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オープンイノベーション加速へ向け キヤノンMJが社内で大規模報告会

キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は2016年4月からに開始したCreww(クルー)のオープンイノベーションプログラムについて、コラボレーションを予定するスタートアップ3社を招き、自社とグループの社員向けに進捗状況の報告会を8月4日に行いました。当日はキヤノンMJの品川本社に約60名が集まったほか、全国のグループ社員にもライブ中継を実施。スタートアップとの共同展開を見据え、熱心に耳を傾ける姿が見られました。

スタートアップ67社から応募を集める

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キヤノンマーケティングジャパンでオープンイノベーションを担当するチームメンバーと報告会の登壇者ら

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キヤノンMJの品川本社には同社社員やグループ社員ら約60名が集まった

「製品販売を超えた価値創造を」とのテーマで2016年4月に始まったキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)によるCreww(クルー)のオープンイノベーションプログラムでは、予想を大きく超える数のスタートアップから応募が集まりました。

夕方18時前から始まった社内向けの説明会では、キヤノンMJでスタートアップとの窓口となっている総合企画本部経営戦略部部長の横坂一さんが「エントリーいただいた数十社の中から、6社がプレゼンテーションに進み、現在は3社とプロジェクト化を進めている最中」という現状とともに、これまでの経緯を丁寧に説明しました。

続いてCrewwの担当者である李東徹が登壇し、世界におけるオープンイノベーションの動向を解説。そのうえで、キヤノンMJが行ってきた取り組みについて「各カンパニーからメンバーが集まり、オープンイノベーションのチームを結成したケースは非常にめずらしい」と紹介しました。

「EOS」とビジネス動画ソリューション

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フレイ・スリーの石田貢CEO

キヤノンMJと取り組みを始めているスタートアップのなかで、最初に登壇したのは、3ステップで簡単にビジネス動画を作成できるソリューション「1Roll for Business(ワンロール・フォー・ビジネス)」が話題を集める株式会社フレイ・スリー(Hurray3、東京都港区)の石田貢代表取締役CEOです。

フレイ・スリーは、 CMの映像制作を軸とした事業を展開するピラミッドフィルムグループから2012年に生まれたスタートアップ。“短時間映像のプロ”として蓄積したノウハウを応用し、誰もが手軽にプロの動画を作成できるサービスを展開しているのが特徴です。

石田CEOは「1Roll for Businessでは不動産や人材採用、教育、eコマースなど、業種ごとに500を超えるテンプレートを用意しており、自社で簡単に動画作成ができることから、様々な業種で導入が増えている」と紹介しました。

動画撮影デバイスを取り扱うキヤノンMJとの相性は良好で、今後はそれらのデバイスと1Roll for Business との連携も見据えながら、法人顧客における動画作成ニーズを開拓していく計画です。

IoT時代ならではのサービスと連携

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Z-Worksの小川誠社長

続いてプレゼンテーションに臨んだ株式会社Z-Works (ジーワークス、東京都新宿区)の小川誠代表取締役社長は、「IoT(アイオーティー=Internet of Things)」と呼ばれる“モノのインターネット”時代の進展を見据え、様々なセンサーを活用した家庭向け「スマートホームIoT」の各種サービスを紹介しました。

同社の特徴は多種多様なセンサーを連携させるクラウド型のIoT基盤を提供していること。センサーを通じてデータをクラウド上に集めて解析し、スマートフォン(スマホ)上からのデータ閲覧や遠隔操作などを可能としています。

「こうしたIoT技術を活用することで“頑張らずとも続けられる介護”が実現できる」と小川社長は言います。その一つとして、同社が開発した「LiveConnect(ライブコネクト)」を紹介。リアルタイムで家の状態が確認できたり、生活の不安を解消したりできる機能を備えたアプリで、介護時の見守りサービスへの活用が期待されています。

このほか、部屋の鍵や管理への展開も容易なため、一般の民家を宿泊場所として活用する“民泊”や不動産業界などに展開することも視野に入れているといいます。今後、介護分野を中心として、キヤノンMJグループと幅広い分野での連携が期待できそうです。

法人市場でニーズが広がる音声認識

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Hmcommの三本幸司社長

3社目として登壇したのはHmcomm(エイチエムコム)株式会社(東京港区)の三本幸司社長。動画・音声コンテンツをアップロードするだけで、自動的に音声を文字データ化する法人向けの音声認識サービス「The Voice JP」を紹介しました。

同社は国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)で開発された技術の移転を受けた「産総研技術移転ベンチャー企業」として知られています。

「音声認識の市場は大幅な拡大が予想される」と話す三本社長。同社の特徴は、AI(人工知能)をとりいれた音声認識プラットフォームを構築していることです。自然な発話での音声認識を実現する音響学習技術をはじめ、社内データやインターネット上のテキストデータから最新用語や話題の学習を行うことで、日々認識機能が進化し続けていくため、ビジネス現場で活用するうえでも大きな強みとなりそうです。

現在、キヤノンMJとのPOCが実施されており、キヤノンデバイスとの連携ソリューションなど、ビジネスシーンへの応用を検討しています。

大手企業の事例紹介や本音での議論も

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NTTデータの残間光太朗さん

今回の社内向け説明会では、協業を予定するスタートアップの紹介だけでなく、大企業でオープンイノベーションに取り組んでいる事例として、NTTデータからイノベーション推進部オープンイノベーション事業創発室長の残間光太朗さんを招きました。

残間さんはNTTデータでオープンイノベーションを推し進める一環として、「豊洲の港から」という定期イベントを企画したことでも知られています。これまでの経緯や知見を紹介するとともに、「さまざまな人々を巻き込んで、日本から世界を変えるソリューションを生み出したい」という目標や意義を熱く語りました。

その後、登壇したスタートアップ3社と残間さん、キヤノンMJで新規事業の創造・推進を担当する総合企画本部経営戦略部新規ビジネス推進課課長野間隆運さん、司会としてCreww担当者の李をまじえた6人で「事業創造の取り組み」をテーマにパネルディスカッションも開催。起業の経緯や、スタートアップ企業と大企業の協業のあり方など、時に本音の話も飛び出す白熱した議論が交わされました。

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キヤノンMJの野間隆運さん

キヤノンMJの野間さんは、「オープンイノベーションを行うまでに2年間の時間を要し、これからもハードルは出てくると思うが、何とか乗り越えていきたい」と宣言し、会場に集まった社員やグループ企業の社員に対し「ぜひ輪のなかに入って、応援してほしい」と語りかけ、オープンイノベーションの成功へ向けてさらに多くの社員を巻き込む意欲を見せていました。

 


キヤノンマーケティングジャパンによるcrewwコラボ(2016年4月)
フレイ・スリー代表取締役CEO・石田貢さんのcrewwページ
株式会社Z-Worksのcrewwページ
Hmcomm株式会社「The VOICE JP」のcrewwページ
NTTデータのオープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」の紹介
キヤノンマーケティングジャパン・野間隆運さんのcrewwページ

 
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IoT時代ならではのアイデア形に サッカー界に変革もたらす開発

株式会社アップパフォーマ 代表取締役CEO 山田修平氏

株式会社アップパフォーマ(京都市下京区)が開発するトラッキング(追跡)システム「Eagle Eye(イーグルアイ)」は、アマチュアサッカー界に大きな変革をもたらす可能性を秘めたIoT(Internet of Things=モノのインターネット)サービスとして、米国での世界的な家電見本市に出展するなど、量産実用化への期待が高まっています。スポーツ界の進化をITによって後押しする同社の山田修平CEOに開発の経緯や今後の展開を伺いました。

安価でサッカー選手の動きをデータ化できる

―― 「Eagle Eye(イーグルアイ)」はIoT(パソコンやスマートフォンだけでなく、あらゆるモノが常にネットに繋がっている状態)時代にふさわしいシステムとして注目を集めていますが、どのような形で活用するツールなのでしょうか

簡単に言いますと、サッカー選手の動きをデータ化し、それを解析するサービスです。選手の二の腕に装着してスイッチを入れるだけで、どのポジションの人がどんな動きをしたか、どれだけ走ったかなどが記録できます。これらの記録データは専用アプリで容易に確認ができるため、チーム全体のデータを統合することで、定量的にパフォーマンスの確認が可能となります。

近年は国内外のプロサッカーチームでは、動画解析などによってプレイの可視化が積極的に行われていますが、高額な費用が必要です。そのため、Eagle Eyeではアマチュアチームでも“データサッカー”が手軽に実践できるよう、1人あたり1万数千円の価格で販売するべく開発を行っているところです。

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―― IoTサービスを開発するうえで、あえてサッカー分野に特化して開発を行ったのはなぜでしょうか

私は学生時代に野球をやっていたので、最初は野球ボールで同じようなことができないかと考えました。ただ、野球は日本やアメリカではメジャースポーツですが、世界全体で見ると市場が小さい。サッカーだとほぼ全世界に広がっていて、アマチュアチームだけで30万以上あると言われています。

なにより、野球ボールのサービスだと、チームに1球だけあれば事足りてしまうので、これだと苦労して開発しても、ビジネスとして考えるとどうなのかと……。

―― 確かに、サッカーだと最低11人分のディバイスが必要になりますね。開発は2014年から始められたんですか

はい、最初は弁当箱にGPSやセンサーといったモジュールを入れたものを自分で作りました。実証実験では中学生に使ってもらったのですが、「これを付けると、全力で走っていないのがバレる!」という反応もありました(笑)

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米国の世界的な見本市「CES」で高い評価

―― そして翌年(2015年)早々には、世界的企業が新商品を披露する米国ラスベガスの家電見本市「CES(セス=コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」に出展を決めていますが、どんな背景があったのでしょうか

2014年12月上旬に経済産業省の「フロンティアメイカーズ育成事業」に採択頂き、3週間後に開催されるCESへ参加する機会に恵まれました。その後、さくらインターネットさんとサムライインキュベートさんが主催するベンチャーイベント「Startup Tour Japan 2015 in Kyoto」で高い評価をいただいたりと、昨年の中間評価に繋がったかなと思います。

といっても、スタートアップですので私一人でラスベガスの会場へ乗り込んで、現地のホームセンターで工具や材料を買って3日間不眠不休でブースを手作りしました。見本市の本番が始まる前に燃え尽きそうになってしまったのは危なかったです(苦笑)

CESは2016年も出させていただいたのですが、米国の方はベースボールやアメリカンフットボールのサービスではないと分かると残念な顔をしますが、逆に欧州の方には評判がすごく良いですね。日本よりも反応が大きく、手ごたえを感じています。

CESへの出展に加え、2015年はクラウドファンディング「マクアケ」でEagle Eyeの先行販売の募集を行い、66人の方から約110万円を出資いただきました。

2011年、関西へ戻り、起業は京都で

―― 山田CEOはわずか9歳でアマチュア無線の免許を取っていますが、幼少時から“理系分野”に興味が深かったのですか

小学校の時にはマッキントッシュが家にあったり、中学ではBASIC、高校ではプログラミング言語のPerlをやったりしていましたので、強い興味がありました。ただ、中学校と高校の時は野球に熱中し、大学では音楽イベントを行うことに熱中していましたので、途中で“休み”を挟んでいます。

―― そして大学卒業後は、誰もが知る著名な大手アパレルチェーンに入社しています

大学卒業から7年半の間、千葉、長野、沖縄、パリとさまざまな店舗を経験しました。途中からは店長となって店舗の責任者となりましたので、毎日20時間くらいは仕事していたかもしれません(苦笑)。マネジメントという部分では大きな勉強にはなりましたが、あまりに多忙な状態でしたので、起業なんて考えたこともなかったですね。

―― 起業に至るまでは試行錯誤の時期がありました

起業することになったのは、2013年に東京で開催されていたハッカソンで優勝をいただいたのがきっかけです。また、Eagle Eyeを開発する前には、Twitter関連など3つほどの新サービスを開発しています。

高校は大阪、大学は滋賀だったので、その中間である京都を拠点に選びました。今も本社を置いています。

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企業の看板ではなく人と人の関係が大切

―― creww(クルー)についてはどう思われていますか

もともと、ソーシャルリソースを上手く再配分するシステムが必要だと感じていましたので、「crewwのシステムはいいな」と思いました。昨年11月には大手企業のオープンイノベーション(コラボレーション募集)に応募し、現在は具体的なお話を進めさせていただいている段階です。

―― 大手企業とのオープンイノベーションを通じて、感じたことや、他のスタートアップへのアドバイスをお願いします

先方の担当者の方にリスクをどこまで理解していただけるかが大事なのではないでしょうか。まずはライトな形でコラボレーションを始めるのもいいかもしれません。

良いコラボレーションができるかどうかは、担当者の方の“気合い”のような部分も重要で、それがないとモチベーションが続きません。会社の看板ではなく、人と人という部分が一番重要だと思っています。

―― ありがとうございました。

 

取材先 : 株式会社アップパフォーマ(Eagle Eye)   http://upperforma.com/ja/

 

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2千円で買えるVRマシン「Milbox」がつくりだす未来のエンタメ

株式会社WHITE 代表取締役社長 神谷憲司

2015年7月、タッチインターフェース搭載型ダンボール製VR(バーチャルリアリティ)ゴーグル「MilboxTouch(みるボックスタッチ)」を発表した株式会社WHITE。2016年2月には、懐かしのゲーム「パックマン」のVR版ゲーム「MilboxTouch ver. VR PAC-MAN」の開発資金をクラウドファンディングのMakuakeで募り、MilboxTouchと「MilboxTouch ver. VR PAC-MAN」を4月上旬ごろ正式販売開始すると発表した。ダンボール製ゴーグルにアプリをインストールしたスマートフォンをセットするだけで、簡単にVR(バーチャルリアリティ:仮想現実)やVRゲームを体験できるサービスをリリースしたこの会社は資本金3000万円を株式会社スパイスボックスが出資し、2015年4月15日に設立。5月に営業をスタートしたばかり。にわかに活気付くIoTや、VRマーケティング市場で、広告マーケティング領域における深い知見やノウハウを生かしつつ、新しいテクノロジーを開発し、「面白い」に留まらない新しいテクノロジーへの希望を膨らませるコミュニケーションを実現している。

 

はじまりは広告代理店のなかに立ち上げられたR&D組織

株式会社WHITEの前身となる最先端デジタルテクノロジー研究所「プロトタイピングラボWHITE」はデジタルエージェンシー(デジタル広告代理店)であるスパイスボックス内に立ち上げられたR&D組織であった。その名前は、「デジタルの白(RGBの白)はすべての色彩を混ぜた色、強い色」ということからきている。現在の株式会社WHITEのURL http://255255255.com の数字はRGBを表している。

「プロトタイピングラボWHITE」の発表したものでは、2015年の3月に発表されたダンボール製ゴーグル「Milbox(みるボックス)」をご存知の方も少なくないだろう。手持ちのスマートフォンに専用アプリをダウンロードし、組み立て型のダンボール製ゴーグルに設置することで、バーチャルリアリティ世界を体験できる。これにより、斬新ではあったが、ハイスペックで生活に落としこむには遠かったVR技術が一気に身近になった。

デジタル技術が開発され、これまでにない体験が次々と可能になるなかで、技術を形にして、企業が使えるかたちにするプロトタイピングが自分たちの仕事です。自社のHPでテックトレンドニュースを出していたので、論文やハッカソンはよく追っていました。そうすると、テクノロジーがどう活用されるようになるのかが見えてくるんです。論文数が増えている領域は、投資が顕在化しはじめ、研究からビジネスになっていきます。

そういった領域のなかから、IoTとVRに絞りました。googleやfacebookも踏み込んでいるような分野に、異業種スタートアップとして自分たちが勝てるのは何かということで、元々はテクノロジーをテーマにした広告代理店ということを活かし、テクノロジーをコミュニケーションツールに落とし込んでいくビジネスモデルを立ち上げました。

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親会社からの独立。デジタルという見えない世界を可視化し、かたちにしていく

起業するときに、スパイスボックス内でも議論はありました。そもそも、IoTとVRが本当に来るのか確信を持てるようなデジタルネイティブが弊社を含めて、取引先などの経営層にいません。また、博報堂から子会社が独立していくという流れはありますが、その多くは親会社の事業を踏襲したクリエイティブ系で、弊社の場合、広告マーケティングというものと事業シナジーが違い、それこそ定款から違うので、完全別事業をやっているようなものなんです。

そこにどうやって理解を求めていったのだろうか? テクノロジーは説明しても伝わりづらいということで、簡易版の「Milbox(ミルボックス)」をリリースした。これは、2015年7月に発表したタッチインターフェース搭載型ダンボール製VRゴーグル「MilboxTouch(みるボックスタッチ)」のプロトタイプに繋がる。

「MilboxTouch」は、WHITEと明治大学 宮下研究室、サンメッセ株式会社との共同研究となっている。Milboxの筐体側面に導電性インクが印刷されたシートが挟まれており、そのパターンを触ることで、ゴーグル内のスマートフォンを操作することができる。このパターンの触り方を変えることで、タップやスクロール、スワイプといったスマートフォンならではの入力操作が可能になっている。特徴的なのは、ダンボールに導電性インクを印刷するというごくシンプルな方法でタッチ入力インターフェースを実現していること。これにより、タッチ機能付きVRゴーグルを安価に大量生産し、タッチ入力を活かしたVRコンテンツを提供することが可能となった。

WHITEのメンバーは、職人とテクノロジストで構成されている。そこに外部コラボレーションパートナーとして国際的に活躍するメディアアーティストの千房けん輔を迎えている。

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千房のようなメディアアーティストは新しいテクノロジーを使って、新しい体験価値をつくる先行プレーヤーと捉え、重要なポジションに入れています。千房が所属しているNYのニューインクで、インキュベート事業をはじめていて、そこと考え方が近いのですが、この点は大事にしていきたいポイントです。

また、テクノロジーを用いた広告は「面白さ」「目新しさ」の一発で終わるものが多いのですが、そうではなく、サービスに汎用性を持たせ、スケーラビリティを持たせることを意識しています。VRはいかに興味深いコンテンツがつくれるかが肝だと思っています。発明であり、商業として成立するサービスを実現していくために、持続可能性という視点で考えています。

取材先:株式会社 WHITE http://255255255.com

 


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クールであること以上に、問題を解決することを第一に

株式会社チカク 共同創業者兼代表取締役 梶原 健司

スマホで撮った子どもの写真・動画をそのまま実家のテレビへ配信するサービス「まごチャンネル」は株式会社チカクのサービス。ユーザーの声に耳を傾け、その声を製品に転換する、ちょっと普通ではない尖ったスタートアップに至るには色々な経験があった。

 

かっこよさ以上に、自分が本当に解決したい課題に挑む

Appleの日本法人に新卒から12年間勤務していましたが、自分で何かを創りだすことをやってみたいと思っていました。法人をつくることは、あまり重要なことだとは考えていなかったのですが、補助金の申請などで会社化しておいた方が色々とやりやすかったこともあり株式会社チカクを立ち上げた次第です。

「まごチャンネル」の原案は数年前からあったのですが、Appleに在籍していたのだから、「イノベーティブ」で「クール」なことをしないと周りから見てカッコがつかないんじゃないか? といった気負いや思い込みが、当時は正直あったと思います(苦笑)

そんななか、周りからどう見られようが、自分が個人としてまず解決したい問題をやろうと吹っ切れたタイミングがありました。事業規模や収益を一旦度外視して、やりたいことを突き詰めてみようと、今に至ります。

そういう背景もあり、あまり先の計画を立てないようにしています。市場環境の変化が早いので、計画に縛られすぎて変化に対応できなくなれば本末転倒です。何が最善かは環境やチームによるので一概には言えませんが、今この状況ではそれがひとつの正しい道だと信じて頑張っています。

 

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売ることに気を取られ、つくることをおざなりにする危険

スタートアップは当然人数が少ないので、焦って販路拡大へ進むと、結局リソースを販売へ割くことになり、つくることが疎かになってしまいます。販売力があれば、微妙な製品でも売れてしまうので結果としてコレで良い、ということになるのは結局製品を磨くことを疎かにしてしまうことになるので今の段階では優先度は低いです。

リソースがふんだんにある大手企業に比べてスタートアップが差別化できる部分があるとすれば、とにかくユーザーの声をどれだけ聞いているのかという部分でしょうし、これからいつまでチームがユーザーの声を聞きながら動き続けられるかということでしょう。

 

小回りを効かせた動きこそスタートアップの強み

技術背景の変化も非常に大きく寄与していて、大手企業は決してユーザーの声を無視して開発をしているとは言えないと思います。やりたくてもできなかったという言い方が正解かもしれません。どうしても大企業は新しい製品を作る場合1製品あたり10万個といった数をつくらなければならないので、前提としてできなかったのだと思います。

スタートアップはその辺が臨機応変にユーザーの声を反映させることができて、結果としてユーザー満足度の高い製品を比較的提供しやすい環境にあるかもしれません。

3Dプリンターの登場により、プロトタイピングに必要なコストが1桁下がったことも大きな要因ですが、それもうまく使っているところと、従来型の開発方法にこだわっているところに分けられます。

設計をしっかりして、試作に入る従来型のパターンは決して間違っていないですし正しいと思いますが、私も含めて若い研究者は、設計に多くの時間を割くのではなく、粘土をこねるようにどんどんつくって仮説検証を何度も繰り返すことが、結果としてアイデアを形にするスピードが早いことに気付いています。

とはいえ変化は今後も起きてくるはずなので、新しい方法論について自分自身も常に注目し、使いこなせるように自らを変化していけるように準備をしてなければならないと考えています。

 

デザインの新しさとユーザーの満足度の両立

「まごチャンネル」の発想は、例えば正月に会った孫も、次の年の正月に会うと、成長していますよね。前に会った時は、赤ちゃんという印象だったのに、次に会った時はもうペラペラしゃべっているという成長の過程も、おじいちゃん、おばあちゃんに楽しんでもらいたいというところからきています。

私たちはスマホやPCの操作には慣れているのですが、ユーザーのおじいちゃん、おばあちゃんにはTVとTVリモコンの方が慣れています。自宅のテレビに「まご」専用チャンネルをつくることがあれば、気軽に写真や動画を見ることができます。

デザインの面では苦労しました。製品的にいわゆる黒物家電にカテゴライズされると、元々のコンセプトと違ってしまう。まったく新しい製品と体験を訴求するには見た目から違うことが重要でした。

ユーザーテストはかなり実施して、本体デザインには、おばあちゃんや主婦の皆さんから色々意見をいただいて今の形になりました。メディアアートみたいな感じだったり、八木アンテナを立てていたりしたものは、評判がよくなかったですね。埃が溜まって掃除が大変と言われてしまいました。

新しい写真や動画がくるとまるで離れて暮らす孫たちがこの家に帰ってきたかのように、窓が光るようになっています。これは、新しい写真がなかったら、楽しみを提供したいのに「がっかり」を提供してしまうことになります。そのようなことを避けるためです。

 

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見据えている世界観の近い人の厳選採用

まだまだ小さなチームなので、採用基準については妥協しないようにしています。その裏返しとして採用にはまだまだ苦労しているのが正直なところですね(笑) 決して焦ってはいないですが、スキルや経験はもちろんのこと、私たちが実現したい世界観にきちんと共感してもらえるか、チームのカルチャーに溶け込める性格か、ということをとても重視しています。やはり少人数でやっている以上、新しく入社する人がチーム全体に与える影響は大きいです。

いまの創業メンバーも人の紹介であったり、採用ページ経由での面接だったりしたのですが、共通しているのは会って1時間話をしただけで見据えている世界観がとても近いことがはっきりと互いに分かったことです。もうすぐ新しいメンバーも増えるのですが彼も同じですね。これから体制としてはまず10人を目指していきたいと思います。もちろんアウトソースで出来る部分もあるのですが、同じ目標を共有し、同じ環境でずっと一緒に働くというのは非常に重要だと考えています。そう言ったことは製品の完成度にも影響するはずなので。

取材先:まごチャンネル https://www.mago-ch.com

 


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IoT × ハードウェアの観点から考える快適さの向上

株式会社NAIN 代表取締役 兼CEO 山本 健太郎さん

“1秒でコミュニケーション”をコンセプトに、会社の中にある「行き先掲示板」のように、登録した位置情報をメンバーに共有するサービスを提供する株式会社ネイン。2014年に創業された若いスタートアップだが、創業の背景には、AppleやGoogleがソフトサービスを展開する市場環境、ハードメーカーとしてできることを追求した結果の創業だ。

 

モノを使うことで、生活が快適になるところまで設計する

パイオニア株式会社でグローバル市場向けのカーナビや車載インフォテイメント機器の開発や企画を担当している頃、そこで使われるサービスはAppleやGoogleのサービスになり、自社では箱だけを作っているような気持ちがありました。結局、ハードがどう使われ、ひとの生活を変えていくのかが重要だと考えるようになりました。

そこで着目したのが、移動中の連絡です。車内で地図を見ることや音楽を聴くことは成熟市場ですが、例えば、運転中に掛かってくる電話やメールは運転者にとっては非常に大きなストレスになります。そのストレスを解消することができれば、車を運転している時はもちろん、自転車に乗っている時、歩いている時といった移動中のコミュニケーションのストレスを減らせるのではないか? と考えました。
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気付かないことにしているストレスを解消する

例えば歩きスマホをしている人を街中多く見受けますが、車を運転中にスマホを凝視したら大事故につながってしまいます。車を運転しているときにポケットのスマホが着信を知らせたらものすごいストレスになると思いますが「そういうもんだ」と諦めていますよね。そんな風に「そういうもんだ」と思い込んで流しているストレスは日常の色々なシーンに潜んでいて、それを取り除くことができれば利用者にとって便利なものになるのではないかと考えています。

Facebookの実名公開も当時は非常識でしたが、今や普通のこととなっています。現状では、自分の居場所をリアルタイムに発信することに抵抗を覚える人もいますが、今後は常にリアルタイムに情報発信していき、それを共有していく世の中になるのではないかと思っています。モバイル、ウェアラブルでその人の予定がわかり、さらに自動で行き先が記入され、どこにいるのか、わざわざ聞かなくても良い。これこそ無自覚のストレスを解消できるパーソナルアシスタンスサービスになっていってくれると嬉しいです。

 

時代の流れと組織経験が覚悟させた起業

もともと新卒でパイオニア株式会社に入社した頃から起業したいという想いはありました。.comやweb2.0、スマートフォン台頭の時代にもアイデアはあったのですが、いまひとつ踏ん切りがつかずにいました。ところが、ここに来てIoTという流れがあり、この市場は大きくなりそうだと確信し決断ができました。これから2020年まではチャンスだと思います。

現在、38歳ですが、企業に属していたおかげで色々な経験を積むことができました。修羅場も経験して大体の苦しさは経験してきたおかげで耐性がついていることも、今回起業しようと決断したきっかけのひとつかもしれませんね。

 

独自の目線でIoT時代にチャンスを発見

IoT市場の中でビジネスをやる時に、車に関連する仕事をしてきた経験が応用できると考えています。

車の中では瞬時に判断して瞬時に行動しなければなりません。地図を操作するにしても、音楽を聴くにしても、分かりやすく、操作しやすいことが重要です。

例えば画面上で、どのくらいの絵の大きさや文字の大きさ、情報量が、瞬時に判別しやすいか? 何ステップで操作を完了させるのか? どういうやり方でアシストしてもらうのが快適なのか? そのための技術などは秘伝のタネというか、どこにも教科書はなくて、その分野で仕事をしてきた暗黙知や経験知をもった自身の強みであり、解決のためのノウハウを活用できる市場こそ、IoT市場ではないかと考えています。

 

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動き続けることで不安を解消する

一歩踏み出したら、大学の同級生、イベントで話に割り込んできた若手エンジニア、前職の生意気な部下といった思いもよらないところから自分のできないことをできるメンバーが集まってくれました。

苦労したのは、社員の勤務時間など労務のルールづくり。あとは『HARD THINGS』という本に書いてあるとおり、財務部分については毎日胃が掴まれるような思いというのはしていますね。

よく「走り続けなくてはいけない」という言葉がありますが、走り続けないといけないから走っているのではなく、休んでいると不安で却ってストレスが溜まりそうなので走り続けています、笑。

人の生活になくてはならないサービスに育てていきたい

また、スタートアップというと、初めに多くのユーザーを抱えることを考え、それからビジネスとして儲けることを考えることも多いのですが、最初からお金をまわしていけるようなロードマップをつくっています。資金調達が目的になって、道を見失ってしまうことを危惧しています。

会社の役割には、経済効果もあれば社会貢献もあり、財務、労務、人事など考えなければいけないことも多いのですが、プロダクトを多くの人に届けることができ、幸せになる人が増えることがゴールです。サービスが愛され、自然に人から求められるものになることを目指しています。

 

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後記
大学の同級生、イベントで話に割り込んできた若手エンジニア、前職の生意気な部下。不思議な縁でつながっている株式会社ネイン。ご自身の経験と市場を冷静に見極め、すばやく方向転換できるという側面と会社経営という未知の領域には真摯に向かい合える非常にバランス感覚に優れた経営者が率いるスタートアップだと感じました。会社の「行き先掲示板」もIoTになるとその使い方で、利用者の無自覚のストレスを解消してくれそうです。

取材先:NAIN http://www.nain.jp 聞き手:瀬川 栄樹 

 


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老舗メガネ会社がスタートアップ企業を生んだ理由

株式会社なまえめがね 河村 和典

まるで周囲の空気にとけこむように、スマートフォンからの情報をアンビエントに伝達してくれるメガネ型情報端末「雰囲気メガネ」。スマートフォン連動型で、歩行中や打合せ、PCの作業時にフルカラーLEDライトの点滅と小型スピーカーからのサウンドで電話の着信やメールの受信、スケジュールやタイマーなどのさまざまな情報を把握することができる。

リリースしたのは創業1930年のメガネメーカー老舗である株式会社三城ホールディングスから生まれたスタートアップ「なまえめがね株式会社」。大手企業らしからぬ軽いフットワークと老舗らしい真摯なモノ作りを背景に「雰囲気メガネ」は誕生した。

 

聞くに聞けない「あれ、この人の名前、なんだっけ?」

「なまえメガネ」という社名は「名前が判るメガネ」を作ろうというプロジェクトから来ています。歳を重ねてくると、顔や、どんな人か、どんなことを過去に話したかなどは覚えているのに、名前だけが出てこない。そんな時に、お相手の名前を「誰々さんです」というように教えてくれるメガネがあったら良いのでは?そのようなきっかけでスタートしたプロジェクトでした。

 

メガネ屋としてのウェアラブルガジェットへのアプローチ

それでは、どうやって名前が分かるメガネを作ればいいのだろう? NFCは? Bluetoothではどうだろう? そんなふうに試行錯誤を重ね、一旦はメガネの形から離れつつも、プロトタイプを完成させました。当時、顔認証などの技術が広まってはいました。相手が誰かわからないということに対し、自社でどのようにアプローチするか考え、顔認証と組み合わせ、メガネに個別のIDを埋め込むことで「名前がわかるメガネ」がつくれるのだろうか。

そんなウェアラブルガジェットとしてのメガネのアイディアを抱えたまま、世の中のウェアラブル市場がどのようになっているのか知ることが必要であると。2013年にバルセロナで開催していたモバイルワールドコングレスへ視察に出かけることになった。

丁度少し前にGoogle Glassの発表があって、弊社のメンバーも多くが実物を見学に行き、見た全員ではなかったのですが「あれはメガネじゃない。メガネ屋だったら別のアプローチが出来る」という印象をもちました。自分たちの考える日常生活で使えるメガネ型デバイスとはどんなものなのか、一種の義憤のようなものが生まれ、その後バルセロナから帰国し3ヶ月ぐらいは、どのようなことができるか? 様々な試行錯誤の上「レンズ自体を光らせる」というアイデアが生まれました。レンズ自体が光るメガネはもちろん世の中には無く独自のアイデアとしてプロトタイプ製作に入りました。

 

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パリミキで知られる三城の名を使わずに出展する予定が……

そして1年後の2014年2月バルセロナモバイルワールドコングレスへ。プロトタイプを持っていきなり展示することにしました。通常のメガネしか扱ったことのない社内のコンセンサスを全て取ることは、そもそも不可能な商品なので、社内を説得するための市場の声、反応を見ることが目的。このプロジェクトをこのまま進めていいのか? リトマス試験紙のような意味合いを含めての展示会出展。

当時、このプロジェクト自体がシークレットプロジェクトで社内でもトップ数名しか知らない状況だったので何もかも自分たちで進めており、プロトタイプもバルセロナへ出発する前日に完成するという状況でした。しかも、三城の名前を出さないという条件の下で出展したのですが、日本のプレスの方々は私が三城HDの社員であることを知っており、「あの三城が…」という見出しでwebに出てしまい日本の社内に確認してみると、「話が全然違う」ということでプレス発表どころではないという状況でして…

このままでは日本に帰れないかなと思いながら恐る恐る帰国したところ、プレス各社が「こういうものを待っていた」「メガネで普通に使えるウェアラブルガジェットは日本人にしかできない」など好意的な取り上げ方をしていただき、社内でもどんどん進めていこうという機運が高まりつつありました。

 

クラウドファンディングをテストマーケティングとして使う

そのまま商品化して販売を開始するのも良かったのですが、世の中に無い商品というのは新しい価値観をお客様へ提案するということでもあります。そこで、本当に欲しい人がいるのか、買ってくれる人がいるのか。商品自体は非常に単純なプロダクトであるため、世の中の開発者の方々が面白がって色々なアプリケーションを開発していただかなくては、この商品の魅力は増していかない。そのように考えMakuakeでクラウドファンディングに挑戦してみました。

結果としては早々に目標金額をクリアーし、商品化への道を歩み始めます。しかし、Makuakeでサポーターへの出荷が終わり、いよいよ一般販売へと考えた時に、ホールディングス体制の中で事業を行うことは難しく、独立した事業体として設立していくことになります。

 

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柔らかさや感性を大切するに会社に

通常、三城では100%子会社という方法をとりますが、「株式会社なまえめがね」は三城の100%子会社ではありません。これは広く多くの出資者を募ることで、事業に関わってもらおうという考えで実現されました。

会社は少人数で、実働は私を含めて4名。社外取締役にも外部から女性を起用しております。もともと、多くの女性が活躍する三城では商品に対して女性の意見を重要視しており、ちょっと普通の会社とは違うところがあるのかも知れません。また、商品自体も「感性」を重視しているので女性の意見は大切にしています。男性はどうしても理屈っぽいことを言いたくなってしまうので(笑

女性の感性から発せられるちょっとした一言は、男性の理詰めでは出てこないような特性があり、それは率直な意見で我々の商品では大切な部分を担っています。

特にIT系の物づくりでは使う部品は、どこもほぼ同じ。しかし、それを組み立てた商品は使ってみると違う。まさに感性を刺激するような商品でないといけない。お客様が単純に「面白い」と思っていただけるかどうか、商品として長生きするには非常に大切な部分だと思います。

また、三城の持つ独特の考え方かも知れませんが、お客様が店舗へいらっしゃったときに「こんなことがあったとか」「こんな面白いことがあった」とご家族にしゃべっていただけるようにあるべきだというトップの考え方が、他のメーカー社さまではできないことをやっていける源泉なのだと思います。

Fun'iki megane

 

より大勢を巻き込んだプロダクトに

雰囲気メガネは知覚の部分というか、感じることのできるメガネという非常にシンプルなコンセプトで成り立っています。認識という高度な技術を提供するというよりも、感性へダイレクトに訴えかける製品であり、メガネという日常的に使う商品だからこそ色々機能を追加して非日常になってしまってはメガネ屋が作る商品としては失格になってしまいます。

例えばメールが着信したときに、メールを読み上げる高度な機能は我々の商品としては必要なくて、誰々さんからメールが来たとお知らせするだけに留めることで「感じる」商品として提供していきたいのです。もちろん高機能な物を否定するのではなく、あくまで我々の考え方ですけど。

そのような商品なので、今後はB to Bで色々な方々にご参加いただきたいと思っています。何でもかんでも自前でやらなくてはいけないとは考えておりませんので、我々はフレームを提供させていただき、「感じるメガネ」として色々な可能性は追求していきたいと思います。

視力を補うというメガネの基本姿勢があるのと同じで、「感じる」を補う「雰囲気メガネ」であれば良いと思います。

 

後記
老舗「メガネ屋」だからこそ知っている、使う人にそっと寄り添うような商品開発ノウハウから生まれた「雰囲気メガネ」リッチな情報を出せる未来製品と言うよりは今からでもすぐに使える「感じる」商品であり、ハードウェア、ソフトウェア開発会社の皆様はどのような組み方ができるか一度ご検討いただくのも良いかも知れません。

取材先:株式会社 なまえめがね   http://fun-iki.com 聞き手:瀬川 栄樹