Pyrenee

「ひとの命を守るものをつくりたい」想いが形になる瞬間

Pyrenee 代表取締役社長 三野龍太

ダッシュボードに置いて使用するクルマの運転支援ディバイス 「Pyrenee Drive Screen」は、運転手の目の前に設置した透過ディスプレイに、地図アプリのナビや情報がリアルタイムで表示される。ハードウェアスタートアップのPyrenee (ピレネー)の三野龍太氏が発表し、2016年にリリース予定だ。

 

ひとの命を守るものをつくりたいという積年の想いが形に

パッと見で、便利そうなナビゲーションシステムだなと思いますが、車の運転支援ディバイス 「Pyrenee Drive Screen」とはどのような商品かもう少し詳しく教えて下さい。

運転席前のダッシュボードに置いて使うデバイスです。ステレオカメラで前方の走行状況を立体的に認識することで、歩行者や車との衝突の危険が迫るとドライバーに知らせます。透過ディスプレイへの表示とアラーム音でドライバーに危険や各種の情報を知らせ、操作はハンドルに巻き付けたリモコンと音声入力で行います。

それだけではなく、スマートフォンの地図アプリによるナビゲーションや音楽アプリなども透過ディスプレイに表示して使用することができます。

Pyrenee Drive Screen

大学では、今の開発に繋がるような専攻だったのですか?

実は大学には行っていないんです。高校を出てから、建築系のメーカーに入り、そこから独立しました。電気が通るものをつくったのは初めてですし。

Pyrenee の前に、雑貨のメーカーを立ち上げていて、Manatee(マナティ)というベッド専用iPadスタンドをつくっていました。これはこれでいいのですが、もっとクリティカルにひとの命を守るものをつくりたいという気持ちがあり、ずっとモヤモヤしていたんです。そこにうまく運転支援ディバイスというアイディアが降ってきたので、一念発起して「Pyrenee Drive Screen」を形にしていきました。

アイディア、市場、ひと…ピースが集まり、ひとつの製品になるまで

ひとの命を守る、ということが、運転支援ディバイスという形になった背景を教えてください。

運転支援ディバイスの形になったのは、免許の更新時に講習を受けたことがきっかけでした。講習で知ったのは、一般的な交通事故の7割はドライバーの不注意によるものだということ。安全装置としては自動ブレーキなどもありますが、それだけでは足りないんですよね。ブレーキもですが、ハンドル操作も事故回避には大きく関わってきます。

カーメーカーでも、クルマのカメラやセンサーが、他の車や歩行者を認識して、事故発生の危険がある場合にドライバーへ知らせたり、車自体が自動で停止するような装置は出しています。例えば、スバルが採用した「Eye Sight」、トヨタの「ITS」やホンダの「SENSING」などがありますよね。でも、車の耐用年数は10年以上あるので、既に購入された車は諦めざるを得ない。なので、私は、その隙間を埋めていこうと考えたんです。取り付けに、特別な工事も必要なくて、ダッシュボードにセットするだけで、 万一ドライバーが不注意状態で事故の危険が迫っても、早く、適切に危険を知らせて、事故回避を促すことができます。

 

プロトタイプが引き寄せるひとや展開

専門ではないけれど、つくろうと決めて、すんなりつくれたんですね。

そうですね。以前から知り合いだったOrpheというスマートシューズをつくっているno new folk studioが、秋葉原のシェアオフィス「DMM.make AKIBA」に入居していて、快適な環境で試作品をつくっているのを見ていました。元々、ものをデザインすることはできたので、そこに入って勉強しながら試作品をつくり始めたんです。

Pyrenee

ドライバーの余所見を防ぐために、まずはできるだけ前方から視線を逸らさずに済む形状や機能が必須です。ナビだけではなく、ヘッドアップディスプレイに車速などを表示して、視線移動が少なくて済むようにしました。

幾ら運転中のスマートフォン利用を咎めても、やっぱり気になりますよね。なので、スマートフォンの画面も出るようになっています。走行時と停止時でできる操作はもちろん違います。

あとは必要な技術を持っているひとや、工場を開拓していきました。例えば、量産は中国の深圳市で行う予定なのですが、今、日本国内より、そちらの方が部品も技術も揃う上に、安上がりだということがあります。そういった知見も、これまでの経歴で持っていたので、動きたいと思った時に、すんなり動けたのだと思います。

「自分はこういうことをしたい」「こういったものをリリースしたい」と言っても、なかなか理解してもらえませんが、プロトタイプをつくる過程で必要なことが見えてきますし、できたものを見せれば、何がしたいのか、すぐに伝わります。

今では、危険予測をもっとスムーズにしたり、「Pyrenee Drive Screen」のデータを活用したりするために、某大手企業と技術提携をしようという話をはじめ、何社か興味を持ってもらった会社とも話をしはじめています。

現状はどんな体制で動いていらっしゃいますか?

現状メンバーは8名で、画像認識や回路設計などのエンジニアが主です。このDMM.Labで出会ったひとや、紹介を通じて、一緒にやりたいと言ってくれるひとたちです。まずは2016年にリリースして、販路を開拓し、普及させることが目標ですが、「Pyrenee Drive Screen」を皮切りに、例えば、防犯防災、ヘルスケアなど、人の命を守るディバイスをつくっていきたいと考えています。

取材先:Perenee http://www.pyrenee.net/