crewwコラボ 体験談 ― 大企業編

crewwコラボ 体験談 ― 大企業編

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「三井住友カード x ストーリーアンドカンパニー」ミライ募集中。ミライブックが生み出す、感動で溢れる未来

三井住友カード株式会社/ 西條 勇紀氏
株式会社STORY & CO./ CEO 細川 拓氏

体験シェアリングサービスを展開するストーリーアンドカンパニーと、主にカード決済事業を展開する三井住友カード。全く領域の異なる両社がcrewwコラボを経てタッグを組み、感動を生み出す新サービスをスタートさせる。その名も「ミライブック」。“人がいつか叶えたいと夢見るミライの実現をサポートする”という画期的な取り組みを通じ、「世の中に感動を与えたい」と西條氏と細川氏は話す。そんな世の中を感動で包むであろうキャンペーンの展開に至った軌跡について、両者に聞いた。

 
――まずはSTORY & CO.の事業内容と起業のきっかけについて教えてください。
細川拓(以下、細川):弊社は、旅の中での良い出会いが良い変化を生み、それが良い物語になっていく「出会いと変化の物語」というビジョンを掲げて2つのサービスを展開しています。“3時間の小さな旅”と銘打った体験シェアリングWEBサービス「AND STORY」。そしてもう一つは、大学内のカフェで学生と地域の人たちや旅行者が交流できる「U-CAFE」という事業をプロデュースしています。

起業のきっかけは、人の人生の変化を、より良いものしていきたいと考えたから。
大学生の頃にアパレルの会社を起業して、その後大手企業に入社して進学事業とブライダル事業に携わりました。服(おしゃれ)や進学、結婚など人の人生の節目を豊かにすることと向き合っていく中で、「人ってどういうときに変化を求めてアクションを起こすのか」と考えた時に“旅”だなと。
辛いことがあったら傷心旅行、ハッピーな新婚旅行などさまざまな旅の種類があるように、人生に何かしらの変化があると人は旅に出るんですよね。
自分自身も旅の中で「(現地で)どんな人に出会ったか」という部分から人生に良い影響を受けました。

ただ、旅先でローカルの人に出会うというのはそんなに簡単なことじゃない、ということを感じていました。日本では欧米風なコミュニケーションも少ないので交流のきっかけや場がない。交流を通じて出会いが生まれればなと思って、2つの事業を思いついたんです。
現在は設立して2年4カ月(取材時:2018年6月)ほど。2017年9月にリリース後半年たたないうちに東京メトロ様とのコラボも決まって、生まれて間もない事業にしては注目されてくるようになったかなと思います。

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株式会社STORY & CO./ CEO 細川 拓氏

――次にcrewwコラボを開催した理由をお聞かせください。
西條勇紀(以下、西條):弊社の本業の柱は(カード)決済事業なのですが、中期経営計画の中で新規領域の事業にも挑戦しようという方針があって。ただ、急に新規事業をと言ってもノウハウがなく、社内で打合せを重ねながら試行錯誤を繰り返していたんです。そこにcrewwコラボの話を取引先の会社から聞いて、これも試しにとアプローチしたのが始まり。元々は自分たちだけで新規事業を立ち上げようとしていたのですが、crewwコラボを使ってまずはノウハウを集めようと模索しました。
当初はエントリーがあるのか、どういった応募が来るのかと正直不安でしたが、応募数や事業の“匂い”がするものが思っていた以上に集まったというのが率直な感想です。

――その中で一番最初にお会いしたのがSTORY & CO.?
西條:はい、一番目にお会いしましたね。
弊社に集まってきた案件は、チームメンバーがドラフトのように選んでいったんですが、STORY & CO.さんは私のドラフト一位でした。あくまで個人的な印象なのですが、スタートアップの方は尖っているイメージを勝手に抱いていて(笑)。でも、実際に細川さんにお会いしてみて、そういった印象は全くなく安心しました。むしろ、話してみると考え方も近くて、初対面ながら会話がとても盛り上がったんですよね。会社同士というよりも個人同士でインスピレーションがすごく合って、友達になれそうな気もして、その瞬間から自分の中で(協業に対して)ギアが上がったのかなと思っています。

――第一印象から意気投合されたのですね。「AND STORY」にフォーカスした理由は?
西條:新事業検討のコンセプトとして「人に感動を与えられる事業」「世の中をより便利にできる事業」大きくこの2つを掲げていました。まず、“感動”ということを考えた時に「AND STORY」の事業紹介文を見て「これだな」とピンと来たところですね。

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三井住友カード株式会社/ 西條 勇紀氏

――ブラッシュアップの結果生まれたコラボの内容について教えてください。
西條:STORY & CO.さんがすでに展開している「AND STORY」のサービスをベースに、今回は逆に様々な方々から“やってみたいミライ(コト)”を募ろうと。その中から選ばれた「想い」の実現を、我々がお手伝いします。

細川:「ミライブック」というもので、簡単に言うと「あなたの夢の体験叶えます」というものですね。誰しもが持っているけれど、忘れてしまっていた「こんなことやりたかったんだよな」という体験の実現をサポートします。
ただ、「夢」と言い過ぎてしまうと「車欲しい」「家が欲しい」という自身の努力関係なく、棚ボタ的なことが多くなってしまうのではないかと思ったんです。そうではなくて、「やってみたかった!」という実際に自分が動いて掴み取る未来を叶えられるように、展開していきます。

西條:夢の応募はSNSで投稿していただき、それを叶えるホストをマッチングさせる。「AND STORY」は「体験を提供したい」というホストがいて、ゲストが予約をする。しかし今回はその逆。応募者が叶えたい未来を一緒に叶えていくというもの。実は僕自身が今更ながら独学でドラムをやり始めたんです。昔からずっとやりたいと思っていたのですが、ふとやり始めて、これが面白くて。自身の体験を通じてサービスを考えた時、自分の思いに対してトンと背中を押してくれる存在があったらもっと早く始められていたのにと。ぜひこの取り組みが、誰かの背中を押す存在になれたらなと思います。

細川:そして、細田(守)監督の最新アニメ映画「未来のミライ」とのタイアップも決まったんです!元は僕の思い付きで、子供と映画を観に行ったときに予告で見て、「未来」というキーワードが合うなと。それですぐ西條さんに電話して。僕は言う(提案する)だけで簡単なんですが、西條さんは大変でしたよね。

西條:それを連休直前に聞いて(笑)。でも、たしかに面白いタイアップになりそうだったので、ダメ元で配給会社さんに行ってみたんです。そうしたら「できそうですね」と快諾していただいて、スムーズに進みました。

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――映画とのタイアップも決まり非常に楽しみな企画になってきましたね。連携はスムーズでしたか?
細川:分担というより、企画の全体を細かくラリーして作り上げてきたので全部2人で整えていきました。

西條:たしかに、役割を分けてなかったですもんね。

細川:「(両者に)こんな強みがあるから、こういう事業やろう」といった進め方ではなく、「こんなことやりたいよね」という思いがあって、お互いの強みを出し合って2人で形を整えていった。協業する際にありがちなのですが「どっちの役割か」となると、立場的にスタートアップ企業側が背負わなければならない部分が多い。だけど、西條さんはめちゃくちゃ率先してやってくれたんですよね。

西條:企画を形にしたい一心でしたから(笑)。

細川:社内採択を通した後も、西條さんは絶対目的からブレないんですよね。僕の方からしても、(三井住友カード側の)社内の都合もあるからベストではなくともベターであればいいという部分も正直あったのですが、今回は100%ベストで進めることができた。だからこそ、僕も絶対成功させたいという強い思いがありました。

――「ミライブック」に期待すること、その後の青写真は?
西條:この取り組みを単なるキャンペーンだけでは終わらせず、サービスに昇華させていきたいですね。自分がドラムをやり始めたことで叶えたように、新しい世界を切り開いてもっと楽しい人生を送っていただけたら。一人でも多くの方に感動があふれるような人生になってもらえたら素敵だなと思っています。(やりたいことは)もっと早くやっておけばよかったって思いますしね、実体験として。

細川:「AND STORY」を始めたきっかけと一緒なんですが、人生を変化させようと行動するのは難しいんです。だけど、日々を惰性的に過ごして一歩前に踏み出せない人たちがたくさんいるなと。「ミライブック」では一歩踏み出しましょうというよりももっと進んで、一歩踏み出し始めた人が「(踏み出して)良かった!」と本気になれる世界を作っていきたいですね。

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ミライブックキャンペーン

――お二人の想いが詰まった「ミライブック」本当に楽しみにしています。最後にcrewwコラボを通しての感想をお聞かせください。
細川:crewwコラボの良い点は、事業を始める前に高い熱量を持って進められることですね。他のアクセラレーター(プログラム)は、ピッチコンテストのような形式でスタートアップ側が事業案から計画など全部作って2、3分のスピーチで勝負、というところがある。それではここまで高い熱量持てないだろうし、この事業すらも生まれなかった。スタートアップ企業、大手企業、Creww3社が一緒になって作ってきた、この形式だからこそ生まれてきたもの。他のアクセラレーターも全部この形式だったらいいのにと思います (笑)。

西條:イノベーションを起こすには、ITリテラシーや今までの経歴よりも、如何に人生を楽しもうとしているか、また、想い持って突き進めるか、これが大事なのではないかなと感じましたね。あと、人の育成においても良いプログラムだと思いますね。々の業務では味わえないスピード感で、プログラムに沿って限られた期間の中で経営層にプレゼンして、曖昧なモノを形にしていく作業は、社会人としての成を促し、実績になれば自信にも繋がります。そういった意味でも良いプログラムでした。

細川:新規事業の成功予測は難しいですが、間違いなく人は育ちます。よくある人事の研修プログラムとは比較にならないくらい良いんじゃないかと思いしたね。新規事業には熱意や想いが必要で、既存の業務とは違う仕事になり、会社員としてどうかではなく個人としてのスタンス、心構えが如実表れ、それが結果に繋がります。ちゃんとやりきれるかどうか、形にできるかどうか、という自ら仕事を作る人になれる、そういう人を発掘できるプログラムでもあるのではないかと感じました。

 

■ 「ミライブック」キャンペーン概要
募集期間 2018 年7 月13 日(金)~2018 年8 月31 日(金)
対象者:日本に居住している方なら、どなたでも応募いただけます。
※三井住友カードをお持ちでない方も応募対象となります。
応募方法 Twitter、InstagramにてAND STORYの公式アカウント(Instagram:@andstory.co 、 Twitter:@_and_story_)をフォローし、ハッシュタグ (#ミライブック)とともにあなたが叶えたい「ミライ」を投稿

専用サイト:https://miraibook.andstory.co/
※本サイトはキャンペーン開始日、7 月13 日(金)にオープン

 

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「大手銀行 × スタートアップ × 伝統産業」。コラボレーションの先に見えた新たな“Crewwの役目”とは?【後編】

りそな銀行 地域オフィサー 奥田浩之氏

スタートアップと大企業、さらにローカルが交わる「オープンイノベーション」領域を開拓してきたCreww。同社は2017年1月より、「イノベーションのエコシステムを備えた街」神戸市と共同で「神戸オープンアクセラレータープログラム」を運営してきた。エントリー起業とスタートアップをキュレーションし、神戸市内で新規事業を創出させるプログラムだ。プログラム開始から1年、晴れて1つの新規事業が誕生した。りそな銀行と株式会社ギフティ、株式会社BUZZPORTによるデジタル地域通貨プロジェクト「旅するフクブクロ」だ。「旅するフクブクロ」は“デジタル化された商品券”。専用の電子ウォレットのページに保存された通貨から手続きを済ませることで、スマホ1台で決済が可能となっている。可愛いスタンプで決済が完了する可愛らしい仕様が特徴だ。
前編ではプロジェクトの概要、実証実験の様子をお送りした。後編となる今回は、プロジェクトに参画したりそな銀行の地域オフィサー・奥田浩之氏のインタビューをお届けする。

りそな銀行・ギフティ・BUZZPORTの3社合同で行われたプロジェクト「旅するフクブクロ」。日本有数の酒処「灘五郷」で、キャッシュレス化した新たな地域通貨を提供した。今回のプロジェクトは「大手銀行」「スタートアップ」「伝統産業」の3つの異なる産業が連携してのプロジェクトとなった。

今回は、プロジェクトを主導したりそな銀行の地域オフィサー・奥田浩之氏のインタビューをお届けする。奥田氏は、今回の事例を端に発し、承継者不在の“レガシーセクター”と若い世代が中心の“スタートアップ”がシナジー効果を発揮する事例が増えていくのではないかと指摘する。

銀行が旅行をパッケージング?購買行動を軸にした「ファンコミュニティ」の創出で、地方にお金を還流させる

―― 今回、Crewwの「神戸オープンアクセラレータープログラム」で株式会社ギフティ・株式会社BUZZPORTとの連携が決まりました。実際にエントリーされてみてどんな感触を得ましたか?
Crewwは圧倒的に登録されているスタートアップの数が多く、連携した2社以外にも可能性を感じる企業さんとたくさん話をさせていただきました。自力でウェブ検索で探すとなると非常に労力がかかるので、Crewwを介して様々な経営者とお話できたことはありがたかったですね。

―― 多くのスタートアップとお話を重ねた中で、今回はギフティ、BUZZPORTとの連携を決めました。決め手はなんだったのでしょうか。

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りそな銀行地域オフィサー 奥田浩之氏

銀行の3大機能は「決済、融資、預金」です。しかし、これから銀行が生き残っていくには、機能を高めるだけでは。お客さまに満足して頂くことが出来ません。顧客の記憶に残る質の高いUXを提供する必要があります。今回は質が高く、ユニークなUXを顧客にご提供出来る可能性を感じた2社と連携させていただくことを決めました。

―― 「大手銀行 × スタートアップ」は珍しい協業スタイルだと思いました。プロジェクトを進める中で、難しかったことはありましたでしょうか。
スタートアップと大手銀行で一番異なるのは文化です。銀行の人間とスタートアップの人間では使う言語が異なるので、コミュニケーションに少し難しさがありました。また、スタートアップは非常に動きが早く、逆に銀行側がスピードについていくのに苦労しましたね。スタートアップと関わる中で、逆に私たちの課題を認識できました。

―― 今回の「旅するフクブクロ」、最終的に目指すところとは?
私たちは今回のデジタル通貨を日常のあらゆるものに適用しようとは思っていません。目指すのは「ファンコミュニティのパッケージ化」です。

例えば旅行会社と組み、灘五郷へ行くプランを作るときに「電車や買い物、ホテルもすべてスタンプで決済が可能」というパッケージングです。キャッシュレスで電子スタンプを集めながら旅行する、新しい余暇の楽しみ方を提案することも目指す形の1つだと思っています。

―― 次のフェーズとして、どんなことを想定していますか?
デジタル通貨を広めるために、加盟店を増やすことが先決です。なるべく低い手数料で、加盟店が増えるような収益構造を考えていく必要があると思っています。

Crewwの新たな可能性“レガシーセクター×スタートアップ”で、良質な伝統事業を盛り上げる

―― 今回、地方の伝統産業と関わる中で、業界のさまざまな側面が見えたのではないでしょうか。
地方の産業の多くは経営に問題はありませんが、「次の事業」になかなか踏み出せないことが大きな課題の1つとしてあります。後継者問題も深刻です。今後、Crewwのスタートアップコミュニティ等と更なる連携を目指し、今回の試みに留まらず“レガシーセクター”の課題をスタートアップとコラボレーションすることで解決することができるのではないかと思いました。

―― スタートアップの若々しさを取り入れていくということですね。
地方では行政機関でもアントレプレナーを養成されたり、事業承継に取り組んでおられますが、まだまだ確度は高くありません。レガシーセクターの課題をスタートアップが解決するだけでなく、廃業してしまいそうな事業の「箱」を引き継ぐような動きができれば、面白いことができるのではないでしょうか。

―― なるほど。それは面白そうです。
「伝統産業」などを中心に、スタートアップが入ろうとしても入れない、参入のきっかけにが乏しい業界はたくさんあります。そういった業界にもスタートアップが入っていければ、面白い動きが生まれそうですね。

また、「もったいないなぁ」と思う地方の動きの1つに、良質な事業が廃業に追い込まれたり、ときには非常に安い値段で売買されているといったことがあります。Crewwの提供するプログラムが地方に広がれば、そういった問題も解決できる可能性があるのではないでしょうか。
 
ライター:半蔵門太郎
 
(了)
 
前編はこちら
 
りそな銀行:http://www.resonabank.co.jp/
株式会社ギフティ:https://giftee.co/
株式会社BUZZPORT:https://www.buzzport.tours/

 
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スタンプをポンッ!で決済完了。神戸・灘五郷で行われた、りそな銀行×ギフティ×BUZZPORTによる「デジタル通貨」実証実験に迫る【前編】

りそな銀行 地域オフィサー 奥田浩之氏

スタートアップと大企業、さらにローカルが交わる「オープンイノベーション」領域を開拓してきたCreww。同社は2017年1月より、「イノベーションのエコシステムを備えた街」神戸市と共同で「神戸オープンアクセラレータープログラム」を運営してきた。エントリー企業とスタートアップをキュレーションし、神戸市内で新規事業を創出させるプログラムだ。プログラム開始から1年、晴れて1つの新たな事業モデルが誕生した。りそな銀行と株式会社ギフティ、株式会社BUZZPORTによるデジタル地域通貨プロジェクト「旅するフクブクロ」だ。「旅するフクブクロ」は“デジタル化された商品券”。専用の電子ウォレットのページに保存された通貨から手続きを済ませることで、スマホ1台で決済が可能となっている。可愛いスタンプで決済が完了する可愛らしい仕様が特徴だ。まだ実証実験の段階ではあるが、可愛いらしいテイストで簡便化されたUIは、広く受け入れられていく可能性をみせる。今回は日本を代表する酒どころの1つ「灘五郷」で行われた実証実験の様子をお届けする。

ローカル特有の文化としてたびたび紹介される「地域通貨」。しかし、その成功事例はまだ少ない。その理由は、法定通貨と兌換できないことによる流通性の低さ、「わざわざ使うまでもない」と思わせてしまうユーザー体験の満足度の低さにあった。

りそな銀行・ギフティ・BUZZPORTの3社で行われた本プロジェクトは、そんな地域通貨に新しい風を呼び込む。「旅するフクブクロ」は、「福袋」と「スタンプ」の組み合わせによる楽しいUXを提供。「地域通貨」を使う理由となりうる「付加価値」をつけたサービスとなっている。

スタートアップと大手銀行。この異色のマッチングはCrewwが主催する「神戸スタートアップアクセラレーター」により実現した。今回は神戸の酒心館・菊正宗酒造で行われた「デジタル通貨」の実証実験の様子をお届けする。

スタンプポンッ!で決済完了。思わず買ってみたくなるUXとは?

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「旅するフクブクロ」の使用画面のサンプル

今回の実証実験に参加した100組200名には2万円分のデジタル通貨が支給されている。専用の電子ウォレットのページに保存されたこの通貨を使い、灘五郷の10か店をめぐり様々な福袋を購入することができる。

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ユーザーは使用する金額を記入し、購入するフクブクロを選択できる。酒心館では「2000円」「3000円」と2種類の福袋が用意されており、好きな福袋を選択できる。

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福袋の金額を選ぶとスタンプを押印する画面が表示される。

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店員がスタンプを押すと…

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恵比寿様を模したキャラクターが表示され、「決済完了」となる。

楽しく、思い出に残るUXが「旅するフクブクロ」の特徴だ。スタンプ技術は協業した株式会社ギフティの「Welcome!STAMP」の技術が応用されている。同社はIT技術を用いたギフトサービスが強みのベンチャー企業。先の「Welcome!STAMP」の導入事例には、長崎の五島列島で使えるデジタル商品券「しまとく通貨」がある。

このサービスは「日本酒」のようなコアなファンがいるコミュニティの熱量を上げることを期待されており、プロジェクトに参画したりそな銀行の地域オフィサー・奥田浩之氏はこう語る。

「デジタル通貨によるキャッシュレス化によりファンコミュニティの購買行動がより便利に楽しくなることで、オフライン体験の幅が広がり、ファンが増える契機になれば良いと思う」。

ITに不慣れな層でも安心して使えるUX。単なる「購買行動」が思い出に

今回の実証実験は、日本有数の酒どころとして知られる「灘五郷」の一角を担う「神戸酒心館」で行われた。神戸酒心館の醸造する純米吟醸「福寿」は、山中伸弥教授がノーベル賞を受賞した折、受賞パーティでも振舞われたことで話題になった

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当日、天気はあいにくの雨だったが、店内は多くの人で賑わっており、日本酒の「コア」なファン層の存在を感じた。写真は大阪から足を運んできた女性。友達に勧められ、実証実験への参加を決めたという。実際に使ってみた感想を聞いた。

―― 実際に「旅するフクブクロ」を使ってみていかがでしたか?
スタンプの仕組みがおもしろかったです。財布やポイントカードを出す手間が省け、会計がすぐに終わるのですごく便利でした。友達から誘われて参加しましたが、友達とも盛り上がり、とても楽しい体験になりました。

―― 電子マネーは普段からよく使われますか?
電車のICカード乗車券以外はあまり使いません。

―― 今回「地域通貨」としての電子マネーを使ってみていかがでしたか?
クレジットカードで商品が購入できる形式だと、なんでも買ってしまい、制御がきかなくなってしまう怖さがありました。今回の「旅するフクブクロ」は商品券のように金額が設定されており、無限に使う恐れがありません。使いすぎる心配がなく、安心して買い物ができました。

つづく後編では今回のプロジェクトに参画した、りそな銀行の地域オフィサー・奥田浩之氏のインタビューをお届けする。「キャッシュレス化」が進む潮流の中で、このプロジェクトを実行することの意味は何か。どんな未来を実現したいのか、今後の展望について迫った。
 
ライター:半蔵門太郎
 
(了)
 
後編はこちら
 
りそな銀行:http://www.resonabank.co.jp/
株式会社ギフティ:https://giftee.co/
株式会社BUZZPORT:https://www.buzzport.tours/

 
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「ビックカメラ×ヒナタデザイン」がARで創造する新たな“お買い物体験”とは?【後編】

ヒナタデザイン 代表取締役 大谷佳弘氏
ビックカメラ 吉沼由紀夫氏
ビックカメラ 王睿氏

物流と消費者活動が変化していくなか、小売業態はオムニチャネル化していかなければ生き残りが難しくなる。今回取り上げるのは、ECサイト上で閲覧した商品を、ARを用いて実物大でチェックできるサービス「scale post viewer AR」。同サービスを手がけるヒナタデザインは、家電小売大手のビックカメラと協業。自宅で商品イメージを確認できることで、消費者に新たなお買い物体験を実現しようと奮闘中だ。「crewwコラボ」を通じて協業が決定した、両社の取り組む“EC革命”について話を伺った。

技術への理解が成功の鍵。協業を実現した“ブラッシュアップ期間”

―― 提案とアウトプットに変化があるとお伺いしまいしたが、ブラッシュアップ期間中に苦労された点はありますか?

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ヒナタデザイン 代表取締役 大谷佳弘氏

大谷佳弘(以下、大谷):当初の提案では、お部屋の画像データをお客様にも登録していただき、そこに商品画像データを配置するアプリでした。一方で、当時開発を進めていたARでの画像表示の提案に切り替えましたが、やはり新しい技術を取り入れるのは不安やリスクを伴います。そこを勇気を持って導入を決断していただけたことが、協業のポイントになっているのではないでしょうか。

吉沼由紀夫(以下、吉沼):ヒナタデザイン様のご提案は、我々が持つ課題を解決する上で相性がとにかく良かったのです。実物の確認ができないネットショッピングはもちろん、店舗で購入した場合でも、「自宅に運んでみたら入らなかった」というケースが一定数あります。それではお客様にご迷惑をかけてしまいますし、小売店としてはコスト負担が大きくなってしまいます。

AR技術について詳細は知っておりませんでしたが、ブラッシュアップ期間を通じて理解を深め、確実にニーズのあるサービスだと確信したことが大きかったです。

王睿(以下、王):実際に導入してみて、紹介ページを観てくださるお客様が一定数いらっしゃることを確認できました。まだ導入して間もないですが、ニーズを把握できたことは今後につながってくると思います。

住宅展示場に派生する新たなチャネル。ARで実現する小売販売の未来

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ビックカメラ 王睿氏

―― 今後、今回の協業から新たな取り組みに派生していく可能性はありますか?
王:主に当社のインターネット通販サイトで展開している現在の取り組みを、店舗にも拡げていきたいと考えています。将来的に、たとえば店舗で電子レンジなどを購入する際、自宅のラックに設置できるかどうかを店舗にいながら確認できるようになれば、非常に有意義です。

さらにその先には、自宅のリフォームをご検討中のお客様に対して、リフォーム後の部屋のイメージをシミュレートできるサービスも展開できれば良いですよね。実は、ビックカメラでもリフォームの提案を行なっております。

大谷:他社様との取り組みで、すでに住宅販売サービスと「scale post viewer AR」を掛け合わせた取り組みを実施しています。住宅展示場でビックカメラ様の商品をAR表示すれば、その場で購入される方もいるのではないかと考えています。小売販売の新たな形を提案できれば嬉しいです。

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ビックカメラ 吉沼由紀夫氏

吉沼:「これを買おう」と決めて店舗に足を運んでくださるお客様ではなくとも、たまたま店舗に足を運び、商品に興味を持ってくださった方に強くアプローチができるのではないでしょうか。

アプリをダウンロードしてくださった場合、自宅で再度商品をチェックすることも可能です。紙のカタログにQRコードを付与すれば、捨てられずにずっと持っていてもらえるかもしれません。今回の協業を皮切りに、ますますお買い物体験を向上させていければと思っています。

前編はこちら

 
ヒナタデザイン:http://www.hinatadesigns.jp/
ビックカメラ:http://www.biccamera.co.jp/bicgroup/index.html
ライター:オバラミツフミ
(了)
 
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「ビックカメラ×ヒナタデザイン」がARで創造する新たな“お買い物体験”とは?【前編】

ヒナタデザイン 代表取締役 大谷佳弘氏
ビックカメラ 吉沼由紀夫氏
ビックカメラ 王睿氏

物流と消費者活動が変化していくなか、小売業態はオムニチャネル化していかなければ生き残りが難しくなる。今回取り上げるのは、ECサイト上で閲覧した商品を、ARを用いて実物大でチェックできるサービス「scale post viewer AR」。同サービスを手がけるヒナタデザインは、家電小売大手のビックカメラと協業。自宅で商品イメージを確認できることで、消費者に新たなお買い物体験を実現しようと奮闘中だ。「crewwコラボ」を通じて協業が決定した、両社の取り組む“EC革命”について話を伺った。

高額な家電販売に、ARというソリューション。
“家電のO2O”を実現する、「scale post viewer AR」

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ヒナタデザイン 代表取締役 大谷佳弘氏

―― まずは、ヒナタデザインの事業内容について教えていただけますでしょうか
大谷佳弘(以下、大谷):スマートフォンで簡単に商品の実物大の大きさや色を確認できるアプリ「scale post viewer AR」を展開しています。もともとプロダクトデザインがしたくて会社を立ち上げたのですが、ウェブやUI設計/デザインも行う中で、諸々の試行錯誤を経て現在の事業へとたどり着きました。

―― 開発の経緯を教えていただけますか?
大谷:僕が役員もしているアーキノートという会社で、建築士のためのアプリを開発していたことがきっかけです。建築士の方たちはアイデアを模索する際に、何度かコピー機を使って図面を同じ縮尺に合わせています。それではとても面倒だろうと思い、スマホで写真を撮影し、デジタル画像で縮尺を合わせられるアプリをリリースしました。

すると弊社のクリエイティブアドバイザーをしている建築士が、「実物大でも衣装デザインを見たい」と言うんです。これまでにない発想だっただけに、とても面白いと感じました。実物大で画像を表示するサービスが世界中でなさそうだったので、そこから「scale post viewer AR」が誕生したのです。

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AR表示させたい商品のQRコードをアプリで読み取ると、カメラ越しの画面に実寸大で表示が可能になる。(詳細な使用方法はこちら)

大谷:「scale post viewer AR」は、スマホのカメラで映し出した光景に、特定の画像を実物大の大きさで表示することができます。たとえば冷蔵庫を部屋の中に置きたいと考えたときに、実際のレイアウトを購入前にARで確認できるんです。

今回crewwコラボを通じて協業させていただいたビックカメラ様とは、ECサイトで販売されている商品のうち、48のアイテムをAR表示できるようになっています。高額な商品でも、自宅で購入の意思決定ができるようになるのではないかと考えました。

小売大手が挑む“イノベーションのジレンマ”の打破。
ウェブから仮想空間へとつながる“新たなお買い物体”とは?

―― 小売店との相性が良さそうですね。ところで、ビックカメラ様が「crewwコラボ」に応募された理由を教えていただけますか?

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ビックカメラ 吉沼由紀夫氏

吉沼由紀夫(以下、吉沼):当社は、「より豊かな生活を提案する、進化し続けるこだわりの専門店の集合体」を目指して、事業の拡大を進めてきました。時代とともに変化するお客様のニーズに常にお応えしていくために、取扱い商品の拡大や接客・サービスの充実に努めることはもちろん、当社の店舗が“最新情報の発信基地”となり、新しい買い物のカタチを提案し続けることが重要であると考えています。
現在、当社は実店舗とインターネット通販サイトとを連携させ、今まで以上にシームレスで便利なショッピングの場をご提供できるよう、オムニチャネルの強化に取り組んでおります。そのスピードを加速させるためにも、他社様との協業や、スタートアップのノウハウを取り入れることに、大きな魅力を感じていました。

―― ECサイトを通じた、新たな買い物体験を生み出そうと考えたのですね。
吉沼:そうです。ただ、我々も初めての取り組みでしたので、小売りにとらわれずさまざまなご提案を受け入れようと考えていました。数十社からご応募をいただいた中で、ヒナタデザイン様はとても相性が良かったのです。

―― 実際にコラボをしてみて、社内の雰囲気に変化はありましたか?
吉沼:これまでの商談といえば、弊社に取引先の方が足を運んでくださるケースがほとんどでした。しかし今回のコラボでは、私たちがスタートアップのオフィスにお伺いし、非常にフラットな立場でアイディアを議論することができました。

今までは商品を取引するか、しないかを「判断する」ことが主なやりとりです。今回のようにアイディアをブラッシュアップしていく経験は少なかったので、非常に有意義だったと感じています。

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ビックカメラ 王睿氏

王睿(以下、王):「crewwコラボ」の中でもっとも有意義なのは、提案を受けてから社内プレゼンに至るまでのブラッシュアップ期間にあると思っています。ヒナタデザイン様とのコラボも、最初のアイディアと最終アウトプットは多少変化がありました。お互いのニーズをすり合わせし、また社内のリソースをどう活用するか話し合うことで、これまでにない取り組みができました。

特に今回は、現場でお客様の生の声を聞いている販売スタッフの意見を取り入れながらアイディアをブラッシュアップしていきました。役員が集まる社内プレゼンを、現場のスタッフが担当したケースもあります。「普段では経験できなかったものを得られた」という声が多数あり、素晴らしい知見が得られたと思っています。

後編は2月26日公開の予定です。

 
ヒナタデザイン:http://www.hinatadesigns.jp/
ビックカメラ:http://www.biccamera.co.jp/bicgroup/index.html
ライター:オバラミツフミ
(了)
 
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—「ブライダル×映画」異業種を結びつけた、共通のビジョン— “感動を届ける”新規事業「T&G Films」【後編】

パシフィックボイス ビジネスプランニングマネージャー 大橋哲也
テイクアンドギヴ・ニーズ 新規事業開発部長 岩田能

—現場と本部が満場一致で可決。
“感動を届ける”新規事業、始動—“感動を届ける”新規事業「T&G Films」【後編】

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大橋哲也氏

―― 企画をブラッシュアップする段階で、苦労した点はありますか?
大橋:企画を通す段階では、あまり苦労がありませんでした。というのも、弊社が一方的に企画を売り込む形ではなく、テイクアンドギヴ・ニーズさんと一緒にビジネスプランを作ることができたからです。

小さな企業が大きな企業とコラボレーションするのは簡単なことではありません。大企業同士の場合は経営陣の合意でビジネスが始まることも少なくないと聞きますが、規模の小さな会社はお問い合わせフォームからアプローチをすることもあります。その場合、企画部署にプランが届く前に頓挫してしまうことも少なくないのです。

しかし、今回のコラボレーションでは事業開発を手がける部署とピンポイントでつながれた上に、経営指標を一から一緒に作っていただきました。最初から全国展開を行うなど、大変スムーズな取引だったと思います。

―― もともと全国展開する予定で協業を決めたのでしょうか?
岩田:少なくともゴールは遠くに置かなければ、両者共に関わるスタッフが白熱しないだろうとは思っていました。しかし、最初は勿論実験的にスタートして徐々に展開していく予定でした。

ただ、全国の店舗にニーズのヒアリングを行ったところ、「チャレンジしたい」という声が多く聞かれました。一般的に本部の意向で新規事業が始まると、現場のスタッフ達が不満を抱くケースも少なくありません。ただ、今回のケースはCrewwコラボの最初から、過程を社内にオープンにしていたので徐々に興味が集まり巻き込みが機能したのだと思います。

―― 現場の評判も良かったんですね。お客様の反応はいかかでしょうか?
岩田:ランダムでアンケート調査を行っていますが、9割以上のお客様から高評価をいただいています。「映画を観ることに特化した設備を持つ映画館での鑑賞と比較してどうか」という敢えてネガティブな問いに対しても圧倒的にポジティブな回答をいただけており、リピーターも徐々に増えてきています。まだまだ小さい市場ですが、このコラボレーションが持つポテンシャルの高さを感じています。

—忙しい毎日に、映画を通じて“非日常体験”を届けたい

―― お客様の多くは、もともと短編映画が好きな方でしょうか?
大橋:事業を立ち上げた当初はそうでしたが、現在は短編映画のファンか否かを問わず、多様な年代の方にお越しいただいているようです。

岩田:全国なので地域によって驚くほど刺さるポイントの違いが見えてきていますが、足を運んでくださるお客様は、共通して“非日常体験”を求めています。平日仕事が終わった後に、チャペルでシャンパンを飲みながら映画を観る。これって、ちょっとした贅沢であり、忙しい毎日から少しだけ解放される時間です。

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―― まだまだ未開拓の市場なので、これからの展開が楽しみです。最後に、今後の展望を教えていただけますか?
大橋:様々なジャンルの短編映画を、より多くの世代に届けていきたいです。短編映画は種類が豊富なので、ロマンス作品を恋人とチャペルで観たり、アニメーション作品を家族とバンケットで楽しむなど、作品と観る場所の組み合わせによって楽しみ方が変わります。ただ映画館で観るよりも、結婚式場で観るからこそ非日常の思い出深い体験になることもあるでしょう。

岩田:短編映画は徐々にお客様の心をつかみ始めています。さらにそれを映画館以外の場所で楽しめるとなれば、映画体験そのものが変わってくる。課題は多いですが、これから長く愛され続ける文化を一緒につくっていければと思います。

 
T&G Films:https://www.tgn.co.jp/tandgfilms/
パシフィックボイス: http://shortshorts.org/ 
テイクアンドギヴ・ニーズ:http://www.tgn.co.jp/
 
ライター:オバラミツフミ
 
前編はコチラ
 
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—「ブライダル×映画」異業種を結びつけた、共通のビジョン— “感動を届ける”新規事業「T&G Films」【前編】

パシフィックボイスビジネス プランニングマネージャー 大橋哲也
テイクアンドギヴ・ニーズ 新規事業開発部長 岩田能

俳優の別所哲也が代表を務める「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」を運営する株式会社パシフィックボイス。日本ではまだマイナーな短編映画を普及させるパイオニアとして注目を集めている。

そんな同社が“未体験の映画体験”をつくるパートナーとして選んだのが、結婚式をトータルプロデュースする株式会社テイクアンドギヴ・ニーズだ。両社は、格式高い迎賓館で上質な短編映画を楽しむ“非日常体験”をプロデュースし、映画史に新たな文化を醸成しようと奮闘している。「異業種のコラボが実現した理由は共通のビジョンがあったからです」と語るパシフィックボイスビジネスプランニングマネージャー・大橋哲也氏、テイクアンドギヴ・ニーズ新規事業開発部長・岩田能氏に協業に至るまでの道のりと今後の展望を伺った。

協業はリソースの補完に終わらない。共通のビジョンがあるからこそ実現する

―― まずは、パシフィックボイスの事業内容について教えていただけますでしょうか。
大橋哲也(以下、大橋):「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」の企画運営を始め、ショートフィルム(短編映画)を切り口にしたビジネス全般を展開しています。ショートショート フィルムフェスティバル & アジアとは、米国俳優協会(SAG)の会員でもある俳優の別所哲也が立ち上げた国際短編映画祭です。毎年9,000本ほどの短編映画がエントリーするアジア最大級の短編映画祭になっています。また、米国アカデミー賞公認映画祭として認定されており、グランプリを獲得すると翌年のアカデミー賞のノミネート作品の候補になります。

映画祭は文化事業なので、映画祭自体で収益をあげることを目的に開催しているわけではありません。映画祭に応募してくださった映画監督とのつながりを活かし、企業のブランドムービーや地方自治体のプロモーションムービーを制作しています。また世界各国の映画監督からショートフィルムのライセンスを調達し、ビデオオンデマンドサービス・企業のオウンドメディア・催事イベント等にショートフィルムの配給を行っています。こちらが、主な収益事業です。

―― 競合他社と比較し、パシフィックボイスが持つ強みを教えてください。
大橋:映像制作上の強みは、ストーリーを表現することに長けていることでしょうか。近年、広告代理店がブランドムービーをつくる事例が増えています。非常にクオリティが高い作品が多くありますが、広告代理店さんの作品は「機能を訴求すること」に長けているのが特徴です。一方、私たちは映画監督をアサインするため、より映画に近い形で、ブランドメッセージを伝えつつもエンターテイメントとして楽しめる作品をアウトプットすることができます。制作したブランドムービーを映画祭で上映するなど、動画広告として運用するだけではなく、コンテンツとして配信できるのも競合他社との違いです。

―― 今回、「crewwコラボ」に応募していただいた背景を教えていただけますか?
大橋:オンライン上で短編映画を配信する機会は多いのですが、オフラインで短編映画を観てもらえる場所が非常に少ないことが弊社の課題でした。自社で短編映画専門の映画館「ブリリア ショートショート シアター」を運営しているのですが、いつでもショートフィルムを観られるリアルな場所が、日本にはほとんどないのです。
配給先を探していたところ、crewwコラボにてテイクアンドギヴ・ニーズさんと出会いました。結婚式場には高精細なプロジェクターとスクリーンが既にあり、なおかつスタッフの皆様はホスピタリティに溢れています。結婚式場の課題は、結婚式があまり行われない平日の非稼動時間の活用だとお伺いし、まさにぴったりの組み合わせだと感じました

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岩田能氏

岩田能(以下、岩田):お互いに持っていないリソースを補完しあえる関係だったので、理屈上はタッグを組まない理由は見当たりませんでした。しかし、補完した先の化学反応が見えないと、ただのつまらない足し算になってしまい仕事が面白くありません。お互いに「本当は何がしたかったんだっけ」に何度も戻ることで「感動を生めるか」を課題にセットすることが出来、温度をズラさずにスムーズに協業を進めることが出来たと思っています。私たちの事業は、感動をプロデュースすること。結婚式場を提供するのは、あくまで手段にすぎません。

パシフィックボイスさんは、映画を通じて人の「ココロを動かす」ことをビジョンに掲げています。お互いの世界観を崩さずにビジネスができること。それは財務諸表には表れない、割と重要な要素だと思います。

また、今回のコラボレーションにあたり作品を幾つか拝見しましたが、間違いなく結婚式場にフィットすると確信しました。この直感したフィット感は、社内調整、またその後のマーケティングにもいろんな形でじわじわと効いてきます。短編映画の多くは、大衆向けに作られたものではありません。監督が作りたい世界観を形にしているので、芸術的でとても上品です。上質な作品を上質な空間で楽しむ時間は、きっと感動を生むだろうと。
 

T&G Films:https://www.tgn.co.jp/tandgfilms/
パシフィックボイス: http://shortshorts.org/ 
テイクアンドギヴ・ニーズ:http://www.tgn.co.jp/
 
ライター:オバラミツフミ
 
後編はコチラ
 
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セブン銀行はどのようにオープンイノベーションへの第一歩を踏み出したのか?

セブン銀行 企画部 小笠原真吾

2016年2月8日にスタートアップからの応募受付を開始し、3月25日、26日両日にプレゼンテーションを開催したセブン銀行。セブン銀行におけるcrewwコラボは、かつてない成功事例として、既にレポート(https://feature.creww.me/report/sevenbank-01/)や報告会が行われているが、改めて、crewwコラボ担当者の企画部、小笠原真吾氏に聞いた。

トントン拍子に決まったCreww株式会社との契約

―― セブン銀行がcrewwコラボを実施するに至るまでの経緯を教えて下さい。

当社は、2014年度を「新しい成長ステージへの転換点の年」と位置付け、新たな成長機会を追求する取組みを開始し、経営から「第二の創業」というメッセージも発せられました。ちょうどそのタイミングで、私は企画部に異動しました。「企画部として何をするべきか?」と考えた時、頭に浮かんだのが「オープンイノベーション」というキーワードです。

そこで、2014年は国内のセミナーやカンファレンスへの参加、欧州や米国視察などで「オープンイノベーションとは何か」を勉強しました。その翌年の2015年は、それまでに勉強したことを社内に還元すべく、ベンチャーファンドの社長や大学の先生を招いた社内勉強会を実施したり、実際に役員クラスをシリコンバレーに派遣したりすることで社内を耕すことに注力しました。ちょうど、社内の雰囲気が醸成できてきたところで、 Creww株式会社と出会い、コラボを実施することになったのです。

4月には、その経験を踏まえて、さらにオープンイノベーションに力を入れるべく、セブン・ラボという新規事業を担う組織が設置されました。出来過ぎた話のようですが、すべて当初想定した流れではなく、結果としてこうなりました。「振り返ってみると、すべては線でつながっていた。」というのが私自身の印象です。

驚異の出席率。社内の3分の1が自発的に勉強会に参加

―― 流れるような時系列が整った話ですね。もう少し詳しくお話を伺っていきたいのですが、社内勉強会はどんなものだったのですか?

この本社ビルには300人程の社員が在籍しているのですが、100人程の社員が参加しました。それだけ社外で起こっていることに対して、みんなの好奇心が高まっていたのではないかと思います。各部署の管理職の中には、「そんな勉強会を業務時間内に実施するのか」という者もいました。

ただ、新規事業を創っていこうとするメンバーの中には「その意識すら変えていかないといけない」という強い思いがありました。現状に危機感を持つことや、社外のことに興味を持つこと、新しいことに挑戦しよう、と社内を耕していくことは大切な仕事でもあります。

―― 若い現場の方が、イノベーションの持つダイナミックな空気に魅了されるのは判ります。日々の業務では得られない気づきや発想を得て、新たな挑戦をすることは多分に刺激があることだと思います。イノベーションに興味を持つ現場に対して、役員の方々の反応はどのようなものでしたか? 2015年のシリコンバレーに役員を派遣、というのが少し珍しいような気がします。

「第二の創業」というメッセージから、新しいことをしていかなければ、と頭ではわかっていても、いざ動くとなると話は変わってきます。現場の意識が変わっても、決裁権を持っている人が、「オープンイノベーションって言われてもよくわからない」「すぐに利益に結びつかないものは後回しにしよう」となったら元も子も無くなります。それを予め防ぐために、最もイノベーティブな企業が集まるシリコンバレーで、オープンイノベーションが起こっている現場を体感してきてもらいました。

翌期に活かせるタイミングも考慮して決めたcrewwコラボの実施

―― 確かにcrewwコラボの本社プレゼンテーションにおいても、役員の方から否定的な意見は出ませんでしたね。Creww株式会社と出会って、一緒にコラボをやろう、というのはいつ頃の話ですか?

2015年の秋です。部署の人間が、それぞれ、全然違う場所で御社の社員の方にお会いしていて、私が御社に最初にお伺いしたのが11月16日。その後いくつかのやり取りを経て、「これこそが今探していたものだ。Crewwの社員の方に会ってもらえば、分かってもらえるに違いない。」と思い、12月7日に今度は上司を連れて御社を訪問しました。行きの車の中でcrewwコラボの概要を説明し、帰りの車で「OKですよね?」と口頭で確認を取るというスピード感でした。

これだけ急いだのは理由があって、今期中にコラボの実施を完了していれば、その経験を基に翌期に体制なり何なりを整えて活かしていけるだろうと、なんとか3月末までに、コラボのプログラムの完了までもって行きたかったのです。

―― 社内が耕せていたからこその、11月creww初訪問、12月プログラムスタートと、スムーズに進行することができたようです。事務局の団結力の高さもすごかったと感じておりましたがその辺りはいかがだったでしょうか。

事務局メンバーは、各自が通常の業務も抱えていたので、始業前に集まって、毎朝ミーティングをしていました。メンバーが3つの部署に分かれていたので、ブラッシュアップの進捗や、本社プレゼンの準備に関して、しっかりとコミュニケーションをとることが大切だと考えたのです。日増しに団結力が高まり、本社プレゼンは良い雰囲気で開催することができました。

crewwコラボが背中を押した「セブン・ラボ」の誕生

―― 当日の様子は、レポートに詳しく書いてありますが、今、採択まで終えて、crewwコラボに対してはどのような評価をされていますか?

大成功です。自分たちでは思いもよらなかった業種のスタートアップからも応募があり、収穫がありました。先ほどお話した、1年の勉強期間で学んだことに、「イノベーションを起こすには『知の探索』が必要だ。」というのがあるのですが、自分たちだけではなく、スタートアップのネットワークを既に持っている御社と組んだことで、より広い「知の探索」が出来たと思います。

タイムスケジュールを切ってもらって、役員同席のプレゼンテーションの場を要求してもらったのも良かったです。実は、新規事業に関する外部のプレゼンテーションを役員が揃って聞くというのは、初めてのことでした。しかし、同じ場で一緒に聞くことには大きな意味があることを新たに発見しました。また自然に共通言語が生まれるのも目の当たりにしました。

新規事業に積極的に取り組んでいく部署をつくろうという話は以前からあったのですが、crewwコラボで強く背中を押され、実現に至ったと思います。

―― いいことばかり挙げて下さっていますが、改善点も教えて下さい。

強いて言えば、応募画面をつくる時に、セブン銀行のリソースの洗い出しという作業があるのですが、そこにもう少し時間をかけたかったです。当社がリソースだと思っていないようなものでも、御社と話し合う中で、新しい発見がありましたし、もっとたくさんのネタ出しが出来たら良かったなとは思っています。

というのも、オープンイノベーションのノウハウを知って、新規事業を生み出すのが目的ではありますが、セブン銀行が外からどういう評価をされているか知りたいというのも大きかったからです。

―― 今年の4月にできたラボは、どんなメンバーで、どんな活動をしていますか?

crewwコラボ事務局の7人のうち4人と、昨年シリコンバレーでオープンイノベーションについて学んできたメンバー1人を加えた5人です。これまで当社で検討してきたプラン、crewwコラボで採択したプラン、そして全く新しいプランと、新規事業の創造に向けて日々活動しています。私自身は、そのメンバーに入っていませんが、引き続き企画部として、ラボの活動をしっかりとサポートしていきます。

大成功をおさめたセブン銀行crewwコラボ

 
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スタートアップとのコラボは 人と人のつながりから始まる

株式会社スポーツニッポン新聞社
新規営業開発室 内匠俊頌さん

日本を代表するスポーツ新聞の1つとして知られる「スポニチ」を発行する株式会社スポーツニッポン新聞社は、500万読者を抱える知名度の高さと、66年間のスポーツ・芸能報道で培われたプロモーション力を生かした新たな展開を見据え、積極的にスタートアップとのコラボレーションに取り組んでいる。同社新規営業開発室の内匠俊頌(たくみとしのぶ)さんに老舗スポーツ新聞社が考えるコラボのあり方を聞いた。

“紙”の先にある斬新なビジネスを求めて

―― 野球やサッカーなど、スポーツ好きの人々には「スポニチ」を知らない人はおそらくいないと思われるほどの著名なスポーツ新聞社ですが、スタートアップとのコラボレーションに取り組み始めた背景を教えてください

現在、スポーツニッポンでは「スポニチ」紙を172万部発行するだけでなく、月間1.7億ページビューのWebサイト「Sponichi Annex(スポニチアネックス)」の運営も行っています。このほか、野球やサッカー、陸上、ゴルフ、マラソンといったさまざまなスポーツ関連大会の主催や後援を行うことも事業の一つです。

一方、新聞業界全体がそうですが、この先は「紙」の新聞はニーズが減っていくとの認識が共有されています。弊社でも“紙”以外のビジネスをどう生み出すかとの危機感は常にあります。社内から新たなアイデアが生まれてくることもありますが、斬新さという点では若干弱く、66年以上にわたって主業としていた紙のビジネス志向から完全に脱却した考えを持つのは難しい点もあると感じました。

―― そこでcrewwコラボに参加されたわけですね

crewwのアドバイザーにスポーツニッポン新聞社のOBがいて、それをきっかけに一昨年(2014年)秋、中目黒のcrewwさんを訪ねたのが始まりです。

“ITベンチャー企業”と聞くと「クールでドライな人が多いのかな」と最初は構えていたのですが、まったくそんなことはなかったですね(笑)。伊地知天(いじちそらと)社長をはじめ、人間的に温かい人が多く、しかも「できないことはできない」と伝えてくれますし、細かなアドバイスもきっちりいただけたのは有難かったです。

―― crewwとの出会いから1年後、翌2015年にはcrewwコラボで募集を開始していますが、社内での障壁はなかったのですか

上司の担当役員はもともとグループの毎日新聞社で取材や編集現場の第一線にいましたので、新しいことに対する感度が高く、こうした取り組みには積極的でした。新規営業開発室のメンバーについても、私も含め皆かつてはスポーツ現場の取材記者です。

もう一つ、読売新聞社さんや朝日新聞社さん、日本テレビさんといった大手メディアが既に先導してコラボを行っていたことも、社内では「スポニチも挑戦しよう!」というモチベーションになりました。

新聞社というと堅いイメージを持たれるかもしれませんが、スポーツニッポンの場合はスポーツに関連する内容はもちろんですが、極端に言えばラーメン店のビジネスでコラボしてもいいと考えています。

また、スポニチの紙面を見ていただければわかるように、競馬や競輪、競艇などの記事もありますので、ギャンブルに関するビジネスでも問題はありません。スタートアップの方へのオリエンテーション時に、コラボに際し「NG項目はほぼ皆無」と説明すると、「おー」という驚きの声があがりました。

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多くのスタートアップからのコラボ応募、13社と継続的に関係を保つ

―― そうした幅広い姿勢がスタートアップに伝わり、多くの応募を集めています

ありがたいことです。私を含め3人のメンバーで3週間かけてすべての提案を拝見し、やり取りをさせていただきました。1人あたり10数社を担当し、返信はその日のうちに必ず返すと心がけたのですが、日常の業務もありましたので、かなり大変でした。

―― 最終選考には4社が残りましたが、残念ながら選ばれなかったスタートアップには何が足りなかったのでしょうか

漠然とした提案ですと採択しづらい傾向があります。また、サービスを作る部分から始めるとなるとハードルが出てくるかもしれません。

今回のコラボでは、上記の4社を含め、計13社との方と継続的にお付き合いをさせていただこうと考えています。スタートアップの方は日々事業で目いっぱい頑張っておられるなか、弊社のために時間を割いていただき、感謝しています。

13社以外の方については、今回は会社として採択はできなかったけど、これを機に個人的に応援させていただきたいので「いつでもお会いしたい」と返事を差し上げました。その後、実際に2社の方から連絡をいただき、直接会って話ができたのは嬉しかったですね。今回のコラボを通じて、人と人のつながりがもっとも大事だと感じました。

「すぐに結果は出ない」を社内で理解してもらう

―― スタートアップとのコラボはこれからどのように進めていく予定ですか

昨年(2015年)11月中旬に役員プレゼンテーションが終わったばかりですので、まさに「これから」という段階。この先の取り組みが大事になってきます。役員や他の部署には「すぐに結果を出るものではないが、会社にとって重要なことなので応援してほしい」という点をしっかり説明して理解を得たいと思います。その一方で、自分のように現場で担当している立場としては「早期に結果を出せるようにスピード感を持って取り組む」ことを強く意識したいです。

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―― これからコラボレーションに参加を考えているスタートアップや、オープンイノベーションを行おうとする大手企業の方にアドバイスをお願いできますでしょうか

アドバイスというほどではありませんが、私が感じたのは人と人のつながりがもっとも大事だということです。もし、スタートアップの方が、大企業側の担当者に誠意のない対応をされたり、相性が悪いと感じたりしたら、参加を取りやめるという選択肢もあるでしょう。

スタートアップの方のなかには、大手企業は敷居が高いと思っているかもかもしれませんが、そんなことはなく、自らの手で真剣に事業に取り組んでいるのですからぜひ自信を持ってご提案してきてください。

大手企業の方には、スタートアップの方には敬意をもって接すること、それを心掛けていればオープンイノベーションは決して難しくないと思います。

―― ありがとうございました。

スポーツニッポン新聞社のコラボ担当者・内匠俊頌さんのページ

 
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“共感のメディア”ならではの 新たなビジネスモデルに挑む

株式会社スポーツニッポン新聞社
取締役 成田 淳氏

日本を代表するスポーツ新聞の1つとして知られる「スポニチ」。株式会社スポーツニッポン新聞社(東京都江東区)は、500万読者を抱える高い知名度と、66年間のスポーツ・芸能報道で培ったプロモーション力を生かした次の展開を見据え、2015年9月にCreww株式会社のオープンイノベーションプログラムcrewwコラボを実施いたしました。多くのスタートアップから応募を集めた今回のcrewwコラボや新聞業界を取り巻く現状について、新規事業を担当する成田淳取締役に話を伺いました。

“紙”の次にあるモデルを発明する段階に

―― 成田取締役はスポーツニッポンの関連会社である毎日新聞社で、新聞制作の最前線から経営の現場まで幅広い経験を積まれてきましたが、現在の「新聞業界」をどう見ていますか

新聞というメディア自体は400年以上前からあり、毎日新聞社だけを見ても150年近い歴史を持っています。その役割は、世の中にある共通の課題を報じることにあり、スポーツ紙は生きる喜びを伝えるという目的を持っています。これはデジタル化しても変わりません。

一方、業界全体で見ると、紙の形で発行している新聞は、年に3%の割合で読者数が減っており、この15年ほどで社員数も20%減になりました。「紙」というパッケージモデルはなくなることはないにせよ、どこの新聞社も経営的には限界と言える状況にまで来てしまったのが現状です。

とはいえ、新聞社全体では社員数が少なくなっても、現場で取材する記者の数は減らしていませんので、プロのメディアとして、コンテンツのクオリティは落ちていません。課題はこのコンテンツをいかにマネタイズしていけるかです。デジタルに流すだけでいいのか、もっと付加価値を高めるためには何をすればいいのか、“紙”の次のモデルを発明しなければならない段階に来ています。

これまでのビジネスモデルに変革を起こすためには、外のアイデアを取り込まなければならないと考え、スポーツニッポン社として出した一つの答えがcrewwのオープンイノベーション「crewwコラボ」を行うことでした。

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スポーツニッポン新聞社は66年の歴史を持っている

―― 新聞の役割は変わっていないものの、今後のマネタイズ面で課題がある、ということでしょうか

いわゆる「全国紙」と呼ばれる大手新聞社の役割は「国家とは何か」「民主主義とは何か」ということを伝え、考え、守っていくことです。民主主義は“タダ”だと思われていますので、ここにお金を払っていただくのはなかなか難しいですし、“民主主義を守る”という目的で書かれた記事が読まれるとも限りません。

一方、スポーツ新聞は世の中の共通の関心ごとであるスポーツや芸能などを伝える役割を担っています。スポーツニッポン社では「楽しく元気な社会を築く」との目標を掲げているように、一般紙とは違い「共感のメディア」ということが言えます。そういう意味では、イノベーションを起こしやすい環境にあります。

―― 「共感のメディア」であるスポーツ新聞だからこそ、新しいことに踏み出しやすいということですね

一般紙はともすれば理想や理念を優先せざるを得ない面がありますが、スポーツ紙は世の中の本音を引き出し、上手く伝えることに長(た)けています。まずは「何でもやってみよう!」という企業風土ですから、今回のcrewwコラボにおいてもスタートアップの皆さんには「NG項目なし」とお伝えしました。

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―― 今、誰もが情報を簡単に発信できる時代ですが、新聞社の強みはどんなところにあるのでしょうか

ブログなどで発信している一般の方と、新聞社が発信する情報の違いは、膨大な情報のなかから必要な内容を選び出し、パッケージ化できることにあると思っています。また、先ほど、本音を伝えると言いましたが、本音をストレートに伝えると、嫌な思いをさせてしまうことがありますよね。読む人に嫌な思いをさせずに本音を伝えるのが、われわれプロの腕の見せどころです。この価値を生かしたビジネスをしなければと考えています。

一方、これまでの新聞は客観的な匿名記事が中心でしたが、これからは、記者一人ひとりがコンテンツ化していかなければならない段階に来ているように感じています。情報の新たな伝え方を模索しているところです。

―― 今回のオープンイノベーションでは多くのスタートアップから応募がありましたが、どのような印象を持たれましたか

社内からのアイデアは、どうしても旧来の価値観にとらわれがちですので、外の発想やアイデアをいただける素晴らしい機会で、本当にありがたかったです。

一方で厳しい見方をしますと、こちらの想像を超えるような提案がなく、類似サービスを提示いただくことが多かったのも事実です。

スタートアップの方による発想の本質と、スポニチが持つ価値をいかに融合させ、形にしていけるか、これからが勝負だと考えています。会社としては大きな期待感をもってコラボに取り組んでおり、社内に化学変化を起こしたいと思っています。

―― ありがとうございました

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成田取締役(左)とコラボ担当者の内匠俊頌さん

スポーツニッポン新聞社のcrewwコラボページ(2015年9月実施分)
スポーツニッポン新聞社のコラボ担当者・内匠俊頌さんのページ

 
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