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creww最多となる138件のエントリー 東京メトロのプログラムで3件を採択

creww(クルー)史上最多の138件のスタートアップが参加――。東京メトロ(東京地下鉄株式会社)がcrewwと2016年10月から始めたオープンイノベーションプログラム「Tokyo Metro Accelerator 2016(東京メトロアクセラレーター2016)」では、crewwのプログラムで過去最多となる138件のスタートアップがエントリーし、12月15日に2次審査を通過した6件が最終のプレゼンテーションに臨みました。協議時間が予定よりオーバーするなど、最後まで選考委員が悩み抜いた末に選んだ3件とは。

138件から選ばれた6件が最終プレゼンに臨む

Tokyo Metro Accelerator 2016は、crewwに登録するスタートアップとともに「東京の更なる発展に寄与する新しい価値」(同社)を創り出そうという東京メトロでは初の試みです。10月31日から11月9日にかけて、ローンチの有無や短期的な収益性の考慮も不要という条件でスタートアップからのエントリーを広く受け付けました。

1次審査で138件から33件が選ばれ、さらに2次審査を経て、都内六本木で最後となる公開プレゼンテーションを開催。最終プレゼンテーションまで残ったのは次の6社です。

・株式会社LOCUS(ローカス=東京都渋谷区、瀧良太社長):テンプレート型動画サービス「FastVideo(ファストビデオ)

・プログレス・テクノロジーズ株式会社(東京都江東区、中山岳人社長):視覚障がい者向けナビゲーションシステム「AI CAMERA(エーアイカメラ)

・株式会社ナイトレイ(東京都渋谷区、石川豊社長):訪日外国人解析サービス「inbound insight(インバウンドインサイト)

・株式会社ログバー(東京都渋谷区、吉田卓郎社長):インターネットを介さない音声翻訳サービス「ili(イリー)

・株式会社Tadaku(タダク=東京都品川区、石川俊祐社長):外国人が教える家庭料理教室「Tadaku

・Qrio株式会社(キュリオ=東京都渋谷区、西條晋一社長):モノとスマホをつなげるアクセサリー「Qrio Smart Tag(キュリオスマートタグ)

ユニークさと将来性、インパクトで3社を選ぶ

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採択された3社と東京メトロの奥義光社長(右)、審査委員長の髙山専務取締役(左)

最終プレゼンテーションでは、7名の審査員やマスコミ各社をはじめ、東京メトロの経営層や、自らが担当したスタートアップを応援する立場で訪れた若手・中堅社員などが見守る会場で行われました。

外部審査員として招かれた五嶋一人氏(株式会社iSGSインベストメントワークス社長)や麻生要一氏(株式会社リクルートホールディングスMedia Technology Lab.代表)らから時に厳しい質問も飛び出すなか、6社はそれぞれ15分間のプレゼンテーションと質疑応答を終了。

その後に行われた審査協議は、7人の委員による激しい議論が行われ、予定時間を過ぎても終わらないほどに白熱。予定より遅れて始まった結果発表では、審査委員長をつとめた東京メトロの髙山輝夫専務取締役から「ユニークさや将来性、インパクトを考え抜いて選んだ」と述べ、プログレス・テクノロジーズとログバー、Tadakuの3社に決まったことが報告されました。

視覚障がい者と訪日客に向けた先進デバイス

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プログレス・テクノロジーズの中山岳人社長(左)

今回のプログラムに採択されたプログレス・テクノロジーズは、視覚障がい者向けに骨電動デバイス「ShikAI(しかい)」の開発に取り組んでおり、AI(人工知能)を使った物体認識とビーコン(Beacon=位置情報伝達)を活用することで、駅構内を安心して歩ける環境にしたいと提案。

「世の中を変えていくパワーを持っている」(同社を推薦した東京メトロの担当社員)という将来性と技術力が審査員に評価されました。プログレス・テクノロジーズの中山岳人社長は「視覚障がいを持つ方々のため、さらに開発に注力していきたい」と採択されたことに喜びを表しました。

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ログバーの山崎代表取締役兼COO(左)

また、ログバーは、指輪型のウェアラブルデバイス「Ring(リング)」で知られる話題のスタートアップです。そうした経験を生かした音声翻訳デバイス「ili(イリー)」は、インターネット環境がなくても翻訳が行えるデバイスを開発。これを活用し外国人旅行者の多い駅構内で実証実験を行いたいと提案しました。

「言葉の壁がなくなる時代をともに創りたい」(同社を推薦した東京メトロの担当社員)という先進性と、「場所を選ばず、タイムラグのないコミュニケーションがとれる高い技術」(審査委員会)が評価されての採択となりました。ログバーの山崎貴之代表取締役兼COOは「東京を変えていく機会にしたい」と意気込んでいます。

「シェアリングエコノミー」サービスも採択

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Tadakuの須佐取締役(左)

一方、Tadaku(タダク)は、日本に住む外国人の自宅で世界各国の料理を学ぶ同名のマッチングサービスを展開しており、同社が持つ外国人ネットワークを活用して「東京メトロの沿線で、スタンプラリーを行うなど文化を学びながら“世界一周”ができるイベントを企画したい」と提案。

「シェアリングエコノミー(モノやサービスを個人間でやり取りする共有経済)としてのユニークさ、地域との共生とインバウンドのお客様に対するサービスの新規性」(審査委員会)が評価されて採択されました。採択後に行われた報道関係者向けのインタビューで須佐宇司(ひろし)取締役は「シェアリングエコノミーという観点で、東京メトロさんと何ができるのかをさらに詰めていきたい」と今後に向けての抱負を語りました。

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オープンイノベーションプログラムは「充実した時間だった」と振り返る東京メトロの奥社長

今回のオープンイノベーションプログラムについて、東京メトロの奥義光社長は「まだまだ(自社で)できることがあると知ることができ、充実した時間でした。また、スタートアップの方の知恵や力を借りれば色んなことが実現できると感じた社員たちの目の輝きが変わっていき、意義深かった。今回、提案いただいたスタートアップの方々とつながりを今後も大切にしたい」と締めくくりました。

なお、最終プレゼンテーションの結果、惜しくも選ばれなかった3社には、「東京メトロ24時間券」が各社100枚ずつ贈られました。

 

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東京メトロの豊富な経営資源を開放する オープンイノベーションへ熱い意気込み

東京メトロ(東京地下鉄株式会社)がcreww(クルー)とともに行うオープンイノベーションプログラム「Tokyo Metro Accelerator 2016(東京メトロアクセラレーター2016)」の実施に際し、10月27日に都内でオリエンテーションを開催。首都圏の交通インフラになくてはならない同社が挑む新たな価値創造。約120のスタートアップが参加し、熱心な質疑応答が続きました。

東京の発展に寄与するアイデアを募集

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Tokyo Metro Accelerator 2016

Tokyo Metro Accelerator 2016は、東京メトログループが持つ1日707万人におよぶ顧客へのアプローチをはじめ、195.1キロの鉄道ネットワークと179の駅、337編成(2728両)の車両、駅構内にある店舗や商業ビル、駅構内の広告媒体やデジタルサイネージ、鉄道運行などに関するデータといった経営資源を解放することで、スタートアップとともに「東京の発展に寄与するための取り組みや事業」(同社)を創り出そうという試みです。

2016年10月31日(月)から11月9日(水)までの間にスタートアップからのエントリーを受け付け、11月11日(金)に1次選考、12月5日(月)の2次選考、12月15日(木)のプレゼンテーションと最終選考により、東京メトロとコラボレーションするスタートアップが選ばれるという流れになっています。

ローンチの有無や短期的な収益性の考慮不要

東京メトロでは、鉄道の安全運行や、コンプライアンスの遵守を前提に「可能な限り経営資源を解放する」(奥義光社長)との意気込みです。同社の事業と競合する可能性のある内容であったり、サービスのローンチ前であったり、コラボ後すぐに収益が見込まれない場合であったとしても「大丈夫ですので、応募してください」(同社)との姿勢です。

また、コラボ内容によっては、東京メトロと相互直通運転している各社に声をかけることもあるといいます。

crewwでは「今回のプログラムでは、東京メトロの課題を解決しようという視点は必要がなく、まずは自社サービスの成長や、東京の発展に寄与するためという考え方で応募してください」と呼びかけています。

一方で「法人個人問わずどなたでも応募可能ですが、単なるサービスの売込みではなく、コラボレーションであるという点に注意してください」(creww)といい、エントリー時には、2000字以内のテキストに(1)どのようなビジネス・サービスなのか、(2)狙っている市場やビジネスモデル、(3)短期的にやりたいこと、(4)中長期的な協業ビジネス、(5)座組みや役割、実施効果――といった点を盛り込んでほしいと説明しました。

東京メトロ・奥社長「つながり大切にしたい」

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東京メトロの奥社長

10月27日にベルサール六本木コンファレンスセンターで行われたオリエンテーションでは、東京メトロ奥義光社長や、crewwアドバイザーである出井(いでい)伸之・クオンタムリープ代表取締役、crewwCEO・伊地知天(いじちそらと)が登壇し、今回のイノベーションプログラムに関する意気込みが語られました。

東京メトロを代表して奥社長は「今回のイノベーションプログラムを通じ、スタートアップの方々とのつながりを大切にするとともに、互いの強みを発揮しながら新たな価値を創造していきたい」とあいさつ。「今から楽しみでわくわくしている」と期待感を示しました。

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クオンタムリープの出井氏

今年8月からcrewwのアドバイザーに就任したソニーの元社長で、クオンタムリープの創業者である出井氏は、日本のスタートアップやベンチャーを成長させるためにもっとも欠けているのが資金だといい、「大企業が資金提供者になるべきだ」と指摘。「すべての大企業が実践すればベンチャーはあっという間に育つ。その意味でも今回の東京メトロの取り組みは大変ありがたい」とエールをおくります。

「スタートアップにとって大きなチャンス」

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crewwのCEO・伊地知

東京の発展に寄与するアイデアを募集

crewwのCEOである伊地知は、これまでに70社以上の大手企業とイノベーションプログラムを行ってきたことを紹介し、「東京メトロさんが登場したことはスタートアップにとって大きなチャンスで、われわれもこれまでのノウハウや知見をフルに活用していく。多くの参加をお待ちしています」と呼びかけました。

また、今回のプログラムの責任者であるcreww執行役員の水野智之は、「東京メトロさんとプログラムを開催することは、crewwの企業アクセラレータープログラムを始めた時からの念願だった」と報道陣に明かしました。

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懇親会会場では活発なコミュニケーションが行われていました。

オリエンテーション後には、懇親会が行われ、東京メトロで今回のプログラムの審査委員長をつとめる髙山輝夫専務取締役が「社内が一丸となって、今回の取り組みを成功させたい」とあいさつ。参加したスタートアップと交流を深めました。

Tokyo Metro Accelerator 2016のページ(2016年10月31日~12月15日)

 


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