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IoT時代ならではのアイデア形に サッカー界に変革もたらす開発

株式会社アップパフォーマ 代表取締役CEO 山田修平氏

株式会社アップパフォーマ(京都市下京区)が開発するトラッキング(追跡)システム「Eagle Eye(イーグルアイ)」は、アマチュアサッカー界に大きな変革をもたらす可能性を秘めたIoT(Internet of Things=モノのインターネット)サービスとして、米国での世界的な家電見本市に出展するなど、量産実用化への期待が高まっています。スポーツ界の進化をITによって後押しする同社の山田修平CEOに開発の経緯や今後の展開を伺いました。

安価でサッカー選手の動きをデータ化できる

―― 「Eagle Eye(イーグルアイ)」はIoT(パソコンやスマートフォンだけでなく、あらゆるモノが常にネットに繋がっている状態)時代にふさわしいシステムとして注目を集めていますが、どのような形で活用するツールなのでしょうか

簡単に言いますと、サッカー選手の動きをデータ化し、それを解析するサービスです。選手の二の腕に装着してスイッチを入れるだけで、どのポジションの人がどんな動きをしたか、どれだけ走ったかなどが記録できます。これらの記録データは専用アプリで容易に確認ができるため、チーム全体のデータを統合することで、定量的にパフォーマンスの確認が可能となります。

近年は国内外のプロサッカーチームでは、動画解析などによってプレイの可視化が積極的に行われていますが、高額な費用が必要です。そのため、Eagle Eyeではアマチュアチームでも“データサッカー”が手軽に実践できるよう、1人あたり1万数千円の価格で販売するべく開発を行っているところです。

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―― IoTサービスを開発するうえで、あえてサッカー分野に特化して開発を行ったのはなぜでしょうか

私は学生時代に野球をやっていたので、最初は野球ボールで同じようなことができないかと考えました。ただ、野球は日本やアメリカではメジャースポーツですが、世界全体で見ると市場が小さい。サッカーだとほぼ全世界に広がっていて、アマチュアチームだけで30万以上あると言われています。

なにより、野球ボールのサービスだと、チームに1球だけあれば事足りてしまうので、これだと苦労して開発しても、ビジネスとして考えるとどうなのかと……。

―― 確かに、サッカーだと最低11人分のディバイスが必要になりますね。開発は2014年から始められたんですか

はい、最初は弁当箱にGPSやセンサーといったモジュールを入れたものを自分で作りました。実証実験では中学生に使ってもらったのですが、「これを付けると、全力で走っていないのがバレる!」という反応もありました(笑)

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米国の世界的な見本市「CES」で高い評価

―― そして翌年(2015年)早々には、世界的企業が新商品を披露する米国ラスベガスの家電見本市「CES(セス=コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」に出展を決めていますが、どんな背景があったのでしょうか

2014年12月上旬に経済産業省の「フロンティアメイカーズ育成事業」に採択頂き、3週間後に開催されるCESへ参加する機会に恵まれました。その後、さくらインターネットさんとサムライインキュベートさんが主催するベンチャーイベント「Startup Tour Japan 2015 in Kyoto」で高い評価をいただいたりと、昨年の中間評価に繋がったかなと思います。

といっても、スタートアップですので私一人でラスベガスの会場へ乗り込んで、現地のホームセンターで工具や材料を買って3日間不眠不休でブースを手作りしました。見本市の本番が始まる前に燃え尽きそうになってしまったのは危なかったです(苦笑)

CESは2016年も出させていただいたのですが、米国の方はベースボールやアメリカンフットボールのサービスではないと分かると残念な顔をしますが、逆に欧州の方には評判がすごく良いですね。日本よりも反応が大きく、手ごたえを感じています。

CESへの出展に加え、2015年はクラウドファンディング「マクアケ」でEagle Eyeの先行販売の募集を行い、66人の方から約110万円を出資いただきました。

2011年、関西へ戻り、起業は京都で

―― 山田CEOはわずか9歳でアマチュア無線の免許を取っていますが、幼少時から“理系分野”に興味が深かったのですか

小学校の時にはマッキントッシュが家にあったり、中学ではBASIC、高校ではプログラミング言語のPerlをやったりしていましたので、強い興味がありました。ただ、中学校と高校の時は野球に熱中し、大学では音楽イベントを行うことに熱中していましたので、途中で“休み”を挟んでいます。

―― そして大学卒業後は、誰もが知る著名な大手アパレルチェーンに入社しています

大学卒業から7年半の間、千葉、長野、沖縄、パリとさまざまな店舗を経験しました。途中からは店長となって店舗の責任者となりましたので、毎日20時間くらいは仕事していたかもしれません(苦笑)。マネジメントという部分では大きな勉強にはなりましたが、あまりに多忙な状態でしたので、起業なんて考えたこともなかったですね。

―― 起業に至るまでは試行錯誤の時期がありました

起業することになったのは、2013年に東京で開催されていたハッカソンで優勝をいただいたのがきっかけです。また、Eagle Eyeを開発する前には、Twitter関連など3つほどの新サービスを開発しています。

高校は大阪、大学は滋賀だったので、その中間である京都を拠点に選びました。今も本社を置いています。

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企業の看板ではなく人と人の関係が大切

―― creww(クルー)についてはどう思われていますか

もともと、ソーシャルリソースを上手く再配分するシステムが必要だと感じていましたので、「crewwのシステムはいいな」と思いました。昨年11月には大手企業のオープンイノベーション(コラボレーション募集)に応募し、現在は具体的なお話を進めさせていただいている段階です。

―― 大手企業とのオープンイノベーションを通じて、感じたことや、他のスタートアップへのアドバイスをお願いします

先方の担当者の方にリスクをどこまで理解していただけるかが大事なのではないでしょうか。まずはライトな形でコラボレーションを始めるのもいいかもしれません。

良いコラボレーションができるかどうかは、担当者の方の“気合い”のような部分も重要で、それがないとモチベーションが続きません。会社の看板ではなく、人と人という部分が一番重要だと思っています。

―― ありがとうございました。

 

取材先 : 株式会社アップパフォーマ(Eagle Eye)   http://upperforma.com/ja/

 

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今だからこそ、家族のためのSNS「wellnote」

ウェルスタイル株式会社 代表取締役社長 谷生芳彦さん

ソーシャルネットワーキングサービスでのコミュニケーションが定着し、知人と会って会話をする以上に、写真や動画などを交えた投稿の共有やチャットで交流する、というコミュニケーションも当たり前になってきた。家族間のクローズドSNS「wellnote(ウェルノート)」がオープンイノベーションをしながら、提供しようとしているサービスは、どんな想いから生まれたのだろうか。ウェルスタイル株式会社の谷生氏に聞いた。

オープンイノベーションのプラットフォーム「creww」を使う理由

——自社だけでも、他企業にアプローチされてきたと思いますが、それとcrewwコラボの違いはありましたか?

crewwを使うメリットは、会う前から論点やトピックをある程度固めた状態でコミュニケーションが取れることですね。Creww株式会社という第三者が入ることで、ベンチャーでありながら、大手の企業とのやりとりにスムーズに入れることです。

——オープンイノベーションやcrewwコラボを進めていく上で、先方にスタートアップに対する理解のなさなどを感じたことはありますか?

それはないですね。企業や担当者の個性や相性だと思います。起業以前のキャリアとして、ゴールドマンサックスに10年間勤務していました。最初の4年間は機関投資家と呼ばれる大手金融機関担当として日本株式を営業する仕事をして、そのあとは事業法人部で、資金調達支援、共同投資提案、リスクマネジメント提案など、経営やファイナンス絡みのなんでも屋をしていたので、そのあたりには難しさを感じませんでした。

 

大学生の頃に描いた夢を10年後に実現

——ゴールドマンサックスでの勤務が10年ということですが、なぜ、起業しようと思われたのですか? 10年勤めたら、環境を変えていくことに躊躇はありますよね?

もちろん、かなり考えましたよ。「外資系金融でのキャリアを本当に捨てていいのか」「学生時代から起業をすると言い続けてきたけれど、なぜ起業するんだろう」といったことから、「幸せとは何か」「どんな人生が幸せなのか」という自分の根幹に関わることも日々自分に問い続けました。

でも、起業しない人生を送れば、死ぬときに後悔するだろうと思うようになりました。新しいライフスタイルを創造するという社会的意義があると確信できるこのチャレンジに挑戦してみたいという想いと、大学生の頃の「起業したい」という夢が重なって決意できました。

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——大学生の頃から起業はしたかったんですね。

そうなんです。当時90年代半ば、インターネットで世界が変わると言われはじめていました。大学の専攻も経営学でしたし、起業のまねごとのようなサークルも運営する中で、ベンチャーの本場であるアメリカのシリコンバレーに留学したいという想いが日に日に強くなっていきました。

大学の交換留学制度を調べてみたら西海岸のシアトルにあるワシントン大学経営学部への交換留学制度があったので、それに応募して、交換留学をしました。

留学していた1997年のシアトルはITバブル前で盛り上がっていました。マイクロソフトのビル・ゲイツはいますし、アマゾンドットコムのジェフ・ベソスもいるんじゃないかとか。彼らのような大きな事業をいつか創ってみたい、と夢がどんどん膨らんで。笑

 
——日本の大学にいた頃はいくつかサークルを運営されていたということですが、卒業していきなり起業はしなかったんですね。起業する前のステップとして、投資銀行を選んだのはなぜですか?

当時アメリカでは、大学で最も優秀な学生たちは、経営コンサルティングや、ウォール街のゴールドマンサックスといった投資銀行に入って数年経験を積んだ後、MBAを取って起業するという流れがあるなあと思ったのがきっかけです。

 

モノやサービスが変えていくライフスタイル

——退社後に起業して、ここまでくるのに順調でしたか?

しんどいだろうとは思っていましたが、順調なことより、大変な時間の方が多かったです。笑

特に何かを準備して辞めたわけではなく、私自身に子供が生まれ、その成長を両親に共有したいということもあり、家族SNSが必要になるだろうという着眼だけで退社したので、サービスの構築ができるエンジニアを探すことから始めました。これがなかなか見付からない。「エンジニアが見つかるまでは、サービスの開発を始めない」と決めていたので、スタートには時間がかかりました。

——2012年に「リアルの場のお茶の間をネット上に再現する」というコンセプトの家族限定のSNS「wellnote(ウェルノート)」を正式に公開されましたが、この手のクローズドSNSは少しづつ増えていますよね。
ようやくそのような新しいライフスタイルが創られてきたと感じます。メールからfacebookなどのSNSやチャットツールに移行し、そこに加えて、カップル間や家族間などのクローズドSNSがより必要になっていくと考えています。関係性やコミュニケーションの内容で、ツールを使い分けが進んでいくのがこれからの流れとなっていくと思っています。

例えば、子育て中のひとが自分の子どもについて、写真や動画を投稿するのはよくあることです。ただ、プライバシーだったり、気分的なものだったり、さまざまなリスクを考慮しなければならない場合もある。いわゆる「SNS疲れ」「Facebook疲れ」などと呼ばれる状態ですよね。それに対して投稿範囲を限定するといったやり方はありますが、設定に戸惑って、投稿が億劫になることが多いのではないでしょうか。

かといって、チャットツールでは、やりとりが流れてしまう。今すぐ返事を求める同期型コミュニケーションではなく、思い出として何かが残って残ればよい非同期コミュニケーションもニーズがあるわけです。

ディバイスも変化していっています。2010年はPCとガラケーでのメールが主流でしたが、今はスマホが台頭し、SNSやチャットアプリが増えています。これからはタブレットもますます増えていきます。

モノやサービスの機能そのものではなく、そのモノやサービスでライフスタイルがどう変わるのかを意識してサービスの開発をしていくことが大切だと思っています。

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——その変化に対応していくために、オープンイノベーションは欠かせないですよね。オープンイノベーションをしながら目指していることを教えてください。

wellnoteをまずは日本中の家族に使ってもらいたいということ。それによって幸せな家族を増やしたいという想いがあります。社会的意義のあるプラットフォーム、インフラの構築を通じて、世の中に新しいライフスタイルを創造することができれば、利益はあとからついてくると信じています。

 

取材先 : ウェルスタイル株式会社   http://wellnote.jp/

 

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コラボに挑むスタートアップに期待する「媚びない」姿勢  

アサヒグループホールディングス株式会社 経営企画部門 兼研究開発部門 マネージャー進藤洋一郎

進藤さんは経営企画部門の所属なんですね。大企業の中の新規事業に携わる部署と、スタートアップの特徴を教えてください。

大企業というのは、長い歴史の中で安定してまわる仕組みの追求をしてきているのが通常です。そのことによる組織力や効率性が大企業の強みであるとも言えるのですが、これは競争の内容やルールが比較的安定していることが前提になっています。ある種の計画至上主義や経験至上主義が自動的に織り込まれ易く、合議に重きが置かれる構造とも言えますね。ところが、新規事業を創出する過程では必然的に未知・未踏の要素を扱うことになるので、時として悪意なき社内常識や習慣のようなものが障害になります。邪魔する奴がいる、とか、制度が悪いといった他責的な話もあるでしょうが、それ以前に当事者自身の中でコンフリクトやスキルミスマッチが起こることが避けられません。そもそも構造に根差しているので簡単には変えられませんし、変えたら変えたで既存事業の強みが失われるのではないか、という当然の心配が生じます。このような問題は、少なくともゲームチェンジャーを志向するようなスタートアップには無いはずです。新しいことを仕掛けることへの内外の抵抗感というのは大企業とスタートアップでは格段に違いますよね。そこでスタートアップとのコラボレーションという選択肢を模索していました。

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進藤さんや、進藤さんの所属している部署はスタートアップに不信感や抵抗はなかったんですか?

個人としては全くないですね。ずっとこの会社に勤めていますが、出向が多かったこともあり、私は自分のことを社内の常識や習慣が部分的に欠けている、インサイドアウトサイダーだと認識しています。総合商社に出向していた時にスタートアップへの投資を検討する業務に従事したことで免疫がついたというか、いまのスタンスを形成するのに大きく影響していると思います。

経営企画部門で新規事業の仕事をし始めてから、会社に気付きをもたらす、違和感のある出会いの場が必要と考えていました。出島とか、経済特区とか、一国二制度のような、現有の在り方はそのまま取り置きつつも、それでも新しい風にじかに触れて新たな成長の手掛かりを掴めるような、インサイドアウトサイダーとアウトサイドインサイダーが交わる場はどうやったら作れるのだろう、という課題意識です。

というのも、大企業には有形・無形を問わず膨大なリソースがあるはずなのですが、真面目に棚卸をしてもどうも既視感のある結果にしかならない。そんなはずはないだろう、少なからぬ無自覚な資産というものがあるはずだと感じていました。JRさんの駅ナカ事業のような、車両や運行管理技術といった認識に上りやすい“いかにも”なリソースではなく、膨大な人の往来、それ自体はずっと以前から目の前にあったのにいまほど真剣に活用されてこなかったもの、を事業リソースとして活用するような視点は、インサイドインサイダーが教科書通りの強み分析を重ねるよりもスタートアップの皆さんの力を借りた方が早く的確だという確信めいたものを持っていました。

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良質なスタートアップに出会い、確実にコラボレーションを実現するためのcreww

―― 直接、スタートアップを探さずに、敢えてcrewwをつかったのはなぜですか?

色々なことを考慮しましたが、最後は直観です。まず商社出向時の経験から、良質なスタートアップに巡り合うにはランダムに動きまわっても、システマティックにやってもダメで、適度にアナログな繋がりがモノを言うという認識を持っていました。また、迂闊に失敗して社内に妙なタブーを作るかも知れないことを恐れました。「コラボやスタートアップはダメなんだ」「外部の風を入れるのは大変」となれば大きな損失です。ですから、適切なハブを探していたんです。そんな時、たまたま2014年暮れにどこかのワークショップで伊地知さんと知り合って、すぐに「ああ、この人だな」と思いました。ステレオタイプに押し込めるつもりはありませんが、信念が揺らがない、迎合してこない、そして大義があるという理想的な佇まいでした。

佇まい…もうそこは直感的なものなんですね。伊地知に出会って、コラボをするまでの流れや、選定基準を教えて下さい。

2015年の年明けから何度かオフィスをお邪魔して、互いに真面目な、しかし、とりとめのない話をしていました。その後、弊社の担当役員に引き合わせて2015年6月に契約し、9月にオリエンを行いました。 crewwコラボを通じて61件の応募があり、それらを4名のスタッフでチェックして、8件まで絞りこみました。課題選定のポイントは、既存事業を新たな視点からさらに伸ばせるか、自社の自覚的・無自覚的リソースに立脚した新たな事業が描けるか、です。弊社の既存事業は「金のなる木」というか、盤石だがもはや飛躍的な成長が望めないものを中心に構成されているので、持続的な成長を意図した事業ポートフォリオを組むためには、新たなスター事業か、金のなる木に水をやって太くするような事業を生み出す必要がありました。

今回のコラボはいかがでしたか?スターは生まれましたか?

プロセス面では苦労も多かったですが、実際に具体的な協業の入り口に立てたものもあり良かったと思います。提案の属性でいうと、金のなる木に水をやる事業の方が多かった印象ですね。

それはなぜでしょう。

私たちは先方のことを知らない状態から、先方は私たちの一般的な印象を知っている状態から、コミュニケーションがスタートします。ですから、特に注意を払わない限りは、自然と私たちの既存事業周辺に提案が集まりやすくなる傾向はあるように思います。

テーマの絞り方や応募要件を意識的に甘くした結果として、共同で事業を創出するという本来の趣旨とは異なるもの、例えば実質的に協賛を求めるようなお話が多かったことは反省点ですね。これは、「ひとつも応募がなかったらどうしよう」という弊社側の心配が少なからず働いたために自ら招いた結果と理解しています。

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スタートアップに望むのは、他人のまま媚びずに一緒に働けること

お互い探り合いからはじめるため、苦労もあったということですよね。大企業とのコラボレーションを検討している企業に伝えたいことはありますか?

一緒にやろうというスタートアップが大企業側の経営課題を解きたいと思っているわけではないことも、大企業がスタートアップの成長や貢献を第一の目的にしているわけではないことも、ともに自明です。ですから、スタートアップには、大企業に迎合せずに、自らの理想の実現なり課題解決なりに全力になってもらいたいですね。「他人のまま仲良く取り組む」ということができなければ早晩破綻するものでしょうし、そうなれば失った時間は取り戻せません。

さらにcrewwに対して、もっとこれをやってくれると嬉しいというようなことはありますか?

企業を取り巻く機会と能力の構造的ミスマッチを解消することがcrewwの存在意義ですよね。まずは、大企業が持つ無自覚なあるいは過小評価されているリソースを発掘する作業に、アウトサイドインサイダーとしてより一層深く関与して頂けると有難いですね。殆ど定義の反復になりますが、大企業のみにこの作業を任せても既存事業向けに無駄をそぎ落としたリソースが出てくるだけですから、スタートアップが大企業と一緒にやることに対して高いモチベーションや的確なご提案を引き出すことが難しくなります。

また、首尾よくマッチングができたあとのフォローアップもとても重要な機能だと思います。たまたま出島で遭遇した慣習も文化も信念も異なる者同士ですから、些細なことで行き違いが生じることでしょう。投資に関する考え方も、成功の定義も互いに全く違うことが普通にありえます。大企業とスタートアップの協業が陥りやすい穴を埋めていくという機能は、コラボの価値やスタートアップコミュニティを高めていくうえで有益です。ここにはcrewwが優先的にタッチできるはずですから、ここに人・物・金・情報を充てていくような新たなサービスというものがあっても良いかなと思ったりしています。

 
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スマホの画面だけでデータ送受信 注目を浴びる「FlashTouch」技術

株式会社マッシュルーム 代表取締役社長 原 庸一朗さん

スマートフォン(スマホ)画面が発する光のシグナル情報と、タッチパネルの静電容量によって情報(データ)のやり取りができる「FlashTouch(フラッシュタッチ)」を開発したのが2012年5月創業の株式会社マッシュルーム(東京都品川区)です。iPhoneでは対応していないNFC(近距離無線通信技術)や、電波干渉リスクが心配されるBluetooth(ブルートゥース)などに代わり、スマホの双方向通信システムのスタンダードとなる可能性を秘めた斬新技術。大きな可能性と今後のビジネス展開について、原庸一朗(はらよういちろう)社長に伺いました。

スマホの液晶画面で読み取り、アプリやチップも不要

—— スマホの専用アプリもいらず、画面をタッチするだけでなぜ双方向で情報が通信できるのですか。「FlashTouch(フラッシュタッチ)」は、特殊な電波でも発信しているのでしょうか?

いえ、FlashTouchは電波で通信するものではありません。人間の目ではなかなか見えませんが、スマホの液晶画面は光が点減しています。この点減情報を光センサーで読み取ります。「モールス信号」のようなイメージです。

もう一つ、タッチパネルは指から出る微弱な電流によって入力ができますが、このタッチパネルの静電容量によっても情報をやり取りします。

スマホのウェブブラウザで専用ページを表示していただき、その画面をFlashTouch専用端末にタッチするだけで情報の送受信が可能になります。

そのため、NFC(近距離無線通信技術)のようにスマホ内に専用チップを搭載する必要はありませんし、Bluetooth(ブルートゥース)のように電波を発信することもありません。

たとえば、NFCはiPhoneでは対応していませんが、FlashTouchはウェブブラウザとタッチパネルを持つ端末なら誰もが今すぐ使えるようになる技術です。また、電波を発信しないため、情報を盗み取られるリスクも格段に低くなります。

 

—— スマホと専用端末間で情報(データ)をやり取りする、という技術は、日本が主導するFeliCa方式による「おサイフケータイ」や、世界標準的なNFCが主導していますが、双方が並び立つ状況で決定打がありません。その間隙を突く形ですごい技術を開発されましたね

まだ導入前の実験を行っている段階ですが、大手メガバンクや大手電機メーカーなどから引き合いをいただいています。

たとえば、スマホ内にキャッシュカードの情報を格納しておけば、専用端末のある所でスマホをタッチしていただくだけで決済ができるようになります。スマホさえあれば、わざわざ銀行やATMへ行ってお金をおろす必要がなくなるわけです。

タッチされる側となるFlashTouch用の専用端末ですが、製造には1台あたり500円以下というコストしかかかりませんので、小さな店舗などに無料配布して普及させるのもそれほど難しくないのもメリットとなるのではないでしょうか。

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—— 原社長はもともと研究者や技術者を目指していたのですか

明治大学では農学部で再生医療分野を学んでいましたが、研究者や技術者志望ではありませんでした。2008年に卒業後は、不妊治療を行っている産科婦人科を比較するWebサービスで起業しています。利用者はそれなりに多く、ビジネスモデルとしても高い評価をいただいたのですが、病院側の供給不足が生じている市場ということもあり、1年で閉じました。

その後、2012年に現在のマッシュルームを3人で新たに立ち上げるとともに、自身でもう1社、バイオベンチャーを創設して今も運営しています。

 

―—— マッシュルームでは当初からFlashTouchの開発に取り組んだのでしょうか

最初はソーシャルギフトサービスのようなビジネスを立ち上げています。この「ippy(イッピー)」は、ギフトを送る側がお金を払わずに済み、メーカーや店舗に販促目的で金券を出してもらうというめずらしいスキームでした。

ただ、金券を使う際には加盟店でバーコードを読んでもらう必要があり、加盟店側のオペレーションがボトルネックとなってしまいました。この経験を機にFlashTouchの仕組みが生まれたともいえます。

 

—— FlashTouch以外にも「CHARIO KART(チャリオカート)」というユニークなプロジェクトも行っています

自転車のホイールにコンピュータを取り付け、Apple Watch(アップルウォッチ)によって動きを制御することで、ゲームの「マリオカート」をリアルな自転車で実際にやってしてしまおうと……(笑)

キノコが出ポイントに来ると、実際に自転車が加速し、アップルウオッチから緑こうらを発射すると他のプレイヤーにはブレーキ負荷がかかります。こちらは、当面ビジネスになりそうにはありませんが、リアルなレースゲームとして楽しめますよ。

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—— Crewwではかなり積極的にコラボレーションに応募されていますね

インターネット上でCrewwの存在を知り、これまで5〜6社のコラボレーションに応募しています。もちろんFlashTouchのほうです。大企業の方の前のプレゼンテーションはやはり緊張しますが、出資に関係するプレゼンとは異なり、長期計画や市場の大きさなどが聞かれないのが特徴的でした。

 

—— FlashTouchの技術を使ったどんなビジネスを提案してきたのですか

主にFlashTouchの要素技術を使った新規事業です。ただ、新しい技術ということもあり、そのリスクをとっていただける大手企業が少ないのが残念です。現時点では、どんなコラボの形が最適なのか模索しているところです。

 

—— Crewwのコラボを体感してみて、どのように思われましたか

現状はかなり広いテーマで募集されていますが、大企業のなかで絞られた具体的な課題で募集されていたなら、こちらの提案もより細かな内容とすることができます。

新しいことをやりたい、ということを目的化するのではなく、募集する側の大手企業がゴールをどこに置いているかを見極めなければならないと感じています。

 

―― ありがとうございました

 

取材先 : 株式会社 マッシュルーム   http://mashroo.me/

 

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AR(拡張現実)とウェアラブルで テクノスポーツの市場を切り拓く

株式会社meleap CEO 福田 浩士

実際にかめはめ波を撃ってみたい! 魔法を使いたい!
幼少の頃に誰もが抱いた夢をウェアラブルデバイスとAR(拡張現実)で実現してしまったのが株式会社meleap(メリープ)が開発した「HADO(ハドー)」です。エンタテイメント界で大きな期待を集める同社には、協業の話も多く持ち込まれているといいます。“テクノスポーツ”という新たな市場の創出を目指す福田浩士(ひろし)氏に、今後の展望やコラボレーションのあり方を伺いました。

ダムや大きな吊り橋のように、「大きな身体」をつくってみたい

—— 福田CEOは東京大学の大学院からリクルートへ就職し、2014年にmeleapを起業したんですね。

明治大学を卒業後、東京大学の大学院に入学し、意匠設計を研究しました。東大は多彩な人材がいるので、とにかく入ってみたいと思っていて、在学中は他学部の授業を受けられるのもメリットでしたね。

修士課程を終え、不動産開発業者への就職という道も考えましたが、私は常にダムや大きな吊り橋のように土木的なスケール感で意識を飛ばしたい、身体を拡張したいとの思いを実現できないと感じ、違う分野に行くことにしました。

リクルートに入ったのは、将来は起業するだろうとの思いから営業の基礎を学びたいとの思いがありました。入社後は注文住宅分野の営業をしていましたね。在職していたのは1年半でしたが、ここで学んだことは数多くあり、今も役に立っています。

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—— リクルートを辞めた後、すぐに起業しようと思ったのですか?

「リアル×バーチャルで面白いことをしたい」という目標だけを掲げ、新木仁士(現CTO=最高技術責任者)と一緒にmeleapをとりあえず立ち上げました。2014年1月のことです。

最初はARを使った「ぐりぐりARカードゲーム」や「プロジェクションペット」など、ARを使ったさまざまな開発プロジェクトに挑戦していくなかで、HADOが生まれました。

HADOはモーション認識やAR、画像処理の技術を組み合わせて生み出したシステムです。プレイヤーがHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を頭からかぶることで、実際に体を動かして「かめはめ波」のような“技”を発動させたり、フィールドを動き回って相手を攻撃したり、自らの陣地を守ったりします。

ゲームというよりも、スポーツに近い感覚なので、われわれはこれを「テクノスポーツ」と呼んでいます。HADOの技術は1年以上にわたって開発を続けてきましたが、今年の夏ごろにようやくサービスとして提供できるレベルに達しました。

 

自信を持てるサービスを携え、いざCrewwコラボに挑戦

—— meleapはこれまでNTTドコモなどのベンチャーイベントでもかなり活躍してきましたが、Crewwに登録したきっかけは?

確か人の紹介でCrewwに登録したと思います。最初の頃はまだ大手企業とのコラボレーション企画も行われてなかったので、当時は「なんだか得体の知れないSNSだなあ」と感じたのを覚えています(笑)

 

—— Crewwでは大手住宅メーカーとのコラボを成立させるなど、積極的な活動をしていますが、大手企業への提案やプレゼンテーションを通じて感じたことはありましたか

大手企業のなかには、4〜5カ月間かけて話し合いを続けていたのに、あえて意思決定をしない、あるいはできないというケースがありました。強い意思を持たずにコラボの募集をしているようにも感じてしまったのは、少し残念でした。

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“かめはめ波”を撃つ「HADO」でテクノスポーツ五輪を目標に

—— HADOのシステムは企業から導入の引き合いや問い合わせが多いようですね

2015年12月、ハウステンボスで導入されました。このほか、テーマパークやゲームセンターを運営する会社、出版社、イベントの主催者などから多くのお話をいただいているところです。

今はBtoBのビジネスが中心ですが、テクノスポーツとして普及を目指していますので、今後はコンシューマ向けのアプリ開発や、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)の量産をしていかなければならないと考えています。

 

— ARを使ったコンテンツは、プレーしている本人は没入できるものの、周りの人から見ると何をしているかが分からないという課題がありますが、どうやって乗り越えたのですか?

テクノスポーツとしてHADOを普及させるためには、オーディエンスも楽しめなければなりませんので、魔法を使って戦っている様子を映像コンテンツとして配信したり、大型モニターに映し出したりしています。それにより、プレイヤー以外も楽しめるようにしています。

今は各地のイベントなどを中心にリアルの場で披露し、多くの人に体験してもらっています。全世代に楽しんでいただいていますが、特に小学生の男の子を中心に絶大な人気があります。

将来的にはスター選手を生み出し、国際大会も開きたいですね。2020年の東京五輪時にテクノスポーツ五輪を同時開催することを狙っています。

 

取材先 : 株式会社meleap http://meleap.com

 

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コラボ先へのメリット提示が重要 IR情報も活用して課題を見つける

株式会社Warrantee(ワランティ) 代表取締役 庄野裕介

電化製品などの保証書をスマホのカメラで撮影すると電子化され、保証期間などの管理ができるサービス「Warrantee」を2014年3月に開始した株式会社Warrantee(大阪市中央区)は、Crewwへの参加後、大手企業とのコラボレーションを相次いで決めている注目のスタートアップ。他に例を見ないユニークなビジネスモデルと、コラボを成功させるためのポイントを庄野裕介氏に聞いた。

保証書の電子化・管理サービスが持つ広がりと有望性

―― 庄野社長は京都大学で理系の学部から経済学部に転部し、卒業後にすぐ起業するというめずらしい経歴をお持ちです

元々は研究者を目指して入学したのですが、「自分には研究職は向いていない」と感じ、4年生の時に経済学部へ移っています。結局、大学へは計6年間行ったことになりますね……。

経済学部で出会ったゼミの先生がセブン・イレブンチェーンのPOSシステム開発に深く関わっていて、ここでITの重要性を認識させられることになりました。卒業後は大手のシステムインテグレーター(SIer=エスアイアー=企業システムの構築・運用会社)に内定をいただいたので、そこへ就職してITエンジニアの修行をするつもりでした。

 

―― ところが起業に踏み切ってしまう

大学卒業の間際に大阪市が主催する米国シリコンバレーツアーがあり、ここに参加したことがきっかけです。グーグルなどの名だたるIT企業を見学できただけでなく、現地では短時間のプレゼンも行えたのですが、ここで保証証を電子化するビジネスを提案したところ、出資が決まりました。内定していた大手SIerさんには申し訳ない気持ちでしたが、起業を決断し、現在にいたっています。

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―― そして、大学卒業後の2013年4月に大阪で起業することになります

出身は東京なのですが、大阪市内のほうがエンジニアを採用しやすいとの思いがあり、現在は関西一の金融街である北浜にオフィスを置いています。ただ、今はどうしても首都圏へ出張する機会が多いですね。

 

―― 事業の柱である「Warrantee」はどのようなサービスですか

無料アプリをダウンロードし、スマホのカメラで保証書や購入時のレシートなどを撮影すると電子化され、各製品の保証期間などを容易に管理ができるようになるサービスです。紙の保証書ですと、いつの間にか紛失するなどして必要な時に見つからず、保証を受けられないことがあります。電子化しておくことで、保管の手間を大幅に減らすことができます。

また、登録した製品の説明書が閲覧できたり、アプリ上から簡単にメーカーへ修理依頼することも可能です。サポートセンターへ電話をかけたり、購入店へ持ち込む必要がなくなります。

将来的には電化製品の売却サポートや、家電の処分時に回収の申し込みができるようなサービスも予定しています。

 

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―― Warranteeのビジネスモデルを教えてください

ユーザからお金をいただくことはありませんので、電化製品メーカーやIT関連サービスを行っている企業とのビジネスが中心となります。電化製品の保証書を通じ、ユーザの購入履歴や嗜好が分かりますし、メーカーの正規修理へ繋げることもできます。買い替え時期になると、メーカーから適切な案内を行うということも考えられます。

Warranteeでは、保証書だけでなく、契約書の電子化と管理できますので、たとえば携帯電話契約の更新月に、MVNO(格安スマホ)を案内する、といったことも可能です。単に保証書や契約書を電子化するだけではなく、製品の「アフターサポートにおけるプラットフォーム」を目指していますので、さまざまな形のビジネスに発展させていけると考えています。企業の方々にはCRMツールとして使っていただく、というイメージです。

 

―― そうした高い可能性が評価され、Crewwでは次々とコラボを成立させていますね

以前、大阪市で開かれたあるピッチに参加したところ、Crewwの伊地知天(いじちそらと)さんが審査員をつとめており、それがきっかけで登録しました。大変ありがたいことに、これまで5社のコラボに応募しましたが、このうち3〜4社から引き合いをいただいています。CRMという部分で評価されているのかもしれません。

 

―― すごい確率です。大手企業に採択されやすくするコツか何かがあるのですか?

コツというわけではないのですが、コラボ先の大手企業に利益をもたらせそうにない場合は応募をしていません。必ず先方のメリットを提示できるように努力しました。

とはいえ、まだまだ小さな組織ですので、できることには限りがあります。背伸びして先方に迷惑をかけることがないようには心がけています。先方企業が抱えている課題は調べる方法としては、上場企業の場合は、IR(インベスター・リレーションズ=投資家向け)情報に掲載されているケースが多くありますので、必ず読むようにしています。特に決算説明資料には大きなヒントが隠されているんです。

 

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―― これまでコラボに応募してきたなかで、感じたことはありましたか

やはり組織が大きい企業の場合は、少し動きが遅いと感じることもありましたが、今は慣れたこともあり、「当たり前」と理解できるようになりました。それよりも、先方企業内で明確な目標設定や課題意識が共有されていない場合は、どうやって提案すればいいのか迷うことがありますので、方向性を示していただけるとありがたいです。

ただ、Crewwに参加しておられる大手企業のほぼすべてが、スタートアップのサービスを導入したいとの姿勢が強いので、非常にやりやすいと感じています。また、最初のやり取りはチャットやメールが中心ですので、大阪にいても苦労することがないのはいいですね。その後、実際に先方企業とお会いできると、議論がふくらみますので、新しいことが生まれやすくなります。

 

―― Crewwに参加しているスタートアップのみなさんにアドバイスをお願いいたします

我々はクックパッドから投資を受けていますが、「料理レシピ」と「保証書の電子化」とは一見すると関係が薄いように思えます。しかし、料理には家電が必要だ、と考えれば関連性が見えてきます。近い業界よりも、遠い業界との組み合わせの方が、意外性のあるコラボが可能となり、かえって
上手くいくのではないかと思っています。

―― ありがとうございました

取材先 : 株式会社 Warrantee   http://www.warrantee.jp

 

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社内に化学反応を起こすような 熱い情熱を持つ人々と出会える

株式会社オートバックスセブン 事業開発部

事業開発担当執行役員 佐久間進、事業開発部課長 大木勝仁、事業開発部 内藤順子

株式会社オートバックスセブン(東京都江東区)は、カー用品専門店「オートバックス」を全国に約600店を展開する。「豊かで健全なクルマ社会の創造」を経営理念として、国内最大規模の店舗ネットワークを構築している一方、顧客に新たな価値感を提供できるサービスや新規事業の創出が社内課題として挙がっていた。そこで2015年7月からCrewwとのオープンイノベーションを開始し、現在はスタートアップ5社との取り組みを始めている。
同社で事業開発部門を率いる執行役員の佐久間進さんと、事業開発部の大木勝仁さん、内藤順子さんにコラボレーションの現状と展望について話を聞いた。

 

スタートアップに求めたテーマは「スマートなカーライフを提案」

―― Crewwと出会ったのはどのようなきっかけでしたか

弊社社長が取引先の方から教えていただいたのがきっかけです。社内で新規事業やサービスの創出が課題となっていたなかで、社長から事業開発部門に紹介がありました。実際、事業開発部門ではこれまでもスタートアップの方々との接点を求め、ベンチャーイベントやマッチングパーティーなどに参加し、一緒に取り組める方を探していたところでした。そうしたこともあり、早速、Crewwの担当者の方とお会いしたのですが、最初はやはり「ん、若い社長で随分ラフな格好だな」という印象を持ちましたね(笑)

 

―― オートバックスセブンは連結4,200人以上の社員が働く東証一部上場の大企業ですが、オープンイノベーションに踏み切った背景を教えて下さい

新規事業やサービスへの取り組みは、これまでも社内で行ってきたのですが、大きなイノベーションを起こすにはサラリーマンでは難しい面もあると感じました。スタートアップの方は何もないゼロの状態から、人生や財産を掛けて、人つの物事をやり遂げようとしておられます。そうした熱い情熱や志(こころざし)を持って取り組める人材は、社内ではなかなか見つからないものです。

また、比較的手の届く予算で始められることや、弊社の事業内容を理解したうえで適切な提案や、コラボ期間中のフォローをしていただけることも大きなポイントでした。

 

―― オープンイノベーションに取り組む際、社内でどのような反応がありましたか

弊社は社外の方とコラボレーションする文化があまりなかったこともあり、「お金をかけてまでやるのか」との反応も出ましたが、最終的には「寄り切った」といいますか、何とか「Go」が出て、始められることになりました。そして、取り組みを始めた以上は「社内の最終プレゼンではスタートアップの話をしっかり聞いて判断してほしい」と役員をひとりづつ巻き込んでいくようにしました。

 

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―― 今年(2015年)8月から「スマートなカーライフを提案」とのテーマでコラボレーションの募集を始めました

かなり間口の広いテーマだったこともあり、46件もの応募をいただきました。

最初は私(大木氏)と内藤の2人で提案内容の精査やスタートアップの方との連絡役を担っていたのですが、手が足りなかったため、急遽、上司の佐久間(担当の執行役員)に増員を要請しました。結局、7人のメンバーしかいない部署のうち、5人が携わることになったのですが、それでも2週間はかかりました。

魅力的な提案内容が多かったこともありますし、多くの目で判断することで先入観をなくしたいとの思いがありました。何より、ご提案をいただいたスタートアップの皆さんへの感謝の気持ちを忘れることなく、真剣に判断させていただくうえで人手が必要でした。

 

―― 46件の提案のなかからどのように絞り込んだのでしょうか

チャットなどで実際にやり取りしていくうちに、どうしても自分が担当したスタートアップを推したくなる傾向が出てきます。そのため、以下のような5つの視点を持つように心がけました。

(1)コンセプトは合っているか
(2)社会的なニーズはあるか
(3)どのような人(経営者)なのか
(4)実現可能性はどうか
(5)規模感や将来性はどうか

一方でスタートアップの方と共に成長を目指す試みですので、弊社事業とのシナジーという部分はあまり意識しないようにはしていました。

 

―― そして最終的には5社に絞り込みます

今回、コラボレーションの取り組みを始めさせていただいたのは、体験型知育アプリのキッズスター(平田全広社長)をはじめ、IoT関連のCAMELORS(キャメローズ=田根靖之社長)、個人間カーシェアリングのライフシェアワークス(芝弘明社長)、保証書電子化サービスのWarrantee(ワランティ=庄野裕介社長)、動画チャットプラットフォームのFacePeer(フェイスピア=多田英彦社長)という5社です。

なかにはまだ開始時期などが決まっていない取り組みもありますが、これから徐々に具体化させていく予定です。これから先が大事なので、社内をもっと巻き込みながら進めていきたいと考えています。

 

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―― 今回、初めてのオープンイノベーションに取り組まれましたが、もっとも苦労したのはどの点でしたか

スタートアップの方や提案内容をどのように評価するか、という部分です。客観的な基準やノウハウが社内にまったくないなか、すべてが初めての取り組みでした。不安もありましたが、それを乗り越えられたので、今は自信になっています。

一方で課題や反省もあります。たとえば、プレゼンテーションの場では役員がずらりと一堂に並ぶような形で設定してしまいましたので、これではスタートアップの方も緊張しますよね。また、チャットやメールでスタートアップの方とやり取りするのも初めての経験ですので、「こんな形でいいのだろうか」と悩むこともありました。ぜひ、Crewwさんにはこうした部分でもアドバイスをいただければ有難いところです。

 

―― これからオープンイノベーションを始めようと考えている企業の方へアドバイスをお願いいたします

アドバイスというほどでもないのですが、実は我々も最初は「ノウハウもない中、独自の判断基準だけではできないんじゃないか」と思っていたのですが、何とかなりました。やはり経験してみることが大事なのではないでしょうか。実際にやってみると、社内に“化学反応”が起こり、新しいビジネスへつながる可能性が一段と高まるはずです。

―― ありがとうございました

 
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“不満ビッグデータ”を活用して 大手と改善事例を作るのが目標

株式会社不満買取センター 代表取締役社長 鈴木翔一朗

社名をいちど聞くと忘れられない! そんなスタートアップが株式会社不満買取センター(東京都新宿区)だ。その名の通り「不満」を買い取るビジネスを展開しています。2012年6月の創業以降、ユニークな社名と業務内容だけにテレビや新聞などのマスコミに度々登場。抜群の知名度を誇ります。2014年12月には転職サイト大手のエン・ジャパン傘下となり、開発や営業スタッフを大幅に拡充できたことでサービスにも磨きがかかる。Crewwを通じ、大手企業との成功事例を作りたいという鈴木翔一朗氏
に話を聞いた。

 

独自開発した言語解析技術で不満データを活用

―― 不満買取センターは、社名もコンセプトもとにかくユニークですね

社名の通り、個人の方からどんな不満でも買い取っています。これを専門でやっている企業は世界で弊社だけではないでしょうか。おかげで今も月に2~3回はテレビなどから取材をいただいています。

不満内容は主に商品やサービス、施設などに関するものを対象としていますが、なかには「毎日ダンナの帰りが遅い!」なんていう個人的な内容も寄せられます。

たとえ、個人の人間関係に関する不満であっても基本的には買い取っています。不満があったらまず弊社に投稿してもらう、という習慣にしていただきたいとの思いがあるためです。

 

―― どんな方が不満を投稿しているのですか

今年3月18日に不満を投稿できるアプリの提供を始めたのですが、8カ月ほどで累計会員数が25万人を超えました。特に多いのは主婦の方です。そのため、化粧品や美容関連の不満に関しては高く買い取っています。また、商品やサービス名、状況など具体的な内容が書かれた不満はポイントが高くなります。

買い取りは「ポイント」で行っていて、1ポイントでAmazonギフト券1円分となり、500ポイント以上貯まると交換ができます。

不満の内容にもよりますが、1つの不満投稿で最大10ポイントで買い取っています。現在は最大50ポイントまで買い取り額を拡大するキャンペーンを行っています。

 

―― 不満買取センターのビジネス(マネタイズ)面を教えてください

個人から買い取った不満を、法人向けにレポート提供するという形のビジネスです。現在、150万件以上の不満をデータベース化しており、独自で開発した言語解析技術により、内容の自動分類が可能です。依頼のあった企業ごとに、データサイエンティストが分析して詳細なレポートを作成しています。

多くの消費者は普段は声をあげません。そのため、企業側からは消費者が何を考えているのか見えづらいものですが、不満データを使えばそれを可視化できる、という点で評価をいただいています。消費者の本音に迫る生の声は、集めやすそうに見えて集めづらいものです。

弊社には毎月大量の不満データが集まってきますので、今後は業界ごとの不満ランキングなども発表していきたいですね。シンクタンク的な存在になろうとも考えています。

ビジネス向け以外にも、不満ビッグデータを使うことで、「福山雅治の結婚発表後、『結婚相手が不満』の声が約1割」や「『夫への不満』、過去半年間一番多かった不満は、 『家事を手伝ってくれない』の声が約2割」といった調査結果も既に発表しています。

 

Crewwに参加したのはどんなきっかけでしたか

以前からCrewwの存在は知っていましたが、社内からコラボレーションに参加したいとの声が上がってきたことがきっかけです。主に弊社CTO(最高技術責任者)の中島正成が中心となって取り組んでいる最中です。

弊社の不満ビッグデータや自然言語解析を活用していただけるコラボ先を探しているのですが、ありがたいことに関心を持っていただける大手企業は非常に多いですね。特に言語解析という面に価値を見出していただいています。

今日もちょうど、これからプレゼンテーションに参加させていただくところだったりします。

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―― Crewwを使うことで、どんなシナジーがありましたか?

プレゼンテーション時は、先方企業から有益なフィードバックをいただけるのは大変ありがたいと感じています。この先、実際に大手企業とコラボをさせていただき、不満データを使った商品やサービス改善の成功実績を作るのが大きな目標です。

そのためにも、われわれも単なる不満データを提供するという提案ではなく、先方企業のために何ができるのかを提示しなければならないと強く感じているところです。

 

―― 不満データを使ってサービスや商品の改善に成功した事例を作るために、どんな企業とのコラボを考えていますか

今、Crewwを通じてお話が進んでいるのは、リサーチの新しい手法を共に生み出そうというコラボです。不満データは不特定多数の中における生の声ですので、調査側のバイアスがかかったり、恣意的になったりする心配がありません。覆面調査との組み合わせや、本調査前のプレ調査に使っていただくなど、さまざまな活用が可能です。

女性が投稿する不満データが多いため、化粧品やキッチン用品、食料品などを扱う企業の方とコラボができれば、と期待しているところです。

 

―― Crewwに参加しているスタートアップへ、コラボを成功させるためのアドバイスをお願いいたします

大手企業の課題に合わせた提案を行うのは当然なのですが、スタートアップの場合、あまりに合わせすぎて自社の目標を見失ってもいけませんので、そのあたりのバランス感覚が大切なのではないでしょうか。

Crewwに参加している大手企業は課題意識が明確で、熱量が高いというイメージがありますので、弊社としても期待を持ってコラボの取り組みを行っていきたいと思います。

 

―― ありがとうございました

※写真の鈴木社長が手にしているのは同社キャラクターの「ふーまん」です
取材先 : 不満買取センター http://fumankaitori.com

 


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大企業と一緒に同じスピード感で何かを生み出せるのが魅力

株式会社BearTail(ベアテイル)代表取締役 黒﨑賢一

スマホでレシートを撮影するだけで内容を読み取ってくれる全自動の家計簿アプリ「Dr.Wallet(ドクターウォレット)」で知られるのが株式会社BearTail(ベアテイル、東京都千代田区)です。筑波大学発のエンジニア集団として2012年6月の創業以来、社会の道しるべとなるような斬新サービスを相次ぎ発表してきました。一方でCreww(クルー)が大手企業とのコラボレーションマッチングを開始した当初から参加しており、既に日本を代表する大手新聞社とのコラボも決定しています。BearTailの黒﨑賢一社長に事業の展望や、大手企業とのコラボのあり方について話を伺いました。

 

大学3年生で起業、全自動の家計簿アプリを開発

―― もともと黒崎社長はIT系のメディアでライターをされていたそうですね

高校生の頃からソフトバンク系のメディアで、ウイルスソフトの紹介記事などIT関連の内容を書かせていただいていました。ライターのアルバイトを通じてまとまったお金が貯まったので、卒業旅行でインドへ行ったのですが、そこで少し価値観が変わりました。

インドの人々は1日数百円のお金で懸命に暮らしていますが、私はといえば、自分で稼いだお金とはいえ、高校生の身分なのにそれなりの収入があり、不自由もなく暮らしています。「こんなぬるま湯の中にいて大丈夫だろうか。本気で働かなければ」と感じ、これが後の起業に繋がったのかもしれません。

 

―― 筑波大学への進学後は何か変化がありましたか

良いのか悪いのかは分かりませんが、勉学よりもライター業によりのめり込みました。自分の書いた記事が無数の人に読まれ、多くの人に影響を与えるという仕事に魅了され、1日に10本くらい記事を書いていたことさえありました。そのため、学業には目を向けていられないという弊害はありましたが……(苦笑)

 

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―― そして大学3年生の時に起業に踏み切ります

取材して記事を書いているのはもちろん楽しいのですが、いつしか「紹介する側」ではなく、「紹介される側」になりたいと思ったことが一つのきっかけです。8畳しかない私のアパートに同級生4人が集まって会社を立ち上げました。“オンライン墓地”とか、筑波大学周辺の情報マッチングサイトとかECの最安値自動購入サービスとか、とにかく色んなサービスを立ち上げましたね。

 

―― さまざまなサービスを立ち上げたなかで、家計簿アプリ「Dr.Wallet(ドクターウォレット)」が生まれたのですね

それぞれのサービスを運営するなかで、解決しがたい課題も見えてきました。たとえば、各ECサイトの最安値を自動で探し出して購入するサービスの場合、人によっては最安値よりも最速で届けてくれことを望む場合もありますし、保証が充実している店の方がいいという人もいるでしょう。個々人に応じた最適化が難しかったのです。

ただ、こうしたサービスの開発を通じて「買物が人生を変える、モノによって人生が変わるのではないか」という思いが生まれ、“購買”に焦点を絞ったサービスを考えた末、購買を管理する「家計簿」という形に行きつきました。2012年ごろから開発をはじめ、実際にリリースできたのは2013年です。

 

―― 現在、多くの家計簿アプリが登場していますが、Dr.Walletはどう差別化を図ってきたのでしょうか

スマートフォン(スマホ)のカメラでレシートを撮ればデータ化ができる、という点では同じですが、われわれが開発したDr.Walletは、裏側でオペレーターがすべて手入力しているのが特徴です。OCR(光学文字認識)でデータ化するケースと比べ、ほぼ間違いはないですね。手入力している家計簿アプリは日本で初めてです。

現在、全国2500人ほどのオペレーターを確保しており、クラウドソーシング的に働いてもらっています。ユーザのみなさんには正確な入力という面を高く評価いただいているためか、アプリの継続利用率が非常に高く、ある調査ではトップになりました。

 

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―― Dr.Walletは120万ダウンロードを誇るアプリに育ちましたが、ビジネス(マネタイズ)面での展望を聞かせてください

これまでの2年間は、アプリをより良くすることだけにひたすら注力してきましたので、本格的なマネタイズは来年から取り組む予定です。機能を強化した有料版を設定するなどの「フリーミアムモデル」はもちろんですが、一方で広告モデルも見込んでいます。

たとえば、利用者が特定の商品を購入した場合は、レシートによって分かりますので、キャッシュバックキャンペーンを行ったり、クーポン券を出したりして、店舗への送客や販売促進を行うといったビジネス向け(BtoB)の事業を考えており、これは既に試行しています。

 

―― そんななか、Creww(クルー)に参加したのはどんなきっかけだったのですか

2年ほど前、弊社に出資いただいているベンチャーキャピタルの方に「参加してみては」と勧めていただきました。Crewwが始まって間もない頃ですので、ある意味で今では“古参”かもしれませんね(笑)

 

―― Crewwで活動したなかで感じたことはありましたか

最初は「大企業の人に会ってみたい」という単純な動機があったのですが、とにかく前向きな話をできるのが非常にいいですね。担当者の方もスピード感があって新しい何かが生まれやすい雰囲気がありますし、プレゼンテーションの時以外はオンラインで完結するのも効率的で気に入っているところです。

あと、Creww自体はマッチングプラットフォームとして黒子に徹していますが、実に良い仕組みなのですから、ベンチャー企業としてもっと目立ってもいいのでは、ということは感じています。

 

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―― 既に大手新聞社とのコラボレーションが決まっています

先方にプレゼンした時は、幹部の方の多数いらっしゃったのでさすがに緊張しましたが、普段はピッチ(短時間プレゼン)ばかりだったので、Crewwのプレゼンでは担当者の方から具体的で適切なアドバイスをいただけるのは非常にありがたかったですね。

16社が参加したなかで、コラボ先として選んでいただけたのは素直に嬉しかったです。

 

―― これからCrewwに参加したり、コラボにエントリーするスタートアップへのアドバイスをお願いします

スタートアップですから、自らが目指す方向性や夢はしっかりと持つのは当然ですが、“我が道を行く”という姿勢ばかりではなく、コラボ先の企業が何をやりたいのか、優先度が高い分野はどこなのかをきちんと理解し、そこに合った提案を行うことが大事なのではないでしょうか。そのため、先方の担当者とよく話し合いながら提案に落とし込んでいく作業は不可欠です。

大企業とのコラボということで、そのインフラを使った壮大な事業提案をしたくなる気持ちは分かりますが、相手側も大きなリスクを背負うことになるため、慎重にならざるを得ません。まずはスモールスタートでのコラボを提案し、それが上手くいったら次のステップに、という考え方も持っていただけたらと思っています。

取材先 : 株式会社 BearTail http://beartail.jp/


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イノベーションを起こすためには同じ目線でのコラボレーションを

株式会社大京グループ 経営企画部 担当部長 武石直人

「ライオンズマンション」のブランドで知られる大京グループは、不動産の開発から管理、流通までを幅広く展開する大手不動産サービス事業者です。そんな同社が2015年から新たに始めたのは高齢者向け住宅事業。記念すべき第1号の「かがやきの季(とき)中野南台」には、スタートアップの株式会社エクセリーベ(東京都新宿区、大橋稔CEO)が開発したテレビ電話による見守りサービス「見守りん」が採用されています。大手不動産グループとスタートアップによるコラボレーションは、どのように生まれたのだろうか。同社グループ経営企画部の担当部長である武石直人氏に聞いた。

 

社会変革を起こす新ビジネスを目指し、社内の枠組みから脱却

―― 大京グループがスタートアップとの「オープンイノベーション」を採り入れた背景を教えてください

大京グループは、株式会社大京を中心とした不動産サービス事業を提供する企業グループとして、お客さまのライフステージに応じたさまざまな住まいと各種サービスを提供しています。住まいの向上を通じ、心の充足を高めるための「住文化」を創っていくことが経営理念です。

例えば、「ライオンズマンション」は首都圏を中心に大阪や名古屋などの大都市圏に多数ありますが、マンション間での“横のつながり”はありません。入居者の方々とともに「住文化」を創っていくうえで、何らかのコミュニティを築けないか、との課題意識が社内にありました。

大京グループ内では、公募型のビジネスモデル提案制度「大京イノベーションアワード」を設け、2012年より社内から新規事業の芽を見つけ出す試みを行ってきました。一方で社会の変革を起こすようなイノベーションは、社内の枠組みを抜け出してみることもご必要だと考え、2014年からCrewwと提携し、プラットフォームを使わせていただくことになりました。

 

――Crewwとはどのようなきっかけで出会われましたか

証券会社さんからご紹介いただきました。私自身は以前ベンチャー企業にいたこともあり、自ら事業を興す人に対するリスペクトがあり、ベンチャーの方とお会いしたり、何かを一緒にしたりすることに対してはまったく違和感がありませんでした。

ただ、当時のCrewwの担当者である伊地知中(いじちあたる)さんはかなり長髪の風貌でいきなり現れたので、部署の他のメンバーはびっくりしたかもしれませんね(笑)

 

―― 社員数が5000人を超える大きな組織のなかで、外部の力を採り入れてイノベーションを起こすとなると難しい面もあるかと思いますが、社内的な苦労はありましたか

先ほど申し上げたように、大京グループは社内でもイノベーションを起こそうという土壌があり、課題も明確になっていましたので、社内的にはそれほど大きな障壁はありませんでした。

もう一つ、Crewwのプラットフォームを活用させていただくにあたっては、経営企画部が持つ予算の範囲内でできたことも大きなメリットでした。もし、全社的な経営会議に通すほどの予算が必要であったなら、これほどすんなりとはいかなかったかもしれません。

 

―― スタートアップとのコラボレーション先はどのように探されたのですか

弊社が構想していた「ローカルO2O(オー・ツー・オー=Online to Offline)」というコンセプトを実現できそうなビジネスモデルをお持ちのスタートアップをCrewwのプラットフォームから探しました。

まず40数社を見つけ、部内のメンバー3名が各社の方々とメールを通じて細かなやり取りを行ったうえで、約20社に絞らせていただきました。

各社のビジネスモデルを理解するところから始めなければならず、ひとりあたり10社以上を担当する形となったため、部内のメンバーもやり取りにはかなりの労力が必要でした。

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―― スタートアップを20社に絞った後はどうされたのですか

弊社へお越しいただき、役員も含め10名の前で、1社あたり50分以上かけてビジネス案をプレゼンテーションしていただきました。スタートアップの方とはメールを通じたやり取りだけでしたので、リアルの場でお会いしたのはこの場が初めてです。

メールを通じ、スタートアップの方々と長時間やり取りしてきた我々は、ビジネスモデルの細かな部分を尋ねることが多かったのですが、役員クラスはどちらかというと、ビジネスモデルよりも起業家の志(こころざし)やチームの統一感という部分を見て、質問を投げかけていました。

 

―― こうしたプレゼンの場を設定するとなると業務的にも大変です

いえいえ、準備や運営はCrewwさんがやってくれましたので(笑) それよりも、最初にスタートアップの方とやり取りする「ブラッシュアップ」の部分では、文字情報だけで丁寧にやり取りする必要があったので、ここがもっとも苦労した部分です。

 

―― 20社のビジネスモデルのなかに、今回コラボしたエクセリーベが開発したテレビ電話による見守りサービス「見守りん」があったわけですね

エクセリーベさんのビジネスは、テレビ電話などのIT機器を通じて話を「傾聴」することで、人の心を豊かにしていきたいとの理念が根幹にあります。そのためか、大橋稔さん(CEO)のプレゼンには非常に落ち着きがあり、聞いている側は不思議な安心感を与えられました。

このプレゼンを聞いていたなかに、高齢者向け住宅事業推進リーダーがいて、「これはいい!」とほれ込み、今回のコラボにつながりました。

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―― 今回、オープンイノベーションを実施したことで、社内や部内で何らかの変化はありましたか

不動産という業界には、どちらかというと昔ながらの仕組みが残っており、元請けや下請けなど、ヒエラルキー(階層)のなかで動かなくてはならない面があります。

そんな世界に慣れていた若い社員のなかには、スタートアップの“フラットな世界”にカルチャーショックを受けるともに、「こんな楽しいことをやっている人たちがいたのか!」と目を輝かせていたのが印象的です。良い意味での異文化交流になったのではないでしょうか。

 

―― オープンイノベーションに対して、現段階で社内ではどのように評価されていますか

昨年、Crewwさんと提携したことを社内外に大々的に発表したため、スタートアップとのコラボがどんどん進むのではないか、との大きな期待が社内にあります。一方で今のところ、成立したコラボは1社だけですので、そういう意味では、社内で厳しい目を向けられることもあります。

弊社は上場企業故、経営層は常に株主のみなさんから厳しいプレッシャーの元、定量的な結果をだすことを求められます。一方で、スタートアップとのコラボは短期間で成果を出せるものではありません。運とタイミングも大切です。一般の経営課題に関する時間軸ではなく、芽が出るまでに時間がかかるというスタートアップの特性を考慮したうえで、異なるロジックで、社内的な評価をしていく土壌を作らなければならないと個人的には感じています。

 

―― これからオープンイノベーションを採り入れようとする企業に対して、アドバイスをお願いします

先ほど申し上げたように、スタートアップとのコラボは成果が出るまでには時間がかかるものですから、経営層の強い意志とコミットメントが必要です。芽が出るまでの胆力が問われます。

そして何よりも大切なのは、スタートアップの皆さんと同じ目線で、「イノベーションを起こしビジネスを一緒に創っていくんだ!」という姿勢です。そこには上も下もなく、囲い込むなんていう思想もない。常に「Win-Win」で、お互いをレスペクトしながら新たなモノコトを創造していくんだという気概が必要です。

日本の大企業は、大手ならではの優れたインフラを持っているのですから、ベンチャーを育て、盛り上げていくエコシステムを作る一躍を担わなければならないと強く感じています。それが日本を元気にすることにも繋がると信じています。

 

―― ありがとうございました

 
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