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手のひらに先生がやってくる「スマホ家庭教師」

株式会社マナボ 代表取締役社長 三橋 克仁

学習時にスマートフォンを通じて質問すると、全国各地にいる大学生の“チューター”がリアルタイムで教えてくれるスマホ家庭教師「mana.bo(マナボ)」。教育界に革新を起こすサービスとして、業界内外の大手企業から熱い注目を浴び、次々と提携や協業を成立させている。株式会社マナボ(東京都渋谷区)の三橋克仁氏に、サービスの未来像や大手との提携について聞いた。

 

誰でも高度な指導を安価に受けられるサービス

—— スマホ家庭教師「mana.bo(マナボ)」は、スマホさえあれば、誰でもすぐに高度な指導が安価で受けられるというコンセプトは画期的です

自社で展開する「mana.bo」に加え、ベネッセコーポレーションさんと共同で「リアルタイム家庭教師」という名で2014年4月からサービスを提供してきました。両方ほぼ同じ内容です。

専用アプリをダウンロードし、教科書や参考書などをカメラで撮影して送信すると、チューター(個人指導を担当する教師)である大学生からチャットや音声通話、ホワイトボードを通じて指導が受けられるという仕組みです。問題の解き方だけでなく、勉強法や試験対策、学校や学部選びといった相談も受け付けています。
土日祝日を含め毎日19時から23時まで利用ができ、月に1時間利用いただける基本料金プランは3,500円です。利用時間によって追加購入も可能です。

教える側のチューターは、東大や早慶、国公立などの現役大学生や医学部生などを中心に1,800名以上が評価やプロフィールとともに登録しており、ユーザが自分に合いそうな人を自由に選べます。もちろん、自分が目指す大学や学部に在籍している人に指導をお願いすることもできます。

2015年9月には「東大家庭教師友の会」を運営する株式会社トモノカイさんと業務提携したので、これからチューターの数を増やし、質をさらに上げていく計画です。

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世界的なサービスを肩を並べるユーザビリティのための努力

—— 三橋社長は東大大学院の工学系研究科時代に、受験生向けのコミュニティ「東大ノート」を自ら開発した経験を持つなど、マナボは技術者集団というイメージがありますが、mana.boの開発時に技術面で苦労した部分はありますか

インターネット上からリアルタイムで指導を行う、という環境を築くためには、チャットと音声、ホワイトボードがシームレスに繋がる必要があります。多くの人が同時に接続した状態であっても、快適なレスポンスを確保するとともに、生徒側の通信環境も考慮しなければなりません。こうした技術的な課題をひとつひとつ解決してきました。

中高校生のユーザからは、LINEやFacebook並みのレベルで快適に使える環境を当然のように求められます。我々はわずか20名ほどのスタートアップですので、難易度はきわめて高いのですが、そのクオリティに近づけるよう懸命に努力を続けています。

機能追加や改善は常に行っており、現在持っているアイデアだけでも300近くあります。実際に70ほどでは要件定義を行っていて、うち20は実装へ向けて動いているところです。

 

—— mana.boの新たな機能としては、どのような構想を持っていますか

過去に指導を受けた際の音声やホワイトボードのデータをいつでも再生できるようにしたいと考え、開発に取り組んでいます。

また、ホワイトボードに手書きされた文字や図表などのデータを言語化することで、過去にどのような分野のどんな問題で指導が行われたのかということが把握できるようになれば、ユーザの方が投げかけた質問に対し「過去にこんな形での指導が行われています」とレコメンドも可能です。

これまでに10万問の指導実績が蓄積されていますので、中高生向けの教育プラットフォームとして、これを無料で提供できるようにしたいですね。

——マナボが開発した「リアルタイム指導」の仕組みは、中高生向け以外にも展開ができそうです

医療分野や社会人の教育分野など、さまざまな企業からシステムを活用できないだろうか、とのご相談をいただいています。

ただ、われわれには「出自に関係なく、誰もが勉学で道を切り拓くことのできる世界を創る」という大きな目標を達成しなければなりませんので、中高生の教育分野以外へ進出することは今のところ行っていません。

 

スタートアップならではの世界観を伝えるための第三者としてのCreww

—— Crewwに登録をいただいていますが、どのようなことを期待していますか

KDDIのベンチャー支援プログラム「∞ Labo(ムゲンラボ)」の3期生(2013年)なのですが、そこを通じてCrewwを知り、登録をさせていただいています。

Crewwを通じ、サービスや会社の認知度向上や、優秀な人材獲得という面で期待を持っているところです。

 

—— ベネッセをはじめとした大手企業との提携や協業が多いマナボですが、大きな企業と仕事を行ううえで、どのような点に気をつかってこられましたか

2012年からベネッセさんと仕事をさせていただいていますが、サービスを共に開発するうえで、法律やセキュリティ面では苦労もしましたが、こうした経験のお蔭で大手企業の感覚が理解できるようになりました。

当然ですが、大手企業はわれわれのようなスタートアップとは文化やスピード感も異なります。法令順守の姿勢がより強く求められるため、サービスを行ううえでは法務的な部分から厳しい制限を受けることもあります。そうした感覚を尊重しながら、ともに歩み寄る姿勢が重要だと思いまっています。

また、事業部門と法務部門など、会社内の組織で見解が異なることもありますので、どこで折り合いをつけるかの判断が大事になってきます。

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—— 大手企業とのコラボレーションをどのように切り拓いていくべきかに悩むスタートアップが多いのも現状です。最前線で交渉を担ってきた三橋社長からぜひアドバイスをいただけませんでしょうか

「もしかしたら、この人たちはすごいことをやるかもしれない」と思ってもらえるように、スタートアップが実現したい世界観をストレートに伝えることが重要なのではないでしょうか。

最初は組織も小さく、資金も少ないスタートアップですが、目指すべき世界観を伝えることで、「今はまだない未来」に期待感を持ってもらうことがまず大事だと感じています。

—— ありがとうございました

取材先:スマホ家庭教師 mana.bo (マナボ) https://mana.bo

 


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コラボ先へのメリット提示が重要 IR情報も活用して課題を見つける

株式会社Warrantee(ワランティ) 代表取締役 庄野裕介

電化製品などの保証書をスマホのカメラで撮影すると電子化され、保証期間などの管理ができるサービス「Warrantee」を2014年3月に開始した株式会社Warrantee(大阪市中央区)は、Crewwへの参加後、大手企業とのコラボレーションを相次いで決めている注目のスタートアップ。他に例を見ないユニークなビジネスモデルと、コラボを成功させるためのポイントを庄野裕介氏に聞いた。

保証書の電子化・管理サービスが持つ広がりと有望性

―― 庄野社長は京都大学で理系の学部から経済学部に転部し、卒業後にすぐ起業するというめずらしい経歴をお持ちです

元々は研究者を目指して入学したのですが、「自分には研究職は向いていない」と感じ、4年生の時に経済学部へ移っています。結局、大学へは計6年間行ったことになりますね……。

経済学部で出会ったゼミの先生がセブン・イレブンチェーンのPOSシステム開発に深く関わっていて、ここでITの重要性を認識させられることになりました。卒業後は大手のシステムインテグレーター(SIer=エスアイアー=企業システムの構築・運用会社)に内定をいただいたので、そこへ就職してITエンジニアの修行をするつもりでした。

 

―― ところが起業に踏み切ってしまう

大学卒業の間際に大阪市が主催する米国シリコンバレーツアーがあり、ここに参加したことがきっかけです。グーグルなどの名だたるIT企業を見学できただけでなく、現地では短時間のプレゼンも行えたのですが、ここで保証証を電子化するビジネスを提案したところ、出資が決まりました。内定していた大手SIerさんには申し訳ない気持ちでしたが、起業を決断し、現在にいたっています。

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―― そして、大学卒業後の2013年4月に大阪で起業することになります

出身は東京なのですが、大阪市内のほうがエンジニアを採用しやすいとの思いがあり、現在は関西一の金融街である北浜にオフィスを置いています。ただ、今はどうしても首都圏へ出張する機会が多いですね。

 

―― 事業の柱である「Warrantee」はどのようなサービスですか

無料アプリをダウンロードし、スマホのカメラで保証書や購入時のレシートなどを撮影すると電子化され、各製品の保証期間などを容易に管理ができるようになるサービスです。紙の保証書ですと、いつの間にか紛失するなどして必要な時に見つからず、保証を受けられないことがあります。電子化しておくことで、保管の手間を大幅に減らすことができます。

また、登録した製品の説明書が閲覧できたり、アプリ上から簡単にメーカーへ修理依頼することも可能です。サポートセンターへ電話をかけたり、購入店へ持ち込む必要がなくなります。

将来的には電化製品の売却サポートや、家電の処分時に回収の申し込みができるようなサービスも予定しています。

 

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―― Warranteeのビジネスモデルを教えてください

ユーザからお金をいただくことはありませんので、電化製品メーカーやIT関連サービスを行っている企業とのビジネスが中心となります。電化製品の保証書を通じ、ユーザの購入履歴や嗜好が分かりますし、メーカーの正規修理へ繋げることもできます。買い替え時期になると、メーカーから適切な案内を行うということも考えられます。

Warranteeでは、保証書だけでなく、契約書の電子化と管理できますので、たとえば携帯電話契約の更新月に、MVNO(格安スマホ)を案内する、といったことも可能です。単に保証書や契約書を電子化するだけではなく、製品の「アフターサポートにおけるプラットフォーム」を目指していますので、さまざまな形のビジネスに発展させていけると考えています。企業の方々にはCRMツールとして使っていただく、というイメージです。

 

―― そうした高い可能性が評価され、Crewwでは次々とコラボを成立させていますね

以前、大阪市で開かれたあるピッチに参加したところ、Crewwの伊地知天(いじちそらと)さんが審査員をつとめており、それがきっかけで登録しました。大変ありがたいことに、これまで5社のコラボに応募しましたが、このうち3〜4社から引き合いをいただいています。CRMという部分で評価されているのかもしれません。

 

―― すごい確率です。大手企業に採択されやすくするコツか何かがあるのですか?

コツというわけではないのですが、コラボ先の大手企業に利益をもたらせそうにない場合は応募をしていません。必ず先方のメリットを提示できるように努力しました。

とはいえ、まだまだ小さな組織ですので、できることには限りがあります。背伸びして先方に迷惑をかけることがないようには心がけています。先方企業が抱えている課題は調べる方法としては、上場企業の場合は、IR(インベスター・リレーションズ=投資家向け)情報に掲載されているケースが多くありますので、必ず読むようにしています。特に決算説明資料には大きなヒントが隠されているんです。

 

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―― これまでコラボに応募してきたなかで、感じたことはありましたか

やはり組織が大きい企業の場合は、少し動きが遅いと感じることもありましたが、今は慣れたこともあり、「当たり前」と理解できるようになりました。それよりも、先方企業内で明確な目標設定や課題意識が共有されていない場合は、どうやって提案すればいいのか迷うことがありますので、方向性を示していただけるとありがたいです。

ただ、Crewwに参加しておられる大手企業のほぼすべてが、スタートアップのサービスを導入したいとの姿勢が強いので、非常にやりやすいと感じています。また、最初のやり取りはチャットやメールが中心ですので、大阪にいても苦労することがないのはいいですね。その後、実際に先方企業とお会いできると、議論がふくらみますので、新しいことが生まれやすくなります。

 

―― Crewwに参加しているスタートアップのみなさんにアドバイスをお願いいたします

我々はクックパッドから投資を受けていますが、「料理レシピ」と「保証書の電子化」とは一見すると関係が薄いように思えます。しかし、料理には家電が必要だ、と考えれば関連性が見えてきます。近い業界よりも、遠い業界との組み合わせの方が、意外性のあるコラボが可能となり、かえって
上手くいくのではないかと思っています。

―― ありがとうございました

取材先 : 株式会社 Warrantee   http://www.warrantee.jp

 

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“不満ビッグデータ”を活用して 大手と改善事例を作るのが目標

株式会社不満買取センター 代表取締役社長 鈴木翔一朗

社名をいちど聞くと忘れられない! そんなスタートアップが株式会社不満買取センター(東京都新宿区)だ。その名の通り「不満」を買い取るビジネスを展開しています。2012年6月の創業以降、ユニークな社名と業務内容だけにテレビや新聞などのマスコミに度々登場。抜群の知名度を誇ります。2014年12月には転職サイト大手のエン・ジャパン傘下となり、開発や営業スタッフを大幅に拡充できたことでサービスにも磨きがかかる。Crewwを通じ、大手企業との成功事例を作りたいという鈴木翔一朗氏
に話を聞いた。

 

独自開発した言語解析技術で不満データを活用

―― 不満買取センターは、社名もコンセプトもとにかくユニークですね

社名の通り、個人の方からどんな不満でも買い取っています。これを専門でやっている企業は世界で弊社だけではないでしょうか。おかげで今も月に2~3回はテレビなどから取材をいただいています。

不満内容は主に商品やサービス、施設などに関するものを対象としていますが、なかには「毎日ダンナの帰りが遅い!」なんていう個人的な内容も寄せられます。

たとえ、個人の人間関係に関する不満であっても基本的には買い取っています。不満があったらまず弊社に投稿してもらう、という習慣にしていただきたいとの思いがあるためです。

 

―― どんな方が不満を投稿しているのですか

今年3月18日に不満を投稿できるアプリの提供を始めたのですが、8カ月ほどで累計会員数が25万人を超えました。特に多いのは主婦の方です。そのため、化粧品や美容関連の不満に関しては高く買い取っています。また、商品やサービス名、状況など具体的な内容が書かれた不満はポイントが高くなります。

買い取りは「ポイント」で行っていて、1ポイントでAmazonギフト券1円分となり、500ポイント以上貯まると交換ができます。

不満の内容にもよりますが、1つの不満投稿で最大10ポイントで買い取っています。現在は最大50ポイントまで買い取り額を拡大するキャンペーンを行っています。

 

―― 不満買取センターのビジネス(マネタイズ)面を教えてください

個人から買い取った不満を、法人向けにレポート提供するという形のビジネスです。現在、150万件以上の不満をデータベース化しており、独自で開発した言語解析技術により、内容の自動分類が可能です。依頼のあった企業ごとに、データサイエンティストが分析して詳細なレポートを作成しています。

多くの消費者は普段は声をあげません。そのため、企業側からは消費者が何を考えているのか見えづらいものですが、不満データを使えばそれを可視化できる、という点で評価をいただいています。消費者の本音に迫る生の声は、集めやすそうに見えて集めづらいものです。

弊社には毎月大量の不満データが集まってきますので、今後は業界ごとの不満ランキングなども発表していきたいですね。シンクタンク的な存在になろうとも考えています。

ビジネス向け以外にも、不満ビッグデータを使うことで、「福山雅治の結婚発表後、『結婚相手が不満』の声が約1割」や「『夫への不満』、過去半年間一番多かった不満は、 『家事を手伝ってくれない』の声が約2割」といった調査結果も既に発表しています。

 

Crewwに参加したのはどんなきっかけでしたか

以前からCrewwの存在は知っていましたが、社内からコラボレーションに参加したいとの声が上がってきたことがきっかけです。主に弊社CTO(最高技術責任者)の中島正成が中心となって取り組んでいる最中です。

弊社の不満ビッグデータや自然言語解析を活用していただけるコラボ先を探しているのですが、ありがたいことに関心を持っていただける大手企業は非常に多いですね。特に言語解析という面に価値を見出していただいています。

今日もちょうど、これからプレゼンテーションに参加させていただくところだったりします。

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―― Crewwを使うことで、どんなシナジーがありましたか?

プレゼンテーション時は、先方企業から有益なフィードバックをいただけるのは大変ありがたいと感じています。この先、実際に大手企業とコラボをさせていただき、不満データを使った商品やサービス改善の成功実績を作るのが大きな目標です。

そのためにも、われわれも単なる不満データを提供するという提案ではなく、先方企業のために何ができるのかを提示しなければならないと強く感じているところです。

 

―― 不満データを使ってサービスや商品の改善に成功した事例を作るために、どんな企業とのコラボを考えていますか

今、Crewwを通じてお話が進んでいるのは、リサーチの新しい手法を共に生み出そうというコラボです。不満データは不特定多数の中における生の声ですので、調査側のバイアスがかかったり、恣意的になったりする心配がありません。覆面調査との組み合わせや、本調査前のプレ調査に使っていただくなど、さまざまな活用が可能です。

女性が投稿する不満データが多いため、化粧品やキッチン用品、食料品などを扱う企業の方とコラボができれば、と期待しているところです。

 

―― Crewwに参加しているスタートアップへ、コラボを成功させるためのアドバイスをお願いいたします

大手企業の課題に合わせた提案を行うのは当然なのですが、スタートアップの場合、あまりに合わせすぎて自社の目標を見失ってもいけませんので、そのあたりのバランス感覚が大切なのではないでしょうか。

Crewwに参加している大手企業は課題意識が明確で、熱量が高いというイメージがありますので、弊社としても期待を持ってコラボの取り組みを行っていきたいと思います。

 

―― ありがとうございました

※写真の鈴木社長が手にしているのは同社キャラクターの「ふーまん」です
取材先 : 不満買取センター http://fumankaitori.com

 


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大企業と一緒に同じスピード感で何かを生み出せるのが魅力

株式会社BearTail(ベアテイル)代表取締役 黒﨑賢一

スマホでレシートを撮影するだけで内容を読み取ってくれる全自動の家計簿アプリ「Dr.Wallet(ドクターウォレット)」で知られるのが株式会社BearTail(ベアテイル、東京都千代田区)です。筑波大学発のエンジニア集団として2012年6月の創業以来、社会の道しるべとなるような斬新サービスを相次ぎ発表してきました。一方でCreww(クルー)が大手企業とのコラボレーションマッチングを開始した当初から参加しており、既に日本を代表する大手新聞社とのコラボも決定しています。BearTailの黒﨑賢一社長に事業の展望や、大手企業とのコラボのあり方について話を伺いました。

 

大学3年生で起業、全自動の家計簿アプリを開発

―― もともと黒崎社長はIT系のメディアでライターをされていたそうですね

高校生の頃からソフトバンク系のメディアで、ウイルスソフトの紹介記事などIT関連の内容を書かせていただいていました。ライターのアルバイトを通じてまとまったお金が貯まったので、卒業旅行でインドへ行ったのですが、そこで少し価値観が変わりました。

インドの人々は1日数百円のお金で懸命に暮らしていますが、私はといえば、自分で稼いだお金とはいえ、高校生の身分なのにそれなりの収入があり、不自由もなく暮らしています。「こんなぬるま湯の中にいて大丈夫だろうか。本気で働かなければ」と感じ、これが後の起業に繋がったのかもしれません。

 

―― 筑波大学への進学後は何か変化がありましたか

良いのか悪いのかは分かりませんが、勉学よりもライター業によりのめり込みました。自分の書いた記事が無数の人に読まれ、多くの人に影響を与えるという仕事に魅了され、1日に10本くらい記事を書いていたことさえありました。そのため、学業には目を向けていられないという弊害はありましたが……(苦笑)

 

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―― そして大学3年生の時に起業に踏み切ります

取材して記事を書いているのはもちろん楽しいのですが、いつしか「紹介する側」ではなく、「紹介される側」になりたいと思ったことが一つのきっかけです。8畳しかない私のアパートに同級生4人が集まって会社を立ち上げました。“オンライン墓地”とか、筑波大学周辺の情報マッチングサイトとかECの最安値自動購入サービスとか、とにかく色んなサービスを立ち上げましたね。

 

―― さまざまなサービスを立ち上げたなかで、家計簿アプリ「Dr.Wallet(ドクターウォレット)」が生まれたのですね

それぞれのサービスを運営するなかで、解決しがたい課題も見えてきました。たとえば、各ECサイトの最安値を自動で探し出して購入するサービスの場合、人によっては最安値よりも最速で届けてくれことを望む場合もありますし、保証が充実している店の方がいいという人もいるでしょう。個々人に応じた最適化が難しかったのです。

ただ、こうしたサービスの開発を通じて「買物が人生を変える、モノによって人生が変わるのではないか」という思いが生まれ、“購買”に焦点を絞ったサービスを考えた末、購買を管理する「家計簿」という形に行きつきました。2012年ごろから開発をはじめ、実際にリリースできたのは2013年です。

 

―― 現在、多くの家計簿アプリが登場していますが、Dr.Walletはどう差別化を図ってきたのでしょうか

スマートフォン(スマホ)のカメラでレシートを撮ればデータ化ができる、という点では同じですが、われわれが開発したDr.Walletは、裏側でオペレーターがすべて手入力しているのが特徴です。OCR(光学文字認識)でデータ化するケースと比べ、ほぼ間違いはないですね。手入力している家計簿アプリは日本で初めてです。

現在、全国2500人ほどのオペレーターを確保しており、クラウドソーシング的に働いてもらっています。ユーザのみなさんには正確な入力という面を高く評価いただいているためか、アプリの継続利用率が非常に高く、ある調査ではトップになりました。

 

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―― Dr.Walletは120万ダウンロードを誇るアプリに育ちましたが、ビジネス(マネタイズ)面での展望を聞かせてください

これまでの2年間は、アプリをより良くすることだけにひたすら注力してきましたので、本格的なマネタイズは来年から取り組む予定です。機能を強化した有料版を設定するなどの「フリーミアムモデル」はもちろんですが、一方で広告モデルも見込んでいます。

たとえば、利用者が特定の商品を購入した場合は、レシートによって分かりますので、キャッシュバックキャンペーンを行ったり、クーポン券を出したりして、店舗への送客や販売促進を行うといったビジネス向け(BtoB)の事業を考えており、これは既に試行しています。

 

―― そんななか、Creww(クルー)に参加したのはどんなきっかけだったのですか

2年ほど前、弊社に出資いただいているベンチャーキャピタルの方に「参加してみては」と勧めていただきました。Crewwが始まって間もない頃ですので、ある意味で今では“古参”かもしれませんね(笑)

 

―― Crewwで活動したなかで感じたことはありましたか

最初は「大企業の人に会ってみたい」という単純な動機があったのですが、とにかく前向きな話をできるのが非常にいいですね。担当者の方もスピード感があって新しい何かが生まれやすい雰囲気がありますし、プレゼンテーションの時以外はオンラインで完結するのも効率的で気に入っているところです。

あと、Creww自体はマッチングプラットフォームとして黒子に徹していますが、実に良い仕組みなのですから、ベンチャー企業としてもっと目立ってもいいのでは、ということは感じています。

 

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―― 既に大手新聞社とのコラボレーションが決まっています

先方にプレゼンした時は、幹部の方の多数いらっしゃったのでさすがに緊張しましたが、普段はピッチ(短時間プレゼン)ばかりだったので、Crewwのプレゼンでは担当者の方から具体的で適切なアドバイスをいただけるのは非常にありがたかったですね。

16社が参加したなかで、コラボ先として選んでいただけたのは素直に嬉しかったです。

 

―― これからCrewwに参加したり、コラボにエントリーするスタートアップへのアドバイスをお願いします

スタートアップですから、自らが目指す方向性や夢はしっかりと持つのは当然ですが、“我が道を行く”という姿勢ばかりではなく、コラボ先の企業が何をやりたいのか、優先度が高い分野はどこなのかをきちんと理解し、そこに合った提案を行うことが大事なのではないでしょうか。そのため、先方の担当者とよく話し合いながら提案に落とし込んでいく作業は不可欠です。

大企業とのコラボということで、そのインフラを使った壮大な事業提案をしたくなる気持ちは分かりますが、相手側も大きなリスクを背負うことになるため、慎重にならざるを得ません。まずはスモールスタートでのコラボを提案し、それが上手くいったら次のステップに、という考え方も持っていただけたらと思っています。

取材先 : 株式会社 BearTail http://beartail.jp/


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IoT × ハードウェアの観点から考える快適さの向上

株式会社NAIN 代表取締役 兼CEO 山本 健太郎さん

“1秒でコミュニケーション”をコンセプトに、会社の中にある「行き先掲示板」のように、登録した位置情報をメンバーに共有するサービスを提供する株式会社ネイン。2014年に創業された若いスタートアップだが、創業の背景には、AppleやGoogleがソフトサービスを展開する市場環境、ハードメーカーとしてできることを追求した結果の創業だ。

 

モノを使うことで、生活が快適になるところまで設計する

パイオニア株式会社でグローバル市場向けのカーナビや車載インフォテイメント機器の開発や企画を担当している頃、そこで使われるサービスはAppleやGoogleのサービスになり、自社では箱だけを作っているような気持ちがありました。結局、ハードがどう使われ、ひとの生活を変えていくのかが重要だと考えるようになりました。

そこで着目したのが、移動中の連絡です。車内で地図を見ることや音楽を聴くことは成熟市場ですが、例えば、運転中に掛かってくる電話やメールは運転者にとっては非常に大きなストレスになります。そのストレスを解消することができれば、車を運転している時はもちろん、自転車に乗っている時、歩いている時といった移動中のコミュニケーションのストレスを減らせるのではないか? と考えました。
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気付かないことにしているストレスを解消する

例えば歩きスマホをしている人を街中多く見受けますが、車を運転中にスマホを凝視したら大事故につながってしまいます。車を運転しているときにポケットのスマホが着信を知らせたらものすごいストレスになると思いますが「そういうもんだ」と諦めていますよね。そんな風に「そういうもんだ」と思い込んで流しているストレスは日常の色々なシーンに潜んでいて、それを取り除くことができれば利用者にとって便利なものになるのではないかと考えています。

Facebookの実名公開も当時は非常識でしたが、今や普通のこととなっています。現状では、自分の居場所をリアルタイムに発信することに抵抗を覚える人もいますが、今後は常にリアルタイムに情報発信していき、それを共有していく世の中になるのではないかと思っています。モバイル、ウェアラブルでその人の予定がわかり、さらに自動で行き先が記入され、どこにいるのか、わざわざ聞かなくても良い。これこそ無自覚のストレスを解消できるパーソナルアシスタンスサービスになっていってくれると嬉しいです。

 

時代の流れと組織経験が覚悟させた起業

もともと新卒でパイオニア株式会社に入社した頃から起業したいという想いはありました。.comやweb2.0、スマートフォン台頭の時代にもアイデアはあったのですが、いまひとつ踏ん切りがつかずにいました。ところが、ここに来てIoTという流れがあり、この市場は大きくなりそうだと確信し決断ができました。これから2020年まではチャンスだと思います。

現在、38歳ですが、企業に属していたおかげで色々な経験を積むことができました。修羅場も経験して大体の苦しさは経験してきたおかげで耐性がついていることも、今回起業しようと決断したきっかけのひとつかもしれませんね。

 

独自の目線でIoT時代にチャンスを発見

IoT市場の中でビジネスをやる時に、車に関連する仕事をしてきた経験が応用できると考えています。

車の中では瞬時に判断して瞬時に行動しなければなりません。地図を操作するにしても、音楽を聴くにしても、分かりやすく、操作しやすいことが重要です。

例えば画面上で、どのくらいの絵の大きさや文字の大きさ、情報量が、瞬時に判別しやすいか? 何ステップで操作を完了させるのか? どういうやり方でアシストしてもらうのが快適なのか? そのための技術などは秘伝のタネというか、どこにも教科書はなくて、その分野で仕事をしてきた暗黙知や経験知をもった自身の強みであり、解決のためのノウハウを活用できる市場こそ、IoT市場ではないかと考えています。

 

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動き続けることで不安を解消する

一歩踏み出したら、大学の同級生、イベントで話に割り込んできた若手エンジニア、前職の生意気な部下といった思いもよらないところから自分のできないことをできるメンバーが集まってくれました。

苦労したのは、社員の勤務時間など労務のルールづくり。あとは『HARD THINGS』という本に書いてあるとおり、財務部分については毎日胃が掴まれるような思いというのはしていますね。

よく「走り続けなくてはいけない」という言葉がありますが、走り続けないといけないから走っているのではなく、休んでいると不安で却ってストレスが溜まりそうなので走り続けています、笑。

人の生活になくてはならないサービスに育てていきたい

また、スタートアップというと、初めに多くのユーザーを抱えることを考え、それからビジネスとして儲けることを考えることも多いのですが、最初からお金をまわしていけるようなロードマップをつくっています。資金調達が目的になって、道を見失ってしまうことを危惧しています。

会社の役割には、経済効果もあれば社会貢献もあり、財務、労務、人事など考えなければいけないことも多いのですが、プロダクトを多くの人に届けることができ、幸せになる人が増えることがゴールです。サービスが愛され、自然に人から求められるものになることを目指しています。

 

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後記
大学の同級生、イベントで話に割り込んできた若手エンジニア、前職の生意気な部下。不思議な縁でつながっている株式会社ネイン。ご自身の経験と市場を冷静に見極め、すばやく方向転換できるという側面と会社経営という未知の領域には真摯に向かい合える非常にバランス感覚に優れた経営者が率いるスタートアップだと感じました。会社の「行き先掲示板」もIoTになるとその使い方で、利用者の無自覚のストレスを解消してくれそうです。

取材先:NAIN http://www.nain.jp 聞き手:瀬川 栄樹