eyecatch_2

個性的な声が集まるニュースメディア「Voicy」がスポニチと組んだ理由【後編】

株式会社Voicy 代表取締役 緒方憲太郎氏

株式会社VoicyのCEO 緒方憲太郎さんインタビューの後編です。後編では創業経緯やcrewwコラボへ参加したきっかけ、コラボのポイント等を語っていただきました。

大企業の延命を助けるためにスタートアップは存在しているわけではありません。組むことで、世の中のために大企業とスタートアップで何を提供できるのか、互いに尊重した協力ができるかどうかの視点が大事です。

―― Voicyのようなユニークなアプリで起業された緒方社長ですが、もともと公認会計士という“堅い職業”に就いていたそうですね

とにかく人が好きで、その影響なのか色んな人が集まる「会社」という存在が大好きだったんです。大学時代は物理学を専攻していたのですが、卒業後に経済学部に入学しています。寝ても覚めてもテニスに熱中するあまり、“理系”の道を諦めたという面がないわけではありませんが、会社好きだったということも決断した要因です。

社会に出たらとにかく多くの会社に携われる仕事がしたい、と考えた時に浮かんだのが公認会計士でした。経済学部に入ってから猛勉強して卒業の年に資格をとり、大阪の新日本有限責任監査法人でお世話になりました。

―― 4年ほど公認会計士として活躍された後、世界を放浪されたとか

1年かけて30カ国以上を巡ったでしょうか。最終的にはニューヨークで就職して働くことになったのですが、海外放浪中米国ボストンでは医療系NPOを立ち上げたり、オーケストラのマネジメントをしたり、ニューヨークでは日本人のコミュニティを作ったり、現地でも多くの人とつながりを作りながら生活していました。かつてニューヨークで立ち上げたニューヨーク若手日本人勉強会というコミュニティは、今や1900人規模にまでなっているそうです。

―― 帰国後はトーマツベンチャーサポートでベンチャー支援に注力されています

米国でゼロからコミュニティや事業を立ち上げる楽しさを経験したことや、トーマツとご縁があって「一緒に面白いことをしよう」と誘っていただいたのがきっかけです。

無のところから新たな価値を生み出すというスタートアップの支援は、本当にやりがいがあり、まさに天職だと思いました。当時は日本で一番ベンチャー企業をまわった公認会計士かもしれません。今も6社ほどの企業の顧問をさせていただいているのですが、やはり最終的には自分でもやってみたいという思いが強くなりまして・・・。特に、メディアは表現の部分でまだまだ変われるはずだという思いとアイデアも起業前から持っていました。

―― スタートアップ支援の“プロ”だった緒方社長がcrewwを知ったきっかけは何だったのですか

ベンチャー支援を専門にしている企業に勤めていましたから、当然知っていまして、まさにcrewwはライバルですよ(笑)。われわれには監査法人特有の品質の高いコンプライアンスという縛りもありましたので、crewwはしがらみなく自由に素早く動けていいな、との思いを、どこかで持っていました。当時自分のやりたいと思っていることを次々先にやられてしまっている感じでした。

自分が起業してからは、crewwコラボを通じてスポーツニッポン新聞社さんと繋がることができ、本当に感謝しています。

―― スタートアップの失敗も成功も数多く間近で見て来られたなかで、大企業との付き合い方という部分でアドバイスをいただけませんでしょうか

なぜ大企業と組む必要があるのか、深く考える必要があります。言い方は悪いかもしれませんが、スタートアップが唯一、大企業に勝っているのはスピード感、つまり意思決定の速さだけです。それ以外はだいたい大企業のほうが優れています。そのなかで両者にメリットがないのに組んだとしても、誰も得しません。

大企業の延命を助けるためにスタートアップは存在しているわけではありません。組むことで、世の中のために大企業とスタートアップで何を提供できるのか、互いに尊重した協力ができるかどうかの視点が大事です。それがないのに組んでもスタートアップ側にメリットはないでしょう。

また、コラボする際の細かな部分で言えば、大企業側の「稟議」がどういうプロセスになっているのかを知っておくとスムーズに進みます。できうる限り、最終意思決定者に近い人から話をしておかないと、途中で条件が変わってしまうことや、終盤で話がひっくり返されることもあります。頼る人や握る人を選ぶということもスタートアップが上手く大企業と組むために重要だと考えています。

―― 深いアドバイスをありがとうございました

緒方憲太郎さんのcrewwページ
Voicyの公式サイト



eyecatch_1

個性的な声が集まるニュースメディア「Voicy」がスポニチと組んだ理由【前編】

株式会社Voicy 代表取締役 緒方憲太郎氏

声で自由に情報を受発信できるユニークな放送局アプリ「Voicy(ボイシー)」が大手メディアから注目を集めています。2016年9月にβ(ベータ)版を公開後、毎日新聞社やスポーツニッポン、西日本新聞などと相次ぎ提携。プロから個性的な素人までがパーソナリティとして、質の高いニュースソースを活用して声で伝えることができるようになっています。株式会社Voicy(東京都渋谷区)を2016年2月に創業した緒方憲太郎さんに、サービスの現状と今後の展開を伺いました。

「声と個性」の表現力が加わることで、より人の感性に訴えられるなど、体温のある情報になり、新しい価値が生まれる

―― 放送局アプリとして開発された「Voicy(ボイシー)」では何ができるのでしょうか

簡単に言いますと、活字メディアの情報を使い、誰もが声による発信ができるアプリです。また、発信するだけでなく聴くことも可能です。

発信者はパーソナリティということになり、新聞やWeb媒体など、弊社と提携しているメディアに載っている記事(一次情報)を声に出して読み、それが自らの“放送局(チャンネル)”のコンテンツということになります。

どんな記事を読むかは、パーソナリティの個性が出ますし、方言や独特の言い回しで読む方もいて、聴く側は自分の好きなパーソナリティの放送を選ぶことができます。

たとえば、プロ野球の結果を伝えるにしても、巨人ファンのパーソナリティと阪神ファンのパーソナリティでは、勝敗によって声色や伝え方も違ってきますし、標準語なのか大阪弁なのかでも変わってきますよね。

選ぶ記事も、面白いと思うニュースを取り上げる人もいれば、スポーツや、地域の情報などを積極的に選ぶ人もいます。チャンネルごと、つまりパーソナリティごとに違うコンテンツになり、そこにまた違ったファンがついてきます。

img_1
声で活字を彩る放送局アプリ「Voicy」

―― Voicyを使えば個人が“ラジオ放送局”を開設するようなイメージですが、声コンテンツの元となる活字コンテンツは自由に使っていいわけですね

活字コンテンツについては、メディア各社とVoicyが提携し、記事をオープンソースにしていただき、声のコンテンツとして活用できるよう許可をいただいています。

現在は毎日新聞社さんやスポーツニッポン新聞社さん、西日本新聞社さんなどからVoicyの主旨に賛同いただいており、現在さらに幅広い分野や地域のメディアにお声がけしている最中です。

私たちとしては、「目」を使う文字コンテンツに、「耳」という流通経路と「声と個性」の表現力が加わることで、より人の感性に訴えられるなど、体温のある情報になり、新しい価値が生まれるのではないかと考えています。

作曲者と実際に歌う方が別であることも多い音楽の世界のように、情報コンテンツもネタの作り手と発信者が役割分担してもいいのではないでしょうか。

―― どのような方がパーソナリティとなり、どんな方が聴いているのでしょうか

現在は一定のクオリティを担保するため、パーソナリティはオーディションという形で選ばれた方がチャンネルを作って放送をしています。といっても、厳密なオーディションで「上手い人を選ぶ」というよりは、世界観を共有して楽しんで個性的に配信していただけるかどうかを確認しています。

ナレーターや声優といった“声のプロ”の方もいますが、まったく経験のない方もいます。今は120名ほどがチャンネルを持っていますが、チャンネル数はオーディションごとに増えています。

たとえば、博多の地元紙である西日本新聞を博多弁で読んだり、総理大臣の一日だけを専門で追いかけている人がいたり、なかには自ら現場に突撃取材をしてコンテンツを作る人も存在します。テレビのようにニュースを綺麗に読む人より、個性のある“素人”のほうが人気はある場合もありますね。

聴く側も年齢や性別がさまざまで一概には言えないのですが、子育て中の方が目立っているかもしれません。寝る時には必ず聴いている、という方もいますよ。

 

緒方憲太郎さんのcrewwページ
Voicyの公式サイト

 


img_1

creww最多となる138件のエントリー 東京メトロのプログラムで3件を採択

creww(クルー)史上最多の138件のスタートアップが参加――。東京メトロ(東京地下鉄株式会社)がcrewwと2016年10月から始めたオープンイノベーションプログラム「Tokyo Metro Accelerator 2016(東京メトロアクセラレーター2016)」では、crewwのプログラムで過去最多となる138件のスタートアップがエントリーし、12月15日に2次審査を通過した6件が最終のプレゼンテーションに臨みました。協議時間が予定よりオーバーするなど、最後まで選考委員が悩み抜いた末に選んだ3件とは。

138件から選ばれた6件が最終プレゼンに臨む

Tokyo Metro Accelerator 2016は、crewwに登録するスタートアップとともに「東京の更なる発展に寄与する新しい価値」(同社)を創り出そうという東京メトロでは初の試みです。10月31日から11月9日にかけて、ローンチの有無や短期的な収益性の考慮も不要という条件でスタートアップからのエントリーを広く受け付けました。

1次審査で138件から33件が選ばれ、さらに2次審査を経て、都内六本木で最後となる公開プレゼンテーションを開催。最終プレゼンテーションまで残ったのは次の6社です。

・株式会社LOCUS(ローカス=東京都渋谷区、瀧良太社長):テンプレート型動画サービス「FastVideo(ファストビデオ)

・プログレス・テクノロジーズ株式会社(東京都江東区、中山岳人社長):視覚障がい者向けナビゲーションシステム「AI CAMERA(エーアイカメラ)

・株式会社ナイトレイ(東京都渋谷区、石川豊社長):訪日外国人解析サービス「inbound insight(インバウンドインサイト)

・株式会社ログバー(東京都渋谷区、吉田卓郎社長):インターネットを介さない音声翻訳サービス「ili(イリー)

・株式会社Tadaku(タダク=東京都品川区、石川俊祐社長):外国人が教える家庭料理教室「Tadaku

・Qrio株式会社(キュリオ=東京都渋谷区、西條晋一社長):モノとスマホをつなげるアクセサリー「Qrio Smart Tag(キュリオスマートタグ)

ユニークさと将来性、インパクトで3社を選ぶ

img_2
採択された3社と東京メトロの奥義光社長(右)、審査委員長の髙山専務取締役(左)

最終プレゼンテーションでは、7名の審査員やマスコミ各社をはじめ、東京メトロの経営層や、自らが担当したスタートアップを応援する立場で訪れた若手・中堅社員などが見守る会場で行われました。

外部審査員として招かれた五嶋一人氏(株式会社iSGSインベストメントワークス社長)や麻生要一氏(株式会社リクルートホールディングスMedia Technology Lab.代表)らから時に厳しい質問も飛び出すなか、6社はそれぞれ15分間のプレゼンテーションと質疑応答を終了。

その後に行われた審査協議は、7人の委員による激しい議論が行われ、予定時間を過ぎても終わらないほどに白熱。予定より遅れて始まった結果発表では、審査委員長をつとめた東京メトロの髙山輝夫専務取締役から「ユニークさや将来性、インパクトを考え抜いて選んだ」と述べ、プログレス・テクノロジーズとログバー、Tadakuの3社に決まったことが報告されました。

視覚障がい者と訪日客に向けた先進デバイス

img_3
プログレス・テクノロジーズの中山岳人社長(左)

今回のプログラムに採択されたプログレス・テクノロジーズは、視覚障がい者向けに骨電動デバイス「ShikAI(しかい)」の開発に取り組んでおり、AI(人工知能)を使った物体認識とビーコン(Beacon=位置情報伝達)を活用することで、駅構内を安心して歩ける環境にしたいと提案。

「世の中を変えていくパワーを持っている」(同社を推薦した東京メトロの担当社員)という将来性と技術力が審査員に評価されました。プログレス・テクノロジーズの中山岳人社長は「視覚障がいを持つ方々のため、さらに開発に注力していきたい」と採択されたことに喜びを表しました。

img_4
ログバーの山崎代表取締役兼COO(左)

また、ログバーは、指輪型のウェアラブルデバイス「Ring(リング)」で知られる話題のスタートアップです。そうした経験を生かした音声翻訳デバイス「ili(イリー)」は、インターネット環境がなくても翻訳が行えるデバイスを開発。これを活用し外国人旅行者の多い駅構内で実証実験を行いたいと提案しました。

「言葉の壁がなくなる時代をともに創りたい」(同社を推薦した東京メトロの担当社員)という先進性と、「場所を選ばず、タイムラグのないコミュニケーションがとれる高い技術」(審査委員会)が評価されての採択となりました。ログバーの山崎貴之代表取締役兼COOは「東京を変えていく機会にしたい」と意気込んでいます。

「シェアリングエコノミー」サービスも採択

img_5
Tadakuの須佐取締役(左)

一方、Tadaku(タダク)は、日本に住む外国人の自宅で世界各国の料理を学ぶ同名のマッチングサービスを展開しており、同社が持つ外国人ネットワークを活用して「東京メトロの沿線で、スタンプラリーを行うなど文化を学びながら“世界一周”ができるイベントを企画したい」と提案。

「シェアリングエコノミー(モノやサービスを個人間でやり取りする共有経済)としてのユニークさ、地域との共生とインバウンドのお客様に対するサービスの新規性」(審査委員会)が評価されて採択されました。採択後に行われた報道関係者向けのインタビューで須佐宇司(ひろし)取締役は「シェアリングエコノミーという観点で、東京メトロさんと何ができるのかをさらに詰めていきたい」と今後に向けての抱負を語りました。

img_6
オープンイノベーションプログラムは「充実した時間だった」と振り返る東京メトロの奥社長

今回のオープンイノベーションプログラムについて、東京メトロの奥義光社長は「まだまだ(自社で)できることがあると知ることができ、充実した時間でした。また、スタートアップの方の知恵や力を借りれば色んなことが実現できると感じた社員たちの目の輝きが変わっていき、意義深かった。今回、提案いただいたスタートアップの方々とつながりを今後も大切にしたい」と締めくくりました。

なお、最終プレゼンテーションの結果、惜しくも選ばれなかった3社には、「東京メトロ24時間券」が各社100枚ずつ贈られました。

 

interview_detail_banner_inquiry04


eyecatch

「スタートアップと数十億規模の事業を」 国際航業がデモデイを開催

空間情報コンサルティングを事業の柱に据える国際航業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:土方聡)は、2015年11月に初めて実施した第一回国際航業crewwコラボの現状を報告と、次年度の概要について説明する「crewwコラボ2015 デモデイ&2016オリエンテーション」を東京・渋谷のイベント&コミュニティスペース「dots.」で7月21日夜に初めて開催。スタートアップや大手企業の担当者ら100人以上が参加し、リアルの場でコミュニケーションをはかる絶好の機会となりました。

img_00
会場には100人以上が詰め掛けました

初コラボに予想を上回る数の会社・団体が応募

グリーン・コミュニティの実現を目指す日本アジアグループ傘下の国際航業は、空間情報コンサルティング事業を展開する1947年(昭和22)創業の老舗企業。まちづくりに携わる人々に高い知名度を誇り、多数の官公庁や民間企業を顧客に持っています。

いわゆる「BtoB」「BtoG(官公庁)」として知られる企業ですが、2015年11月に新たな事業展開を目指し、crewwを利用したオープンイノベーションを実施。多彩なスタートアップからの応募を得て、このうち8社とコラボを進めているところです。

img_01
コラボへの期待を語る国際航業の土方聡社長

イベントでは、国際航業の土方聡社長が「2020年の先に向かって、スタートアップの方々と数十億規模の事業を一緒に作っていきたい」と意気込みを熱く語りました。続いて、Creww株式会社の代表取締役である伊地知天(いじちそらと)は「大企業とスタートアップの利害が一致するマッチングを成功させるためにcrewwが間に立ち、両者の成長を加速させていく」とあいさつ。

その後、2015年のオープンイノベーションに参加後に国際航業とのコラボを進めているスタートアップ8社・団体が現在の事業やコラボの進捗状況を発表しました。

高齢者の「未病」対策にアプリを活用

img_02
レイ・フロンティアの澤田典宏取締役COO

最初に登壇したのは、行動情報を可視化する「SilentLog Analytics(サイレントログ・アナリティクス)」を展開するレイ・フロンティア株式会社(東京都江戸川区)です。人工知能などを活用してリアルタイムで人々の行動を分析が可能で、大地震などの有事の際に意思決定にも役立つといいます。国際航業のコラボでは、アプリを立ち上げているだけで行動が自動で記録される「SilentLogアプリ」を活用し、高齢者の未病対策に取り組んだ例が報告されました。

「最初はすぐに止めてしまうなどの問題はあったが、アプリを使った高齢者の6割が歩数増につながった。人気のゲームアプリ『ポケモンGO』と似ていて、外へ出て歩くので健康につながる」と澤田典宏取締役COOは話します。

国際航業新規事業開発本部の藤原康史さんは「当社ではこれまで災害に強いまちづくりや低炭素社会づくりに取り組んできましたが、近年は超高齢化社会に対応するため、高齢者が地域において健康で活動的に暮らせる新しいまちづくりを検討していたところにレイ・フロンティアさんから応募があった。まさに我が意を得たり、だった」とコラボにいたった経緯を紹介しました。

地方自治体のWi-Fiをアプリでつなぐ

img_03
タウンWiFiの荻田剛大社長

続いて壇上に上がったのは、街中の無料Wi-Fiに自動接続してくれるアプリ「タウンWiFi」が人気を集めている株式会社タウンWiFi(東京都港区)です。

わずか2カ月間で90万ダウンロードを突破するなど支持が広がっており、荻田剛大社長は「Wi-Fi利用の比率を上げることで通信容量の制限から解放される。巷では“神アプリ”と呼ばれています」と紹介しました。

一方、地方自治体が各地で提供するWi-Fiサービスとの連携が次の課題となっており、官公庁に強い国際航業とのコラボにより、さらなる発展が期待されています。「現在、自治体との間に立っていただいており、感謝するばかりです」と荻田社長は言います。

国際航業の藤原さんは「タウンWiFiはユーザに便利であることはもちろん、管理者側にも有用なサービスが多く、各地での観光振興やまちづくりに活用してもらうために全国を一緒にまわっているところ」と話しました。

訪日観光客の行動分析が可能に

img_04
ナイトレイの石川豊社長

株式会社ナイトレイはソーシャルメディア解析によって訪日外国人の観光行動を分析できる「inbound insight(インバウンドインサイト)」を展開しています。TwitterなどのSNS上に公開されている投稿内容をリアルタイムで解析。行動場所やクチコミ、国籍、性別、移動経路などを独自にデータベース化し、インバウンドマーケティングに必要となる裏付けデータを提供するサービスです。

国際航業とのコラボでも、データを軸に共同で商品開発などを行う予定だといいます。石川豊社長は「現在社内外を含めてニーズのヒアリングを進めながら、提案活動をしている」と話します。具体的には、自治体などに対する調査やコンサルティング業務をはじめ、国際航業が持つGIS(地理情報システム)データと連携して訪日外国人対策支援や共同レポート等のサービス開発を行っていく考えです。

国際航業の藤原さんは「まさにナイトレイさんはインバウンド観光によって地域活性化を進めている組織が求めているデータを持っている」とコラボにいたった理由を紹介しました。

可愛い支援ロボット「unibo」に期待

img_05
ユニロボットの酒井拓社長

ユニロボット株式会社(東京都渋谷区)は、家族間の交流促進や生活を支援するとのコンセプトで生まれた人工知能を使った生活支援ロボット「unibo(ユニボ)」を展開しています。酒井拓社長は「まさに『ドラえもん』の世界観を実現しようという次世代型のソーシャルロボット」といい、2017年3月冬の発売に向けて開発が進展中です。

国際航業とのコラボでは、高齢者などに向けて、uniboを活用したセルフケアを支援するサービスを進めており、日常生活のリマインダーや、健康と食事の管理、日常会話や見守りなどを行う計画です。今後、国際航業と金沢大学、ユニロボットの3社による実証実験を行うことを検討していくといいます。

国際航業新規事業開発本部の長谷川浩司さんは「uniboは、とにかく可愛いと評判になっている。ユーザーに好まれることは、支援を目的とするツールにとって最も重要なポイント。」と、今後の開発への大きな期待を示しました。

競合も含めた貴重な購買データを収集

img_06
BearTail(ベアテイル)の黒﨑賢一社長

全自動の家計簿アプリ「Dr.Wallet(ドクターウォレット)」が話題を集める株式会社BearTail(ベアテイル、東京都千代田区)は、スマートフォンのカメラで撮影されたレシート類を約2000名のオペレーターが手入力することで、高い精度の読み取り率を誇ります。これまで120万超のダウンロード数にいたったといいます。

利用ユーザごとにさまざまな実購買データを得られるのが特徴で、「たとえば、『Tポイント』だと加盟店内におけるデータしか収集できないが、Dr.Walletはコンビニなど世の中にあまり出回らないデータも集められる」と黒﨑賢一社長は話します。

国際航業とのコラボでは、同社が展開する電気料金プラン最適化サービス「エネがえる」との連携をはじめ、同社が持つ空間情報データと連携し、商圏分析サービスなどを展開していく考えです。

国際航業の長谷川さんは「BearTailさんのデータを見た弊社の役員が『これはすごい』と驚いていた。競合のデータも取れるのは貴重だ」と話しました。

話題の音声認識を使って観光地振興に

img_07
アイコトバの田中謙二社長

スマートフォンに向かって特定のキーワードをしゃべるとクーポンが提供されるサービス「しゃべってクーポン」が話題を集める株式会社アイコトバ(東京都渋谷区)。「グーグルの検索でも2割が音声によるものとなっており、これからは音声認識の時代。次に来るキーテクノロジーだ」と田中謙二社長は話します。

クーポンを発行するコストがほとんどかからず、なおかつユーザ自身が商品名などを“喋る”ことで認知度が向上する可能性が高くなります。安価で効果の高い集客サービスとして今後の浸透が期待されています。

国際航業とのコラボでは、自治体向けの観光PRにアイコトバの仕組みを活用していく予定だといい、たとえば、観光地でクイズ形式の質問などをスマートフォンに通知。それに答えるスタンプラリー形式で、特産品やグッズなどがもらえる形のサービスを考案中です。

国際航業の長谷川さんは「観光インバウンドやDMO(観光施策)などのコンサルティング調査業務などにも展開していきたい」と話しました。

ビジネス向けビデオチャット基盤を活用

img_08
FacePeer(フェイスピア)の真鍋憲士取締役

続いて、ビデオチャットのプラットフォーム「FaceHub(フェイスハブ)」を展開するFacePeer株式会社(フェイスピア、東京都港区)から真鍋憲士取締役が登壇しました。

WebRTC(Web Real-Time Communication)という技術を活用することで、Skypeやgoogleハングアウトとは異なり、インストールやアカウント登録をせずにブラウザ上で手軽に使える点を説明。「ビジネス現場向けに使いやすくなるよう、『1対複数人』や『複数人対複数人』の通信を可能とするなど、さまざまな機能を追加して開発した」とFaceHubの特徴を紹介します。

国際航業とのコラボでは、自治体への営業支援や、導入済みソフトのカスタマーサポート、国際航業が展開するメガソーラーのメンテナンスにFaceHubを活用することが検討されています。

国際航業の長谷川さんは「FacePeerの多田英彦社長からとにかく熱いプレゼンテーションをいただいた」とコラボ時の様子を振り返っていました。

新たな形の防災を考える取り組み

img_09
一般社団法人防災ガールの田中美咲代表理事

最後に登壇した一般社団法人防災ガール(東京都渋谷区)は、東日本大震災を機に若い世代への防災の必要性を伝えることの重要性を痛感。「防災をもっとオシャレにわかりやすく」とのコンセプトで全国の20~30代の女性中心として立ち上がった団体です。

これまで、渋谷区と共同で拡張現実技術を利用した位置情報ゲーム「Ingress(イングレス)」を活用した若者向けの避難訓練を企画するなど、これまでなかった視点から防災対策につながる活動を展開してきました。

防災・減災対策やまちづくりを得意とする国際航業との相性も良好で、「国際航業が持つ空間情報データを活用して、女性や若者に地図を好きになってほしい」とリクエストを受け新しいプロダクトを提案。「自分自身もIngressを使った避難訓練に参加したが、新しい形の防災を感じた」(国際航業・長谷川さん)とコラボが決定しました。

その第一弾として、3Dハザードマップを使ったトートバックを作成。国際航業とともにクラウドファンディングの「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」でプロジェクトを実施しました。

2016年コラボのテーマは社会課題の解決

img_10
2016年のコラボ詳細を発表する国際航業の長谷川さん

8社・団体からの報告後、スタートアップとの窓口になってきた国際航業の長谷川さんと藤原さんが登壇し、2016年のcrewwコラボの詳細が発表されました。

今年は「社会課題の解決につながるビジネス」というテーマで、安全・安心や環境、気候変動、エネルギー、健康・福祉、まちづくり、技術基盤形成、食料、教育といった幅広い分野での課題に取り組むコラボを実現したいと紹介。

「社会に必要な事業にこそ、大きなビジネスチャンスがある。みなさん(スタートアップ)のパートナーとなる新規事業開発部のチームも新しいメンバーを加えて増強し、オフィスも新たに丸の内の国際ビルに構えた。(コラボに関する)予算もしっかりとったので、より大きな事業を一緒に作っていきましょう」(長谷川さん)と宣言しました。

crewwの担当者である李東徹は「2016年のコラボは事業化の可能性が高いテーマになっています。大きな構想を描いたうえで、ビジネスにつながる提案をお待ちしています」と会場の参加者に訴えました。

その後、会場では交流の場が設けられ、来場者が熱く語り合う様子も見られました。

img_11
会場では参加者が交流する場も設けられた
 

2016年の国際航業によるcrewwコラボページ
レイ・フロンティア株式会社
株式会社WiFiシェア「タウンWiFi」
株式会社ナイトレイ
ユニロボット株式会社
株式会社BearTail
BearTail黒﨑賢一社長のcrewwインタビュー記事
株式会社アイコトバ
FacePeer株式会社
FacePeer多田英彦社長のcrewwインタビュー記事
一般社団法人防災ガール

 

interview_detail_banner_inquiry04


eyecatch

東京メトロの豊富な経営資源を開放する オープンイノベーションへ熱い意気込み

東京メトロ(東京地下鉄株式会社)がcreww(クルー)とともに行うオープンイノベーションプログラム「Tokyo Metro Accelerator 2016(東京メトロアクセラレーター2016)」の実施に際し、10月27日に都内でオリエンテーションを開催。首都圏の交通インフラになくてはならない同社が挑む新たな価値創造。約120のスタートアップが参加し、熱心な質疑応答が続きました。

東京の発展に寄与するアイデアを募集

img_1
Tokyo Metro Accelerator 2016

Tokyo Metro Accelerator 2016は、東京メトログループが持つ1日707万人におよぶ顧客へのアプローチをはじめ、195.1キロの鉄道ネットワークと179の駅、337編成(2728両)の車両、駅構内にある店舗や商業ビル、駅構内の広告媒体やデジタルサイネージ、鉄道運行などに関するデータといった経営資源を解放することで、スタートアップとともに「東京の発展に寄与するための取り組みや事業」(同社)を創り出そうという試みです。

2016年10月31日(月)から11月9日(水)までの間にスタートアップからのエントリーを受け付け、11月11日(金)に1次選考、12月5日(月)の2次選考、12月15日(木)のプレゼンテーションと最終選考により、東京メトロとコラボレーションするスタートアップが選ばれるという流れになっています。

ローンチの有無や短期的な収益性の考慮不要

東京メトロでは、鉄道の安全運行や、コンプライアンスの遵守を前提に「可能な限り経営資源を解放する」(奥義光社長)との意気込みです。同社の事業と競合する可能性のある内容であったり、サービスのローンチ前であったり、コラボ後すぐに収益が見込まれない場合であったとしても「大丈夫ですので、応募してください」(同社)との姿勢です。

また、コラボ内容によっては、東京メトロと相互直通運転している各社に声をかけることもあるといいます。

crewwでは「今回のプログラムでは、東京メトロの課題を解決しようという視点は必要がなく、まずは自社サービスの成長や、東京の発展に寄与するためという考え方で応募してください」と呼びかけています。

一方で「法人個人問わずどなたでも応募可能ですが、単なるサービスの売込みではなく、コラボレーションであるという点に注意してください」(creww)といい、エントリー時には、2000字以内のテキストに(1)どのようなビジネス・サービスなのか、(2)狙っている市場やビジネスモデル、(3)短期的にやりたいこと、(4)中長期的な協業ビジネス、(5)座組みや役割、実施効果――といった点を盛り込んでほしいと説明しました。

東京メトロ・奥社長「つながり大切にしたい」

img_2
東京メトロの奥社長

10月27日にベルサール六本木コンファレンスセンターで行われたオリエンテーションでは、東京メトロ奥義光社長や、crewwアドバイザーである出井(いでい)伸之・クオンタムリープ代表取締役、crewwCEO・伊地知天(いじちそらと)が登壇し、今回のイノベーションプログラムに関する意気込みが語られました。

東京メトロを代表して奥社長は「今回のイノベーションプログラムを通じ、スタートアップの方々とのつながりを大切にするとともに、互いの強みを発揮しながら新たな価値を創造していきたい」とあいさつ。「今から楽しみでわくわくしている」と期待感を示しました。

img_3
クオンタムリープの出井氏

今年8月からcrewwのアドバイザーに就任したソニーの元社長で、クオンタムリープの創業者である出井氏は、日本のスタートアップやベンチャーを成長させるためにもっとも欠けているのが資金だといい、「大企業が資金提供者になるべきだ」と指摘。「すべての大企業が実践すればベンチャーはあっという間に育つ。その意味でも今回の東京メトロの取り組みは大変ありがたい」とエールをおくります。

「スタートアップにとって大きなチャンス」

img_4
crewwのCEO・伊地知

東京の発展に寄与するアイデアを募集

crewwのCEOである伊地知は、これまでに70社以上の大手企業とイノベーションプログラムを行ってきたことを紹介し、「東京メトロさんが登場したことはスタートアップにとって大きなチャンスで、われわれもこれまでのノウハウや知見をフルに活用していく。多くの参加をお待ちしています」と呼びかけました。

また、今回のプログラムの責任者であるcreww執行役員の水野智之は、「東京メトロさんとプログラムを開催することは、crewwの企業アクセラレータープログラムを始めた時からの念願だった」と報道陣に明かしました。

img_5
懇親会会場では活発なコミュニケーションが行われていました。

オリエンテーション後には、懇親会が行われ、東京メトロで今回のプログラムの審査委員長をつとめる髙山輝夫専務取締役が「社内が一丸となって、今回の取り組みを成功させたい」とあいさつ。参加したスタートアップと交流を深めました。

Tokyo Metro Accelerator 2016のページ(2016年10月31日~12月15日)

 


interview_detail_banner_inquiry04


eyecatch

生き方や働き方の多様性を実現するための器としての会社 ポーラスタァで実現する「子育てしながら働く」ということ

株式会社ポーラスタァ 代表取締役 高沖清乃

現代社会における女性の働き方を模索し、web会議やクラウドの活用で働き方の多様性を実現している株式会社ポーラスタァ。メンバーは現在7名。全員がママで、子どもの数は合計16人。全員が子持ちのメンバーのため、デュアルライフや移住の可能性の追求、副業推進、子どもの夏休みにあわせた長期休暇取得などを実施している。理想とも言える働き方の作り上げ方は?

――スタートアップといえば、急成長して、M&Aないし上場してイグジット、という絵を描くものですが、株式会社ポーラスタァの場合、サービス開発や従業員の環境作理に向かっていますよね。それを崩すような買収の話を断ったという話も伺いました。

何が本当の成長で、その時期のイグジットなのか、考えて答えを出している結果、今の会社の姿があります。

――莫大な利益を上げたり、媒体の数字を積み重ねたりするだけが、会社の社会的貢献ではないということですよね。

「ポーラスタァ」は北極星という意味なんです。航海のときに、たとえ地図がなくても”北極星”の位置がわかれば、目的地へ行くことも、家に帰ることもできます。わたしたちは、情報の海の中で「北極星はここだよ」と発信し続けることをミッションにしてきたのですが、それは経営の姿勢としても現れてきているのかもしれません。

例えば、私たちが10年前に会社を立ち上げ、8年前に媒体をスタートさせた当時と違い、現在は働くお母さんというもの自体が一般化しつつあります。だけど、まだ時間いっぱいオフィスにいて働くことが評価されるという事実もあると思うんです。それだと、子育てをしながら働く人には非常に不利なんですよね。

現在の子育ての、ボトルネックになっていることのひとつは「仕事」。正確に言えば、「仕事」そのものではなく、「働き方」だと考えていました。「こどもと本当はこんな風に過ごしてみたい」「本当はこんなママでいたい」というような想いを邪魔してしまうのも、残念ながら働き方が原因になることがありますよね。

会社だからといって、全員が同じ働き方をする必要はないし、制度で縛らなくてもいい。自分の状況やお子さんの状態によって働き方を変えられて、やるべきことをしていれば評価されるという会社があってもいいのではないかと考え、半期毎の面談により目標と働き方を決めています。大体週2~5日勤務ですが、時間や曜日は確定していませんし、テレワーク(リモートワーク)も取り入れてます。

――他社からの理解はどのように得ていますか?

クライアントには契約前から事情を伝え、納期には少し融通を利かせてもらえるようにしています。それで取れなかった仕事ももちろんありますが、当社を理解し、仕事を継続している会社は考え方が合う会社なので、より濃密な関係を築けています。

――それが実現できたのは、高沖さんご自身の体験が大きいのでしょうか? 昨年は、ヨーロッパや長野に家を建てていましたよね

はい。2015年、私が実家のある長野県伊那市に家を建てて、デュアルライフがスタート。東京の家を解約して、長野に移住するまでの間、1ヶ月ほど家族でヨーロッパを周りました。ヨーロッパに出かけたことがなかったので、フィンランド(ヘルシンキ)・エストニア(タリン)・イタリア(ローマ・トスカーナ・ヴェネツィア)・スペイン(バルセロナ)にステイをすることに。実際の暮らしのなかで文化や習慣を体感してみたかったので、ホテルではなくAirbnbを活用し、現地のアパートメントを借りて生活しました。

今回のインタビューでは語りつくせませんが、「自分の国の言葉」「違う国の言葉(しかも種類がある)」を認識し、違いを認めて、善悪ではなく相手と話したい一心で相手に通じる言葉で語ろうとする様子に人が本来持つ力のようなものを感じたり、私自身、現地の多様な間取りやインテリアを暮らしの中で体験できたり、実り多いものでした。

それに至るまでも2年ほどかけて、日本国中を旅行していました。きっかけは仕事がなにかと忙しく、つい家と保育園(会社)の往復になりがちだったので、まずは動いてみました。日本の中にも山がある場所、海がある場所、ビルが多い場所、雪が降る場所、年中暖かい場所、お年寄りばかりの場所など、いろんな場所があると、実体験を持って伝えられて良かったですよ。

子連れ旅行に関しては、「こととりっぷ」http://www.kototrip.com/という個人ブログにまとめています。

img_pola_1

img_pola_2

――夢のような働き方が実現されていますが、サービスの方も次々と展開されていますよね。

働くお母さんのための情報誌である「ニンプス」を定期購読誌を妊娠月数別に臨月まで毎月発刊していました。この冊子を作る1年前からゼロスタートでWebを制作して、現在の月間のWeb訪問者は30万人程度まで伸びました。第1子だと国内では月間50万人が限界値なので、現状のこの数字が限界に近い状況です。「ニンプス」という認知は無いにしても、妊婦さんは妊娠中に1度はご覧になられていると考えていいのではないでしょうか。

特にWebは人をあおって動かす傾向があるので、その様な書き方は一切しないと決め、ネガティブではなく明るくポジティブな内容にし、未来に対して明るく前向きになれるように作っています。

――そこにも数字至上に陥らない想いがあるんですね。そこから、幾つかのサービスをリリースし、2015年2月にフォトアプリ「Baby365」をリリースされましたよね。

Baby365は、 いくつもの印刷所から「難しすぎる」「うちではムリ」と断わられていたんです。アプリの制作はどんどん進んでいるのにフォトブックの見通しが立たないなど、困難はありましたが形にすることができました。今後はたくさんの方の工夫や想いが詰まったこのサービスを展開していきたいと思っています。

img_pora_3
photo by 平林直己

 



eyecatch

立ち上げから運営、投資面までネットメディアを一気通貫支援

株式会社メディアインキュベート 代表取締役 浜崎正己氏

株式会社メディアインキュベート (東京都中央区)は、その名の通りインターネットメディアを展開する事業者に向け、取材や編集、書き手の手配といった実務面を始め、マネタイズや投資にいたるまで一気通貫の総合支援企業を目指し、今年(2016年)3月に創業しています。メディア運営経験が豊富な代表取締役の浜崎正己さんに、現状と今後の展開について伺いました。

新聞社のネット版から動画CGMまで多彩な経験

――浜崎社長はさまざまなメディアに携わってこられたとのことですが、起業までにどのような道を歩んで来られたのでしょうか

大学時代は「メタバース」や「セカンドライフ」などのキーワードで当時話題となったインターネット上の仮想世界に興味を持ち、研究をしたことを契機にネットの世界を知ることになりました。ただ、卒業後に就職したのは、建機レンタルの大手企業です。

入社したのが2011年の春でしたので、東日本大震災の復旧や復興需要でとにかく多忙でした。この時の営業マンとしての経験は後に生きてくるのですが、やはりネット業界で働きたいとの思いが募り、大手商社系のデジタルメディア企業に転職しました。

この会社は通信キャリアの公式サイトを請け負う事業や電子書籍の流通事業、広告代理店事業を得意としていたのですが、そこで著名夕刊紙のサイトを担当させていただくことになりました。もともと新聞記者になりたいとの夢もありましたので、とにかく仕事が楽しく、やりがいがありましたね。

img_1

――新聞社のネットメディアに携わったことが後のメディア支援業につながるのですね

現在、この夕刊紙のサイトは飛躍的に発展しているのですが、紙でやっている新聞のネットメディア刷新に携われたことは大きな財産になっています。会社は離れましたが、お付き合いは続いています。

――その後はいわゆる著名な“ネット企業”で勤務されています

GMOモバイルやザッパラス、ユーチューバーのマネジメントで知られるUUUM(ウーム)などで勤務し、ポータルサイト運営や動画メディアに携わりました。新聞からポータル、動画CGM(消費者生成メディア)まで多彩なメディア運営の現場にいられたことは幸運でした。

このほか、韓国のコミュニティメディア企業が日本法人を立ち上げる際に創業メンバーとなり、韓国本社に滞在していたこともあります。ここでは、スタートアップの熱気というものを肌で感じることができました。

img_2
メディアインキュベートのWebサイト http://media-incubate.com/

――そして、今年(2016年)3月30日にメディアインキュベートの創業に踏み切ります

ネットメディアの新規事業を立ち上げたいとの思いを常に秘めていましたので、「そろそろ」ということで、自らが生まれて1万日目に会社を設立しています。

スタートアップの世界では、著名な支援企業としてサムライインキュベート(榊原健太郎CEO)さんがありますが、まさにサムライさんの“ネットメディア支援版”になりたいとの思いから、メディアインキュベートという社名をつけました。

――メディアの立ち上げや運用を支援し、メディアに特化した投資を行うとのことですが、具体的にどのような事業を展開していますか

ネットメディアの立ち上げという部分は、すでにいくつかの話が進んでいて、この秋にもスタートするVR(バーチャルリアリティ)専門メディアに深く関わらせていただいています。

運用面では、記事の提供や書き手(ライター)、クリエイターのアテンドといった編集面をはじめ、育成講座なども行っています。メディアのコンサルティング業務もお受けしており、大手新聞社からもご依頼をいただいています。

このほか、メディア運営面では、他企業と連携してメディアに最適化したCMS(コンテンツマネジメントシステム)も開発中です。

加えて、起業に関するイベントを定期的に開いたり、アーティストへの支援業務といった点までカバーしたりしています。今後はメディアや運営企業への投資という面にも力を入れていきたいと考えているところです。

――自社がメディア運営を行うこともあるのですか

はい、メディアインキュベートマガジンというメディアを立ち上げており、特に「地方創生」に興味を持っていますので、そうした内容を中心に取り上げています。

また、8月からはサイバーエージェントが運営する映像配信プラットフォーム「FRESH! by AbemaTV(フレッシュbyアベマTV)」に公式チャンネルを開設し、ゲストの方々を招いての対談やインタビューなどをまじえた番組を作り、定期的に生中継を行っているところです。

会社としては、ネットメディアのなかでも特に「動画」という部分に注目して支援にも力を入れていきたい考えです。

――crewwとはどのように出会われたのでしょうか

登録したのは2年くらい前で、まだ起業する前だったと思います。最近は大手新聞社やテレビ局などのメディア企業がcrewwでオープンイノベーションを行っているケースも目立っていますので、われわれもこれから積極的に応募しなければと思っています。

スタートアップが単独で大企業とお付き合いするのは難しい部分が多々ありますので、“文脈”を作って懸け橋となっていただけるcrewwさんの仕組みは大変ありがたいですよね。

――さまざまな企業で勤務し、大手企業とともにメディア運営業務を行ってこられたなかで、スタートアップが大手企業と付き合うために、気を付けるべき点などのアドバイスをお願いいたします

アドバイスと言うとおこがましいのですが、私自身が感じたことは、大きな組織であっても、最終的には人と人のお付き合いだということです。当たり前ですが、互いのメリットが一致するような付き合いをしなければならないと強く感じています。

――ありがとうございました

 

株式会社メディアインキュベート・浜崎正己さんのcrewwページ



eyecatch_genequest

ビジネスとアカデミズムに相互発展のスパイラルを起こしたい ジーンクエストが他のバイオベンチャーと一線を画している理由

株式会社ジーンクエスト 代表取締役 高橋 祥子(PhD)

遺伝子解析や、遺伝子治療、遺伝子検査、そしてそれを取り扱う企業は新しい分野として、ずっと着目されていたものの、今、ジーンクエストが話題になる理由はどこにあるのだろうか。

――ジーンクエストは2013 年 6 月に東京大学の研究者が中心となって設立されたバイオベンチャー企業ということで、高橋さんは、大学院在学中に起業されたんですね。起業して味わった苦労はどんなことがありますか?

起業に伴い、何もかもが苦労の連続でした。なぜなら、一度も就職しなかったので社会のことを知らずに起業したためです。業者さんとのやりとりや、WEBサービスや事業の作り方、営業の仕方も何も知らない状態から始めました。ビジネスマナーもよくわからず…そのため、自分の失敗経験から、直接多くのことを学びました。経営の本を読むことでも勉強をしました。

また、人脈もゼロの状態から始めましたので、1人で学会に参加して知見の豊富な大学教授に相談をしに行ったり、自分から経営者の講演に行って、その後に名刺を持って話を聞いてもらえるよう試みたりしました。やはり多くはその場の受け答えだけで流されてしまいましたが、なかには話を聞いていただき、親身に相談に乗ってくださる方もいました。何とか事業を立ち上げることができたのは、当時からたくさんの方々に支えていただいたからです。

――2014年1月には一般消費者向けの遺伝子解析サービスを開始していますね。もう少し具体的に教えてもらってもいいですか?

解析キットを購入し、唾液を送付していただくことで、生活習慣病などの疾患リスクや、体質に関わる情報など、最大約290 項目についての自身の遺伝情報を知ることができます。具体的には、がんや2型糖尿病やアトピー性皮膚炎、骨粗鬆症など多くの病気リスクのほかに、アルコールに強いかどうかや痛みの感じやすさ、記憶力や乳糖耐性、骨密度などの遺伝的な体質などです。このように、自分の健康リスクを事前に知っておくことで、事前に自分の体質やなりやすい病気を把握・予防することができます。

また、自分の祖先がいつ誕生したのか、どこで誕生したのかなど祖先の歴史を知ることもできます。自分のルーツを探ることができるのも遺伝子検査の魅力のひとつです。

――遺伝子解析サービスは幾つか出てきていると思いますが、ジーンクエストに顕著な特徴を教えてください。

ジーンクエストのサービスの特徴は、日本人や日本人を含むアジア人を対象とする科学論文を情報の根拠として使用し、日本人やアジア人向けの大規模遺伝子解析を行っていることです。
当社では市販のDNAチップを独自に改変し、日本人の疾患や体質との相関について科学的根拠のある遺伝子を解析対象としています。

また、他社では追加サービスを受ける際に費用が発生することが多いですが、ジーンクエストは研究が進んで新しい知見が整ったときに、それに伴って無償でメニューを追加するサービスも行っています。

サービスに使われる遺伝子データはごく一部ですが、私たちはお客様の同意も得た上で、約30万箇所の遺伝子を調べ、データを蓄積しています。まだ機能がわかっていない遺伝子についても研究を行っており、その研究の成果が更新されれば、その知見に合わせて結果も更新されます。

今後どんどんユーザーが増え、新たに膨大なゲノムデータが蓄積され、それによりさらに研究が進んで、新たに見いだされた知見を消費者へ還元する、という、ビジネスと研究のシナジー効果を生み出していきたいという想いが、私が起業したきっかけでもあります。

――ビジネスとアカデミズムを相互に作用させていくということですか?

はい。私は、東京大学大学院で大規模な遺伝子解析を活用して生活習慣病の予防メカニズムについて研究していましたが、「研究者として生命科学分野を発展させたい」という想いを持ちながら、「その研究成果を社会に持続可能な形で発展させられるような仕組みをつくりたい」と考え、そこで辿り着いたのがジーンクエストのビジネスモデルです。コンシューマー向けの遺伝子解析ビジネスを提供しながら、遺伝子情報において、特化した社会的研究を行うことのできるジーンクエストを起業することで、間違いなく生命科学の分野の研究を加速できるという確信がありました。

――遺伝子検査に対して、倫理的な問題やビジネスの障壁もありますよね。妊娠前検査も議論になりがちだと聞いたことがありますし、精神疾患の可能性といった情報が差別に繋がっていくこともあるでしょうし、それに個人情報という意味でも遺伝子情報は究極の個人情報になりますよね?

個人のゲノム情報を扱うということは、情報が明らかになることで遺伝子による社会的差別につながり得るというリスクがあり、そのため、遺伝子情報の管理の仕方などが適切に議論される必要があると感じています。
ゲノム情報を今後どう扱っていくかはようやく議論が始まったところで、まだ社会に倫理的基盤が形成されていないという問題があります。実際は、技術の発展が早すぎて、人の認知も議論の時間も追い付いていないのが現状です。日本では、義務教育にもヒトゲノムの内容は入っていません。このように、教育によって倫理の形成に先手を打てるようにすることも重要だと思います。

――遺伝子検査のユーザーの母数が増えなければ、データベースが充実しない。そこの認知と倫理を醸成していくのがポイントなんですね。

はい。当社の目的のひとつに、「遺伝子の研究を推進し、正しい使い方を広め、人々の生活を豊かにすること」があります。遺伝子検査ビジネスは急速なスピードで拡大を続けていますが、一方では科学的根拠の乏しい検査の存在や倫理問題が指摘されており、現状のままでは消費者に不信感を与える可能性があります。ジーンクエストでは、科学的根拠に基づいた信頼性の高い遺伝子検査サービスを提供することで、多くの方に正しい遺伝子の知識を持っていただいた上で、遺伝子研究成果の恩恵を受けられる社会の実現を目的としています。

当社には、遺伝子情報とあらゆる生活習慣や疾患に関するアンケートの情報が蓄積されています。これからのジーンクエストでは、医療機関、製薬企業、化粧品企業、食品企業などと共同研究の提携先を増やし、遺伝子の個人差を考慮した新サービスを生み出すことで、社会全体に遺伝子検査を受ける価値を提供していきます。

 



eyecatch_canon-mj

オープンイノベーション加速へ向け キヤノンMJが社内で大規模報告会

キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は2016年4月からに開始したCreww(クルー)のオープンイノベーションプログラムについて、コラボレーションを予定するスタートアップ3社を招き、自社とグループの社員向けに進捗状況の報告会を8月4日に行いました。当日はキヤノンMJの品川本社に約60名が集まったほか、全国のグループ社員にもライブ中継を実施。スタートアップとの共同展開を見据え、熱心に耳を傾ける姿が見られました。

スタートアップ67社から応募を集める

img_c00
キヤノンマーケティングジャパンでオープンイノベーションを担当するチームメンバーと報告会の登壇者ら

img_c01
キヤノンMJの品川本社には同社社員やグループ社員ら約60名が集まった

「製品販売を超えた価値創造を」とのテーマで2016年4月に始まったキヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)によるCreww(クルー)のオープンイノベーションプログラムでは、予想を大きく超える数のスタートアップから応募が集まりました。

夕方18時前から始まった社内向けの説明会では、キヤノンMJでスタートアップとの窓口となっている総合企画本部経営戦略部部長の横坂一さんが「エントリーいただいた数十社の中から、6社がプレゼンテーションに進み、現在は3社とプロジェクト化を進めている最中」という現状とともに、これまでの経緯を丁寧に説明しました。

続いてCrewwの担当者である李東徹が登壇し、世界におけるオープンイノベーションの動向を解説。そのうえで、キヤノンMJが行ってきた取り組みについて「各カンパニーからメンバーが集まり、オープンイノベーションのチームを結成したケースは非常にめずらしい」と紹介しました。

「EOS」とビジネス動画ソリューション

img_c02
フレイ・スリーの石田貢CEO

キヤノンMJと取り組みを始めているスタートアップのなかで、最初に登壇したのは、3ステップで簡単にビジネス動画を作成できるソリューション「1Roll for Business(ワンロール・フォー・ビジネス)」が話題を集める株式会社フレイ・スリー(Hurray3、東京都港区)の石田貢代表取締役CEOです。

フレイ・スリーは、 CMの映像制作を軸とした事業を展開するピラミッドフィルムグループから2012年に生まれたスタートアップ。“短時間映像のプロ”として蓄積したノウハウを応用し、誰もが手軽にプロの動画を作成できるサービスを展開しているのが特徴です。

石田CEOは「1Roll for Businessでは不動産や人材採用、教育、eコマースなど、業種ごとに500を超えるテンプレートを用意しており、自社で簡単に動画作成ができることから、様々な業種で導入が増えている」と紹介しました。

動画撮影デバイスを取り扱うキヤノンMJとの相性は良好で、今後はそれらのデバイスと1Roll for Business との連携も見据えながら、法人顧客における動画作成ニーズを開拓していく計画です。

IoT時代ならではのサービスと連携

img_c03
Z-Worksの小川誠社長

続いてプレゼンテーションに臨んだ株式会社Z-Works (ジーワークス、東京都新宿区)の小川誠代表取締役社長は、「IoT(アイオーティー=Internet of Things)」と呼ばれる“モノのインターネット”時代の進展を見据え、様々なセンサーを活用した家庭向け「スマートホームIoT」の各種サービスを紹介しました。

同社の特徴は多種多様なセンサーを連携させるクラウド型のIoT基盤を提供していること。センサーを通じてデータをクラウド上に集めて解析し、スマートフォン(スマホ)上からのデータ閲覧や遠隔操作などを可能としています。

「こうしたIoT技術を活用することで“頑張らずとも続けられる介護”が実現できる」と小川社長は言います。その一つとして、同社が開発した「LiveConnect(ライブコネクト)」を紹介。リアルタイムで家の状態が確認できたり、生活の不安を解消したりできる機能を備えたアプリで、介護時の見守りサービスへの活用が期待されています。

このほか、部屋の鍵や管理への展開も容易なため、一般の民家を宿泊場所として活用する“民泊”や不動産業界などに展開することも視野に入れているといいます。今後、介護分野を中心として、キヤノンMJグループと幅広い分野での連携が期待できそうです。

法人市場でニーズが広がる音声認識

img_c04
Hmcommの三本幸司社長

3社目として登壇したのはHmcomm(エイチエムコム)株式会社(東京港区)の三本幸司社長。動画・音声コンテンツをアップロードするだけで、自動的に音声を文字データ化する法人向けの音声認識サービス「The Voice JP」を紹介しました。

同社は国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)で開発された技術の移転を受けた「産総研技術移転ベンチャー企業」として知られています。

「音声認識の市場は大幅な拡大が予想される」と話す三本社長。同社の特徴は、AI(人工知能)をとりいれた音声認識プラットフォームを構築していることです。自然な発話での音声認識を実現する音響学習技術をはじめ、社内データやインターネット上のテキストデータから最新用語や話題の学習を行うことで、日々認識機能が進化し続けていくため、ビジネス現場で活用するうえでも大きな強みとなりそうです。

現在、キヤノンMJとのPOCが実施されており、キヤノンデバイスとの連携ソリューションなど、ビジネスシーンへの応用を検討しています。

大手企業の事例紹介や本音での議論も

img_c05
NTTデータの残間光太朗さん

今回の社内向け説明会では、協業を予定するスタートアップの紹介だけでなく、大企業でオープンイノベーションに取り組んでいる事例として、NTTデータからイノベーション推進部オープンイノベーション事業創発室長の残間光太朗さんを招きました。

残間さんはNTTデータでオープンイノベーションを推し進める一環として、「豊洲の港から」という定期イベントを企画したことでも知られています。これまでの経緯や知見を紹介するとともに、「さまざまな人々を巻き込んで、日本から世界を変えるソリューションを生み出したい」という目標や意義を熱く語りました。

その後、登壇したスタートアップ3社と残間さん、キヤノンMJで新規事業の創造・推進を担当する総合企画本部経営戦略部新規ビジネス推進課課長野間隆運さん、司会としてCreww担当者の李をまじえた6人で「事業創造の取り組み」をテーマにパネルディスカッションも開催。起業の経緯や、スタートアップ企業と大企業の協業のあり方など、時に本音の話も飛び出す白熱した議論が交わされました。

img_c06
キヤノンMJの野間隆運さん

キヤノンMJの野間さんは、「オープンイノベーションを行うまでに2年間の時間を要し、これからもハードルは出てくると思うが、何とか乗り越えていきたい」と宣言し、会場に集まった社員やグループ企業の社員に対し「ぜひ輪のなかに入って、応援してほしい」と語りかけ、オープンイノベーションの成功へ向けてさらに多くの社員を巻き込む意欲を見せていました。

 


キヤノンマーケティングジャパンによるcrewwコラボ(2016年4月)
フレイ・スリー代表取締役CEO・石田貢さんのcrewwページ
株式会社Z-Worksのcrewwページ
Hmcomm株式会社「The VOICE JP」のcrewwページ
NTTデータのオープンイノベーションフォーラム「豊洲の港から」の紹介
キヤノンマーケティングジャパン・野間隆運さんのcrewwページ

 
interview_detail_banner_inquiry04


eyecatch_lsp

「オーナー制度」の仕組みを利用したプラットフォーム

株式会社エル・エス・ピー OWNERS運営統括責任者 谷川佳氏

昨年12月1日にサービスを開始したOWNERS(オーナーズ)。生産者に直接登録費を支払って期間オーナーになる「オーナー制度」の仕組みを利用したプラットフォームだ。これまでにOWNERSでは、果物・お米などの農産物や牡蠣や松茸、さらには日本酒・熟成チーズなどの加工品まで、北海道から沖縄にわたる幅広い生産物のオーナーになることができるプランが提供されてきた。

――昨年末、Facebookのタイムラインで「OWNERS」を見かけました。SNS等を通じて一気にサービスが認知された印象があるのですが、現在に至るまでの経緯を教えてください。

2015年6月頃から、OWNERSリリースのために勤めていた会社を辞めて、全国の生産者の元をまわり始めました。事業単独で起業するか事業として企業に売り込むかを模索していたのですが、以前より個人的にお世話になっていた株式会社エル・エス・ピーから支援を受けて、新規事業としてスタートすることになりました。

2015年12月1日にOWNERSをリリースした際、SNSの拡散やWBSなどのテレビ露出で一気に認知が広まりましたが、そもそも人に伝えたくなるようなサービスではないと継続していくのは無理だと思っていました。消費者と生産者をつなげる、という点では既に有名なサービスもある中で、新しい「オーナー制度」という切り口に興味を持ってもらえて良かったです。

――「オーナー制度」としての展開しようと思った理由はどこにありますか?

もとより、一次産業を活性化させて、人の生活を変えるビジネスをしたいというのがありました。
OWNERSを始めるまでは、自治体の企画やPRを行う会社に勤めていたのですが、そうしたプロジェクトベースの企画だと、どうしても短期的な盛り上がりだけで終わってしまったり、自治体の予算の都合で打ち切られることもあったりと、どうしても長期的な関係を築くのは難しかったんです。

一方、「オーナー制度」というもの自体はもとより生産者の間ではありました。しかし、いわゆるブランドのある産地でないと売れないとか、一区画で収穫できる生産物が何十キロも大量に届いたりと、現代のライフスタイルにマッチしていないと感じる部分が沢山あったので、なんとかこの制度を活かせないかと思い立ち上げました。

――これまでのオーナー制度との顕著な違いはどこでしょうか?

これまでのオーナー制度はそもそも紹介経由でないと生産者を見つけられなかったり、登録もFAXでしかできなかったりと、面倒な手続きの中で生産者を探す必要がありました。また登録をしても、収穫の時期に生産物が自宅に届くだけで、自分がオーナーになった生産物ができるまでの過程やそのプロセスが見えないものが一般的でした。OWNERSでは、そこを購入者の立場から見直し、どういう感情になれば、その生産物により「関わっている」という感覚を持てるかをを紐解いてサービスを組み立てました。

そこで生まれたのが「コミュニケーション」ができるという点で、実際のOWNERSではコミュニケーションページで、生産者から定期的に現在の生産過程や収穫の様子などが報告されます。そこにオーナーがコメントをして、生産者とやり取りすることもでき、生産者とオーナーの間に、いい関係が生まれ始めています。
オーナー特典の中には、登録した生産物が届くだけではなく、現地で生産者の収穫の手伝いができる「体験」を含めたプランもあります。普通にお店で買うよりも、生産者と購入者の距離をぐっと近付けることができました。

結果、商品ではなく、オーナーになるという体験やライフスタイルを楽しめるサービスになったと自負しています。

――現在、参加している生産者はどのような基準で提携されたのでしょうか?

もとからコネがあったわけではないので、立ち上げ時は、電話営業から始めました。
いわゆる「ECサイトを開きませんか」という営業の電話はよくあるようで、インターネットを通じて.. という言葉だけで拒否反応を示して切られてしまうことも沢山ありました。OWNERSは既存のECサイトではないということや、自分の想いをしっかりと伝え、ビジョンに共感してくれた生産者さんとパートナーを組みました。とは言っても、サービスリリース前は300件以上にアプローチしてパートナーとして組むことが出来たのは5件。数より内容で勝負しようと思っていましたが、それにしても苦戦しました。

リリース後の反響もあり、その後は全国の生産者の方々から「自分たちもOWNERSでオーナーを募集できないか」と連絡をいただくことが増え、現在では掲載待ちが出るようになっています。

行政だと平等性の担保が必要になるので、普通の生産者もこだわり抜いている生産者も一緒に扱わないといけないことが多いのですが、OWNERSでは、生産者の方が持つこだわりや、生産されるまでの物語の面白さで勝負できる方に絞ってお願いしています。