですよね。それに対して投稿範囲を限定するといったやり方はありますが、設定に戸惑って、投稿が億劫になることが多いのではないでしょうか。

かといって、チャットツールでは、やりとりが流れてしまう。今すぐ返事を求める同期型コミュニケーションではなく、思い出として何かが残って残ればよい非同期コミュニケーションもニーズがあるわけです。

ディバイスも変化していっています。2010年はPCとガラケーでのメールが主流でしたが、今はスマホが台頭し、SNSやチャットアプリが増えています。これからはタブレットもますます増えていきます。

モノやサービスの機能そのものではなく、そのモノやサービスでライフスタイルがどう変わるのかを意識してサービスの開発をしていくことが大切だと思っています。

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——その変化に対応していくために、オープンイノベーションは欠かせないですよね。オープンイノベーションをしながら目指していることを教えてください。

wellnoteをまずは日本中の家族に使ってもらいたいということ。それによって幸せな家族を増やしたいという想いがあります。社会的意義のあるプラットフォーム、インフラの構築を通じて、世の中に新しいライフスタイルを創造することができれば、利益はあとからついてくると信じています。

 

取材先 : ウェルスタイル株式会社   http://wellnote.jp/

 

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37歳、背水の陣で挑んだクラウドソーシング事業で目指す世界

株式会社クラウドワークス 代表取締役社長兼CEO 吉田浩一郎

2011年に創業。2012年3月にサービスを開始。2014年12月にはマザーズに上場し、2015年10月時点で75万人のワーカーと10万社が登録し、常時1万案件がやりとりされているクラウドワークス。一気に成長したこのサービスのバックグラウンドを聞いた。

 

急成長の鍵は、やりたいことと求められていることの一致

クラウドワークスは2012年の創業から、2014年の上場。創業から急成長を遂げましたが、急成長の鍵はなんだと考えていますか?

私には自分自身で何かを表現したいという気持ちがありました。学生時代から、自分の才能を模索して、映画を撮ってみたり、舞台に関わってみたりしていたのですが、それこそ勅使河原三郎や2015年で引退したギエムを見て、「自分には才能がない」というのを思い知らされました。

そこからクラウドワークスの起業に辿り着くまで、どの道で「何者か」になるにはどうしたいいのか模索し続けました。

大学で映画の撮影や舞台に打ち込んで、打ちのめされ、卒業後は大手電機メーカーの営業マンやベンチャー企業の執行役員もしました。就職して、評価される結果を出していましたが、やりたいことかと言われると、強く頷けるものではありませんでした。その後、ベトナムでのアパレル事業などを手掛ける企業を立ち上げたりもしましたが、そこで全てを失くしてしまいました。

そんな折に東日本大震災があり、自分のライフスタイルに合わせた働き方を求める流れが加速しました。クリエイターの様な方々がもつ「価値あるもの」を生み出すことができる才能、それを世の中に伝えるのが自分の役割なんでしょうね。ようやく「やりたいこと」と「向いていること」がひとつになりました。

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組織の自律的な成長に必要なのは、信頼と委任

吉田さんの「やりたいこと」と「向いていること」というところに、さらに人がついてきて、急成長しているのは、時代の流れを掴めたからなんですね。

それもありますが、自分のやりたいことに人が集まって、組織が自律的に動き出すようになったのは、見栄や外聞を捨てて、私が人を信頼できるようになったことも大きいと思います。

36歳の頃、3年間一緒に動いてきた役員が、突然。とは言っても、彼は半年前からその準備していたようなのですが、取引先を持って出て行きました。さらに海外でも事業をやっていたのですが、そこで1億ぐらい赤字を出して、社員も辞めていき、年末にオフィスでひとりぼっちになったんです。

「これからどうしよう」と悩んでいる時に、チャイムが鳴って、ある上場企業からお歳暮が届いたんです。なんてことのないものかもしれませんが、「もう誰も自分に見向きもしない」「ひとりぼっちだ」と打ちのめされている時だったので、本当に嬉しかったんです。

再起を賭けて37歳で時に、当時所有していた車も売り、貯金全てを起業に充てました。人のためになることをして、人からの感謝されることをしようと決断したんです。

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全て失って、人を信頼することがわかった

自分の元から資産を持ち去された経験があっても、人を信頼することができたんですね。

そうですね。自分の力を過信したり、逆に自分を責めたり、とにかく私はバランスが悪いうえに、人を見る目が無かったんだな、と。だったら、自分ができないことは、それを得意な人に任せる度量を持つしかない。

採用も役員に任せています。ドリコムに勤めていた頃、1ヶ月で30人採用したんです。それは1年後に25人辞めていました。さらに、先ほどの通り、役員が取引先を持って出ていったり、年末ひとりぼっちだったりしたわけですから、笑。

 

信頼できるビジネスパートナーたちを得て、吉田さんがやっていくことはどんなことですか?

現場を知っている役員に組織を見ることなどは託し、私はこの新しいワークスタイルが社会に定着するために必要な絵を描いていきます。数字としては、2017年9月の総契約額100億円を実現するために、事業に非連続性をつくっていくのが役割だと考えています。

今やっていることを無難にこなしているだけでは、そこまでは到達しないですし、上場すると見えている成長を追いがちになるので、いかにスケールダウンさせずに事業を展開していけるかですね。

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トレンドで終わらせず、ひとつのライフスタイルに育てあげるために

新しく出てきたビジネスモデルでありがちなのが、その目新しさで一気に着目され、利用されても、一気に萎んでいくことがあると思います。クラウドソーシングが定着し、クラウドワークスだけで100億円という数字は、どんなところから導き出していますか?

クラウドソーシングは、インターネットを使って個人のスキルを見える化し、そのスキルを流通させることができるだけではなく、個人と企業が対等な関係性を保てることが大きな強みです。

個人の情報を最適化して、再分配してきた20世紀的やり方は0になりませんが、インターネットにより個人の情報がリアルタイムに公開され、必要とする場所に届けるような、クラウドワーキングに限らずシェアリングエコノミーと呼ばれるツールやプラットフォームは時代の流れとして増えてきています。これをトレンドで終わらせずに、クラウドワークスをひとつの働くインフラとして育てていきたいと考えています。

矢野経済流通によると、2015年には650億円のクラウドソーシング事業も、2018年には1820億円、2023年には1兆円までいくという見立てがあるので、実現できる目標だと考えています。

クラウドソーシングという働き方を社会に認識してもらうという段階から、次に、個人が安心して働ける環境をつくるために、教育制度や社会保障を整備していくことが必要です。正社員や派遣社員に限らず、多様な働き方を自由に選べる社会を実現していきたいです。

取材先:株式会社クラウドワークス https://crowdworks.jp