crewwコラボ 体験談 ― 大企業編

crewwコラボ 体験談 ― 大企業編

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セブン銀行はどのようにオープンイノベーションへの第一歩を踏み出したのか?

セブン銀行 企画部 小笠原真吾

2016年2月8日にスタートアップからの応募受付を開始し、3月25日、26日両日にプレゼンテーションを開催したセブン銀行。セブン銀行におけるcrewwコラボは、かつてない成功事例として、既にレポート(https://feature.creww.me/report/sevenbank-01/)や報告会が行われているが、改めて、crewwコラボ担当者の企画部、小笠原真吾氏に聞いた。

トントン拍子に決まったCreww株式会社との契約

―― セブン銀行がcrewwコラボを実施するに至るまでの経緯を教えて下さい。

当社は、2014年度を「新しい成長ステージへの転換点の年」と位置付け、新たな成長機会を追求する取組みを開始し、経営から「第二の創業」というメッセージも発せられました。ちょうどそのタイミングで、私は企画部に異動しました。「企画部として何をするべきか?」と考えた時、頭に浮かんだのが「オープンイノベーション」というキーワードです。

そこで、2014年は国内のセミナーやカンファレンスへの参加、欧州や米国視察などで「オープンイノベーションとは何か」を勉強しました。その翌年の2015年は、それまでに勉強したことを社内に還元すべく、ベンチャーファンドの社長や大学の先生を招いた社内勉強会を実施したり、実際に役員クラスをシリコンバレーに派遣したりすることで社内を耕すことに注力しました。ちょうど、社内の雰囲気が醸成できてきたところで、 Creww株式会社と出会い、コラボを実施することになったのです。

4月には、その経験を踏まえて、さらにオープンイノベーションに力を入れるべく、セブン・ラボという新規事業を担う組織が設置されました。出来過ぎた話のようですが、すべて当初想定した流れではなく、結果としてこうなりました。「振り返ってみると、すべては線でつながっていた。」というのが私自身の印象です。

驚異の出席率。社内の3分の1が自発的に勉強会に参加

―― 流れるような時系列が整った話ですね。もう少し詳しくお話を伺っていきたいのですが、社内勉強会はどんなものだったのですか?

この本社ビルには300人程の社員が在籍しているのですが、100人程の社員が参加しました。それだけ社外で起こっていることに対して、みんなの好奇心が高まっていたのではないかと思います。各部署の管理職の中には、「そんな勉強会を業務時間内に実施するのか」という者もいました。

ただ、新規事業を創っていこうとするメンバーの中には「その意識すら変えていかないといけない」という強い思いがありました。現状に危機感を持つことや、社外のことに興味を持つこと、新しいことに挑戦しよう、と社内を耕していくことは大切な仕事でもあります。

―― 若い現場の方が、イノベーションの持つダイナミックな空気に魅了されるのは判ります。日々の業務では得られない気づきや発想を得て、新たな挑戦をすることは多分に刺激があることだと思います。イノベーションに興味を持つ現場に対して、役員の方々の反応はどのようなものでしたか? 2015年のシリコンバレーに役員を派遣、というのが少し珍しいような気がします。

「第二の創業」というメッセージから、新しいことをしていかなければ、と頭ではわかっていても、いざ動くとなると話は変わってきます。現場の意識が変わっても、決裁権を持っている人が、「オープンイノベーションって言われてもよくわからない」「すぐに利益に結びつかないものは後回しにしよう」となったら元も子も無くなります。それを予め防ぐために、最もイノベーティブな企業が集まるシリコンバレーで、オープンイノベーションが起こっている現場を体感してきてもらいました。

翌期に活かせるタイミングも考慮して決めたcrewwコラボの実施

―― 確かにcrewwコラボの本社プレゼンテーションにおいても、役員の方から否定的な意見は出ませんでしたね。Creww株式会社と出会って、一緒にコラボをやろう、というのはいつ頃の話ですか?

2015年の秋です。部署の人間が、それぞれ、全然違う場所で御社の社員の方にお会いしていて、私が御社に最初にお伺いしたのが11月16日。その後いくつかのやり取りを経て、「これこそが今探していたものだ。Crewwの社員の方に会ってもらえば、分かってもらえるに違いない。」と思い、12月7日に今度は上司を連れて御社を訪問しました。行きの車の中でcrewwコラボの概要を説明し、帰りの車で「OKですよね?」と口頭で確認を取るというスピード感でした。

これだけ急いだのは理由があって、今期中にコラボの実施を完了していれば、その経験を基に翌期に体制なり何なりを整えて活かしていけるだろうと、なんとか3月末までに、コラボのプログラムの完了までもって行きたかったのです。

―― 社内が耕せていたからこその、11月creww初訪問、12月プログラムスタートと、スムーズに進行することができたようです。事務局の団結力の高さもすごかったと感じておりましたがその辺りはいかがだったでしょうか。

事務局メンバーは、各自が通常の業務も抱えていたので、始業前に集まって、毎朝ミーティングをしていました。メンバーが3つの部署に分かれていたので、ブラッシュアップの進捗や、本社プレゼンの準備に関して、しっかりとコミュニケーションをとることが大切だと考えたのです。日増しに団結力が高まり、本社プレゼンは良い雰囲気で開催することができました。

crewwコラボが背中を押した「セブン・ラボ」の誕生

―― 当日の様子は、レポートに詳しく書いてありますが、今、採択まで終えて、crewwコラボに対してはどのような評価をされていますか?

大成功です。自分たちでは思いもよらなかった業種のスタートアップからも応募があり、収穫がありました。先ほどお話した、1年の勉強期間で学んだことに、「イノベーションを起こすには『知の探索』が必要だ。」というのがあるのですが、自分たちだけではなく、スタートアップのネットワークを既に持っている御社と組んだことで、より広い「知の探索」が出来たと思います。

タイムスケジュールを切ってもらって、役員同席のプレゼンテーションの場を要求してもらったのも良かったです。実は、新規事業に関する外部のプレゼンテーションを役員が揃って聞くというのは、初めてのことでした。しかし、同じ場で一緒に聞くことには大きな意味があることを新たに発見しました。また自然に共通言語が生まれるのも目の当たりにしました。

新規事業に積極的に取り組んでいく部署をつくろうという話は以前からあったのですが、crewwコラボで強く背中を押され、実現に至ったと思います。

―― いいことばかり挙げて下さっていますが、改善点も教えて下さい。

強いて言えば、応募画面をつくる時に、セブン銀行のリソースの洗い出しという作業があるのですが、そこにもう少し時間をかけたかったです。当社がリソースだと思っていないようなものでも、御社と話し合う中で、新しい発見がありましたし、もっとたくさんのネタ出しが出来たら良かったなとは思っています。

というのも、オープンイノベーションのノウハウを知って、新規事業を生み出すのが目的ではありますが、セブン銀行が外からどういう評価をされているか知りたいというのも大きかったからです。

―― 今年の4月にできたラボは、どんなメンバーで、どんな活動をしていますか?

crewwコラボ事務局の7人のうち4人と、昨年シリコンバレーでオープンイノベーションについて学んできたメンバー1人を加えた5人です。これまで当社で検討してきたプラン、crewwコラボで採択したプラン、そして全く新しいプランと、新規事業の創造に向けて日々活動しています。私自身は、そのメンバーに入っていませんが、引き続き企画部として、ラボの活動をしっかりとサポートしていきます。

大成功をおさめたセブン銀行crewwコラボ

 
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スタートアップとのコラボは 人と人のつながりから始まる

株式会社スポーツニッポン新聞社
新規営業開発室 内匠俊頌さん

日本を代表するスポーツ新聞の1つとして知られる「スポニチ」を発行する株式会社スポーツニッポン新聞社は、500万読者を抱える知名度の高さと、66年間のスポーツ・芸能報道で培われたプロモーション力を生かした新たな展開を見据え、積極的にスタートアップとのコラボレーションに取り組んでいる。同社新規営業開発室の内匠俊頌(たくみとしのぶ)さんに老舗スポーツ新聞社が考えるコラボのあり方を聞いた。

“紙”の先にある斬新なビジネスを求めて

―― 野球やサッカーなど、スポーツ好きの人々には「スポニチ」を知らない人はおそらくいないと思われるほどの著名なスポーツ新聞社ですが、スタートアップとのコラボレーションに取り組み始めた背景を教えてください

現在、スポーツニッポンでは「スポニチ」紙を172万部発行するだけでなく、月間1.7億ページビューのWebサイト「Sponichi Annex(スポニチアネックス)」の運営も行っています。このほか、野球やサッカー、陸上、ゴルフ、マラソンといったさまざまなスポーツ関連大会の主催や後援を行うことも事業の一つです。

一方、新聞業界全体がそうですが、この先は「紙」の新聞はニーズが減っていくとの認識が共有されています。弊社でも“紙”以外のビジネスをどう生み出すかとの危機感は常にあります。社内から新たなアイデアが生まれてくることもありますが、斬新さという点では若干弱く、66年以上にわたって主業としていた紙のビジネス志向から完全に脱却した考えを持つのは難しい点もあると感じました。

―― そこでcrewwコラボに参加されたわけですね

crewwのアドバイザーにスポーツニッポン新聞社のOBがいて、それをきっかけに一昨年(2014年)秋、中目黒のcrewwさんを訪ねたのが始まりです。

“ITベンチャー企業”と聞くと「クールでドライな人が多いのかな」と最初は構えていたのですが、まったくそんなことはなかったですね(笑)。伊地知天(いじちそらと)社長をはじめ、人間的に温かい人が多く、しかも「できないことはできない」と伝えてくれますし、細かなアドバイスもきっちりいただけたのは有難かったです。

―― crewwとの出会いから1年後、翌2015年にはcrewwコラボで募集を開始していますが、社内での障壁はなかったのですか

上司の担当役員はもともとグループの毎日新聞社で取材や編集現場の第一線にいましたので、新しいことに対する感度が高く、こうした取り組みには積極的でした。新規営業開発室のメンバーについても、私も含め皆かつてはスポーツ現場の取材記者です。

もう一つ、読売新聞社さんや朝日新聞社さん、日本テレビさんといった大手メディアが既に先導してコラボを行っていたことも、社内では「スポニチも挑戦しよう!」というモチベーションになりました。

新聞社というと堅いイメージを持たれるかもしれませんが、スポーツニッポンの場合はスポーツに関連する内容はもちろんですが、極端に言えばラーメン店のビジネスでコラボしてもいいと考えています。

また、スポニチの紙面を見ていただければわかるように、競馬や競輪、競艇などの記事もありますので、ギャンブルに関するビジネスでも問題はありません。スタートアップの方へのオリエンテーション時に、コラボに際し「NG項目はほぼ皆無」と説明すると、「おー」という驚きの声があがりました。

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多くのスタートアップからのコラボ応募、13社と継続的に関係を保つ

―― そうした幅広い姿勢がスタートアップに伝わり、多くの応募を集めています

ありがたいことです。私を含め3人のメンバーで3週間かけてすべての提案を拝見し、やり取りをさせていただきました。1人あたり10数社を担当し、返信はその日のうちに必ず返すと心がけたのですが、日常の業務もありましたので、かなり大変でした。

―― 最終選考には4社が残りましたが、残念ながら選ばれなかったスタートアップには何が足りなかったのでしょうか

漠然とした提案ですと採択しづらい傾向があります。また、サービスを作る部分から始めるとなるとハードルが出てくるかもしれません。

今回のコラボでは、上記の4社を含め、計13社との方と継続的にお付き合いをさせていただこうと考えています。スタートアップの方は日々事業で目いっぱい頑張っておられるなか、弊社のために時間を割いていただき、感謝しています。

13社以外の方については、今回は会社として採択はできなかったけど、これを機に個人的に応援させていただきたいので「いつでもお会いしたい」と返事を差し上げました。その後、実際に2社の方から連絡をいただき、直接会って話ができたのは嬉しかったですね。今回のコラボを通じて、人と人のつながりがもっとも大事だと感じました。

「すぐに結果は出ない」を社内で理解してもらう

―― スタートアップとのコラボはこれからどのように進めていく予定ですか

昨年(2015年)11月中旬に役員プレゼンテーションが終わったばかりですので、まさに「これから」という段階。この先の取り組みが大事になってきます。役員や他の部署には「すぐに結果を出るものではないが、会社にとって重要なことなので応援してほしい」という点をしっかり説明して理解を得たいと思います。その一方で、自分のように現場で担当している立場としては「早期に結果を出せるようにスピード感を持って取り組む」ことを強く意識したいです。

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―― これからコラボレーションに参加を考えているスタートアップや、オープンイノベーションを行おうとする大手企業の方にアドバイスをお願いできますでしょうか

アドバイスというほどではありませんが、私が感じたのは人と人のつながりがもっとも大事だということです。もし、スタートアップの方が、大企業側の担当者に誠意のない対応をされたり、相性が悪いと感じたりしたら、参加を取りやめるという選択肢もあるでしょう。

スタートアップの方のなかには、大手企業は敷居が高いと思っているかもかもしれませんが、そんなことはなく、自らの手で真剣に事業に取り組んでいるのですからぜひ自信を持ってご提案してきてください。

大手企業の方には、スタートアップの方には敬意をもって接すること、それを心掛けていればオープンイノベーションは決して難しくないと思います。

―― ありがとうございました。

スポーツニッポン新聞社のコラボ担当者・内匠俊頌さんのページ

 
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“共感のメディア”ならではの 新たなビジネスモデルに挑む

株式会社スポーツニッポン新聞社
取締役 成田 淳氏

日本を代表するスポーツ新聞の1つとして知られる「スポニチ」。株式会社スポーツニッポン新聞社(東京都江東区)は、500万読者を抱える高い知名度と、66年間のスポーツ・芸能報道で培ったプロモーション力を生かした次の展開を見据え、2015年9月にCreww株式会社のオープンイノベーションプログラムcrewwコラボを実施いたしました。多くのスタートアップから応募を集めた今回のcrewwコラボや新聞業界を取り巻く現状について、新規事業を担当する成田淳取締役に話を伺いました。

“紙”の次にあるモデルを発明する段階に

―― 成田取締役はスポーツニッポンの関連会社である毎日新聞社で、新聞制作の最前線から経営の現場まで幅広い経験を積まれてきましたが、現在の「新聞業界」をどう見ていますか

新聞というメディア自体は400年以上前からあり、毎日新聞社だけを見ても150年近い歴史を持っています。その役割は、世の中にある共通の課題を報じることにあり、スポーツ紙は生きる喜びを伝えるという目的を持っています。これはデジタル化しても変わりません。

一方、業界全体で見ると、紙の形で発行している新聞は、年に3%の割合で読者数が減っており、この15年ほどで社員数も20%減になりました。「紙」というパッケージモデルはなくなることはないにせよ、どこの新聞社も経営的には限界と言える状況にまで来てしまったのが現状です。

とはいえ、新聞社全体では社員数が少なくなっても、現場で取材する記者の数は減らしていませんので、プロのメディアとして、コンテンツのクオリティは落ちていません。課題はこのコンテンツをいかにマネタイズしていけるかです。デジタルに流すだけでいいのか、もっと付加価値を高めるためには何をすればいいのか、“紙”の次のモデルを発明しなければならない段階に来ています。

これまでのビジネスモデルに変革を起こすためには、外のアイデアを取り込まなければならないと考え、スポーツニッポン社として出した一つの答えがcrewwのオープンイノベーション「crewwコラボ」を行うことでした。

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スポーツニッポン新聞社は66年の歴史を持っている

―― 新聞の役割は変わっていないものの、今後のマネタイズ面で課題がある、ということでしょうか

いわゆる「全国紙」と呼ばれる大手新聞社の役割は「国家とは何か」「民主主義とは何か」ということを伝え、考え、守っていくことです。民主主義は“タダ”だと思われていますので、ここにお金を払っていただくのはなかなか難しいですし、“民主主義を守る”という目的で書かれた記事が読まれるとも限りません。

一方、スポーツ新聞は世の中の共通の関心ごとであるスポーツや芸能などを伝える役割を担っています。スポーツニッポン社では「楽しく元気な社会を築く」との目標を掲げているように、一般紙とは違い「共感のメディア」ということが言えます。そういう意味では、イノベーションを起こしやすい環境にあります。

―― 「共感のメディア」であるスポーツ新聞だからこそ、新しいことに踏み出しやすいということですね

一般紙はともすれば理想や理念を優先せざるを得ない面がありますが、スポーツ紙は世の中の本音を引き出し、上手く伝えることに長(た)けています。まずは「何でもやってみよう!」という企業風土ですから、今回のcrewwコラボにおいてもスタートアップの皆さんには「NG項目なし」とお伝えしました。

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―― 今、誰もが情報を簡単に発信できる時代ですが、新聞社の強みはどんなところにあるのでしょうか

ブログなどで発信している一般の方と、新聞社が発信する情報の違いは、膨大な情報のなかから必要な内容を選び出し、パッケージ化できることにあると思っています。また、先ほど、本音を伝えると言いましたが、本音をストレートに伝えると、嫌な思いをさせてしまうことがありますよね。読む人に嫌な思いをさせずに本音を伝えるのが、われわれプロの腕の見せどころです。この価値を生かしたビジネスをしなければと考えています。

一方、これまでの新聞は客観的な匿名記事が中心でしたが、これからは、記者一人ひとりがコンテンツ化していかなければならない段階に来ているように感じています。情報の新たな伝え方を模索しているところです。

―― 今回のオープンイノベーションでは多くのスタートアップから応募がありましたが、どのような印象を持たれましたか

社内からのアイデアは、どうしても旧来の価値観にとらわれがちですので、外の発想やアイデアをいただける素晴らしい機会で、本当にありがたかったです。

一方で厳しい見方をしますと、こちらの想像を超えるような提案がなく、類似サービスを提示いただくことが多かったのも事実です。

スタートアップの方による発想の本質と、スポニチが持つ価値をいかに融合させ、形にしていけるか、これからが勝負だと考えています。会社としては大きな期待感をもってコラボに取り組んでおり、社内に化学変化を起こしたいと思っています。

―― ありがとうございました

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成田取締役(左)とコラボ担当者の内匠俊頌さん

スポーツニッポン新聞社のcrewwコラボページ(2015年9月実施分)
スポーツニッポン新聞社のコラボ担当者・内匠俊頌さんのページ

 
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提案以外の可能性を引き出す 意思疎通とディレクションを

ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社
デジタルサービス部部長 三田村 忍氏

「GfKジャパン」の名で知られるジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社(東京都中野区、藤林義晃社長)は、マーケティングリサーチの世界大手である独GfKの日本法人として、1979(昭和54)年11月に設立されて以来、日本における家電やカメラ、IT、通信などの市場調査会社として、業界で高い知名度を誇ります。crewwコラボでは初めてとなる「BtoB」企業によるオープンイノベーションに踏み切った背景について、同社デジタルサービス部部長の三田村忍さんに話を伺いました。

「BtoB」企業のオープンイノベーションとは

―― GfKジャパンといえば家電やIT、通信分野のマーケットリサーチ企業として業界ではかなり著名な存在ですが、オープンイノベーションを行った背景をお聞かせください

弊社がもっとも得意としているのはPOS(販売時点情報管理)トラッキング調査です。この「小売店パネル調査」と呼ばれるサービスは、どの商品がいつ、どこで、いくらで売れたかという最新の情報が得られるため、多くの企業にご活用いただいています。

テクノロジーの加速度的な進化伴い、リサーチ手法も変化する中、「こういう時だからこそ、現状におごることなく会社として新たな可能性を追求しよう」という気運が高まり、オープンイノベーションを行うことになりました。

一方、GfKジャパンはいわば「BtoB」企業ですので、家電やIT、通信などの業界では知られていますが、スタートアップの方々への知名度が高いとはいえません。そのため、どういう事業をやっている会社なのかということを丁寧に説明するように心がけました。

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GfKジャパンは市場調査の分野で知名度が高い

―― 最終プレゼンテーションが進んでいますね

コンシューマーの方を相手にビジネスを行っている「BtoC企業」の場合と比べれば数自体が多かったわけではありませんが、スタートアップの方々から大変有益なご提案をいただきました。

なかでも数社とは既に共同商品化などの動きが始まっています。また、そこまで行っていなくても何かできないか検討を行っているところです。

―― 今回のオープンイノベーションを実行するにあたって、社内で苦労した点はありましたか

社内的な苦労はまったくなかったですね。社長の肝いりで進めており、社長は「この金額で外部の優れた人々のアイデアを共有いただけるのなら安い!」という反応でした。私自身もデジタル分野で新規事業を立ち上げるために入社していますし、crewwは非常にセンスの良い仕組みだと常々感じていました。ですので、障壁はゼロです。これですと、インタビューにはなりづらいですかね(笑)

―― オープンイノベーションの実行過程ではいかがでしたか?

苦労ではないのですが、弊社の特徴としてオープンイノベーションの過程では、私を含め10名近くが参加するプロジェクトとして進めていきました。少人数で行う企業も多いと聞いていますので、この点ではめずらしいかもしれません。

みな自主的に立候補した社員で、始業前に毎朝会議を設定しても参加するくらいに高いモチベーションを持って臨みましたが、メンバーによってスタートアップ方への対応に差があってはいけませんので、同じ温度感を保つようには心がけました。

もう一つ気を付けたのは、スタートアップの方とのファーストコンタクト時です。最初にいただく提案のなかには若干“粗い”と感じる内容もあります。ですので、そこだけを見るのではなく、「こういうことが言いたいのではないか」と深く考えたり、「この部分を引き出せば互いに有益なコラボレーションになるのではないか」と想像したり、あらゆる面からスタートアップの事業が秘める可能性を考え、そこを引き出す努力はしていました。

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―― 意思疎通の面でも気をつかっていた

スタートアップの方が持つ世界観を理解する努力はもちろん、ファーストコンタクトからサードコンタクトまでの間に、いかにお互いの考えを上手く伝え合い、調整できるかが重要だと感じました。この部分をスムースに運べないと良いオープンイノベーションにはならない気がします。

コラボレーションでは、互いの利益になるようディレクションしていくことがもっとも大事です。

―― crewwコラボでのオープンイノベーションは社内でどのような評価を受けていますか

参加したメンバーからは会社とは別の“社会”が見えたという声がありましたね。また、プレゼンに参加した役員もポジティブな反応でした。

ただ、現在はスタートアップの方と現場とで議論をして次の段階へ進もうとしているところなので、成果が見えてくるのはこれからです。会社としては、今後もオープンイノベーションやっていこう、という雰囲気はありますね。

―― オープンイノベーションを行おうとする大手企業へのアドバイスはありますか

やはり、実際に提案された内容だけでなく、スタートアップの技術やサービスを自社においていかに使えるのかを考え、常に次の段階へ引き上げる努力をしていくことではないでしょうか。

また、社内的には色んな部署の人に呼びかけ、立候補制で参加してもらったほうが会社全体に良い効果が得られるように感じています。情報を公開して社内で共有し、“自分ごと”化してもらうための努力も大切です。

―― オープンイノベーションへの応募を考えているスタートアップへのアドバイスもお願いします

応募時の提案はテンプレートっぽく見えないように工夫することが第一です。そして、プレゼンまで進んだら、役員などの意思決定権者が出てきますので、窓口となる担当者とは異なるニーズを持っていたり、担当者との会話では当たり前だった用語が通じなかったりすることが考えられます。その点を意識してプレゼンを行っていただくことが大事だと思います。


ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社 http://www.gfk.com/jp/
GfK x creww ビッグデータを使ったオープンイノベーション(2015年) https://creww.me/ja/collaboration/gfk-2015

 
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オープンイノベーションが変えた 自社の風通し

国際航業株式会社 事業開発本部

長谷川浩司氏 藤原康史氏

まちづくりに携わっている人に絶大な知名度を誇るのが国際航業株式会社(東京都千代田区、土方聡社長)です。国土の姿を測量して正確な地図を作ったり、GPSなどを使って現在地を特定したりという地理空間情報事業に加え、太陽光発電事業やまちづくり支援といった「空間情報コンサルティング」を事業の柱に据え、日本やアジア各国での国土発展を支えています。まもなく創業から70年を迎える同社が挑んだオープンイノベーションの形について、事業開発本部の副本部長で事業開発部長の長谷川浩司さんと、同部新規ビジネスグループ長の藤原康史さんにお話を伺いました。

crewwに登録されているスタートアップのページを見てイメージを膨らませる

――国際航業といえば、地理空間情報技術の分野では誰もが知る大手企業ですが、Creww株式会社のオープンイノベーションに踏み切った経緯を教えてください

弊社は1947(昭和22)年から航空写真の測量をベースに事業を始めました。現在では、GPSに代表される地理空間情報と建設コンサルティング技術を融合させた「空間情報コンサルティング」を事業の柱に据え、さまざまな技術開発やソリューションの提供を行っており、お客さまの中心は官公庁です。

現在、1700人ほどの社員がいますが、技術者の割合が高い企業ですので、技術開発力を高めながら、より良いモノを作るというプロダクトアウト的な発想が中心にあります。一方で市場のニーズを捉えたマーケットイン的な取り組みも必要ではないかとの思いもあり、近年は社内でも新規事業の立ち上げやアイデア募集も行っています。

ただ、社内リソースだけですと、新たな技術やアイデアには限界もありますので、地理空間情報の計測技術の提供などを軸に、昨年(2015年)11月からオープンイノベーションにチャレンジすることになりました。

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国際航業は「空間情報コンサルティング」を事業の柱に据えている

―― 今回のオープンイノベーションは「失敗が許されない大きなチャレンジだった」とのことですが、実施までに苦労されたのではないでしょうか

Creww株式会社の担当者の方もCEOである伊地知天さんもしっかりとした考えを持っており、このオープンイノベーションにかけてみよう! と思い、実施に踏み切りました。ただ、会社として初めての試みですので、オープンイノベーションがどういう仕組みなのかを社内で説明する際には、丁寧に伝えることを心掛けましたね。

社内リソースの棚卸しやゴールの設定など、準備をはじめたのは昨年の夏前です。まずはcrewwに掲載されていた1700社ほどのスタートアップのページにはすべて目を通してイメージをつかみ、また、先にオープンイノベーションを実施していた大手企業にもヒアリングをさせていただき、アドバイスをもらっています。

スタートアップの方々へのオリエンテーションでは、官公庁ビジネスがどういうものか、また弊社はどのような要素技術を持っているのかなど、みなさんにご理解いただけるようにつとめて話しをしたところ、「今まで関わったことがない業種」「初めて聞いた」との好反応があるなど予想以上に盛況で、オリエンテーションを2回にわたって行ったほどでした。

―― 2015年11月下旬から募集を始め、数多くのスタートアップが応募しています

果たして応募があるのだろうかと不安もありましたので、ほっとしました。その後、部内の3人で手分けして内容を拝見するのはもちろんですが、やはり思いを直接聴きたいと思い、多くのスタートアップの方と実際にお会いしています。

このなかから10社の方にプレゼンテーションに来ていただきました。プレゼンの場には、弊社の社長や各事業の責任者だけでなく、持ち株会社である日本アジアグループの会長兼社長の山下哲生氏も参加しています。スタートアップの方には時間いっぱいまで説明をいただき、熱気あふれる場となりました。

―― 東証一部上場企業の社長が時間を割き、自らスタートアップの話を聴きに出向いたという点で、オープンイノベーションにかける御社の意気込みが伝わってきます。その後、どのような選考が行われたのですか

事業の具体性や弊社の受け入れ体制といった指標は作りましたが、やはり最終的には「本気度」といいますか、コラボ度といいますか、一緒にできるのか否かという点が大事だったように思います。プレゼンいただいた10社はいずれも評価が高かったのですが、最後は“やりたい度”という点を見て、7社とコラボを進めることに決めました。

以後は連日打ち合わせを行い、今では弊社の現場担当者とスタートアップの方が直接やり取りしたり、全国に持つ弊社拠点を一緒に回ったりもしています。今後、コラボの具体的な成果が徐々に見えてくるはずです。

半期に一度行われる全社的な説明会の場があり、今回の取り組みを全社員に紹介したのですが、他の部署からは「オープンイノベーションのような取り組みを行いたいのだが、どうすればいいのか」といった問い合わせも寄せられるようになりました。

―― 多数のスタートアップが参加した今回のオープンイノベーションですが、コラボにいたった企業といたらなかった企業の差はどういう部分でしたか?

応募いただいたスタートアップに大きな差はありませんでした。ビジョンを共有できるか否か、相性が合うか合わないかという部分が大事なのではないでしょうか。お見合いのようなものですから。

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オープンイノベーションを振り返る長谷川さん(左)と藤原さん

―― これからオープンイノベーションを行う大手企業の方にアドバイスをお願いいたします

われわれにとって大きなチャレンジでしたが、挑戦してよかったと思っています。アドバイスになるかどうかは分かりませんが、やはりスタートアップの方をリスペクト(敬意を表する)ことがもっとも大事ではないでしょうか。また、従来の固定概念を一度捨ててみることも必要かもしれません。

実務的な面ですが、オープンイノベーションを既に行った“先輩”となる大手企業に「あまり多くの人が関わるのではなく、少人数でやったほうがいい」とアドバイスをいただいたので、われわれもそのようにしました。一方で、社内での連携や各事業のリーダーに趣旨を理解してもらう活動は、積極的に行ったほうがスムースにことが運ぶはずです。

今後もオープンイノベーションは続けたいと思っていますので、ノウハウを貯めていくことはもちろん、今回とは異なる分野のスタートアップの方々とも積極的にお会いしたいですね。

―― ありがとうございました。


国際航業株式会社のcrewwオープンイノベーション紹介(2015年11月) https://creww.me/ja/collaboration/kkc-2015
国際航業・藤原康史さんのcrewwページ https://creww.me/ja/account/康史-藤原

 
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コラボに挑むスタートアップに期待する「媚びない」姿勢  

アサヒグループホールディングス株式会社 経営企画部門 兼研究開発部門 マネージャー進藤洋一郎

進藤さんは経営企画部門の所属なんですね。大企業の中の新規事業に携わる部署と、スタートアップの特徴を教えてください。

大企業というのは、長い歴史の中で安定してまわる仕組みの追求をしてきているのが通常です。そのことによる組織力や効率性が大企業の強みであるとも言えるのですが、これは競争の内容やルールが比較的安定していることが前提になっています。ある種の計画至上主義や経験至上主義が自動的に織り込まれ易く、合議に重きが置かれる構造とも言えますね。ところが、新規事業を創出する過程では必然的に未知・未踏の要素を扱うことになるので、時として悪意なき社内常識や習慣のようなものが障害になります。邪魔する奴がいる、とか、制度が悪いといった他責的な話もあるでしょうが、それ以前に当事者自身の中でコンフリクトやスキルミスマッチが起こることが避けられません。そもそも構造に根差しているので簡単には変えられませんし、変えたら変えたで既存事業の強みが失われるのではないか、という当然の心配が生じます。このような問題は、少なくともゲームチェンジャーを志向するようなスタートアップには無いはずです。新しいことを仕掛けることへの内外の抵抗感というのは大企業とスタートアップでは格段に違いますよね。そこでスタートアップとのコラボレーションという選択肢を模索していました。

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進藤さんや、進藤さんの所属している部署はスタートアップに不信感や抵抗はなかったんですか?

個人としては全くないですね。ずっとこの会社に勤めていますが、出向が多かったこともあり、私は自分のことを社内の常識や習慣が部分的に欠けている、インサイドアウトサイダーだと認識しています。総合商社に出向していた時にスタートアップへの投資を検討する業務に従事したことで免疫がついたというか、いまのスタンスを形成するのに大きく影響していると思います。

経営企画部門で新規事業の仕事をし始めてから、会社に気付きをもたらす、違和感のある出会いの場が必要と考えていました。出島とか、経済特区とか、一国二制度のような、現有の在り方はそのまま取り置きつつも、それでも新しい風にじかに触れて新たな成長の手掛かりを掴めるような、インサイドアウトサイダーとアウトサイドインサイダーが交わる場はどうやったら作れるのだろう、という課題意識です。

というのも、大企業には有形・無形を問わず膨大なリソースがあるはずなのですが、真面目に棚卸をしてもどうも既視感のある結果にしかならない。そんなはずはないだろう、少なからぬ無自覚な資産というものがあるはずだと感じていました。JRさんの駅ナカ事業のような、車両や運行管理技術といった認識に上りやすい“いかにも”なリソースではなく、膨大な人の往来、それ自体はずっと以前から目の前にあったのにいまほど真剣に活用されてこなかったもの、を事業リソースとして活用するような視点は、インサイドインサイダーが教科書通りの強み分析を重ねるよりもスタートアップの皆さんの力を借りた方が早く的確だという確信めいたものを持っていました。

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良質なスタートアップに出会い、確実にコラボレーションを実現するためのcreww

―― 直接、スタートアップを探さずに、敢えてcrewwをつかったのはなぜですか?

色々なことを考慮しましたが、最後は直観です。まず商社出向時の経験から、良質なスタートアップに巡り合うにはランダムに動きまわっても、システマティックにやってもダメで、適度にアナログな繋がりがモノを言うという認識を持っていました。また、迂闊に失敗して社内に妙なタブーを作るかも知れないことを恐れました。「コラボやスタートアップはダメなんだ」「外部の風を入れるのは大変」となれば大きな損失です。ですから、適切なハブを探していたんです。そんな時、たまたま2014年暮れにどこかのワークショップで伊地知さんと知り合って、すぐに「ああ、この人だな」と思いました。ステレオタイプに押し込めるつもりはありませんが、信念が揺らがない、迎合してこない、そして大義があるという理想的な佇まいでした。

佇まい…もうそこは直感的なものなんですね。伊地知に出会って、コラボをするまでの流れや、選定基準を教えて下さい。

2015年の年明けから何度かオフィスをお邪魔して、互いに真面目な、しかし、とりとめのない話をしていました。その後、弊社の担当役員に引き合わせて2015年6月に契約し、9月にオリエンを行いました。 crewwコラボを通じて61件の応募があり、それらを4名のスタッフでチェックして、8件まで絞りこみました。課題選定のポイントは、既存事業を新たな視点からさらに伸ばせるか、自社の自覚的・無自覚的リソースに立脚した新たな事業が描けるか、です。弊社の既存事業は「金のなる木」というか、盤石だがもはや飛躍的な成長が望めないものを中心に構成されているので、持続的な成長を意図した事業ポートフォリオを組むためには、新たなスター事業か、金のなる木に水をやって太くするような事業を生み出す必要がありました。

今回のコラボはいかがでしたか?スターは生まれましたか?

プロセス面では苦労も多かったですが、実際に具体的な協業の入り口に立てたものもあり良かったと思います。提案の属性でいうと、金のなる木に水をやる事業の方が多かった印象ですね。

それはなぜでしょう。

私たちは先方のことを知らない状態から、先方は私たちの一般的な印象を知っている状態から、コミュニケーションがスタートします。ですから、特に注意を払わない限りは、自然と私たちの既存事業周辺に提案が集まりやすくなる傾向はあるように思います。

テーマの絞り方や応募要件を意識的に甘くした結果として、共同で事業を創出するという本来の趣旨とは異なるもの、例えば実質的に協賛を求めるようなお話が多かったことは反省点ですね。これは、「ひとつも応募がなかったらどうしよう」という弊社側の心配が少なからず働いたために自ら招いた結果と理解しています。

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スタートアップに望むのは、他人のまま媚びずに一緒に働けること

お互い探り合いからはじめるため、苦労もあったということですよね。大企業とのコラボレーションを検討している企業に伝えたいことはありますか?

一緒にやろうというスタートアップが大企業側の経営課題を解きたいと思っているわけではないことも、大企業がスタートアップの成長や貢献を第一の目的にしているわけではないことも、ともに自明です。ですから、スタートアップには、大企業に迎合せずに、自らの理想の実現なり課題解決なりに全力になってもらいたいですね。「他人のまま仲良く取り組む」ということができなければ早晩破綻するものでしょうし、そうなれば失った時間は取り戻せません。

さらにcrewwに対して、もっとこれをやってくれると嬉しいというようなことはありますか?

企業を取り巻く機会と能力の構造的ミスマッチを解消することがcrewwの存在意義ですよね。まずは、大企業が持つ無自覚なあるいは過小評価されているリソースを発掘する作業に、アウトサイドインサイダーとしてより一層深く関与して頂けると有難いですね。殆ど定義の反復になりますが、大企業のみにこの作業を任せても既存事業向けに無駄をそぎ落としたリソースが出てくるだけですから、スタートアップが大企業と一緒にやることに対して高いモチベーションや的確なご提案を引き出すことが難しくなります。

また、首尾よくマッチングができたあとのフォローアップもとても重要な機能だと思います。たまたま出島で遭遇した慣習も文化も信念も異なる者同士ですから、些細なことで行き違いが生じることでしょう。投資に関する考え方も、成功の定義も互いに全く違うことが普通にありえます。大企業とスタートアップの協業が陥りやすい穴を埋めていくという機能は、コラボの価値やスタートアップコミュニティを高めていくうえで有益です。ここにはcrewwが優先的にタッチできるはずですから、ここに人・物・金・情報を充てていくような新たなサービスというものがあっても良いかなと思ったりしています。

 
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社内に化学反応を起こすような 熱い情熱を持つ人々と出会える

株式会社オートバックスセブン 事業開発部

事業開発担当執行役員 佐久間進、事業開発部課長 大木勝仁、事業開発部 内藤順子

株式会社オートバックスセブン(東京都江東区)は、カー用品専門店「オートバックス」を全国に約600店を展開する。「豊かで健全なクルマ社会の創造」を経営理念として、国内最大規模の店舗ネットワークを構築している一方、顧客に新たな価値感を提供できるサービスや新規事業の創出が社内課題として挙がっていた。そこで2015年7月からCrewwとのオープンイノベーションを開始し、現在はスタートアップ5社との取り組みを始めている。
同社で事業開発部門を率いる執行役員の佐久間進さんと、事業開発部の大木勝仁さん、内藤順子さんにコラボレーションの現状と展望について話を聞いた。

 

スタートアップに求めたテーマは「スマートなカーライフを提案」

―― Crewwと出会ったのはどのようなきっかけでしたか

弊社社長が取引先の方から教えていただいたのがきっかけです。社内で新規事業やサービスの創出が課題となっていたなかで、社長から事業開発部門に紹介がありました。実際、事業開発部門ではこれまでもスタートアップの方々との接点を求め、ベンチャーイベントやマッチングパーティーなどに参加し、一緒に取り組める方を探していたところでした。そうしたこともあり、早速、Crewwの担当者の方とお会いしたのですが、最初はやはり「ん、若い社長で随分ラフな格好だな」という印象を持ちましたね(笑)

 

―― オートバックスセブンは連結4,200人以上の社員が働く東証一部上場の大企業ですが、オープンイノベーションに踏み切った背景を教えて下さい

新規事業やサービスへの取り組みは、これまでも社内で行ってきたのですが、大きなイノベーションを起こすにはサラリーマンでは難しい面もあると感じました。スタートアップの方は何もないゼロの状態から、人生や財産を掛けて、人つの物事をやり遂げようとしておられます。そうした熱い情熱や志(こころざし)を持って取り組める人材は、社内ではなかなか見つからないものです。

また、比較的手の届く予算で始められることや、弊社の事業内容を理解したうえで適切な提案や、コラボ期間中のフォローをしていただけることも大きなポイントでした。

 

―― オープンイノベーションに取り組む際、社内でどのような反応がありましたか

弊社は社外の方とコラボレーションする文化があまりなかったこともあり、「お金をかけてまでやるのか」との反応も出ましたが、最終的には「寄り切った」といいますか、何とか「Go」が出て、始められることになりました。そして、取り組みを始めた以上は「社内の最終プレゼンではスタートアップの話をしっかり聞いて判断してほしい」と役員をひとりづつ巻き込んでいくようにしました。

 

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―― 今年(2015年)8月から「スマートなカーライフを提案」とのテーマでコラボレーションの募集を始めました

かなり間口の広いテーマだったこともあり、46件もの応募をいただきました。

最初は私(大木氏)と内藤の2人で提案内容の精査やスタートアップの方との連絡役を担っていたのですが、手が足りなかったため、急遽、上司の佐久間(担当の執行役員)に増員を要請しました。結局、7人のメンバーしかいない部署のうち、5人が携わることになったのですが、それでも2週間はかかりました。

魅力的な提案内容が多かったこともありますし、多くの目で判断することで先入観をなくしたいとの思いがありました。何より、ご提案をいただいたスタートアップの皆さんへの感謝の気持ちを忘れることなく、真剣に判断させていただくうえで人手が必要でした。

 

―― 46件の提案のなかからどのように絞り込んだのでしょうか

チャットなどで実際にやり取りしていくうちに、どうしても自分が担当したスタートアップを推したくなる傾向が出てきます。そのため、以下のような5つの視点を持つように心がけました。

(1)コンセプトは合っているか
(2)社会的なニーズはあるか
(3)どのような人(経営者)なのか
(4)実現可能性はどうか
(5)規模感や将来性はどうか

一方でスタートアップの方と共に成長を目指す試みですので、弊社事業とのシナジーという部分はあまり意識しないようにはしていました。

 

―― そして最終的には5社に絞り込みます

今回、コラボレーションの取り組みを始めさせていただいたのは、体験型知育アプリのキッズスター(平田全広社長)をはじめ、IoT関連のCAMELORS(キャメローズ=田根靖之社長)、個人間カーシェアリングのライフシェアワークス(芝弘明社長)、保証書電子化サービスのWarrantee(ワランティ=庄野裕介社長)、動画チャットプラットフォームのFacePeer(フェイスピア=多田英彦社長)という5社です。

なかにはまだ開始時期などが決まっていない取り組みもありますが、これから徐々に具体化させていく予定です。これから先が大事なので、社内をもっと巻き込みながら進めていきたいと考えています。

 

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―― 今回、初めてのオープンイノベーションに取り組まれましたが、もっとも苦労したのはどの点でしたか

スタートアップの方や提案内容をどのように評価するか、という部分です。客観的な基準やノウハウが社内にまったくないなか、すべてが初めての取り組みでした。不安もありましたが、それを乗り越えられたので、今は自信になっています。

一方で課題や反省もあります。たとえば、プレゼンテーションの場では役員がずらりと一堂に並ぶような形で設定してしまいましたので、これではスタートアップの方も緊張しますよね。また、チャットやメールでスタートアップの方とやり取りするのも初めての経験ですので、「こんな形でいいのだろうか」と悩むこともありました。ぜひ、Crewwさんにはこうした部分でもアドバイスをいただければ有難いところです。

 

―― これからオープンイノベーションを始めようと考えている企業の方へアドバイスをお願いいたします

アドバイスというほどでもないのですが、実は我々も最初は「ノウハウもない中、独自の判断基準だけではできないんじゃないか」と思っていたのですが、何とかなりました。やはり経験してみることが大事なのではないでしょうか。実際にやってみると、社内に“化学反応”が起こり、新しいビジネスへつながる可能性が一段と高まるはずです。

―― ありがとうございました

 
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イノベーションを起こすためには同じ目線でのコラボレーションを

株式会社大京グループ 経営企画部 担当部長 武石直人

「ライオンズマンション」のブランドで知られる大京グループは、不動産の開発から管理、流通までを幅広く展開する大手不動産サービス事業者です。そんな同社が2015年から新たに始めたのは高齢者向け住宅事業。記念すべき第1号の「かがやきの季(とき)中野南台」には、スタートアップの株式会社エクセリーベ(東京都新宿区、大橋稔CEO)が開発したテレビ電話による見守りサービス「見守りん」が採用されています。大手不動産グループとスタートアップによるコラボレーションは、どのように生まれたのだろうか。同社グループ経営企画部の担当部長である武石直人氏に聞いた。

 

社会変革を起こす新ビジネスを目指し、社内の枠組みから脱却

―― 大京グループがスタートアップとの「オープンイノベーション」を採り入れた背景を教えてください

大京グループは、株式会社大京を中心とした不動産サービス事業を提供する企業グループとして、お客さまのライフステージに応じたさまざまな住まいと各種サービスを提供しています。住まいの向上を通じ、心の充足を高めるための「住文化」を創っていくことが経営理念です。

例えば、「ライオンズマンション」は首都圏を中心に大阪や名古屋などの大都市圏に多数ありますが、マンション間での“横のつながり”はありません。入居者の方々とともに「住文化」を創っていくうえで、何らかのコミュニティを築けないか、との課題意識が社内にありました。

大京グループ内では、公募型のビジネスモデル提案制度「大京イノベーションアワード」を設け、2012年より社内から新規事業の芽を見つけ出す試みを行ってきました。一方で社会の変革を起こすようなイノベーションは、社内の枠組みを抜け出してみることもご必要だと考え、2014年からCrewwと提携し、プラットフォームを使わせていただくことになりました。

 

――Crewwとはどのようなきっかけで出会われましたか

証券会社さんからご紹介いただきました。私自身は以前ベンチャー企業にいたこともあり、自ら事業を興す人に対するリスペクトがあり、ベンチャーの方とお会いしたり、何かを一緒にしたりすることに対してはまったく違和感がありませんでした。

ただ、当時のCrewwの担当者である伊地知中(いじちあたる)さんはかなり長髪の風貌でいきなり現れたので、部署の他のメンバーはびっくりしたかもしれませんね(笑)

 

―― 社員数が5000人を超える大きな組織のなかで、外部の力を採り入れてイノベーションを起こすとなると難しい面もあるかと思いますが、社内的な苦労はありましたか

先ほど申し上げたように、大京グループは社内でもイノベーションを起こそうという土壌があり、課題も明確になっていましたので、社内的にはそれほど大きな障壁はありませんでした。

もう一つ、Crewwのプラットフォームを活用させていただくにあたっては、経営企画部が持つ予算の範囲内でできたことも大きなメリットでした。もし、全社的な経営会議に通すほどの予算が必要であったなら、これほどすんなりとはいかなかったかもしれません。

 

―― スタートアップとのコラボレーション先はどのように探されたのですか

弊社が構想していた「ローカルO2O(オー・ツー・オー=Online to Offline)」というコンセプトを実現できそうなビジネスモデルをお持ちのスタートアップをCrewwのプラットフォームから探しました。

まず40数社を見つけ、部内のメンバー3名が各社の方々とメールを通じて細かなやり取りを行ったうえで、約20社に絞らせていただきました。

各社のビジネスモデルを理解するところから始めなければならず、ひとりあたり10社以上を担当する形となったため、部内のメンバーもやり取りにはかなりの労力が必要でした。

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―― スタートアップを20社に絞った後はどうされたのですか

弊社へお越しいただき、役員も含め10名の前で、1社あたり50分以上かけてビジネス案をプレゼンテーションしていただきました。スタートアップの方とはメールを通じたやり取りだけでしたので、リアルの場でお会いしたのはこの場が初めてです。

メールを通じ、スタートアップの方々と長時間やり取りしてきた我々は、ビジネスモデルの細かな部分を尋ねることが多かったのですが、役員クラスはどちらかというと、ビジネスモデルよりも起業家の志(こころざし)やチームの統一感という部分を見て、質問を投げかけていました。

 

―― こうしたプレゼンの場を設定するとなると業務的にも大変です

いえいえ、準備や運営はCrewwさんがやってくれましたので(笑) それよりも、最初にスタートアップの方とやり取りする「ブラッシュアップ」の部分では、文字情報だけで丁寧にやり取りする必要があったので、ここがもっとも苦労した部分です。

 

―― 20社のビジネスモデルのなかに、今回コラボしたエクセリーベが開発したテレビ電話による見守りサービス「見守りん」があったわけですね

エクセリーベさんのビジネスは、テレビ電話などのIT機器を通じて話を「傾聴」することで、人の心を豊かにしていきたいとの理念が根幹にあります。そのためか、大橋稔さん(CEO)のプレゼンには非常に落ち着きがあり、聞いている側は不思議な安心感を与えられました。

このプレゼンを聞いていたなかに、高齢者向け住宅事業推進リーダーがいて、「これはいい!」とほれ込み、今回のコラボにつながりました。

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―― 今回、オープンイノベーションを実施したことで、社内や部内で何らかの変化はありましたか

不動産という業界には、どちらかというと昔ながらの仕組みが残っており、元請けや下請けなど、ヒエラルキー(階層)のなかで動かなくてはならない面があります。

そんな世界に慣れていた若い社員のなかには、スタートアップの“フラットな世界”にカルチャーショックを受けるともに、「こんな楽しいことをやっている人たちがいたのか!」と目を輝かせていたのが印象的です。良い意味での異文化交流になったのではないでしょうか。

 

―― オープンイノベーションに対して、現段階で社内ではどのように評価されていますか

昨年、Crewwさんと提携したことを社内外に大々的に発表したため、スタートアップとのコラボがどんどん進むのではないか、との大きな期待が社内にあります。一方で今のところ、成立したコラボは1社だけですので、そういう意味では、社内で厳しい目を向けられることもあります。

弊社は上場企業故、経営層は常に株主のみなさんから厳しいプレッシャーの元、定量的な結果をだすことを求められます。一方で、スタートアップとのコラボは短期間で成果を出せるものではありません。運とタイミングも大切です。一般の経営課題に関する時間軸ではなく、芽が出るまでに時間がかかるというスタートアップの特性を考慮したうえで、異なるロジックで、社内的な評価をしていく土壌を作らなければならないと個人的には感じています。

 

―― これからオープンイノベーションを採り入れようとする企業に対して、アドバイスをお願いします

先ほど申し上げたように、スタートアップとのコラボは成果が出るまでには時間がかかるものですから、経営層の強い意志とコミットメントが必要です。芽が出るまでの胆力が問われます。

そして何よりも大切なのは、スタートアップの皆さんと同じ目線で、「イノベーションを起こしビジネスを一緒に創っていくんだ!」という姿勢です。そこには上も下もなく、囲い込むなんていう思想もない。常に「Win-Win」で、お互いをレスペクトしながら新たなモノコトを創造していくんだという気概が必要です。

日本の大企業は、大手ならではの優れたインフラを持っているのですから、ベンチャーを育て、盛り上げていくエコシステムを作る一躍を担わなければならないと強く感じています。それが日本を元気にすることにも繋がると信じています。

 

―― ありがとうございました

 
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