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子どもとファミリーに特化 企画と集客力でコラボ成功

GCG合同会社 CEO 岩楯信雄氏

GCG合同会社(東京都江戸川区)は“キッズやファミリー”を対象に、クルマや電車などの乗り物に特化した企画とマーケティングを行う企業です。2014年に初の大型イベント「きっずもーたーしょー」を考案し、2016年には「トミカ スタンプラリーin 東京ドームシティ」をプロデュース。子どもや家族向けに特化したイベントの企画力はcrewwコラボの現場でも注目を集めています。2014年10月に同社を立ち上げた岩楯信雄CEOに今後の戦略を伺いました。

タカラトミー時代は「エアギター」「チョロQ」に携わる

―― 岩楯CEOはデザイナーとしてキャリアを始められていますね

10代の頃、グラフィックデザイナーに憧れ最初に就職したのは広告業界でした。3年ほど働いたのですが、若さゆえか「やはり、これからはインテリアデザインの時代だ!」と考えが変わりまして、専門学校に通って新たに学び直し、大手ゼネコンに転職して7年間勤務しています。長野五輪関係の仕事やお台場のテレビ局なども担当し、本当に良い経験をさせていただきました。そして、次に転じたのが玩具メーカーのタカラトミーです。プロダクトデザインを学びたいとの思いもありました。

ただ、タカラトミーは企画職での入社でしたが配属されたのは、おもちゃショーなどのイベント企画やカタログ製作などを担当している部署で、社内でも長い間、商品企画希望の人間であるとは認識されていなかったようですね(笑)。イベントや入稿データ製作を任せられる“便利なヤツ”ということで、広報や宣伝の部署にいたこともあります。

――タカラトミーでは、赤外線の弦をかき鳴らせばギターのサウンドが楽しめる「エアギター」の企画開発に携わり、世間を騒がせました

GCG合同会社

広報や宣伝の仕事をやっている時に、社内で「岩楯はもともとデザイナーらしい」という話がようやく上司に伝わり、ディズニーさんのライセンス商品を企画開発するチームに呼ばれ、所属することになりました。

ミニカーの「トミカ」は主に男の子に好かれていますが、女の子にも親しんでほしいとの思いから、ディズニー仕様のトミカを企画したこともありましたね。ディズニーさんは、伝統的に斬新なアイデアを受け入れる素地があり、さまざまな企画を採り入れていただけたので、やりがいは大きかったです。

そんななか、センサーの技術を見つけ、これはおもちゃに使えるのではないかと感じて、エアギターを企画したのですが……。社内では「ディズニーのチームなのに、なんで大人向けのエアギターなんだ?」と騒がせてしまいました。

最終的にはGOが出たのは“おもちゃ屋”のカルチャーでしょうか。マーケティング費用もほとんどないなかで懸命にPR活動を行いまして、商品が話題を集めたのは嬉しかったです。

――「チョロQ」にも携わっていたそうですね

はい、ちょうど「チョロQ」が30周年を迎えるので、そのプロモーションを担当しました。ただ、イベントをやりたくても使えるお金があまりない。そんななか“ダメ元”で所ジョージさんに30周年のイメージタレントになっていただけないかとお願いに伺いました。所さんといえば「遊びの天才」であり、消費者にアンケートをとっても30~40代に圧倒的な人気があります。

所さんに事情を話すと、就任に快諾いただけたでなく、逆に面白いアイデアが次々と出てきました。そのなかからゼンマイで走る実物大チョロQを作って、東京モーターショーに出展したこともあるんですよ。

これを機に、所さんや事務所のスタッフの方と一緒にお仕事をさせていただくことが多くなったのですが、やりたいことを周りを巻き込んで楽しくやっていて、実に素敵だなと思いました。マンガで言うと「ワンピース」みたいな感じでしょうか。いつしか自分も「この船に乗りたい!」という思いが強くなり、後の独立につながっています。

――起業したのは、所ジョージさんとの出会いが大きかったんですね

2014年に独立した後もさまざまな仕事をご一緒させていただいています。グッズやイベントの企画など、今も所さんに関する業務は、GCGのなかで重要な位置を占めています。

GCG合同会社
GCGの事務所はもともと自動車整備工場だった建物を活用している。「実家は今も整備工場をやっています。私自身も車が好きですし、チョロQやトミカに関わっていることを考えれば、知らぬうちに親の影響を受けているのかもしれませんね」

――一方、GCGでは立ち上げ早々に大型イベント「きっずもーたーしょー」を成功させ、今年(2016年)は「トミカ スタンプラリーin 東京ドームシティ」も大盛況でした

東京ドームさんと知り合えたのはcrewwさんのお蔭です。ある時、テレビの深夜番組を見ていたらcrewwの伊地知さん(CEOの伊地知天=いじちそらと)が出ていて、これは!と思って登録しました。

すぐに東京ドームさんによるコラボレーション説明会に参加したのですが、「おー、これがテレビに出てた伊地知さんかー」「IT系の方が多いのに、自分なんかがいていいのかな」とか「東京ドームと一緒に仕事ができる可能性があるのか、すごい!」と、最初はちょっと社会科見学みたいな心境でした(笑)

私はもともと東京ドームの隣、当時は後楽園球場ですが、水道橋の駅前にある都立工芸高校に通っていましたので、その集客力や影響力のすごさは若い頃から肌身に染み込んでいます。そうした思いからコラボに応募させていただき、採択までいただけたので感激しました。

東京ドームシティでイベントをしたいという方は無数にいますので、弊社が考えた企画が今年のゴールデンウィークに企画が実施でき、成功に導けたのでほっとしています。また、古巣のタカラトミーにも協力いただけたのはありがたかったです。

――子どもとファミリー向けの集客や企画が得意ということから、crewwコラボでは引き合いが多いそうですね

他の大企業のcrewwコラボにもエントリーし、お話させていただいています。また、同じくファミリーや子ども向けの事業をやっているスタートアップの方との「横のつながり」までできました。まさに“crewwさまさま”ですよ(笑)、本当に感謝しています。

――大企業での勤務経験に加え、コラボも進展させつつある岩楯CEOにスタートアップと大企業の付き合い方について、アドバイスをいただけたらと思います

まずは「相手の立場に立ってみる」ということです。自分が相手だったら、どう思い、どう考えるのかな?と。どうすれば、担当者の方がハッピーになれるのかを知ることです。次はみんながハッピーになれるように考えていく。そうしないと、面白いことはできませんし、起こせません。

私自身、企業組織のなかで何度も痛い目に遭ってきましたので、このことがようやく理解できました。

もう一つ申し上げたいのは、大企業と同じことをしていてもダメということです。たとえば、プレゼンテーションの場で、大企業が考えたり、プレゼンしたりするようなことをスタートアップがやっても勝てませんよね。コラボ先となる大企業の担当者の方は、大手からの企画書やプレゼンを頻繁に見聞きしていて、慣れているわけです。

スタートアップならではの独自性を打ち出さないと採択されづらい。「ちょっと変」と思われるくらいがいいのではないでしょうか。スタートアップに期待されているのは、大企業だったら決して提案できない“変なもの”ですから。

ともかく、何度もコラボに応募してみるのはいいことです。大企業の方とメールでやり取りしたり、お会いしたり、オフィスを見られるだけでも価値があります。

――ありがとうございました。


GCG合同会社「きっずもーたーしょー」の紹介ページ
岩楯信雄さんのcrewwでの紹介ページ
東京ドームによるcrewwコラボ(2015年)

 

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スタートアップとのコラボは 人と人のつながりから始まる

日本を代表するスポーツ新聞の1つとして知られる「スポニチ」を発行する株式会社スポーツニッポン新聞社は、500万読者を抱える知名度の高さと、66年間のスポーツ・芸能報道で培われたプロモーション力を生かした新たな展開を見据え、積極的にスタートアップとのコラボレーションに取り組んでいる。同社新規営業開発室の内匠俊頌(たくみとしのぶ)さんに老舗スポーツ新聞社が考えるコラボのあり方を聞いた。

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“共感のメディア”ならではの 新たなビジネスモデルに挑む

株式会社スポーツニッポン新聞社
取締役 成田 淳氏

日本を代表するスポーツ新聞の1つとして知られる「スポニチ」。株式会社スポーツニッポン新聞社(東京都江東区)は、500万読者を抱える高い知名度と、66年間のスポーツ・芸能報道で培ったプロモーション力を生かした次の展開を見据え、2015年9月にCreww株式会社のオープンイノベーションプログラムcrewwコラボを実施いたしました。多くのスタートアップから応募を集めた今回のcrewwコラボや新聞業界を取り巻く現状について、新規事業を担当する成田淳取締役に話を伺いました。

“紙”の次にあるモデルを発明する段階に

―― 成田取締役はスポーツニッポンの関連会社である毎日新聞社で、新聞制作の最前線から経営の現場まで幅広い経験を積まれてきましたが、現在の「新聞業界」をどう見ていますか

新聞というメディア自体は400年以上前からあり、毎日新聞社だけを見ても150年近い歴史を持っています。その役割は、世の中にある共通の課題を報じることにあり、スポーツ紙は生きる喜びを伝えるという目的を持っています。これはデジタル化しても変わりません。

一方、業界全体で見ると、紙の形で発行している新聞は、年に3%の割合で読者数が減っており、この15年ほどで社員数も20%減になりました。「紙」というパッケージモデルはなくなることはないにせよ、どこの新聞社も経営的には限界と言える状況にまで来てしまったのが現状です。

とはいえ、新聞社全体では社員数が少なくなっても、現場で取材する記者の数は減らしていませんので、プロのメディアとして、コンテンツのクオリティは落ちていません。課題はこのコンテンツをいかにマネタイズしていけるかです。デジタルに流すだけでいいのか、もっと付加価値を高めるためには何をすればいいのか、“紙”の次のモデルを発明しなければならない段階に来ています。

これまでのビジネスモデルに変革を起こすためには、外のアイデアを取り込まなければならないと考え、スポーツニッポン社として出した一つの答えがcrewwのオープンイノベーション「crewwコラボ」を行うことでした。

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スポーツニッポン新聞社は66年の歴史を持っている

―― 新聞の役割は変わっていないものの、今後のマネタイズ面で課題がある、ということでしょうか

いわゆる「全国紙」と呼ばれる大手新聞社の役割は「国家とは何か」「民主主義とは何か」ということを伝え、考え、守っていくことです。民主主義は“タダ”だと思われていますので、ここにお金を払っていただくのはなかなか難しいですし、“民主主義を守る”という目的で書かれた記事が読まれるとも限りません。

一方、スポーツ新聞は世の中の共通の関心ごとであるスポーツや芸能などを伝える役割を担っています。スポーツニッポン社では「楽しく元気な社会を築く」との目標を掲げているように、一般紙とは違い「共感のメディア」ということが言えます。そういう意味では、イノベーションを起こしやすい環境にあります。

―― 「共感のメディア」であるスポーツ新聞だからこそ、新しいことに踏み出しやすいということですね

一般紙はともすれば理想や理念を優先せざるを得ない面がありますが、スポーツ紙は世の中の本音を引き出し、上手く伝えることに長(た)けています。まずは「何でもやってみよう!」という企業風土ですから、今回のcrewwコラボにおいてもスタートアップの皆さんには「NG項目なし」とお伝えしました。

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―― 今、誰もが情報を簡単に発信できる時代ですが、新聞社の強みはどんなところにあるのでしょうか

ブログなどで発信している一般の方と、新聞社が発信する情報の違いは、膨大な情報のなかから必要な内容を選び出し、パッケージ化できることにあると思っています。また、先ほど、本音を伝えると言いましたが、本音をストレートに伝えると、嫌な思いをさせてしまうことがありますよね。読む人に嫌な思いをさせずに本音を伝えるのが、われわれプロの腕の見せどころです。この価値を生かしたビジネスをしなければと考えています。

一方、これまでの新聞は客観的な匿名記事が中心でしたが、これからは、記者一人ひとりがコンテンツ化していかなければならない段階に来ているように感じています。情報の新たな伝え方を模索しているところです。

―― 今回のオープンイノベーションでは多くのスタートアップから応募がありましたが、どのような印象を持たれましたか

社内からのアイデアは、どうしても旧来の価値観にとらわれがちですので、外の発想やアイデアをいただける素晴らしい機会で、本当にありがたかったです。

一方で厳しい見方をしますと、こちらの想像を超えるような提案がなく、類似サービスを提示いただくことが多かったのも事実です。

スタートアップの方による発想の本質と、スポニチが持つ価値をいかに融合させ、形にしていけるか、これからが勝負だと考えています。会社としては大きな期待感をもってコラボに取り組んでおり、社内に化学変化を起こしたいと思っています。

―― ありがとうございました

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成田取締役(左)とコラボ担当者の内匠俊頌さん

スポーツニッポン新聞社のcrewwコラボページ(2015年9月実施分)
スポーツニッポン新聞社のコラボ担当者・内匠俊頌さんのページ

 
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提案以外の可能性を引き出す 意思疎通とディレクションを

ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社
デジタルサービス部部長 三田村 忍氏

「GfKジャパン」の名で知られるジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社(東京都中野区、藤林義晃社長)は、マーケティングリサーチの世界大手である独GfKの日本法人として、1979(昭和54)年11月に設立されて以来、日本における家電やカメラ、IT、通信などの市場調査会社として、業界で高い知名度を誇ります。crewwコラボでは初めてとなる「BtoB」企業によるオープンイノベーションに踏み切った背景について、同社デジタルサービス部部長の三田村忍さんに話を伺いました。

「BtoB」企業のオープンイノベーションとは

―― GfKジャパンといえば家電やIT、通信分野のマーケットリサーチ企業として業界ではかなり著名な存在ですが、オープンイノベーションを行った背景をお聞かせください

弊社がもっとも得意としているのはPOS(販売時点情報管理)トラッキング調査です。この「小売店パネル調査」と呼ばれるサービスは、どの商品がいつ、どこで、いくらで売れたかという最新の情報が得られるため、多くの企業にご活用いただいています。

テクノロジーの加速度的な進化伴い、リサーチ手法も変化する中、「こういう時だからこそ、現状におごることなく会社として新たな可能性を追求しよう」という気運が高まり、オープンイノベーションを行うことになりました。

一方、GfKジャパンはいわば「BtoB」企業ですので、家電やIT、通信などの業界では知られていますが、スタートアップの方々への知名度が高いとはいえません。そのため、どういう事業をやっている会社なのかということを丁寧に説明するように心がけました。

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GfKジャパンは市場調査の分野で知名度が高い

―― 最終プレゼンテーションが進んでいますね

コンシューマーの方を相手にビジネスを行っている「BtoC企業」の場合と比べれば数自体が多かったわけではありませんが、スタートアップの方々から大変有益なご提案をいただきました。

なかでも数社とは既に共同商品化などの動きが始まっています。また、そこまで行っていなくても何かできないか検討を行っているところです。

―― 今回のオープンイノベーションを実行するにあたって、社内で苦労した点はありましたか

社内的な苦労はまったくなかったですね。社長の肝いりで進めており、社長は「この金額で外部の優れた人々のアイデアを共有いただけるのなら安い!」という反応でした。私自身もデジタル分野で新規事業を立ち上げるために入社していますし、crewwは非常にセンスの良い仕組みだと常々感じていました。ですので、障壁はゼロです。これですと、インタビューにはなりづらいですかね(笑)

―― オープンイノベーションの実行過程ではいかがでしたか?

苦労ではないのですが、弊社の特徴としてオープンイノベーションの過程では、私を含め10名近くが参加するプロジェクトとして進めていきました。少人数で行う企業も多いと聞いていますので、この点ではめずらしいかもしれません。

みな自主的に立候補した社員で、始業前に毎朝会議を設定しても参加するくらいに高いモチベーションを持って臨みましたが、メンバーによってスタートアップ方への対応に差があってはいけませんので、同じ温度感を保つようには心がけました。

もう一つ気を付けたのは、スタートアップの方とのファーストコンタクト時です。最初にいただく提案のなかには若干“粗い”と感じる内容もあります。ですので、そこだけを見るのではなく、「こういうことが言いたいのではないか」と深く考えたり、「この部分を引き出せば互いに有益なコラボレーションになるのではないか」と想像したり、あらゆる面からスタートアップの事業が秘める可能性を考え、そこを引き出す努力はしていました。

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―― 意思疎通の面でも気をつかっていた

スタートアップの方が持つ世界観を理解する努力はもちろん、ファーストコンタクトからサードコンタクトまでの間に、いかにお互いの考えを上手く伝え合い、調整できるかが重要だと感じました。この部分をスムースに運べないと良いオープンイノベーションにはならない気がします。

コラボレーションでは、互いの利益になるようディレクションしていくことがもっとも大事です。

―― crewwコラボでのオープンイノベーションは社内でどのような評価を受けていますか

参加したメンバーからは会社とは別の“社会”が見えたという声がありましたね。また、プレゼンに参加した役員もポジティブな反応でした。

ただ、現在はスタートアップの方と現場とで議論をして次の段階へ進もうとしているところなので、成果が見えてくるのはこれからです。会社としては、今後もオープンイノベーションやっていこう、という雰囲気はありますね。

―― オープンイノベーションを行おうとする大手企業へのアドバイスはありますか

やはり、実際に提案された内容だけでなく、スタートアップの技術やサービスを自社においていかに使えるのかを考え、常に次の段階へ引き上げる努力をしていくことではないでしょうか。

また、社内的には色んな部署の人に呼びかけ、立候補制で参加してもらったほうが会社全体に良い効果が得られるように感じています。情報を公開して社内で共有し、“自分ごと”化してもらうための努力も大切です。

―― オープンイノベーションへの応募を考えているスタートアップへのアドバイスもお願いします

応募時の提案はテンプレートっぽく見えないように工夫することが第一です。そして、プレゼンまで進んだら、役員などの意思決定権者が出てきますので、窓口となる担当者とは異なるニーズを持っていたり、担当者との会話では当たり前だった用語が通じなかったりすることが考えられます。その点を意識してプレゼンを行っていただくことが大事だと思います。


ジーエフケーマーケティングサービスジャパン株式会社 http://www.gfk.com/jp/
GfK x creww ビッグデータを使ったオープンイノベーション(2015年) https://creww.me/ja/collaboration/gfk-2015

 
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大手企業に浸透する「イベレジ」 “大人ベンチャー”の戦略とは?

イベントレジスト株式会社 代表取締役CEO ヒラヤマコウスケ氏

「イベレジ」の略称で親しまれるイベントの告知・集客プラットフォームを運営するイベントレジスト株式会社(東京都渋谷区)は、ソーシャルチケッティングと呼ばれるサービスのなかでも、大手企業への浸透度で群を抜いています。日本経済新聞社との資本・業務提携を始め、最近では広告配信のフリークアウトと協業するなど、連携も積極的です。ヤフーやマイクロソフト、グーグルなど名だたるIT大手での勤務を経て起業したヒラヤマコウスケCEOに、“大人ベンチャー”ならではの戦略やコラボレーションのあり方を伺いました。

日本を代表する著名イベントで活用されるイベレジ

―――― イベントやセミナーを開く際、集客やチケットの販売で「イベレジ(EventRegist)」のお世話になるスタートアップも数多いと思うのですが、一方で日本を代表するような大型イベントでもプラットフォームを提供していたとは知りませんでした

イベレジはイベント名と開催日、チケットの設定をするだけで誰でもイベントの告知と申し込みページが作成できるサービスです。チケットを有料で販売する際は販売額の8%を手数料としていただいていますが、それ以外は無料ですので、企業や団体、個人に関わらずどなたでも手軽に使っていただけるものです。

一方、機能を拡張したプレミアム版もあり、来場者のトラッキングやプロモーションコードの発行、請求書発行や銀行振込対応、アンケートの実施など、大型イベントの主催者が必要とする機能がほとんど詰まっており、著名な大規模展示会ではこちらをお使いいただいています。このインタビューをお読みの方が参加されているはずのベンチャー関連の大型イベントでも、もちろんイベレジが使われています。

一方、ビジネスイベントでは集客面で苦労されている企業が多いという現状がありますので、イベレジの新たな展開として、フリークアウトさんと協業しながら集客ソリューションも展開していく予定です。

―――― イベントでの利用一覧を拝見すると、誰もが一度は見聞きしたり、参加したりしたことがある大規模展示会でイベレジが使われているケースが多いことに驚きました。自ら主催者として使わなくても、知らず知らずのうちにイベレジのお世話になっていることも多いんですね。驚きといえば、2014年に日本経済新聞社がイベントレジストと資本・業務提携を発表した時もそうでした

もともと私はメディア好きで、マイクロソフトの時は「MSN」におり、グーグルの時は「YouTube」の担当だったこともあり、コンテンツというものの重要性を身を持って感じていました。そのため、起業前にはテレビ局の子会社の立ち上げに参画し、実際にテレビ番組の制作などにも携わっていました。とにかく面白いことがしたいと考え、ネットとテレビの新しいチャレンジに熱中してましたね。

イベントレジストを起業したのも、テレビ番組などのコンテンツを作る過程で、表には出ない現場のリアルさこそが面白いということに気付いたからでした。

メディア好きという自分自身の志向もそうですし、大手メディア社にとってイベントは事業の柱となりうる存在ですので、相性が良かったといえます。また、弊社は積極的にアジア展開を行っており、日経新聞さんも同様にアジア重視の姿勢でしたので、同じ方向を向いていたわけです。もちろん、日経さんの主催イベントにもイベレジは使われています。

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―――― 米国でスタートアップを経験し、帰国後はヤフーやマイクロソフト、グーグルで勤務し、イベントレジストを起業してからは日経新聞から出資を受けている、ヒラヤマCEOは“大手企業キラー”なのでしょうか

IT大手に勤務していたのは事実ですが、すべて新規事業の立ち上げ担当です。一人部署からのスタートなので、さまざまな社内外の組織や人の協力を得なくてはなりません。そういう意味では、大手との付き合い方という面ではアドバンテージがあるかもしれません。

ただ、スタートアップで大事なのは、大手であろうと中小であろうと向かうべきベクトルが同じかどうかということです。確かに大手企業の場合は、担当者の方と会えるまでには苦労がともなうかもしれませんが、その手間をショートカットするための存在として「creww」のようなプラットフォームがあるのではないでしょうか。

―――― ありがとうございます、crewwを知ったのはどのようなきっかけだったのでしょうか

あるソーシャルチケッティングのベンチャーとcrewwの関係を感じ取り、「これは何だ?」と気にしたのきっかけだったかも(笑)。2~3年前、まだcrewwが初期の頃ですね。

―――― Ceww株式会社での先輩として、大手企業との付き合いに慣れておられるヒラヤマCEOにぜひ大手とのコラボレーションのあり方をアドバイスいただけたらと思います

アドバイスになるかどうかは分かりませんが、大手企業と付き合ううえでは、誰に話していいのか分からないとか、担当者の方がよく変わるので混乱してしまうとか、大手ならではの苦労がありますよね。でも、それを言ってもきりがない。だから自分たちの向かうべきベクトルと、相手の企業が同じかどうかが大事だと思います。ベクトルが同じだと、たとえ担当者が変わっても関係性は変化しづらいはずですので。

一方でスタートアップの方はとにかく外に出て人と会って話せばいいと思います。会えば印象にも残りますし、その先につながる確率が高まります。当たり前ですが、組織よりも人と人との関係です。

コラボの成否は、相手企業とのシナジーという面が重要となりますが、われわれも含め、大手企業が何を求めているのか、どこに注力してどこへ向かっているのかといった情報を得るのはなかなか難しい。だからこそ、双方の間に入って繋いでくれるCreww株式会社のような存在が大事になんです。精度の高いマッチングをしていただけるよう期待しています。

―― ありがとうございました。


イベントレジスト株式会社のcrewwページ https://creww.me/ja/startup/eventregist
イベントレジスト(EventRegist)のWebサイト http://eventregist.com/

 


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大成功をおさめたセブン銀行crewwコラボ

2016年2月8日からエントリーが始まった、株式会社セブン銀行(以下セブン銀行、東京都千代田区、代表取締役社長 二子石 謙輔)による「crewwコラボ」の本社プレゼンテーションが3月23日、24日の二日間に渡って開催された。

 

「あの街、この町にもっと便利を。」をテーマに、セブン銀行とスタートアップが「新しい便利」を一緒に生み出していくことを期待し、本プログラムは行われた。セブン銀行が採択されたスタートアップに対して、順次試験的にサービス連携やマーケティングなどでの支援をするほか、業務提携や出資も視野に入れている。ここまでの選考を通過した、株式会社BairTail、ドレミングアジア株式会社、株式会社ギフティ、株式会社レアリスタ、株式会社Residence、タメコ株式会社の6社のスタートアップが、事業採択の判断の場となる本社プレゼンテーションに臨んだ。

本社プレゼンテーション
<写真上段左より>
ドレミングアジア(ドレミングアジア)株式会社 桑原氏
株式会社ギフティ (giftee)大曽根氏
株式会社BearTail(Dr.Wallet) 高澤氏
<写真下段左より>
株式会社レアリスアタ(Holiday Ticket)和田氏
株式会社Residence (Residence)岡村氏
タメコ株式会社 (Tamecco )キム氏

プレゼンテーションは、スタートアップが自社のサービス紹介をするだけでなく、実際にセブン銀行と連携してどんな事業を展開するか提案、ディスカッションするというもの。本社プレゼンにはセブン銀行代表取締役社長の二子石謙輔氏をはじめとしたセブン銀行の役員ら、総勢20名強が並ぶなか、セブン銀行社員で結成されたcrewwコラボ事務局の積極的なファシリテーションにより活発なディスカッションがなされた。

この活発なディスカッションの裏には秘密がある。事務局は社内に対し、事前に「自由奔放な意見、極端な意見など、通常では出ない意見は尊重」「提案内容、発言内容に対する批判はNG」「できないではなく、どうすればできるかという視点で考える」といった、新しいことに挑戦する雰囲気づくりを促した。

得てして業務委託先からの提案を待つような姿勢になりがちな大企業とスタートアップのディスカッションではあるが、今回はそれを良い方向に裏切り、各社1時間弱の持ち時間いっぱいを使い、提案はさらに具体的に、実現性を帯びたものにブラッシュアップされていく。さて、気になる採択の結果は?

本社プレゼンテーション

※crewwコラボとは、新規事業創出を目指したプログラムであり、本プログラムは下記の流れで行われていました。
・セブン銀行がスタートアップ企業に提供するリソースを専用ページに公開
・スタートアップ企業が利用したいセブン銀行のリソースを選択
・スタートアップ企業が専用ページから共同事業内容をエントリー
・crewwコラボシステム内で両者がコミュニケーションを重ね実現へ向け協議

※オープンイノベーションは自社の有する経営資源や技術に頼るだけでなく、社外からの技術やアイデア、サービスを有効に活用し革新的なマーケットを創造することです。
※スタートアップとは、独自の技術やアイデアによって、前例のないビジネスモデルを作りだし、既存マーケットに挑戦する成長速度の速い企業を指します。

 
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オープンイノベーションが変えた 自社の風通し

国際航業株式会社 事業開発本部

長谷川浩司氏 藤原康史氏

まちづくりに携わっている人に絶大な知名度を誇るのが国際航業株式会社(東京都千代田区、土方聡社長)です。国土の姿を測量して正確な地図を作ったり、GPSなどを使って現在地を特定したりという地理空間情報事業に加え、太陽光発電事業やまちづくり支援といった「空間情報コンサルティング」を事業の柱に据え、日本やアジア各国での国土発展を支えています。まもなく創業から70年を迎える同社が挑んだオープンイノベーションの形について、事業開発本部の副本部長で事業開発部長の長谷川浩司さんと、同部新規ビジネスグループ長の藤原康史さんにお話を伺いました。

crewwに登録されているスタートアップのページを見てイメージを膨らませる

――国際航業といえば、地理空間情報技術の分野では誰もが知る大手企業ですが、Creww株式会社のオープンイノベーションに踏み切った経緯を教えてください

弊社は1947(昭和22)年から航空写真の測量をベースに事業を始めました。現在では、GPSに代表される地理空間情報と建設コンサルティング技術を融合させた「空間情報コンサルティング」を事業の柱に据え、さまざまな技術開発やソリューションの提供を行っており、お客さまの中心は官公庁です。

現在、1700人ほどの社員がいますが、技術者の割合が高い企業ですので、技術開発力を高めながら、より良いモノを作るというプロダクトアウト的な発想が中心にあります。一方で市場のニーズを捉えたマーケットイン的な取り組みも必要ではないかとの思いもあり、近年は社内でも新規事業の立ち上げやアイデア募集も行っています。

ただ、社内リソースだけですと、新たな技術やアイデアには限界もありますので、地理空間情報の計測技術の提供などを軸に、昨年(2015年)11月からオープンイノベーションにチャレンジすることになりました。

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国際航業は「空間情報コンサルティング」を事業の柱に据えている

―― 今回のオープンイノベーションは「失敗が許されない大きなチャレンジだった」とのことですが、実施までに苦労されたのではないでしょうか

Creww株式会社の担当者の方もCEOである伊地知天さんもしっかりとした考えを持っており、このオープンイノベーションにかけてみよう! と思い、実施に踏み切りました。ただ、会社として初めての試みですので、オープンイノベーションがどういう仕組みなのかを社内で説明する際には、丁寧に伝えることを心掛けましたね。

社内リソースの棚卸しやゴールの設定など、準備をはじめたのは昨年の夏前です。まずはcrewwに掲載されていた1700社ほどのスタートアップのページにはすべて目を通してイメージをつかみ、また、先にオープンイノベーションを実施していた大手企業にもヒアリングをさせていただき、アドバイスをもらっています。

スタートアップの方々へのオリエンテーションでは、官公庁ビジネスがどういうものか、また弊社はどのような要素技術を持っているのかなど、みなさんにご理解いただけるようにつとめて話しをしたところ、「今まで関わったことがない業種」「初めて聞いた」との好反応があるなど予想以上に盛況で、オリエンテーションを2回にわたって行ったほどでした。

―― 2015年11月下旬から募集を始め、数多くのスタートアップが応募しています

果たして応募があるのだろうかと不安もありましたので、ほっとしました。その後、部内の3人で手分けして内容を拝見するのはもちろんですが、やはり思いを直接聴きたいと思い、多くのスタートアップの方と実際にお会いしています。

このなかから10社の方にプレゼンテーションに来ていただきました。プレゼンの場には、弊社の社長や各事業の責任者だけでなく、持ち株会社である日本アジアグループの会長兼社長の山下哲生氏も参加しています。スタートアップの方には時間いっぱいまで説明をいただき、熱気あふれる場となりました。

―― 東証一部上場企業の社長が時間を割き、自らスタートアップの話を聴きに出向いたという点で、オープンイノベーションにかける御社の意気込みが伝わってきます。その後、どのような選考が行われたのですか

事業の具体性や弊社の受け入れ体制といった指標は作りましたが、やはり最終的には「本気度」といいますか、コラボ度といいますか、一緒にできるのか否かという点が大事だったように思います。プレゼンいただいた10社はいずれも評価が高かったのですが、最後は“やりたい度”という点を見て、7社とコラボを進めることに決めました。

以後は連日打ち合わせを行い、今では弊社の現場担当者とスタートアップの方が直接やり取りしたり、全国に持つ弊社拠点を一緒に回ったりもしています。今後、コラボの具体的な成果が徐々に見えてくるはずです。

半期に一度行われる全社的な説明会の場があり、今回の取り組みを全社員に紹介したのですが、他の部署からは「オープンイノベーションのような取り組みを行いたいのだが、どうすればいいのか」といった問い合わせも寄せられるようになりました。

―― 多数のスタートアップが参加した今回のオープンイノベーションですが、コラボにいたった企業といたらなかった企業の差はどういう部分でしたか?

応募いただいたスタートアップに大きな差はありませんでした。ビジョンを共有できるか否か、相性が合うか合わないかという部分が大事なのではないでしょうか。お見合いのようなものですから。

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オープンイノベーションを振り返る長谷川さん(左)と藤原さん

―― これからオープンイノベーションを行う大手企業の方にアドバイスをお願いいたします

われわれにとって大きなチャレンジでしたが、挑戦してよかったと思っています。アドバイスになるかどうかは分かりませんが、やはりスタートアップの方をリスペクト(敬意を表する)ことがもっとも大事ではないでしょうか。また、従来の固定概念を一度捨ててみることも必要かもしれません。

実務的な面ですが、オープンイノベーションを既に行った“先輩”となる大手企業に「あまり多くの人が関わるのではなく、少人数でやったほうがいい」とアドバイスをいただいたので、われわれもそのようにしました。一方で、社内での連携や各事業のリーダーに趣旨を理解してもらう活動は、積極的に行ったほうがスムースにことが運ぶはずです。

今後もオープンイノベーションは続けたいと思っていますので、ノウハウを貯めていくことはもちろん、今回とは異なる分野のスタートアップの方々とも積極的にお会いしたいですね。

―― ありがとうございました。


国際航業株式会社のcrewwオープンイノベーション紹介(2015年11月) https://creww.me/ja/collaboration/kkc-2015
国際航業・藤原康史さんのcrewwページ https://creww.me/ja/account/康史-藤原

 
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大手事業会社と相次いで提携し FinTech分野で注目集める存在に

クラウドキャスト株式会社 代表取締役 星川高志氏

マイクロソフトやDEC(現ヒューレット・パッカード)といったIT界を代表する世界企業で活躍し、2011年に自ら起業したクラウドキャスト株式会社(東京都港区)を「FinTech(フィンテック=ITで金融サービスを変革する)」界で注目を浴びる存在にまで育てているのが星川高志社長です。大手企業との提携経験も豊富な同社長にコラボレーションのあり方や起業までの経緯を伺いました。

マイクロソフトなど著名IT大手での勤務後に起業

――星川社長は名だたるIT大手での勤務経験が長いですが、起業までにどのような経緯があったのですか

実はこれまでの人生で2回の寄り道をしています。一度目は大学在学中の1990年代中ごろです。1年間休学して英国ロンドンへ留学しました。ここでインターネットの可能性を知ることになり、当時IT界でIBMの次に大手だった 米DEC(ディジタル・イクイップメント・コーポレーション)の日本法人に新卒で入社したのです。

その後、マイクロソフトへ転職し、米国本社直轄の部門やモバイルアプリ部門の中心となるエンジニアとして働いたり、オフショア開発のマネジメントを経験したりしました。社会人になってちょうど15年ほど経った頃でしょうか、2009年に青山学院大学大学院のビジネススクールに入学し、会社に勤務しながら企業経営のあり方を学び始めています。これが2回目の寄り道です。

マイクロソフトの社内にも優秀な人は確かに多かったのですが、起業家のマインドを持った人は少ない。ところが、ビジネススクールで出会った人は、まったく別世界です。ここで、起業家意識が養われたことが後の起業につながりました。

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―― そして、ビジネススクールでの研究の一環として、現在のクラウド経費精算サービスにつながるアプリの開発に踏み出すわけですね

2009年よりフリーランスとしてiOS上で“お小遣い帳”的なアプリ「xNote」を開発し、グローバル規模での開発プロセスとマネタイズの実験を行っていました。現在はアプリ販売だけで収入をあげるのは難しくなっていますが、当時は月に数十万円の収入になったほどでした。その後、2011年1月にクラウドキャストを法人化しています。

このアプリを法人向けに改良し、その年に行われた弥生株式会社によるアプリコンテストでグランプリをいただいたのを機に、弥生さんと提携することになりました。

―― 弥生としてはベンチャーへ出資するのは初めてのことでしたが、どういった背景があったのですか

当時の弥生さんはパッケージソフトが全盛の頃でしたので、弊社が開発したアプリ「bizNote for 弥生会計」は、弥生会計がクラウド化や将来的なスマホアプリに踏み出すためにも必要だったのではないでしょうか。提携については、弥生さんと弊社が補完関係にあったことが大きかったといえます。

両社間でシナジーを生み出せましたので、弥生さんとの提携は結果的に成功だったと思っています。

―― 2014年には現在の主力となる経費精算サービス「Staple(ステイプル)」を立ち上げました

Stapleはホッチキスの針(ステイプル)であるほか、形容詞として「定番・重要」との意味もあります。ビジネスパーソン向け経費精算の“定番サービス”にしたいとの想いで名づけ、開発したものです。

「Staple」では交通系ICカードや乗り換え案内アプリ、会計ソフトと連携ができるほか、ワークフローとして入力内容の申請や承認がスマートフォン上で行えます。とにかく手間がかかりがちな経費精算作業を大幅に軽減できます。現在、中小企業や、スタートアップを中心に多くの組織やチームで導入いただいているところです。サービスを通じ、ビジネスパーソンの生産性向上に寄与したいと考えています。

―― Stapleのリリース後、IMJグループやクレディセゾングループと相次いで資本提携を行っていますね

IMJさんは東南アジアへ進出するうえで心強く、セゾングループさんは3500万人の顧客基盤を持っていますので、弊社としてメリットは大きいと考えての提携です。日本では、スタートアップは事業会社と組んだほうがメリットが大きいと感じます。

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―― スタートアップにとって、大手企業との提携は敷居が高いようにも思えますが、次々と成功させているのは秘訣のようなものがあるのでしょうか

私自身、マイクロソフト時代から法人向けビジネスに長年携わっており、その経験と蓄積があったからかもしれません。ただ、相手はわれわれの会社と比べれば相当に大きな企業ですので、飲み込まれてしまうのではないかとの不安がなかったわけではありません。リスクとリターンは常に考えています。

―― Creww株式会社ではスタートアップが大企業とコラボレーションを行うためのプラットフォームを運営しています。そこへ参加しているスタートアップの方にアドバイスをお願いいたします

crewwは非常に良い仕組みですよね。スタートアップにとってチャンスが眠っているのではないでしょうか。

アドバイスという意味では、製品やサービスを開発するうえでの考え方から話しますと、キャズム(アーリーアダプターからアーリーマジョリティに普及する段階)を超える前の段階は競合が少なく、大きなチャンスが眠っています。大手新聞や著名ビジネス誌の記事に載った頃に開発を始めてももう遅いわけです。

提携やコラボレーションを行おうとする相手が、そうしたチャンスや可能性を理解しているかどうかが重要です。理解できていない人に話をしても決して上手くはいかないですよね。

先進的な考え方を理解できる人は10人に1人くらいはいて、大企業内にも必ず存在します。たとえば日本を代表するメガバンク内にもそうした人がいたからこそ、FinTechの世界ではメガバンクも支援を表明し、現在の盛り上がりにつながっているわけです。

誰に話をすれば共感してもらえるのか。ここを間違えないことが重要ではないでしょうか。

このあたりの詳しいお話しについては、「起業家はだれでも最初クレイジーと言われる」 という一文にまとめていますので、ぜひご一読ください。

―― ありがとうございました。

 

取材先 : クラウドキャスト株式会社   http://crowdcast.jp/ja/

 

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IoT時代ならではのアイデア形に サッカー界に変革もたらす開発

株式会社アップパフォーマ 代表取締役CEO 山田修平氏

株式会社アップパフォーマ(京都市下京区)が開発するトラッキング(追跡)システム「Eagle Eye(イーグルアイ)」は、アマチュアサッカー界に大きな変革をもたらす可能性を秘めたIoT(Internet of Things=モノのインターネット)サービスとして、米国での世界的な家電見本市に出展するなど、量産実用化への期待が高まっています。スポーツ界の進化をITによって後押しする同社の山田修平CEOに開発の経緯や今後の展開を伺いました。

安価でサッカー選手の動きをデータ化できる

―― 「Eagle Eye(イーグルアイ)」はIoT(パソコンやスマートフォンだけでなく、あらゆるモノが常にネットに繋がっている状態)時代にふさわしいシステムとして注目を集めていますが、どのような形で活用するツールなのでしょうか

簡単に言いますと、サッカー選手の動きをデータ化し、それを解析するサービスです。選手の二の腕に装着してスイッチを入れるだけで、どのポジションの人がどんな動きをしたか、どれだけ走ったかなどが記録できます。これらの記録データは専用アプリで容易に確認ができるため、チーム全体のデータを統合することで、定量的にパフォーマンスの確認が可能となります。

近年は国内外のプロサッカーチームでは、動画解析などによってプレイの可視化が積極的に行われていますが、高額な費用が必要です。そのため、Eagle Eyeではアマチュアチームでも“データサッカー”が手軽に実践できるよう、1人あたり1万数千円の価格で販売するべく開発を行っているところです。

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―― IoTサービスを開発するうえで、あえてサッカー分野に特化して開発を行ったのはなぜでしょうか

私は学生時代に野球をやっていたので、最初は野球ボールで同じようなことができないかと考えました。ただ、野球は日本やアメリカではメジャースポーツですが、世界全体で見ると市場が小さい。サッカーだとほぼ全世界に広がっていて、アマチュアチームだけで30万以上あると言われています。

なにより、野球ボールのサービスだと、チームに1球だけあれば事足りてしまうので、これだと苦労して開発しても、ビジネスとして考えるとどうなのかと……。

―― 確かに、サッカーだと最低11人分のディバイスが必要になりますね。開発は2014年から始められたんですか

はい、最初は弁当箱にGPSやセンサーといったモジュールを入れたものを自分で作りました。実証実験では中学生に使ってもらったのですが、「これを付けると、全力で走っていないのがバレる!」という反応もありました(笑)

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米国の世界的な見本市「CES」で高い評価

―― そして翌年(2015年)早々には、世界的企業が新商品を披露する米国ラスベガスの家電見本市「CES(セス=コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)」に出展を決めていますが、どんな背景があったのでしょうか

2014年12月上旬に経済産業省の「フロンティアメイカーズ育成事業」に採択頂き、3週間後に開催されるCESへ参加する機会に恵まれました。その後、さくらインターネットさんとサムライインキュベートさんが主催するベンチャーイベント「Startup Tour Japan 2015 in Kyoto」で高い評価をいただいたりと、昨年の中間評価に繋がったかなと思います。

といっても、スタートアップですので私一人でラスベガスの会場へ乗り込んで、現地のホームセンターで工具や材料を買って3日間不眠不休でブースを手作りしました。見本市の本番が始まる前に燃え尽きそうになってしまったのは危なかったです(苦笑)

CESは2016年も出させていただいたのですが、米国の方はベースボールやアメリカンフットボールのサービスではないと分かると残念な顔をしますが、逆に欧州の方には評判がすごく良いですね。日本よりも反応が大きく、手ごたえを感じています。

CESへの出展に加え、2015年はクラウドファンディング「マクアケ」でEagle Eyeの先行販売の募集を行い、66人の方から約110万円を出資いただきました。

2011年、関西へ戻り、起業は京都で

―― 山田CEOはわずか9歳でアマチュア無線の免許を取っていますが、幼少時から“理系分野”に興味が深かったのですか

小学校の時にはマッキントッシュが家にあったり、中学ではBASIC、高校ではプログラミング言語のPerlをやったりしていましたので、強い興味がありました。ただ、中学校と高校の時は野球に熱中し、大学では音楽イベントを行うことに熱中していましたので、途中で“休み”を挟んでいます。

―― そして大学卒業後は、誰もが知る著名な大手アパレルチェーンに入社しています

大学卒業から7年半の間、千葉、長野、沖縄、パリとさまざまな店舗を経験しました。途中からは店長となって店舗の責任者となりましたので、毎日20時間くらいは仕事していたかもしれません(苦笑)。マネジメントという部分では大きな勉強にはなりましたが、あまりに多忙な状態でしたので、起業なんて考えたこともなかったですね。

―― 起業に至るまでは試行錯誤の時期がありました

起業することになったのは、2013年に東京で開催されていたハッカソンで優勝をいただいたのがきっかけです。また、Eagle Eyeを開発する前には、Twitter関連など3つほどの新サービスを開発しています。

高校は大阪、大学は滋賀だったので、その中間である京都を拠点に選びました。今も本社を置いています。

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企業の看板ではなく人と人の関係が大切

―― creww(クルー)についてはどう思われていますか

もともと、ソーシャルリソースを上手く再配分するシステムが必要だと感じていましたので、「crewwのシステムはいいな」と思いました。昨年11月には大手企業のオープンイノベーション(コラボレーション募集)に応募し、現在は具体的なお話を進めさせていただいている段階です。

―― 大手企業とのオープンイノベーションを通じて、感じたことや、他のスタートアップへのアドバイスをお願いします

先方の担当者の方にリスクをどこまで理解していただけるかが大事なのではないでしょうか。まずはライトな形でコラボレーションを始めるのもいいかもしれません。

良いコラボレーションができるかどうかは、担当者の方の“気合い”のような部分も重要で、それがないとモチベーションが続きません。会社の看板ではなく、人と人という部分が一番重要だと思っています。

―― ありがとうございました。

 

取材先 : 株式会社アップパフォーマ(Eagle Eye)   http://upperforma.com/ja/

 

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今だからこそ、家族のためのSNS「wellnote」

ウェルスタイル株式会社 代表取締役社長 谷生芳彦さん

ソーシャルネットワーキングサービスでのコミュニケーションが定着し、知人と会って会話をする以上に、写真や動画などを交えた投稿の共有やチャットで交流する、というコミュニケーションも当たり前になってきた。家族間のクローズドSNS「wellnote(ウェルノート)」がオープンイノベーションをしながら、提供しようとしているサービスは、どんな想いから生まれたのだろうか。ウェルスタイル株式会社の谷生氏に聞いた。

オープンイノベーションのプラットフォーム「creww」を使う理由

——自社だけでも、他企業にアプローチされてきたと思いますが、それとcrewwコラボの違いはありましたか?

crewwを使うメリットは、会う前から論点やトピックをある程度固めた状態でコミュニケーションが取れることですね。Creww株式会社という第三者が入ることで、ベンチャーでありながら、大手の企業とのやりとりにスムーズに入れることです。

——オープンイノベーションやcrewwコラボを進めていく上で、先方にスタートアップに対する理解のなさなどを感じたことはありますか?

それはないですね。企業や担当者の個性や相性だと思います。起業以前のキャリアとして、ゴールドマンサックスに10年間勤務していました。最初の4年間は機関投資家と呼ばれる大手金融機関担当として日本株式を営業する仕事をして、そのあとは事業法人部で、資金調達支援、共同投資提案、リスクマネジメント提案など、経営やファイナンス絡みのなんでも屋をしていたので、そのあたりには難しさを感じませんでした。

 

大学生の頃に描いた夢を10年後に実現

——ゴールドマンサックスでの勤務が10年ということですが、なぜ、起業しようと思われたのですか? 10年勤めたら、環境を変えていくことに躊躇はありますよね?

もちろん、かなり考えましたよ。「外資系金融でのキャリアを本当に捨てていいのか」「学生時代から起業をすると言い続けてきたけれど、なぜ起業するんだろう」といったことから、「幸せとは何か」「どんな人生が幸せなのか」という自分の根幹に関わることも日々自分に問い続けました。

でも、起業しない人生を送れば、死ぬときに後悔するだろうと思うようになりました。新しいライフスタイルを創造するという社会的意義があると確信できるこのチャレンジに挑戦してみたいという想いと、大学生の頃の「起業したい」という夢が重なって決意できました。

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——大学生の頃から起業はしたかったんですね。

そうなんです。当時90年代半ば、インターネットで世界が変わると言われはじめていました。大学の専攻も経営学でしたし、起業のまねごとのようなサークルも運営する中で、ベンチャーの本場であるアメリカのシリコンバレーに留学したいという想いが日に日に強くなっていきました。

大学の交換留学制度を調べてみたら西海岸のシアトルにあるワシントン大学経営学部への交換留学制度があったので、それに応募して、交換留学をしました。

留学していた1997年のシアトルはITバブル前で盛り上がっていました。マイクロソフトのビル・ゲイツはいますし、アマゾンドットコムのジェフ・ベソスもいるんじゃないかとか。彼らのような大きな事業をいつか創ってみたい、と夢がどんどん膨らんで。笑

 
——日本の大学にいた頃はいくつかサークルを運営されていたということですが、卒業していきなり起業はしなかったんですね。起業する前のステップとして、投資銀行を選んだのはなぜですか?

当時アメリカでは、大学で最も優秀な学生たちは、経営コンサルティングや、ウォール街のゴールドマンサックスといった投資銀行に入って数年経験を積んだ後、MBAを取って起業するという流れがあるなあと思ったのがきっかけです。

 

モノやサービスが変えていくライフスタイル

——退社後に起業して、ここまでくるのに順調でしたか?

しんどいだろうとは思っていましたが、順調なことより、大変な時間の方が多かったです。笑

特に何かを準備して辞めたわけではなく、私自身に子供が生まれ、その成長を両親に共有したいということもあり、家族SNSが必要になるだろうという着眼だけで退社したので、サービスの構築ができるエンジニアを探すことから始めました。これがなかなか見付からない。「エンジニアが見つかるまでは、サービスの開発を始めない」と決めていたので、スタートには時間がかかりました。

——2012年に「リアルの場のお茶の間をネット上に再現する」というコンセプトの家族限定のSNS「wellnote(ウェルノート)」を正式に公開されましたが、この手のクローズドSNSは少しづつ増えていますよね。
ようやくそのような新しいライフスタイルが創られてきたと感じます。メールからfacebookなどのSNSやチャットツールに移行し、そこに加えて、カップル間や家族間などのクローズドSNSがより必要になっていくと考えています。関係性やコミュニケーションの内容で、ツールを使い分けが進んでいくのがこれからの流れとなっていくと思っています。

例えば、子育て中のひとが自分の子どもについて、写真や動画を投稿するのはよくあることです。ただ、プライバシーだったり、気分的なものだったり、さまざまなリスクを考慮しなければならない場合もある。いわゆる「SNS疲れ」「Facebook疲れ」などと呼ばれる状態ですよね。それに対して投稿範囲を限定するといったやり方はありますが、設定に戸惑って、投稿が億劫になることが多いのではないでしょうか。

かといって、チャットツールでは、やりとりが流れてしまう。今すぐ返事を求める同期型コミュニケーションではなく、思い出として何かが残って残ればよい非同期コミュニケーションもニーズがあるわけです。

ディバイスも変化していっています。2010年はPCとガラケーでのメールが主流でしたが、今はスマホが台頭し、SNSやチャットアプリが増えています。これからはタブレットもますます増えていきます。

モノやサービスの機能そのものではなく、そのモノやサービスでライフスタイルがどう変わるのかを意識してサービスの開発をしていくことが大切だと思っています。

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——その変化に対応していくために、オープンイノベーションは欠かせないですよね。オープンイノベーションをしながら目指していることを教えてください。

wellnoteをまずは日本中の家族に使ってもらいたいということ。それによって幸せな家族を増やしたいという想いがあります。社会的意義のあるプラットフォーム、インフラの構築を通じて、世の中に新しいライフスタイルを創造することができれば、利益はあとからついてくると信じています。

 

取材先 : ウェルスタイル株式会社   http://wellnote.jp/

 

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