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スタートアップが知っておくべき弁護士との付き合い方  creww academy vol.07 「弁護士Night」開催

creww academy vol.07

資金調達、人事労務、法令厳守、株主との位置関係…。
創業からシード期のスタートアップは、事業を拡大していく上で様々な問題に直面することが非常に多い。コンプライアンスに対する意識が強い昨今においては、創業間もない企業といえども法令や労務に気を配ることはなおさら重要だ。そのような中でカギとなるのが、弁護士との“付き合い方”。しかし、本来はスタートアップにこそ弁護士が必要なのに、弁護士と接する機会が少ないのが現状。
そこで「弁護士や法務についての疑問」をテーマに、3名の弁護士を招聘しcreww academy vol.07 「弁護士Night」を開催。各人の弁護士としての知見と経験から、スタートアップが抱えるであろう問題について語っていただいた。

 
● トピックス
1. 自分1人で開業、仲間と開業
2. 基盤ができたので新しい事業を始めたい
3. 弁護士との付き合い方
4. 契約書
5. 人手が足りない
6. 有名な企業になってきた
7. 目指せイグジット
 
● 登壇者
①長谷川 紘之
片岡総合法律事務所・パートナー弁護士
②高松 志直
片岡総合法律事務所・パートナー弁護士
③野尻 裕一
野尻法律事務所・弁護士
 

1. 自分1人で開業、仲間と開業

―― 1人で起業する際に注意する点
野尻弁護士:(株式会社など)法人として起業する場合、一番理解しておかなければならないのが「株主とはどういう地位か」という点です。
というのも、株主総会が会社の最高決定機関として会社自体の行く末を決めていくことになる。つまり、1人の場合には株主=自分の意思決定になるのですが、複数人の場合には必ず多数決が必要になるわけで。事業としての思いは同じでも、運営としての思いが同じとは限らない中で会社がスタック(停滞)してしまうことはよくあります。
2人で起業した場合50%ずつの株を持っていたら、何も決まらないということもありうる。
複数名が株主になって会社運営を進めていくのであれば、過半数の株式を保有して最終的な決定権を有するリーダーを決めておく(自らがリーダーになる)ことをお勧めしています。

――【ポイント】
→複数人で起業する際は、必ず最終の意思決定をするリーダーを決めておく
→株主が多くなるに伴って、1人でも事業への思いにズレが生じると株主総会を開くこと自体のハードルが上がる

長谷川弁護士:会社法としては、90%以上株保有している人は10%未満の少数株主に対して株式売渡の請求ができる制度が整えられました。適正対価を払ってその制度を活用することにより、ある程度は少数株主を排除できます。
ですが、1株であっても外部の株主が存在すると一気に株主総会に関する問題が出たり、意思決定に時間が掛かったりするので、その部分は理解しなければなりません。

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2.基盤ができたので新しい事業を始めたい

――資金調達をする際に気を付けること
長谷川弁護士:個人の投資家やベンチャーキャピタルから投資を受ける際、過半数の株式を渡す場合は注意が必要です。会社法上、過半数を渡してしまうと、会社を起業した自分自身の取締役の地位も確保できず、経営から追い出されかねないということになります。
株式会社の場合、様々なことを株主総会で決めるというのは当然のことです。過半数を渡した場合、自分がクビになっても資本の論理でいうと何も文句は言えない、ということになります。

また、投資を受け入れる際に締結する投資契約や複数の株主が出資するときに会社や創業者と締結する株主間契約は、会社法上の株主の権利に加えて、さらに、株主が経営を監視することができる(例えば、定期的に事業の報告をするとか、取締役を1名出させるとか、取締役会等にオブザーバーとして参加させて意見を述べさせるとか、重要な事項の決定については投資家の同意を要件とするとか)ことが定められるのが通常です。会社の立場からは、ある程度の出資だけしてもらって、余計な条項を盛り込んだ契約は交わさない、ということが望ましいですが、なかなかそうもいかないのが現実です。
投資をする立場からすると、特にベンチャーキャピタルなどお客さんからお金を集めて出資する株主の場合は、出資をする以上そのようなことを求めることも必要なのも確かですし、上記のような規定が必ずしも合理性がないわけではないのですが、投資家の方から出された契約書の雛形を唯々諾々と受け入れると経営に重大な制約が生じることもありますので、中身を理解したうえでサインすることが大切です。一般論としては、出資の際に締結する契約については、会社の方からはできるだけ簡素な方がよい、ということを知っておくとよいと思います。

【ポイント】
→少数株という形の出資の場合は、余計な契約はしない
→出資する以上はある程度の口出しはしたいという株主が多いが、契約内容が多くなるほどスタートアップ側が不利になるケースがある
→投資家が契約書を用意するケースが多い。言いなりにならないよう吟味が必要

3.弁護士との付き合い方

――顧問弁護士と相談レベルの弁護士との線引き
野尻弁護士:顧問弁護士というのは日常的に顧問先の会社と接することで、その会社のカラーや働く人のことを分かっているので、弁護士側からしてもフランクに相談に乗りやすいし、色々な側面からアドバイスができます。起業の段階からご相談に来ていただければ、成長の過程・創業者の想いを理解した上でアドバイスができるので、大企業に成長した後の社員との接し方などに、創業者の気持ちを反映できることもあります。
顧問先ではないから仕事を適当にする、ということは絶対にないですが、顧問弁護士になると、継続的な関係を築くことができますので、アドバイスの内容に差が出ることがあります。

【ポイント】
→起業した早い段階で、弁護士との信頼関係を築くと密な相談ができる

高松弁護士:個人的には、金融法務や情報法務などに特化した業務を展開していることもあり、相談としては、事業スキームの(法的)確認が多いですね。
グレーゾーンを攻める場合の初動の相談では、攻めと守りが大事。守りというのは、最初にスキーム全体に致命的な法的論点の有無を確認すること。システムを先行して構築したにもかかわらず、スタート後にサービス終了の要否を検討する事態を見ることがたまにありますので、早い段階での確認はぜひともやっていただきたいなと思っています。攻めとしては、弁護士と密に相談をすること。実は弁護士というのは、類似の業務を横断的に取り扱っていることが多く、一般的な意味での法的な知見が蓄積されているんですね。そのため、法的なことについてグレーかどうかの線引きも含めて詳細にお伝えすることができると思いますので、攻めとして、弁護士との相談を活用いただくことも一案だと思います。

【ポイント】
→弁護士への初動相談は、攻めと守りを使いこなす
→顧問でなくとも、相談料で準コンサルティング的な使い方も○
(顧問弁護士料相場)
→月5万円で、短時間で終わる数回の相談頻度とする顧問契約が多いと思われる
→月15万を1年間契約する会社もある
→顧問契約の費用・内容は、業種・相談内容・相談頻度によって様々
→起業から間もない段階で、一気に相談しておくこともおすすめ
(ショットの相談料相場)
→何度かの打合せやメール等のやりとりを経る前提で、1回の相談で10万~20万円といった水準となることが多い
→密に相談する場合は、紹介を経て相談するとよい

4.契約書

――事業を進める上で契約書の作成は避けて通れない。インターネット上で公開されているテンプレートの契約書は活用しても問題ないのか
野尻弁護士:最近は特にいろいろな企業間の契約書をチェックさせていただいています。各企業の事業に適合する良い契約書案がネットで拾えるかというと、そのようなことはありません。各企業の事業に合うように、しっかりと契約書を作り込む必要があります。ちなみに、契約書をしっかりと作り込んでいるかどうかで、企業の“格”が分かってしまうことが多いんですね。「この企業は基礎的な検討ができていないな」とか、そういうように感じると、法務部として、その相手との取引には注意するようにと指導することになってしまいます。契約書から、この企業性格悪いな、とかも分かります(笑)。
実際に大手証券会社やベンチャーキャピタルは、契約書をしっかり確認することが多いので核となるサービスの契約書はしっかり作った方がいいと思います。

【ポイント】
→ネットで公開されている契約書の雛形は、形が近いからと安易に使わない。
→ネット上には信ぴょう性が低い情報も多い

長谷川弁護士:弁護士に契約書の確認をお願いする際の注意点として、特に紹介で繋がった場合はメールだけで依頼を済ませない方がいいかと思います。弁護士側からすると、まだ会ったこともない方からメールで来ると、どういう背景で契約まで進んだのか契約相手との力関係がわからないので、(良かれと思い)依頼主に有利な形になるようフィードバックします。そうなると、依頼主が契約相手よりも立場が低いにもかかわらず、強気な契約内容になってしまって「こんな規定無理です」と。お互いにフラストレーションがたまってしまいますし、なによりも依頼主がよく確認せずにそのまま先方へ送ってしまって商談が壊れることもありえます

【ポイント】
→電話でも対面でもいいので、弁護士には取引の背景を伝えるべき
→場合によっては契約が破談になることも
5.人手が足りない

――事業の成長に伴って人材を増やす際に、会社組織として注意すべき点は
野尻弁護士:労働関係法令は、労働者を守るためのものです。労働法を正しく守っていないと、労務に関する紛争が生じた場合、企業側が勝つのは正直難しい。労務に関する紛争の典型的な例として、残業代の請求が挙げられます。企業側から「彼はその時間に仕事をしていなかった」という反論がされることがありますが、具体的な作業の指示を待って社内で待機していることも労働に当たりますので、帰宅させず、会社に残っていることを許容した場合、残業代を支払わないことにするのは無理だと考えてください。
人事労務のポイントは、なんだかんだで“人間関係を大切にする”という根源的な部分もあるかと思います。

【ポイント】
→労働者を守るために労働法があると考える
→人事労務のポイントは、人間関係を大切にすること。

6.有名な企業になってきた

――インターネットが発達してきたからこそ、個人情報の流出やバッシング、広告表現などに気をつけなければならない
野尻弁護士:インターネット上での誹謗中傷はよくあることですが、企業が商品について誹謗中傷されることについては、削除させることは極めて難しいです。「あの商品使ったら死ぬぞ」みたいな酷いウソを羅列されるレベルの批判でないと、裁判では勝つのはとても難しい。そもそも犯人探しが難しいわりにコストがかかる上、犯人を見つけたとしてもそのコメントはネット上から削除できるとは限りません。企業としては、批判には耐えなければならない、不当な批判をされないよう日々気を付けるべしということに尽きますね。

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高松弁護士:個人情報を扱う会員系のサービスを展開する場合、会員データが増えれば増えるほど個人データの価値は高まっていきます。
すると事業者としては、「情報を提携先に共有したい」「データを売りたい」という展開になるかと思うのですが、原則としてデータを譲渡する際は会員本人の同意が必要になります。そのため、データの販売等の展開が予想される場合には、その展開を踏まえた上で、個人情報の取扱いに関して同意書や規約、契約書等に第三者提供等の条項をあらかじめ盛り込むことを検討することも有益です。

【ポイント】
→インターネット上で自社のサービスや商品が批判されても、耐えることが必要
→会員情報を扱うサービスを運営する場合は、ある程度先の事業展開を見据えた規約作成がお勧め

7.目指せイグジット

――スタートアップがイグジットを目指す過程で、弁護士への相談事が増えてくる。その際の相談するべき点や、相談事項について想定しておくべきことは
長谷川弁護士:まず一つは、株に関する基礎的な管理はしっかりしておきましょう。株主は誰なのか、株主名簿は作られているか、株券の管理はしっかりされているか。このような基礎的なことができていない未上場企業は多いのですが、M&Aをする側は株の基礎的な管理もできないような企業は避けたがります。また、労務の問題としては、残業代規則の規定や過剰な労働環境になっていないかどうかの、体制整備も抜かりなく進める必要がある。
そして一番の問題としては、反社(反社会的勢力)が株主に入らないよう気を付けましょう。彼らとの取引が原因で上場できないケースもあるので、必ず契約書には反社を排除する条項を盛り込んでくさい。

【ポイント】
→契約の最低限の部分で反社排除の条項は必ず入れておく
→反社と取引している企業は、社会的信用は地に落ちる
→時価総額数千億の企業でも、反社が関係していて上場できない、M&Aもしてもらえないというケースも

今回の”弁護士Night”ではスタートアップと弁護士の付き合い方という、起業時に想定され辛い部分を取り上げた。普段ではなかなか意識しない点だけに、弁護士の先生方から濃密なアドバイスも多く、ミートアップの場でも盛んに議論が交わされたようで、シード〜アーリーステージのスタートアップにとって有意義な会となったのではないでしょうか。

 

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世界初の技術で、駅はより安全で便利な場所へ ― ~点字ブロックとQRコードが示す、目的地への最短ルート~

東京地下鉄株式会社/中村 友香氏、工藤 愛未氏
プログレス・テクノロジーズ株式会社/小西 祐一氏、櫻田 仁幸氏

日々多くの乗客が利用する東京の地下鉄。東京都全体をカバーするように張り巡らされた地下鉄網は、行きたいところへ最短で誘ってくれる。近年も駅の改装などで便利になる一方、駅の構造は複雑化。そのような中、視覚障がい者がより快適に駅を利用できるようにと、東京メトロとシステム開発を主業務とするプログレス・テクノロジーズ株式会社(以下:PT)がcrewwコラボでタッグを組み、駅をもっと便利に、そして安全にしていく世界初の画期的なプロジェクトに迫っていく。

――「Tokyo Metro ACCELERATOR 2016」の開催経緯について教えてください
中村:弊社の中期経営計画の中で「オープンイノベーションプログラムなどを通じたベンチャー企業等と外部連携を探る」ことが記載されました。その手段として、Crewwさんとのアクセラレータープログラムを始めました。私たちの部署『企業価値創造部』が、新規事業を考えていくことをミッションとした部署なので、そのメンバーが主となって実現した形です。

初めての試みだったので、とにかくCrewwさんにおんぶに抱っこといった形で協働しなければ実現しなかったなと。Crewwさんにはマスコミへのリリースの場も作っていただき、結果注目される取り組みとなって本当にありがたいと思っています。

――次は、PTさんの事業内容とエントリー経緯について教えてください
小西:主には、大手製造業向けのシステム設計開発の支援をしています。設計開発の技術者を派遣したり、解析ソフトの販売をしたり。システムの導入支援や、設計支援を全般的に行っている企業です。2005年に創業し、今年で13年。社員数は400名を超えました。

エントリーの経緯なのですが、弊社の社員がCrewwさんの方と知り合いで、アクセラレータープログラム(※アクセラレータープログラムとは、大手企業がスタートアップに対して協業・出資を目的としたプログラムを開催するもの)の開催の案内をいただいたんです。元々、弊社が視覚障がい者向けの装置類をトライアルで作っていたこともあって、メトロさんとのプログラムで何か組めるんじゃないかと思いエントリーしました。

――当初から視覚障がい者向けサービスの展開を模索していたのですか?
小西:当初からある程度絞り込んではいました。大きなビジョンとしては「東京を安全で優しい町にしていきましょう」ということを挙げていて。視覚障がい者がロンドン駅構内で誘導される動画などを見本に、当初から話をさせていただきました。

―― PTさんの事業としても視覚障がい者向けの製品は存在していた?
小西:プロトタイプは存在していました。当初メトロさんに提案したのは、当時国際標準を狙っていたシステム“BLEビーコン”というものを使えないかなという期待がありまして。まずは、メトロさんが持つ模擬駅で仮説実験を7回ぐらい行って、その後辰巳駅で実証をしています。実験を重ねる過程で、BLEビーコンは捨てて違う形になったのですが。

中村:模擬駅というのはホームを完全に再現した総合研修訓練センターという社内施設です。そこに点字ブロックなども引いてあるので、ずっと実証の場としていました。

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――初期からメトロさんのリソースの模擬駅を利用して取り組まれていたんですね。取り組みは自体はスピーディーに進みましたか?
小西:模擬駅での仮説実験はスムーズにご準備いただいて、2016年の12月に「東京メトロアクセラレーター賞」を受賞後すぐに動き出しました。実験も仮説検証と実証実験の二つあって。二つの実験は少し違っていて。2017年3月から今年の3月末までの仮説実験は試行錯誤の連続で。自分の会社の人間を褒めるのはおかしいことかもしれませんが、隣に座っている櫻田が本当に優秀な技術者で、仮説実験の中でだんだん無駄なものを削いで使えるものにしていきました。元々の仕組みと骨組みは一緒なのですが、システム自体は結構変わりましたね。

――具体的にはどう変わったのでしょうか?
小西:最初はBLEビーコンという特殊な電波を発する機器を天井に張り付けて、対象者がその電波をスマートフォンで受信しながら目的地へ誘導するというものでした。しかし、今回の取り組みでは問題が出てきたんです。位置情報の認識精度が甘く、正確な位置の測定に課題がありました。なので空間上の任意の場所ではなく、点字ブロックを基に誘導する形に限定したらうまく使えると思ったのですが、それでもダメで。結局、大きな決断ではありましたが携帯のカメラを使ってQRコードを検出しながら誘導していく形に落ち着きました。まだ世界的にビーコンが普及しきれていない理由の一つかもしれませんね。

――ビーコンではうまくいかなかった原因は?
櫻田:ビーコンというのは測位をする時に電波強度が重要になるんですが、水であったり人体を通すと急激に電波が弱くなってしまうんですね。そもそも使用し続けるだけで測位に数メートル単位の誤差が出るようになってしまって、視覚障がいを持つ方が必要とする測位レベルには達していないという結論に。そこからQRコードを使用するシステムに転換していきました。

小西:QRコードへの転換は大きな決断ではありましたが、悪いことばかりではありませんでした。ビーコンを使用するよりもメンテナンスコストや導入コストが格段に下がりましたし、何よりもQRコードというシステムが分かりやすいですよね。ビーコンのまま進めていたら、システムが複雑だったり揃える機材が多かったりとサービス対象者への負担が大きくなっていたかもしれません。でも、切り替えが楽だったかといったらそうではなくて。1年近く社内の優秀な人材をビーコンのシステムを最適化することに費やしましたし、それを別のモノに切り替えるのは中々キツかったですけども。そういう意味ではやはり、大きな決断でしたね。

――システムを全く違うものに置き換えるのは、とても大きな決断ですね。その決断は東京メトロさんPTさんのどちらから?
中村:技術的な部分を期待して一緒に組ませていただいているので、正直そこはPTさんの技術や知見を信頼していました。「お二人(小西&櫻田)がそこまでいうなら!」と素直に受け入れて、そうとなれば再度実験する流れになりました。

小西:QRコードを使った(切り替え後)最初の実験に、メトロさん側の上層部の方々が来られて…「これ一回目の実験なんですけど」と思いながら(笑)。でも、やった瞬間「これいいじゃん」とビビッ来ていただけたみたいで。役員の方も「これだったらローコストで、予算低いローカル線でも導入できるね」とおっしゃっていただいて。コストメリットも理解していただけたことは良かったですね。

中村:櫻田さん緊張されてましたもんね(笑)。

小西:彼(技術者)は毎回胃が痛くなっていたと思います。僕ら(営業側)が勝手に約束して。できなかったら「何でできないんだ」って。大変だよね(笑)。

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――QRコード採用後は、プロジェクトはよりスムーズに進みましたか?
小西:実は根本的な問題があったんです。ただ出口まで誘導するわけでなく、利用者が現在どこを向いているのかも盛り込む必要があったんです。例えば電車を降りてから最初のQR検出した際、その時点で自分が左右どちらに向かうべきなのかを伝えなければいけません。被験者の方々も、降りて左右が分からないと皆さん怖いとおっしゃっていて。コードから自分が向いている方向を示さなければいけないんですが、そこも技術メンバーが頑張って解決してくれた部分。難関なことは多々ありましたが、技術者が優秀でスムーズでした。

中村:現状、ホームドアがまだ設置されていない駅もあり、線路に転落する可能性があります。ホーム上では一歩も踏み外せないので、「とにかくホームから早く出たい」という声が多いんですよね。

小西:その「いかに(ホームから)早く出してあげるか」を実現するには、電車から降りた瞬間から左右どちらに進むのかを示さなければなりません。階段のそばには点字ブロックの文岐路が必ずあるので、それを探れば必ず外には出られる。ただ「どちらから出るべきなのか」というのが問題であって、もし逆に進んでしまったら戻らなければならない。視覚障がい者には電車を降りたら「左右どちらに行くのか」が重要なんです。外にいち早く誘導するのは、基本的な機能。QRコードをかざすとどちらがプラットホームの端なのか、さらにはホームドアの有無などをお伝えできるので看板の代わりになるということですね。ナビゲーションだけではなく、看板的な機能も持つことも大事なのかなと。

―― 次は実証実験について、お聞かせください。
中村:まずは辰巳駅で実証実験を行っています。メトロの施設で仮説検証している段階から参加していただいてる方々も含め、実証実験が始まってからは、すでに35名ほど実施済みで、今現在も実験を重ねている最中です。

小西:実験開始当時の筑波技術大学の学生がメインとなって協力してくれました。いろんな助言や実験への参加で、開発の中心にメンバーになってくれました。

――実証実験の反応はいかがでしたか?
小西:実際にシステムを使われた方々からは、「早く導入してほしい」という声を多くいただき評判は上々かと思います。メトロさんにはQRコードを貼ったりアンケートを集計したり、実際のシステムを使って被験者の方と一緒に実験に参加いただいているので、僕たちが勝手に言っているのではなく(笑)、良い反応をいただいていると思います。

工藤:実際にアンケートを見てみると、「知人に勧めますか」という設問にはほとんど「はい」「非常に勧めたい」と答えていただいています。やはり、点字だけを頼りに歩くよりは、情報量が違うということで良い反応だったのではないかと。
ホームからの転落事故を如何に防ぐかは長年社内でも検討してきました。ホームドアといったハード面だけでなく、ソフト面でも駅員などの目で駅構内の安全を守る「見守る目の強化」といった対策を進めています。ただ、新しい技術を導入しようというのは社内では出ないアイディアだったので、このプログラムで得たことは大きかったですね。

中村:ホームドアに関して言えば、今後拡大して全駅設置は会社の方針でもあります。しかしもちろん(全駅設置までには)タイムラグがありますし、ホームドアはあくまで転落防止などの安全を守るものなので、今回のシステムのようにソフト面でも強化していきたいと考えています。なかなかメトロ単独では思いつかないことですし、そもそも技術も持っていないので、このプログラムを実施した意義は大きかったですね。

―― 今回の実証実験ではいい結果が得られたようですね。実証実験に取り組んで良かったなと思う部分はありますか?
小西:視覚障がい者向けのサービス、といっても継続することは本当に難しいんです。世界中でいくつも同じような会社やサービスが出てきても、どれもが止まってしまっている。僕たちが継続できているのは、2年間一緒に取り組んで機会や場を提供していただいているメトロさんのおかげです。大学の研究でも多いことなのですが、大手企業さんと組んでもお金は出すけど「あとは勝手にやってくれ」「論文だけ出してくれ」という話をよく聞きます。でもそれって厳しいですよね。どこまで一緒にやっていただけるか、というのが重要なポイントだと思います。なにはともあれ、QRコードを使ったナビや看板機能というような仕組みって世界中どこにもないんですよ。今、僕たちとメトロさんでやっていることしかないので、仮説検証をせざるをえない。どう展開できるのか、どう使えばみんなにとって有用なものになるのか、運用も含めてゼロから考えなければならない泥臭い仕事なので、継続的にやらないと。僕らが良かったのは、メトロさんがこの2年間ずっと一緒にやってくれている、これはすごいことです。

中村:弊社の持っている施設を使って、最初の仮説検証から協働できたことは良かったなと。今までは自前主義というか、鉄道会社というのは自分たちで安全を作り上げてきた自負がありますが、それにプラスアルファの部分をこういうプログラムで補っていけるのはすごくいいことだと思っています。技術者の方々の熱意や知識の豊富さなど、尊敬するばかりで刺激されました。

――逆に、協業して苦労した点はありますか?
中村:『企業価値創造部』ができてプログラムを開始した2016年当時は、社内でも「アクセラレーター?」「オープンイノベーション? 何それ」という空気感だったのですが、今では「あー、アクセラね!」と理解も広まった。そもそも、プログラムをやることが決まっても連携する各部門の許可が下りないと模擬駅の利用などはできないので、目的がはっきりしている状態でオープンに進めていったことで理解してもらいやすくなったのかなと感じています。

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――オープンイノベーションが社内でも周知されてきた結果、実現できた実証実験だったんですね。このプロジェクトの今後の展望を教えて下さい
中村:取り組みに関するリリースを出したこともあって、他社さんから見学依頼があったり、視覚障がい者のお客様からも「使ってみたい」と問い合わせがあったりと、普段アプローチできていない方々にも注目していただいていると実感しています。しかし、このシステムはメトロの駅だけが整備を完了したとしても意味がないと思っていて。乗り換え先のメトロ以外の路線や、目的地のビルや店までご案内できないと意味がないんです。私たちの取り組みだけでクローズにするのではなく、さらにオープンに広げていきたいという思いはあります。

小西:今回のシステムは、点字ブロックからの情報取得を前提にしています。全国の点字ブロックにQRコード貼って、そこに立つと情報がもらえる。迷ったらGPS機能が案内しているのですが全部がしっかりと機能するかどうかというのは分かっていない部分があって。特にインドアで迷った時はGPSが届かない場合があるので、駅の外だとしても点字ブロックさえ見つければ欲しい情報が取得できるようにはしていきたいですね。

―― 最後に、アクセラレータープログラムを検討する方々にメッセージをお願いします
小西:スタートアップ企業へのアドバイスとしては、会社が始まったばかりだからと言って、そこに甘えず徹底的に努力をすることをお伝えしたい。起業間もない会社というのは経験も少なければ若い方が主軸となることが多く、ビジネス自体の経験が少ないこともあると思うんです。仮に、どうしたらいいか分からないとしても、自分が会社なり新しいサービスを提案する以上は、プロ意識を持たなければならない。それが世の中で今までのものよりは良いものであるというのを担保できるように、最善の努力を尽くすべきだと思います。鼓舞するわけではないのですが、Crewwさんのような会社のおかげでアクセラレータープログラムのような機会は増えていると思うんです。でも、継続させるためには成果を産まなければならない。成果を生むために努力していますか?と。プロとして「スタートアップだし…」というようないい加減さを持っていてはいけないし、やる以上はプロとしてドキュメントからミーティングの仕切りからすべてにベストを尽くすべきだと思います。

中村:今のお話、背筋が伸びました。私から事業者向けに対しては、やっぱり「まずはやってみよう」と言いたいですね。恐らく、大きな会社であればあるほど“あるある”なことかもしれないですが、そもそもスタートアップの方々と接したことがないために偏見を持っている会社ってあると思うんです。ジーパンで打合せするんでしょ?みたいな(笑)。メトロ自身もそうでした。でもビジネスパートナーとして、まずは会ってみる。すぐにプログラム実施ではなくても、Crewwさんのイベントに来てみるなど、まずは一歩踏み出してみることが大事だと思います!

 

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【イベントレポート】「ビックカメラアクセラレーター2018」ミートアップ

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自社が有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイディア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできました。そんな中、新たな取り組みとして注目されているのが、イノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティです。
本記事では、9月4日(火)に「docks」で行われた「ビックカメラアクセラレーター2018・ミートアップ DAY2」の様子を、ダイジェストでお届けします。

スタートアップコミュニティーCrewwでは、2012年の創業から5年で100回以上の大手事業会社とのアクセラレータープログラムを実施してきました。

今回は、2017年にCrewwを通じてアクセラレータープログラムを実施し、非常に多くのスタートアップ企業を協業に向け採択されたビックカメラさんをお招きし、”ビックカメラアクセラレーター2018”の一環としてミートアップイベントを開催。

本記事でご紹介するのは、そのミートアップの様子。8月1日から14日までのエントリー期間、8月27日から29日までの書類審査期間を経てミートアップに参加することになった22社のうち、ミートアップ2日目であるこの日は11社のスタートアップがミートアップに参加しました。

◼️アクセラレータープログラムとは?

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そもそも、「アクセラレータープログラムとは何か」と感じている方もいるのではないでしょうか。

アクセラレータープログラムとは、スタートアップ企業の革新的な技術やアイディアと、大企業が持っている魅力的なリソースを融合することで、新しいビジネスを創出する取り組みのこと。スタートアップと大企業、お互いのいいところを持ち寄ることで、新たなサービスや商品を生み出しています。

このアクセラレータープログラムを積極的に行っているのが、株式会社ビックカメラ。今回の取り組みは第3期にあたります。

◼️より豊かな生活を提案する、進化し続けるこだわりの専門店の集合体であるビックカメラとともに実現する10年先の世界

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「ビックカメラアクセラレータープログラム」とは、スタートアップ企業が有するユニークな技術・サービスと、ビックカメラグループの様々な分野で培ってき経営資源を共有しながら、スタートアップ企業の成長に寄与するとともに、未来につなぐ新たな事業やサービスを開拓していくプログラムのこと。「10年先の世界をビックカメラグループと共に実現したい」という思いのもと、新規事業の創出と社内起業家の育成をするために行なっています。

また、このアクセラレータープログラムを通して、「会員様向けの新たなカスタマーバリューの創出」を実現したいと考えています。具体的には主に4つ。

①ネットと全国の店舗を通じて提供する新しい販売・体験サービス
②【テクノロジー・エンターテイメント・ファッション】を駆使した協業案の創出
③ショッピングの後にも顧客満足度を高めるための新しい企画の立案
④ビックカメラグループのリソースを活用した、小売以外の分野での顧客価値の創出

創業以来、「より豊かな生活を提案する、進化し続けるこだわりの専門店の集合体」を目指して、事業の拡大を進めてきたというビックカメラ。アクセラレータープログラムでスタートアップ企業とコラボレーションをすることで、これまでにない、全く新しい商品やサービスをお客様にご提供していきたいと考えています。

すでに、これまでのプログラムを通じて、「ARの技術を使って、EC掲載商品の実物大表示を実現するアプリ」や「産業用ドローンの販売、サポートの提供」など、新しい事業が生まれました。

◼️ミートアップの目的とは?

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今回行われたミートアップの目的は、直接顔を合わせて交流・意見交換し、互いの不安や疑問を解消しながら、新規ビジネスの企画を一緒になって考えること。

ビックカメラのアクセラレータープログラムでは、企画の魅力や実現性に応じてA~Cのランク付を行っています。この顔合わせを通じて、企画を最も評価の高いAランクに持っていくために、今後両社で考えていくべき事項について確認することが、ミートアップの主目的とされています。

◼️「ビックカメラアクセラレーター2018」の参加企業

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ミートアップに参加したスタートアップ企業は11社。EC・シェアリング・ヘルスケア・IoT・AI系など、さまざまな種類のスタートアップがひとつの場に集結しました。

対して、ビックカメラからは、【マーケティング企画室・商品部・EC事業部・物流部・広告宣伝部・営業部・法人営業部・住設事業部・ドラッグ事業部】の9部署に加えて、グループ会社の日本BS放送が参加しました。

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ミートアップでは、各ブースにビックカメラの部署担当者が分かれる配置に。スタートアップから事前に提出してもらった書類から、どの部署とディスカッションをするとよりいい議論になるかという基準で振り分けられ、交流が開始されました。

◼️まとめ|アクセラレーター2018の今後の流れ

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ミートアップでは、各スタートアップ企業のアイディアを、ビックカメラの担当者がヒアリング。その上で、どのようにサービスとして実現していくか、ビックカメラが持つリソースをどのように利用するかのディスカッションがなされていました。

今後は、ミートアップにて固まってきた内容をまとめて提出し、一次選考が行われます。選考を経て選ばれたアイディアはさらにブラッシュアップされ、10月~11月の最終選考へ。最終選考では、ビックカメラの役員陣へのプレゼンを行い、実現化へと動いていく予定です。ここからどんな新しい魅力的なサービスが生まれるか、楽しみですよね。

ビックカメラは、積極的にスタートアップ企業とのオープンイノベーションに取り組んでいます。今回のアクセラレータープログラムだけではなく、スタートアップ企業からの提案や協業に非常に好意的。そのため、本ミートアップに参加したスタートアップ企業以外との取り組みにも注目できそうです。今後の動きに期待が高まります。

 

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【イベントレポート】creww academy vol. 06 〜スタートアップにおけるデータ分析チームの立ち上げ方〜

creww academy vol.06

自社が有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイディア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできました。そんな中、新たな取り組みとして注目されているのが、イノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティです。
本記事では、6月21日(木)に「docks」で行われた「creww academy vol.06〜スタートアップにおけるデータ分析チームの立ち上げ方〜」の内容をダイジェストでお届けします。

今回のイベントの来場者は男性が多めの印象でしたが、和やかな雰囲気でスタートしました。

本日登壇いただいたのは3名。AnyPay株式会社の中澤公貴氏、株式会社Moffの河治寿都氏、Ambedkar合同会社の冨田直行氏です。

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では、それぞれどんな面でデータ解析を活用しているのでしょうか。

AnyPay株式会社は、paymo(ペイモ)というCtoCの割り勘サービスを提供しています。割り勘をするためにはレシートのアップロードが必要で、そのレシートをデータ解析を使って“レシートかそうでないか”を判別しているとのこと。他にも、paymo biz(ペイモビズ)というBtoCの決済サービスや、ICOコンサルティング事業を行なっており、離反モデルや不正取引チェックの半自動化など様々な業務にデータ解析が活用されています。

株式会社Moffは、IoTデバイスやウェアラブル端末を活用したヘルスケアサービスを提供。足や腕にデバイスを取り付け、どういった運動をすればどのように治癒改善されるのかを、データとして保存し、病院や研究機関と連携して、データを解析しています。

Ambedkar合同会社は、製造業向けにディープラーニングのソリューションを提供しています。具体的には、ゴミ焼却炉の運転を半自動化することに取り組んでいるとのこと。また、検査機メーカーと一緒に、AIを導入して精度を高める開発も行っています。

ここからは、冨田氏が司会を務め、パネルディスカッション形式にて進行されましたので、お題に沿ってご紹介していきます。

1.「データ分析」とはなにか

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冨田直行氏(以下、冨田)「まずお二人にお聞きしたいのですが、データ分析とは何でしょうか?」

中澤公貴氏(以下、中澤)「2つあって、まず何か対象のものを最適化すること。また、アウトプットも大切ですが、『なぜそのアウトプットが出てきたか』というプロセスを知りたいというのが、経営層の方に多いと思うんですけど、それが2つ目の中身を可視化することで、分析の醍醐味だと思っています。」

河治寿都氏(以下、河治)「非常にむずかしい質問ですよね。個人として思うのは、データ分析といっても、やっていることは単純に数字化することと、人が見てわかりやすくすることで、それ以上でもそれ以下でもないかなと思います。データを用いて解決します!という売り込みは多いですが、解決するためには意思決定が必要ですよね。そのための支援ができるのが、データ分析かなと思います。」

冨田「私も答えたいと思います。河治さんは意思決定にはあまり使えないとおっしゃってましたが、私の会社は自動化を売りにしていまして。画像分野においては、人の手が入っている部分に関しては、ほとんど半自動化ができると思っています。データを生かして半自動化させるところまで、人の領域まで踏み込んでやっていくというのが、いまデータ分析のフェーズにあるのではないかな思います。」

2.それぞれの企業に「データ分析チーム」が組織された経緯

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冨田「中澤さんに伺いたいのですが、データ分析チームが作られた経緯を教えてください。」

中澤「当時の社長の木村と話をしていて、『データを使ってより細かくKPIを管理したい』『データドリブンな事業運営をしたい』というニーズがよく伝わりました。トップマネジメントがデータを使ってビジネスを大きくしたいと思っていたことが理由として大きかったです。」

冨田「ひとつ質問なんですが、木村さんが観測したいKPIというのは、具体的に何なのでしょうか。」

中澤「色々なKPIを見ていると思いますが、例えばよく話に上がるのはROIですね。どれだけの時間を使って、どれだけの売り上げ(や流通量など)をあげるか・コストを下げるか。私も案件全てにROIをつけて、1番インパクトの高そうな案件から実行するようにしています。」

冨田「ちなみにですが、今までに実施された中で『これはいいぞ』と思った分析事例などがあったら教えてください。」

中澤「言えるところでいうと、例えばレシートのアルゴリズムですね。元々はレシートの判別を外注していてコストが発生していたんです。今は業者を使わず社内で行えるくらい精度が上がってきたので、コストを下げるという面での一例なのかなと思います。」

冨田「ありがとうございます。では、続いて河治さん。株式会社Moffでデータ分析チームが組成された経緯を教えてください。」

河治「データ分析チームが2つありまして、1つはサービスの利用満足度をとっているところです。私たちは利用満足度が1番大切だと考えていて、これが無ければ長く続くサービスにはならないと思っているので、このようなチームが発足しました。満足度向上のために数値化し、データを利用しています。」

冨田「サービス満足度はどのように計測しているのですか?」

河治「基本的には、利用の回数ですね。
そして、もう1つが、研究データを解析するチームです。私たちは「どのような運動をすると、どのように治癒改善されるのか」というデータを解析して研究しています。こういった内容については、実は病院関係者もやりたいと考えているけれど、デバイスの値段や導入・運用までのコスト高いといったハードルがあり、簡単なソリューションを探すのが大変という声を聞くんですね。
そこで、我々が比較的安価で提供できるサービスを作り、かつサービスを利用するためのコンサルティングも少し受けているというわけなのです。利用結果や研究結果を積み重ねていけば、Moffバンドというデバイスを用いてヘルスケアに効果的なサービスになるだろうという狙いがありました。」

3.「データ分析」における苦労とは?

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冨田「データ分析に苦労はつきものだと思いますが、今までにどんな苦労がありましたか?また、その乗り越え方も教えてください。」

中澤「データ分析で1番苦労することは、『データがないこと』ですね。
今の会社だと、「データをどのように上手く使っていくか」というデータ戦略から入っていけるので、そこはスタートアップのメリットだと思います。なので、例えば機械学習のアルゴリズムを作りたいからこういうデータをとっていかなければいけないよね、ということは考えられます。
ただ、前職のときに感じたのが、レガシーのデータベースが使われていたのですが、データを作ったときには『データサイエンス』という言葉はなく、一般的な手法に則ってデータを格納しているという状態で。それを見ると、ラベル(目的変数)がない場合が多くて、ラベルがないと例えば教師あり学習が使えないので、データを作るのか、外部から引っ張って来るのか、または教師なしなど他の方法を考えなくてはいけないのが1番苦労しますね。」

冨田「他にはありますか?」

中澤「もうひとつ、日々苦労しているのは、プロジェクトのプライオリティのつけ方ですね。色々な案件が入ってくるので、偏りが出てくることがあります。1つの部署の案件ばかりやっていると、他の部署の人とのコミニュケーションが少なくなり、他部署からの案件が降ってこなくなる可能性もあるんですね。なので、私は隔週で各部署と1on1をやっています。ただこの時間は相手の人の時間も使ってしまっているので最小限に留めるように心がけていますけど」

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冨田「ありがとうございます。では、河治さんお願いします。」

河治「1つは、データはあるけれど、分析としては使える形になっていないこと。もう1つは、周りに理解者がいないこと。この2つが、自分の中で1番苦労を感じました。」

冨田「データはあるけど分析できる形になっていないというのは、具体的にどういった形なんですか?」

河治「例えばですが、『分析できる形』という定義は様々かと思いますが、数字に置き換えられていたり、ある程度カテゴライズされていたり、といった形になっていますよね。それがそもそも形にすらなっていなくて、データとして面白そうなものが溜まっていると思いきや、蓋を開けてみると全然扱えるものがなく、まずはこれを綺麗にすることからはじめなくてはいけない……というところが、ハードルを感じてしまいます。それで時間を取られて、本質的なやりたいことが遅れてしまうので、苦労しました。」

冨田「理解者についてはどうでしょうか?」

河治「理解者についてですが、当たり前ですけどデータサイエンスの知見がない前提で、基本的に経営層へ最終的な数字の報告をすると思うのですが、パラメーターが……などという話は理解してもらえないですよね。そこをどうやって伝えるかは、頭を捻るところでした。」

冨田「例えば、専門用語を伝えるときには、簡単に置き換えるのか、わかってもらうまで説明するのか、どちらですか?」

河治「前者ですね。」

冨田「ありがとうございます。
私のケースでいうと、コンサルティング会社にいたときには、ナショナルクライアントさんとお付き合いしていました。例えば、電力会社などのお堅いインフラ会社だと、そもそもデータを社外に出せないということもありました。社内政治が働いてしまうんですね。半年、10カ月、1年待ってもデータが出てこないことが多々ありました。なので、そこはリスクとして常に考えていかなければいけないなと思います。」

4.データ収集・解析・活用のトレンド

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冨田「続いては、データ収集・解析・活用のトレンドについてお聞きしていきたいと思います。今のトレンドというか、AnyPay株式会社ではどのような形で収集・解析・活用しているか教えてください。」

中澤「弊社というか、データサイエンス領域で、いま主に使えるアルゴリズムは、大体2つに集約されてきているのかなと思っています。1つ目はディープラーニング系のアルゴリズムです。画像用だったり時系列用のアルゴリズムなどがあります。ただし、決まった形を取り扱うのは得意ですが、テーブルデータなどの決まっていない形のデータを取り扱うのには向かないことも。その場合には、ツリー系のアルゴリズムを使っています。今はこの2つに集約されてきていると感じます。ほとんどの場合どちらかのアルゴリズムですね。」

冨田「このようなトレンドは、経営層の人は理解しておいた方がいいのでしょうか?」

中澤「ケースバイケースですが、ほとんどの場合知らなくていいです。経営層の人は、成果や結果を1番気にしていて、どのアルゴリズムを使っているのかに関心がない場合が多いんですね。ただ、なぜそういう結果になるのか、には関心があります。先ほど、『どのようにレポーティングするかがむずかしい』という話があったと思うんですが、それはその通りだと思います、なぜなら何年も勉強してやっと理解できる高度な数学のコンセプトを簡潔に伝えないといけないのですから。なので私は数学をできるだけ使わずにコンセプトの概要だけを経営層には説明して理解してもらうことに注力します。」

冨田「河治さんはいかがですか?」

河治「中澤さんからはアルゴリズムの話があったので、私はツールの話をしていきたいと思います。スタートアップで大変な面は予算ですよね。データ分析をするための予算が限られているので、結果としてツールが限られてきます。安い中でも一番使いやすかったのはtableauだったかなと思います。tableauは操作の直感性が高いので、使い勝手がいいんですよね。」

冨田「河治さんの会社で使っているツールはtableauのみですか?」

河治「ツールはtableauですね。あとは、システムでいうとamazonが出したAWSとGoogleクラウドプラットフォームを併用しています。」

冨田「中澤さんはどのようなツールを使っていますか?」

中澤「基本的には、お金を使わずにオープンソースのツールを使っています。例えば、、Airbnbがオープンソースのツールとして出しているAirflowというアルゴリズムの実行などを管理するライブラリーがあります。」

冨田「なるほど。ありがとうございました。」

6.データ分析チームを作るときの心構えとは

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冨田「データ分析チームを作るときの心構えを教えてください。」

河治「私がデータ分析チームの立ち上げをしたときは、データを理解してくれる人が1人もいなかったので……、まずは強い気持ちが大切ですね。何をしているのかわからない、と不平不満を言われやすい立ち位置になりがちですし、実際に伝え方次第で変わってしまうので、それにめげないことが1つあるかなと思いました。
また、現在はメンバーから分析結果をもらうようにしているのですが、基本は数字ベースで考えるので、やったことに対しては1回定量的に評価することを意識しています。間違っているかもしれないけれど、一度走らせてみるんです。というのも、私が採用しているメンバーはビギナーからスタートする人が前提なので、基本的にはまず認めてあげて、「こうしたらもっとよくなる」という部分は伝えます。評価が低いとか下げるということは絶対言わないことを意識しています。」

冨田「ありがとうございます。中澤さんはいかがですか?」

中澤「データ分析チームを立ち上げる際に、私はアメリカでよく使われている方法を採用しました。この立ち上げ方はある程度デフォルト化してきています。
まず、トップマネジメントがちゃんと『データドリブンもしくはAIドリブンな企業を作りたい』ということに同意している状態であること。そのあとに、データ分析の責任者の採用、または他部署から連れてきます。そこから、クロスファンクショナルな企業を作っていかなければいけません。クロスファンクショナルな企業とは、マーケティングチームやCSといった他部署と、横串を刺したようなところにデータ分析チームが存在する企業のこと。そして、見落とされがちなのが、データエンジニアを早い段階で採用することです。」

冨田「データサイエンティストとの違いはなんですか?」

中澤「データサイエンティストは基本的には分析を行う人で、データエンジニアは分析するための基盤を作る人のことです。データエンジニアを採用したあとは、ディープラーニングの専門家など、企業のニーズに応じた専門家を採用していく。このようなプロセスで立ち上げていきます。」

冨田「心構えは何かありますか?」

中澤「心構えとしては、やはりちゃんと売り上げもしくはコストにインパクトを出すことです。日本で、データサイエンスを使って莫大な売り上げを達成した、といった大きな成功事例はまだアメリカや中国に比べると少ないと思うんですよね。例えば、amazonのレコメンデーションエンジンは、売り上げの30%を占めていると言われているのですが、このような事例がまだまだ日本では少ないので、こういった事例を作りたいと思って私は日本に帰ってきています。」

冨田「ありがとうございました。」

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では、どんな人をデータサイエンティストとして採用するのがいいのでしょうか。

この問いには、「プロダクトがよくなれば会社として業績がよくなるため、プロダクトを中心に考えられる人であることは前提。その上で、コミット力が高い人がいいのではないか(河治氏)」という意見をいただきました。

また、「趣味レベルでデータ分析が好きである人であること。また、見落とされがちですが、英語が読めることも重要です。アメリカや中国が進んでいる分野なので、最初に情報が流れるのは英語が多いですし、学会は英語が基本。データサイエンティストとしての基礎的な素養として大切だと思う(中澤)」との意見も。

データ分析チームを立ち上げるために意識すべきことだけでなく、データ分析での苦労と乗り越え方等もお話いただけた、濃密なイベントになりました。

 

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【イベントレポート】パラレルワーカーMeetsスタートアップ

パラレルワーカーMeetsスタートアップ

自社が有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイディア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできました。そんな中、新たな取り組みとして注目されているのが、イノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティです。
本記事では、7月31日(火)に「docks」で行われた「パラレルワーカーMeetsスタートアップ」の内容をダイジェストでお届けします。

今回のイベントの登壇者は6名。パラレルワーカーとして活躍している方の他、経営者側として複業をサポートしている方にも参加していただきました。
 
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1人目は株式会社uni’queにてUX/UI Designerとして活動している京谷実穂氏。本業では、株式会社Voicyにて音声のデザイン、VUIデザイナーとしても活動中しています。
 
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2人目は、MODALAVA株式会社の代表取締役兼CEOの桂Jasmine茉利子氏。ファッションを愛する人がファッションの才能を活かしたマネタイズをすることで、好きなものをあきらめることなくキャリアを形成できるプロジェクトを運営しています。
 
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3人目は、菅本香菜氏。株式会社CAMPFIREにて、LOCAL・FOOD担当として全国各地のクラウドファンディングプロジェクトをサポートする傍ら、旅するおむすび屋『むすんでひらいて』プロジェクトを立ち上げ。おむすびの魅力を発信する活動を行なっています。
 
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4人目は、ランサーズ株式会社にて広報・渉外として新しい働き方の啓蒙活動に従事している、潮田沙弥氏。会社員としてだけでなく、個人でもパラレルワーカーとして広報支援や採用支援などで活動しています。
 
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5人目は、uni’que代表の若宮和男氏。女性主体の事業を作る全員複業型スタートアップとしてuni’queを創業する傍ら、ランサーズタレント社員としても活動しています。
 
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6人目は、Creww株式会社にて、コミュニティーマネージャーとして「docks」事業におけるスタートアップコミュニティの形成に携わっている伊藤早希氏。複業では、某AIスタートアップ企業のCorporate Planning Managerとして活動しています。

本イベントは、パネルディスカッション方式で進行しましたので、進行順に沿ってご紹介していきます。

1.複業をしているときに大切にしていることとは?

伊藤早希氏(以下、伊藤)「私が複業をするにあたって大切にしていることは3つです。
ひとつ目は、メリハリをつけること。働く時間にメリハリをつけ、アウトプットとインプットの時間の区切りを明確にすることを心がけています。
ふたつ目は、経験が掛け算になる仕事を選ぶこと。現場で事業を回すこととバックオフィス業務で、大きく異なる分野で働いている一方、スタートアップ支援とスタートアップの当事者といった意味では、視点は違うもののそれぞれの経験が他方に活きることが多くあります。
最後は、CanやMustよりもWillを大事にすること。複業は本業と同じ分野で、と思うかもしれませんが、私の場合はご縁もあって、これまでにチャレンジしたことのない業務範囲に携われています。現状では出来ないことに敢えてチャレンジできるのも、複業ならではですね。
また、複数の拠り所があるからこその安定感を得られるというメリットも、複業にはあると思います。」

若宮和男氏(以下、若宮)「僕が複業について思っていることは3つです。
まずは、量の呪縛を無くすこと。uni’queは「女性が活躍する会社」なので、日本に蔓延っている「たくさん働いた人が偉い」という考え方を変えなきゃいけないと思っているんですよ。会社で働く時間、という意味だとどうしても男性が有利なので。でもママ業と仕事が両立できるみたいに、量の呪縛を無くすためには、短い時間で価値を出せることを、複業を通して証明しなければいけないと思っています。
それが“フィギュアスケート型スタートアップ”です。スタートアップはどうしても、「全力で脇目も振らず」といったスピードスケート型になってしまうのですが、しなやかに感性を活かして、時代が求めるタイミングに合わせて事業をする、フィギュアスケート型の形もあるべきだと思うんです。
そして、複業をする人に関しては、「らしさ」を生かすことが大切だと思います。
そもそもの話ですが、uni’queはママ業や学業など、お金を稼いでいなくても複業だと考えていて、ひとはいろんな面を切り替えながら生きているのだから、複業ってそんな特別なことじゃないと思っています。」

潮田沙弥氏(以下、潮田)「私が複業をしているときに大切にしていることは、3つです。
まずは、目標を明確にすること。私は好奇心旺盛なので、声かけられたら「面白そう!」と飛び込みがちなんです。ですが、やめどきがわからなくなったり、気を使ってしまったりするので、自分の意志を持っておくことが大切だなと思います。
次に、期間を決めること。好きな人と仕事をしていると、ズルズルと手伝ってしまいがちになります。期間を決めないと、価値を提供できていない……と自分の中でモヤモヤしてしまうので、私は2カ月ごとで区切るようにしています。
そして最後が、仲間を作ること。複業で感じた悩みを相談できずに苦しかった時期があるので、最近は複業仲間6人くらいで、クオーター目標を立てて、励ましあったり褒め合ったりしています。」

菅本香菜氏(以下、菅本)「私も大切にしていることは3つです。
ひとつ目は、それぞれの仕事で相乗効果が出るようにすること。私自身、複業のおむすび屋で全国を回るお金を、本業のキャンプファイヤーを利用して募ったんですよね。そのプロジェクトを見てくれていたNHKのディレクターさんに声をかけてもらって、「U29」という番組に出演できたんです。番組内では、キャンプファイヤーの宣伝もでき、自分の複業の活動が本業にも貢献できたのがうれしかったですね。このように、相乗効果を出せるように仕事をしていくことがモットーです。
ふたつ目が、インプットの時間を積極的に大切にすること。仕事柄、外に出る活動が多いので、アウトプットはたくさんできます。だからこそ、インプットの時間を意識的に作るようにしています。
3つ目は、休む日を決めること。余白を自分の中に作らないと、新しいことができないので、休みを取ることを意識しています。」

京谷実穂氏(以下、京谷)「私の1点目は菅本さんと似ているのですが、どちらの組織にも「複業をやらせておいてよかった」と思わせることです。それぞれで学んだことを、もう1つで反映できるようにを意識しています。
2点目は、それぞれの組織を通じて、個人をブランド化すること。今回のイベントのように、“パラレルワーカーのデザイナーとしての京谷”だったり、“音声デザイナーとしての京谷”だったり、あるキーワードを元にブランド化していくことで、企業にも自分のキャリアにもプラスになるはずだと思っています。」

桂Jasmine茉利子氏(以下、Jasmine)「私は複業をサポートする経営者側として大切にしていることですが、ひとつ目は多様性を大事にすること。ふたつ目はプライベートとのボーダーを決めないこと。そして3つ目は、ルールをみんなで作ること。そして、パラレルワーカーは多様性が肝だと思っているので、自由にやることを意識しています。さらに、雑談のキッカケを多くして、繫がりを持つことも大切にしています。」

2.スタートアップで複業をして苦労したこと

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潮田「終わりがないことですね。現在、ITのスタートアップの会社で、広報の手伝いをしているのですが、どうしても穴がたくさん見えてしまうんです。好きな人と仕事をしているので、もっと関わりたくなったりアイデアが出てきたりして、さらに手伝いたくなるのですが、体力的にも時間的にも限度があるので、関わるところの線引きに苦労しました。」

菅本「まさに私も同じです。出来ることだらけ、やりたいことだらけ、出会いたい人だらけ、行きたいとこだらけ!そうしていたら、カレンダーが全部埋まってしまって、訳がわからないことになりました(笑)。
そんな時に周りの方から、『その中で“決断”しなきゃいけないよ』と言われたんですよね。それがきっかけで、線引きについて考えるようになりました。決断とは、断ることを決めること。やりたいことばかり考えがちですけど、何をやらないかを考える時間を設けることを意識しています。これは、今も戦っている課題ですね。」

京谷「私は、決断が苦手なのと、断るのが嫌でよく引き受けてしまいます。今はこの状況を楽しもうかなとも思っているので、今すぐ変えるつもりはないんですが……。
あとは、スタートアップ複業ならではなのかもしれないですけど、『この時期に忙しくなりそう』が見えないんですよね。なので、チャンスが見えたらパッと全力で向かっていきたくなってしまいます。若宮さんも、急に思いついたり、仕事を取ってきてくださったりするので……」

若宮「1カ月単位で仕事量を言えたらいいんですけど、『これ取ってきたから、3日後までにデザインよろしくね』ということをしてしまうんですよね。しかも彼女(京谷さん)、NOを言わないので余計に。いつもすいません(笑)。」

京谷「いや、楽しいのでいいんです!ですが、それが×2になって、山場がかぶってしまうときもあることは事実で。1つの企業で働いていると、忙しくなっても調整できたり、プライベートの予定をコントロールしたりできますが、パラレルワーカーはそうもいかないのがむずかしいですね。」

若宮「マネジメント側としては、遠慮せず他業の忙しさを言ってもらえた方が助かります。僕が把握できてないのも悪いんですが(笑)。」

京谷「仕事が好きだから、『できるだけNOと言いたくない』という思いも絡み合って、バランスに苦労することはありますね。」

Jasmine「私は雇う側からの視点なんですが、メンバー全員がパラレルワーカーでリモートになると、『週に何時間くらい参画しているのかわからない』ことが起きるところがむずかしいです。各々本業があるので、本業が山場のときにはミーティングに来れなくなるので、以前、全くミーティングがない時期が3カ月くらいあったんですよ。仕事をタスクベースにはしていたんですが、いまいちコミットしきれていないなと感じていて、定例の大切さを痛感しました。『強制がいいの?だめなの?』という葛藤がありましたね。」

3.ぶっちゃけ会社の目、気になりませんか?

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Jasmine「うちは、slackに本業告知チャンネルがあるんです。今度本業の会社がテレビ出ます、とか、イベントやります、とかをそこで報告し合っています。」

(一同、素晴らしい!の声)

若宮「エンファクトリーさんという会社があるんですが、そこでは、「複業を自慢する日」というのがあるんですよ。世の中には「複業」ではなく「伏業」をしている人がたくさんいるらしく……。せっかくバリューが出ているのに、潜伏してしまったらシナジーが出ないじゃないですか。自慢し合うことで、こういうことやってるんだ!と興味が出たり、会社として勢いが出たり、プラスのことがたくさんあると言っていました。」

京谷「私は、もう会社の目は気にならないですね。それぞれで複業をやらせてよかったと思ってもらえるように意識しているから、というのもあるのですが、お互いの活躍を応援しあえる環境にいることが大きいです。」

菅本「私はむしろどんどん出していっています。会社の中でもおむすびキャラになっているんです(笑)。『変なメンバーが揃っている』と言いたい会社なので、私が変な人のひとりになっていますね。こんなことやっている人がいるんだよ、ということを伝えていけたらいいなと思っています。」

潮田「私の会社は、複業社員・タレント社員が周りに多いんです。働き方の実験をしている会社なので、あまり周りの目は気にならないですね。普段から『何かしら還元していきたいな』と思いながら複業やプロジェクトに関わっています。」

4.複業をしてよかったこと

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京谷「私は、デザインの幅が広がりました。ネイルでは女性向けのデザインが、もう一方では音声のデザインがあり、幅広く経験できているのが複業をしてよかったことですね。組織の考え方・ボスの考え方もそれぞれ経験できるので、価値観が広がったと感じています。」

Jasmine「スタートアップは経験値が未熟な人が熱量と推進力で集まるケースが多いです。ですが、みんなの未熟さが会社の限界値にならないところは、複業ならではだと思います。」

潮田「会社では味わえない経験ができるのが、複業の1番の醍醐味だと思います。社内のプロジェクトメンバーとは違う人と関われるし、好きな人と仕事ができる。そして、複業での出会いがまた複業を生むこともあります。新しいコラボレーションができて、連鎖反応が起こるところも楽しいです。私が複業をやめられない理由ですね。」

菅本「複業をすることで、自分らしさを表現できるようになりました。このイベントも、一社員としてではなく、“おむすび屋の菅本香菜”の側面もあるからこそ呼んでもらえているので、複業をやっていてよかったなと思います。」

5.おすすめの複業のはじめ方

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菅本「私の場合は、複業をしようと思ってはじめたわけではないんです。キャンプファイヤーの社員としてサポートをしている中で、自分も何か挑戦したいな……と思って、やりたいことに対して一歩踏み出した結果が今なんですね。どう仕事にするか、お金にするかということはあまり考えずに踏み出してみたら、それが生業になっていたという感じです。
複業は、それがないと食べていけないわけではないですよね。だからこそ、お金がどうこうだけじゃない、自分の大切な価値観を重視して、一歩踏み出してみるのがいいのではないかと思います。」

潮田「私も菅本さんとすごく似てますね。自分がやりたいことをそのままやってみるといいのではないでしょうか。ポイントはお試し期間だと思います。『いつまでにどんなことをしたいか』を設定して実行し振り返ると、新しい発見が見つかるのではないかと思います。」

京谷気張らず、やりたいことを辿っていく感じでいいと思います。お金のこととか、数年後のキャリアのこととかを計画しすぎると、一歩が踏み出せなくなってしまいますよね。やりたいからやってみようかな、くらいで十分。大きい一歩じゃなくてもいいと思いますよ。
私はデザイナーなので、単発の仕事も経験があります。それを経験して思うのは、継続的に関係を築ける方が、いろんなご縁を持ってきてくれるなということです。1回で終わる仕事は、スキルアップには繋がるかもしれないけれど、時間と労力を取られて、その後どうなったかわからないものが多いんです。なので、関係性もお仕事も繋がっていくものの方がいいのではと思います。」

Jasmine「自分が、何を人生のバリューとするかということが見えているかが大切だと思います。壺の話って知っていますか?壺の中に、最初に砂を入れてしまったら、大きな岩や石がそれ以上入らなくなりますよね。反対に、最初に岩を入れて、石→砂の順に入れていくとすべて入ります。この原理と一緒で、最初に、自分の軸となる岩のようなものを決めるべきなんですよ。いろんな価値観の人と話すと、いろんな岩を持っている人と話せるから、いいと思います。そうやって岩を決めて、複業に挑戦してみてください。」

若宮「最近の採用面接をみていて思うのは、仕事は恋愛に似てるな、ということです。面接で『はい、年収いくら出すから決めてください』というのは、出会ってすぐに結婚前提でお付き合いしてください!と言っているようなこと。
対して、複業は『一回一緒に住んでみようぜ』くらいのノリだと考えていいと思います。仕事も恋愛も相性ってもちろんありますしね。
これからの時代、1つの箱に所属する人はどんどん減っていくと思います。なので、僕のような経営者サイドの人は、ずっと好きでいてもらえるために頑張るしかないですよね。『こういう人のところで働きたい』という思いを抱いてもらわないといけないなと思っています。」

この後行われた大交流会のなかではパラレルワーカーを雇用したい側のスタートアップ企業十数社が自社の事業内容をピッチする一面も。非常に盛り上がりをみせた交流会を経て、イベントは終了しました。

「複業」は、本業があるからこそ、本当に自分がしたいことにチャレンジできる場所です。今回登壇した6名のお話を聞き、複業への一歩を踏み出したいと感じた方は多いのではないでしょうか。

働き方改革が謳われている今、1つの会社に所属する人はどんどん減っていくでしょう。本業と複業、どちらでもバリューを出すことで、会社の勢いも増し、自分自身のキャリアにもプラスになる。それぞれの会社へ貢献できる働き方ができるはずですよ。

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【イベントレポート】UI/UXデザインを強みとした新規事業の立ち上げを行うGoodpatchが考える 「スタートアップにおけるデザイン思考の重要性」

Goodpatchが考える 「スタートアップにおけるデザイン思考の重要性」

自社が有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイデア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできた。新たな取り組みとして注目されているのが、イノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティである。
本記事では、7月6日(金)に「docks」で行われた「UI/UXデザインを強みとした新規事業の立ち上げを行うGoodpatchが考える『スタートアップにおけるデザイン思考の重要性』」の内容をダイジェストでお届けします。

 
当初の予定では定員40名だったところ、好評によりなんと80名まで増席した今回のイベント。テーマが「デザイン思考」ということもあり、参加者の年齢層は低めな印象です。

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今回登壇していただいたのは、株式会社グッドパッチのDesign Div.ゼネラルマネージャーの松岡毅氏。クライアントワークを行うデザイン部門の責任者として、スタートアップから大手上場企業まで様々なフェーズの企業が抱える事業課題をデザインの力で解決しています。

▼1.グッドパッチはどんなことをしている企業?

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登壇者の松岡氏が所属している株式会社グッドパッチは、デザインでビジネスの課題を解決している「デザイン会社」。UI/UXデザインを強みとした新規事業の立ち上げや、企業のデザイン戦略の立案、デザイン組織構築支援などを行い、デザインの価値向上を目指しています。

デザイン会社と聞くと、「かわいい」ものや「かっこいい」ものを作っているところのように思われがち。ですが、松岡氏は「そうではなく、デザインもマーケティングなどと並び、ビジネスの課題を解決する手法のひとつだと考えている」と言います。

ビジネスの課題とは、例えば「利益をあげたい」「新規登録数を増やしたい」「継続率を伸ばしたい」などといったところ。そこをデザインを使って解決しているのが、株式会社グッドパッチです。

実績としては、株式会社講談社の漫画アプリや、株式会社リンクアンドモチベーションのクラウドに関するリニューアルなどを手掛けています。
また、「デザイナーをどうやって育成していくか」という自社のナレッジを生かした採用支援も行っています。

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▼2.なぜ、今「デザイン」を学ぶ必要があるのか

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では、今なぜ「デザイン」を学ぶ必要があるのでしょうか。それは、デザインを学ばないと、モノやサービスが売れないから。

近年は、「ナショナルブランドだから」「高機能だから」必ずしもヒットするとは限らなくなっています。たとえ、全力でお客様の声に耳を傾けたとしても、モノやサービスが売れない時代になってしまったのです。なぜなら、選択肢が溢れすぎているから。同じようなモノやサービスがたくさんあり、ぱっと見じゃ「見分けがつかないし、どれを選べばいいのかわからない」のがユーザー側の本音です。

モノやサービスが溢れかえり、人々の価値観が多様化している時代に、自社のモノやサービスを選んでもらうためにはデザインが必要なのです。それを実現するためには、デザインを学ぶと共に、ユーザーの声に耳を傾けて彼らの経験全体を捉え、ユーザー自身も気が付いていないニーズを見つけることが重要です。

▼3.新規事業の成功率はたったの0.3%。成功させるための「デザイン思考」とは?

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KPIの達成が困難・想定外となってしまうことが、新規事業が失敗する原因のひとつ。KPIはユーザー行動の結果ですから、コントロールや強制することはできません。

そして、企業が立てる事業計画には、多くの「だろう」が含まれています。「だろう」では、ユーザーにとって本当に必要かどうか、絞り切れていませんよね。

しっかりと事業計画を立てるためには、「だろう」を無くし、ユーザー行動をしっかり理解することが大切。そのためにおすすめなのが、「常にユーザーに触れて、ユーザー目線を持っておくこと」。サイトやアプリを創る前に、ユーザーに選ばれる事業を計画することが重要です。前項でもお伝えした通り、世の中にはサービスが溢れています。「だろう」では使ってもらえないのです。

「新規事業を成功させるためには、『デザイン思考』が大事です」と松岡氏。「デザイン思考」とは何か。それは、「常にユーザーに触れて、ユーザーが使いたいと思う事業を作ること」というマインドと、6ステップのサイクルを回していくというプロセスで構成されています。

「デザイン」という言葉を聞くと、一般的な色・形などの造形のみだと考えがちですが、そもそもデザインとは「設計」という意味も持つ言葉。問題を解決する事業を、デザイナー的視点や考え方を応用して「設計」していくことが、「デザイン思考」というわけです。

そして、デザイン思考に大切な6ステップとは、

⓪準備(ユーザーのことや、どういうマーケットで構成されているかの調査)
①理解(ユーザーに対するヒアリング)
②発散(ユーザーの課題をどういう形で解決しようかアイデアを発散)
③決定(発散したアイデアを絞り込む)
④プロトタイプ(プロトタイプを創る)
⑤テスト(ユーザーに使ってもらってテストする)

のこと。この6つのステップを通して、ユーザーの本当のニーズを拾い、新規事業のネタを探します。問いを立て、ユーザーにインタビューをし、ユーザーの課題を解決するプロトタイプを作って検証を行う。これを繰り返して問いをブラッシュアップしていくことこそが、「デザイン思考」なのです。

▼4.グッドパッチ社内で実際にやってみた事例を元に実務に落としこもう

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続いて、「実際の業務にすぐに生かせるように」と、松岡氏はデータ思考を活用して社内で行った事例をご紹介してくださいました。今回の事例で扱うテーマは、「不動産での新規事業」についてです。

⓪準備
準備のステップでは、競合調査をします。10サービスほどあげ、各サービスの良いところをピックアップしていきます。

①理解
理解パートでは、ユーザーインタビューを行います。「どんなサービスだったら使うか」「困った部分はどこ?」というところ重点的に深掘りしていくことが大切。なぜなら、新しいサービスは、課題を解決するものでなければいけないからです。
このユーザーインタビューを元に、「カスタマージャーニーマップ」を作成し、どんなプロセスがあり、各プロセスでユーザーが感じている不安や課題を浮き彫りにしていきます。

ユーザーインタビューの人数は、目安としては7名。意見を伺った7名には、テストの際にもう一度来てもらい、プロトタイプを検証してもらう役も担ってもらいます。

②発散、③決定
このパートにて、課題に対する解決案を出し、絞り込んでいきます。

④プロトタイピング
このパートにおいて大切なのは、スピード感。早く意思決定をし、早く検証することが重要だと、松岡氏は言います。1ヶ月会議で意思決定をするくらいなら、2週間で決めて早くユーザー検証に持っていくべき。このスピード感を実現できるのは、スタートアップならではです。

⑤テスト
自分たちがいいと思っていても、結局はユーザーに響かないと意味がありません。テストパートでは、ユーザーインタビューを行った相手にプロトタイプを触ってもらい、検証していきます。

ここからは、ユーザーにGoodとMoreを出してもらい、Moreを解決するための施策を考え、プロトタイプを作り、再びユーザーテストを行っていくという流れです。次のテストではまた別の7名に試してもらい、検証→プロトタイプを改善→別のユーザー(7名程度)でテスト、ということを繰り返します。

ユーザーにインタビューをして、ユーザーが持っている課題をどう解決するか、すぐにプロトタイプを作り検証する。デザイン思考を活用することで、ユーザーに響くサービスを効率よく生み出せるというわけです。

▼5.まとめ

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デザイン思考の6ステップは、およそ2週間程度で一連の流れを行うことが目安だそう。早く意思決定をし、本当にユーザーに触ってもらえるのかをテストすることが重要です。

最後に松岡氏は「多くの人を熱狂させるためには、目の前の人の課題を解決することが大切。最初から100万人に受けるサービスを作るのではなく、近くにいるユーザーの課題を解決できるサービスを開発することが、ヒットするモノを作る道のりの最初にあるはずです」と締めました。

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9月29日(土)には、デザイン思考を実際に行うワークショップを開催予定。当日はユーザーの方を向きながらビジネスを進めるための、共通言語をつくるための方法を体感できます。あわせてチェックしてみてくださいね。

Goodpatch UXワークショップのお申込みはこちら

 

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【イベントレポート】creww academy vol. 02 〜スタートアップサイエンスから学ぶ、ピボットの法則〜

【イベントレポート】creww academy vol. 02 〜スタートアップサイエンスから学ぶ、ピボットの法則〜

自社が有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイディア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできた。新たな取り組みとして注目されているのが、オープンイノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティである。

本記事では、5月23日(水)に「docks」で行われた「creww academy vol.02〜スタートアップサイエンスから学ぶ、ピボットの法則〜」の内容をダイジェストでお届けします。

 

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今回登壇していただいたのは、起業の成功確率を上げる方法を「スタートアップサイエンス」として著書にまとめてこられた田所雅之氏、そして自身も起業家としてピボットに成功した実績をお持ちの株式会社ナイトレイの石川豊氏。

会場の男女比は男性8割、女性2割ほど。男性が多いのはテーマが難解だからなのか……と筆者も少し身構えてしまいましたがそんなことはなく、田所氏も石川氏もこれまでの経験を元に初心者でも理解しやすいよう噛み砕いて話してくださいました。
ここからは「ピボットとは?」という前提部分から、イベント内容をまとめてお伝えします。

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1.そもそもピボットとはどんなものなのか

ピボットとは「ビジョンを変えずに戦略を変えること」。
ビジョンとは、“誰の困りごとをどのような方法で解決するか”を明確にしたものです。この根本的なところを変えてしまうのであれば、そもそも会社をやり直した方が賢明。根っこにある自分たちのストーリーは変えずに、戦略=顧客への届け方や見せ方、プロダクトそのもののスコープを変えることが「ピボット」です。

InstagramやGoogleなど、現在ユニコーン企業と呼ばれている企業の3分の2はピボットを経験していると言います。
最初から方向性や戦略が固まっておりピボットをしないのが1番ですが、そうもいかないのが現実。顧客から何かを学び、ピボットをしながら適切なビジネスモデルを見つけていくことがポイントです。

「ユニコーン企業はピボットを経験しているところが多い、だから自分たちもピボットをした方が良いのではないか」と、簡単にピボットをしてしまうことがよくあるそうです。
田所氏曰く、「ピボットで大切なのは、データを計測すること。ですが、UXが悪いからとピボットするのは間違っている。UXは基本的に継続して改善しながら、それでも例えば機能が足りないということであれば、ユーザーストーリーをベースに開発してあげる。それをやり切ったけれど無理だったなら、ビジネスモデルがダメだったということでピボットするという流れが適切です。
同じビジネスモデルを保って改善し続けていてもPMF(プロダクトマーケットフィット)が達成できない場合は、ピボットを行った方が良いでしょう」とのこと。

では、具体的にどのような条件を満たしていれば、適切なピボットと言えるのでしょうか。

2.良いピボット・悪いピポット、そしてピボットのタイプとは?

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田所氏が示す良いピボットの条件とは主に3つ。
「ビジネスモデルをやりきること」、「客観的データに基づくこと」、そして「メンバーの納得感があること」。これらのどれかが欠けていると、適切なピボットとは言えません。

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納得しているけれどやり切っていない場合は、時間の無駄になってしまう無意味なピボットに。対して、やり切ったけれどチームメンバーの納得感がないピボットは、チーム崩壊のリスクがあるリスキーなピボットになります。また、定性データや定量データを活用せずに完全主観的に行うことは、継続危機に陥る最悪なピボットに繋がります。
そして、事業提携先や投資家に振り回されるといった、カスタマーインサイトをベースにしないピボットも適切ではありません。

ss 2018-08-01 午後4.08.32

続いて、ピボットのタイプについての説明に移りました。

田所氏が提唱するピボットの種類は6つ。
グルーポンを筆頭にした、想定していた顧客とニーズが違っていたことによる方向転換である「カスタマーセグメントピボット」。
元々位置情報を共有するサービス内の1つの機能だった、写真を共有できるサービスに注目し、フォーカスしたプロダクトを作ったインスタグラムを代表とする「ズームインピボット」。
これと反対に、より包括的なサービスへと転換する「ズームアウトピボット」。

この他にも、顧客のニーズから浮かび上がった新たな課題を解決するために方向転換をする「カスタマーニーズピボット」、プラットフォーム形式からアプリケーション方式に(またはその逆方向)に転換する「プラットフォームピボット」、顧客の手に届くまでのチャネルの方向転換をする「チャネルピボット」があります。

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自分たちのビジネスにおけるピボットがどのタイプに当てはまるかもしっかり見極める必要があります。

3.二度のピボットを経て、注目のサービスを作り上げた株式会社ナイトレイ・石川氏

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「地図とインターネットがすごく好き」その想いから株式会社ナイトレイを創業した石川氏。誰かの真似をするのではなく“誰もやっていないこと”にこだわったそう。
「データを集め解析し、プロダクトに落とし込んでお客さんに提供する」という基本的なことにチャレンジしたひとつの結果が、inbound insight(インバウンドインサイト)というサービス。これは、「訪日外国人の方がどこにどのくらい来ていて、何を楽しんでいるのか」「国籍毎にどの地域にどのくらい滞在し、移動しているのか」というデータを集め、日本各地でビジネスチャンスがどのくらいあるかを独自に解析してWebサービスやレポートとして提供しているものです。
「訪日外国人の動向であれば、株式会社ナイトレイのサービスで全て手に入れられる」ということが強みであり、非常に好評だと石川氏は言います。

2008年に会社設立をし、資金調達とメンバー集めをし本格稼働し始めた2011年に最初のピボットを迎えたそう。
「当初、ユーザー向けのサービスを1から作ってデータを集めるよりも、既に数千万人〜数億人が使っているサービスから知見を得られないかと、TwitterなどのパブリックなSNSデータの解析でロケーションに紐づくビッグデータを蓄積しながら、ぐるなび・食べログ・グルーポンの先を作るという切り口で“ローカル×ソーシャル×スマートフォン”を軸にした店舗と利用者向けB2B2C新サービスを開発していきました。
しかしこのとき、大量のデータ解析結果から人気施設や人々の動き、感情はある程度分析できていたものの、『アプリやWebサービスを新規導入して業務をする余裕がない』という店舗の人側について深く知れていなかったんですね。
店舗はたくさんあるのに、サービスを導入検討してくれるところはすごく少ない。ならばやり方を変えよう、とここで気づきました。」と、石川氏。

続けて、「ビジョンは変えたくなかった。『もっと世の中を良くしたい』『ロケーションに関わるデータを集めて、解析をして、どうやったらみんなの役に立てるのか』という想いが根底にあったので、給料が出る出ないといった状況は関係なかった。
だから根底の部分は変えず、最初のピボットで、店舗ではなくロケーションに関わる業者に提案にいくなど、アプローチ先を変更しました。ちなみに、東大などの学会に乗り込んだりもしました。
2014年頃には、民間や自治体ごとに違うアプローチすると価値が出せるんだという成功体験を積み重ねていきました。」と語っていました。

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2回目のピボットは、2015年。
これから訪日外国人の流入が増えるだろうと気づいていた複数のお客さんから、『訪日外国人の解析はできないのか』と要望があったことがきっかけで、一発勝負に出たとのこと。強い顧客ニーズを基に、日本人(日本語)のロケーションデータ解析技術を発展させ訪日外国人のロケーションデータ解析技術を作り上げ、inbound insightというサービス名にして新プロダクトとしてリリースしたのだそう。
これが幅広い顧客のニーズにヒットし、リリースして数ヶ月で数百社、1年で3000社に使ってもらえるサービスに成長。

株式会社ナイトレイは、2017年にはさらなる顧客開拓、パートナー開拓、組織体制強化、モビリティ領域へのチャレンジを開始し、自動車業界の大手との業務提携も実現しています。

4.田所氏・石川氏が考える「ピボットを成功させる法則」とは?

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石川氏による実体験を元にした講演に続いて、田所氏・石川氏による対談へ。
お二人の対談では、主に田所氏が石川氏のピボットを深掘りしていくような形で進んでいきました。ここでは、

田所雅之氏(以下、田所)「株式会社ナイトレイが成功したポイントはいくつかあると思います。
まずは市場に代替案がなかったこと、石川さん自身が現場に行っていたこと、そして執着心があったことが大きかったのではないでしょうか。」

石川豊氏(以下、石川)「スタートアップはそもそも少人数なので選択肢があまりないとは思うけれど、現場に出向くことは自分でやるということにこだわった方がいいかなと思います。」

田所「地図が好きじゃなかったら片っ端からやらなかったですよね。お金は関係ないとはいえど生活するには必要なもの。片っ端からやっている中でめげそうにはならなかったですか?」

石川「めげそうになりましたね。でも、ナイトレイをはじめてから色々ありましたけど、1番よかったのは『地図・ロケーション、ビッグデータ、あとはインターネットという領域の中でイノベーティブなサービスを作り上げたい』という軸をブラさないということは考え抜いていて。それに賛同してくれる人も1人はいて、そうやって始められたのがよかったのかなと思います。だから、いくら辛くても不思議と辞めてしまおうという結論にはならなかった。普通だったらきっとみんな辞めていると思いますけどね。」

田所「インバウンドに注力したナイトレイの事例はカスタマーセグメントピボットだと思うのですが、その決断をするとき、メンバーからの反対はありませんでしたか?多分納得させたのだと思いますが、どうやって納得させたのでしょう?」

石川「その時の社内の体制が、共同創業ではなく僕がほとんど株を持っていたんですね。あとは、僕の想いに共感した人しか入ってきていないということと、当時の従業員に対して『ナイトレイは地図好きでないと入れないからね』と言っていたほどで、最低限の意識合わせをした上で進めていました。
それと、現場に行っていたのが僕だったので、『石川が言うなら仕方ない、やってみようか』という感じもあったと思います。」

田所「僕自身もスタートアップの支援をしているのですが、1番最初にやるのがミッション・ビジョンの磨き込みなんですね。ミッション・ビジョンの解像度をあげなければやっていくべきことが見えてこないんです。例えスキルが今は低くても、それらの理解の深さがあればポテンシャルがあると思います。“意味付け”が大事ですね。」

5.まとめ|田所氏「ピボットは諸刃の剣。でもスタートアップにとって最大の武器になる。」

「勢いのみで行うピボットは、スタートアップをダメにしてしまうけれど、ピボットは最大の武器にもなり得る」と田所氏。ピボットは諸刃の剣で、会社にとって非常に役立つものになるのか、自分たちを傷つける結果になるかは使い方次第です。実践する際は、田所氏が仰っていた「良いピボットの条件」を全て満たしたうえで行っていきたいものですね。

質疑応答の中では会場から笑いが溢れるなど、ユーモアや具体例を交えながら、盛り上がりを見せました。講演終了後のネットワーキングでは、会場内での交流も盛んに行われていたようです。


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「三井住友カード x ストーリーアンドカンパニー」ミライ募集中。ミライブックが生み出す、感動で溢れる未来

三井住友カード株式会社/ 西條 勇紀氏
株式会社STORY & CO./ CEO 細川 拓氏

体験シェアリングサービスを展開するストーリーアンドカンパニーと、主にカード決済事業を展開する三井住友カード。全く領域の異なる両社がcrewwコラボを経てタッグを組み、感動を生み出す新サービスをスタートさせる。その名も「ミライブック」。“人がいつか叶えたいと夢見るミライの実現をサポートする”という画期的な取り組みを通じ、「世の中に感動を与えたい」と西條氏と細川氏は話す。そんな世の中を感動で包むであろうキャンペーンの展開に至った軌跡について、両者に聞いた。

 
――まずはSTORY & CO.の事業内容と起業のきっかけについて教えてください。
細川拓(以下、細川):弊社は、旅の中での良い出会いが良い変化を生み、それが良い物語になっていく「出会いと変化の物語」というビジョンを掲げて2つのサービスを展開しています。“3時間の小さな旅”と銘打った体験シェアリングWEBサービス「AND STORY」。そしてもう一つは、大学内のカフェで学生と地域の人たちや旅行者が交流できる「U-CAFE」という事業をプロデュースしています。

起業のきっかけは、人の人生の変化を、より良いものしていきたいと考えたから。
大学生の頃にアパレルの会社を起業して、その後大手企業に入社して進学事業とブライダル事業に携わりました。服(おしゃれ)や進学、結婚など人の人生の節目を豊かにすることと向き合っていく中で、「人ってどういうときに変化を求めてアクションを起こすのか」と考えた時に“旅”だなと。
辛いことがあったら傷心旅行、ハッピーな新婚旅行などさまざまな旅の種類があるように、人生に何かしらの変化があると人は旅に出るんですよね。
自分自身も旅の中で「(現地で)どんな人に出会ったか」という部分から人生に良い影響を受けました。

ただ、旅先でローカルの人に出会うというのはそんなに簡単なことじゃない、ということを感じていました。日本では欧米風なコミュニケーションも少ないので交流のきっかけや場がない。交流を通じて出会いが生まれればなと思って、2つの事業を思いついたんです。
現在は設立して2年4カ月(取材時:2018年6月)ほど。2017年9月にリリース後半年たたないうちに東京メトロ様とのコラボも決まって、生まれて間もない事業にしては注目されてくるようになったかなと思います。

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株式会社STORY & CO./ CEO 細川 拓氏

――次にcrewwコラボを開催した理由をお聞かせください。
西條勇紀(以下、西條):弊社の本業の柱は(カード)決済事業なのですが、中期経営計画の中で新規領域の事業にも挑戦しようという方針があって。ただ、急に新規事業をと言ってもノウハウがなく、社内で打合せを重ねながら試行錯誤を繰り返していたんです。そこにcrewwコラボの話を取引先の会社から聞いて、これも試しにとアプローチしたのが始まり。元々は自分たちだけで新規事業を立ち上げようとしていたのですが、crewwコラボを使ってまずはノウハウを集めようと模索しました。
当初はエントリーがあるのか、どういった応募が来るのかと正直不安でしたが、応募数や事業の“匂い”がするものが思っていた以上に集まったというのが率直な感想です。

――その中で一番最初にお会いしたのがSTORY & CO.?
西條:はい、一番目にお会いしましたね。
弊社に集まってきた案件は、チームメンバーがドラフトのように選んでいったんですが、STORY & CO.さんは私のドラフト一位でした。あくまで個人的な印象なのですが、スタートアップの方は尖っているイメージを勝手に抱いていて(笑)。でも、実際に細川さんにお会いしてみて、そういった印象は全くなく安心しました。むしろ、話してみると考え方も近くて、初対面ながら会話がとても盛り上がったんですよね。会社同士というよりも個人同士でインスピレーションがすごく合って、友達になれそうな気もして、その瞬間から自分の中で(協業に対して)ギアが上がったのかなと思っています。

――第一印象から意気投合されたのですね。「AND STORY」にフォーカスした理由は?
西條:新事業検討のコンセプトとして「人に感動を与えられる事業」「世の中をより便利にできる事業」大きくこの2つを掲げていました。まず、“感動”ということを考えた時に「AND STORY」の事業紹介文を見て「これだな」とピンと来たところですね。

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三井住友カード株式会社/ 西條 勇紀氏

――ブラッシュアップの結果生まれたコラボの内容について教えてください。
西條:STORY & CO.さんがすでに展開している「AND STORY」のサービスをベースに、今回は逆に様々な方々から“やってみたいミライ(コト)”を募ろうと。その中から選ばれた「想い」の実現を、我々がお手伝いします。

細川:「ミライブック」というもので、簡単に言うと「あなたの夢の体験叶えます」というものですね。誰しもが持っているけれど、忘れてしまっていた「こんなことやりたかったんだよな」という体験の実現をサポートします。
ただ、「夢」と言い過ぎてしまうと「車欲しい」「家が欲しい」という自身の努力関係なく、棚ボタ的なことが多くなってしまうのではないかと思ったんです。そうではなくて、「やってみたかった!」という実際に自分が動いて掴み取る未来を叶えられるように、展開していきます。

西條:夢の応募はSNSで投稿していただき、それを叶えるホストをマッチングさせる。「AND STORY」は「体験を提供したい」というホストがいて、ゲストが予約をする。しかし今回はその逆。応募者が叶えたい未来を一緒に叶えていくというもの。実は僕自身が今更ながら独学でドラムをやり始めたんです。昔からずっとやりたいと思っていたのですが、ふとやり始めて、これが面白くて。自身の体験を通じてサービスを考えた時、自分の思いに対してトンと背中を押してくれる存在があったらもっと早く始められていたのにと。ぜひこの取り組みが、誰かの背中を押す存在になれたらなと思います。

細川:そして、細田(守)監督の最新アニメ映画「未来のミライ」とのタイアップも決まったんです!元は僕の思い付きで、子供と映画を観に行ったときに予告で見て、「未来」というキーワードが合うなと。それですぐ西條さんに電話して。僕は言う(提案する)だけで簡単なんですが、西條さんは大変でしたよね。

西條:それを連休直前に聞いて(笑)。でも、たしかに面白いタイアップになりそうだったので、ダメ元で配給会社さんに行ってみたんです。そうしたら「できそうですね」と快諾していただいて、スムーズに進みました。

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――映画とのタイアップも決まり非常に楽しみな企画になってきましたね。連携はスムーズでしたか?
細川:分担というより、企画の全体を細かくラリーして作り上げてきたので全部2人で整えていきました。

西條:たしかに、役割を分けてなかったですもんね。

細川:「(両者に)こんな強みがあるから、こういう事業やろう」といった進め方ではなく、「こんなことやりたいよね」という思いがあって、お互いの強みを出し合って2人で形を整えていった。協業する際にありがちなのですが「どっちの役割か」となると、立場的にスタートアップ企業側が背負わなければならない部分が多い。だけど、西條さんはめちゃくちゃ率先してやってくれたんですよね。

西條:企画を形にしたい一心でしたから(笑)。

細川:社内採択を通した後も、西條さんは絶対目的からブレないんですよね。僕の方からしても、(三井住友カード側の)社内の都合もあるからベストではなくともベターであればいいという部分も正直あったのですが、今回は100%ベストで進めることができた。だからこそ、僕も絶対成功させたいという強い思いがありました。

――「ミライブック」に期待すること、その後の青写真は?
西條:この取り組みを単なるキャンペーンだけでは終わらせず、サービスに昇華させていきたいですね。自分がドラムをやり始めたことで叶えたように、新しい世界を切り開いてもっと楽しい人生を送っていただけたら。一人でも多くの方に感動があふれるような人生になってもらえたら素敵だなと思っています。(やりたいことは)もっと早くやっておけばよかったって思いますしね、実体験として。

細川:「AND STORY」を始めたきっかけと一緒なんですが、人生を変化させようと行動するのは難しいんです。だけど、日々を惰性的に過ごして一歩前に踏み出せない人たちがたくさんいるなと。「ミライブック」では一歩踏み出しましょうというよりももっと進んで、一歩踏み出し始めた人が「(踏み出して)良かった!」と本気になれる世界を作っていきたいですね。

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ミライブックキャンペーン

――お二人の想いが詰まった「ミライブック」本当に楽しみにしています。最後にcrewwコラボを通しての感想をお聞かせください。
細川:crewwコラボの良い点は、事業を始める前に高い熱量を持って進められることですね。他のアクセラレーター(プログラム)は、ピッチコンテストのような形式でスタートアップ側が事業案から計画など全部作って2、3分のスピーチで勝負、というところがある。それではここまで高い熱量持てないだろうし、この事業すらも生まれなかった。スタートアップ企業、大手企業、Creww3社が一緒になって作ってきた、この形式だからこそ生まれてきたもの。他のアクセラレーターも全部この形式だったらいいのにと思います (笑)。

西條:イノベーションを起こすには、ITリテラシーや今までの経歴よりも、如何に人生を楽しもうとしているか、また、想い持って突き進めるか、これが大事なのではないかなと感じましたね。あと、人の育成においても良いプログラムだと思いますね。日々の業務では味わえないスピード感で、プログラムに沿って限られた期間の中で経営層にプレゼンして、曖昧なモノを形にしていく作業は、社会人としての成を促し、実績になれば自信にも繋がります。そういった意味でも良いプログラムでした。

細川:新規事業の成功予測は難しいですが、間違いなく人は育ちます。よくある人事の研修プログラムとは比較にならないくらい良いんじゃないかと思いしたね。新規事業には熱意や想いが必要で、既存の業務とは違う仕事になり、会社員としてどうかではなく個人としてのスタンス、心構えが如実表れ、それが結果に繋がります。ちゃんとやりきれるかどうか、形にできるかどうか、という自ら仕事を作る人になれる、そういう人を発掘できるプログラムでもあるのではないかと感じました。

 

■ 「ミライブック」キャンペーン概要
募集期間 2018 年7 月13 日(金)~2018 年8 月31 日(金)
対象者:日本に居住している方なら、どなたでも応募いただけます。
※三井住友カードをお持ちでない方も応募対象となります。
応募方法 Twitter、InstagramにてAND STORYの公式アカウント(Instagram:@andstory.co 、 Twitter:@_and_story_)をフォローし、ハッシュタグ (#ミライブック)とともにあなたが叶えたい「ミライ」を投稿

専用サイト:https://miraibook.andstory.co/
※本サイトはキャンペーン開始日、7 月13 日(金)にオープン

 

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「コワーキングオフィス」から紐解くスタートアップの成長戦略

–BASE鶴岡×BitStar渡邉——creww academy vol. 01 〜スタートアップの光と影〜

Crewwが運営するコワーキングオフィス「docks」で行われたミートアップ「creww academy vol. 01 〜スタートアップの光と影〜」の様子をダイジェストでお届けする。ゲストに招かれたのは、BASE株式会社代表取締役CEO 鶴岡裕太氏と、株式会社BitStar 代表取締役 渡邉拓氏。日本のスタートアップ業界を牽引する両氏の創業秘話を振り返り、「コワーキングオフィス」という視点から、スタートアップの成長戦略に迫った。

 
「スタートアップ」と言えば聞こえは良いが、メディアで取り上げられるような「光」ばかりではない。順調に成長していく企業が存在する一方で、多くの企業は苦戦し、「成功」と言われるステージにたどり着くのは至難である。

今回ゲストとしてお迎えしたBASE株式会社 代表取締役CEO 鶴岡裕太氏、株式会社BitStar 代表取締役 渡邉拓氏の2名も「光」そして「影」も味わってきた経営者だ。今でこそスタートアップ界隈で名の知られる存在だが、創業期には相当な苦労を重ねたと振り返る。

今回行われたミートアップ「creww academy vol. 01 〜スタートアップの光と影〜」には、両名の話を聞くためにおよそ60名の参加者が集まった。事業をスタートしてから現在に至るまでの道のりについて、普段はあまり語られない「影」の部分にも触れながら、軽妙なトークが繰り広げられた。

スタートアップ界のホープたちの起業秘話

セッションの初めに、まずは鶴岡氏と渡邉氏の創業秘話を振り返った。

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BASE株式会社 代表取締役CEO 鶴岡裕太氏

鶴岡裕太(以下、鶴岡):僕は、起業よりもサービス作る方が早かったんです。もともとクラウドファンディングサービスを手がけるCAMPFIREでインターンをしていたのですが、サービス開発をしていたら、投資家の方に「起業しよう」と声をかけられて。

担当してくれた投資家さんは、銀行口座に3千万円を入金しておいてくれたんです。もう、やるしかないですよね(笑)。結局、登記の手続きなど、起業時に必要な業務は全て肩代わりしてくれました。

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株式会社BitStar 代表取締役 渡邉拓氏

渡邉拓(以下、渡邉):僕は大学時代から事業を立ち上げていました。大学時代はサッカー中心の生活だったのですが引退後に目指すことがなくなり、友人たちと「面白いことやろうよ」といったノリで当時はスタートしました。卒業後にスタートアップに一度就職をしましたが、そこでも新規事業を担当し3年ほどで独立。「会社を辞めてもなんとかなる」くらいの気持ちだったのだが、全然なんとかならずしばらくニート暮らしをしていました笑

その後しばらく経って「これだ!」と思う今の事業が見つかって、早速投資家であるEast Venturesの松山 太河さんに話したら、「良い人だから」と投資していただいたんです笑(当時はEast Venturesの渋谷にあるシェアオフィスを借りていました)。そこからがいよいよ事業の本番でした。

「オフィス」から紐解く、スタートアップの成長戦略

続いてのトークテーマは「コワーキングの光と影」。両ゲストは、創業時にシェアオフィスを利用し、事業開発を行なっていたそうだ。創業期ならではのエピソードに、「コワーキングオフィス」という視点から迫った。

――コワーキングの「光」の部分について教えてください。

鶴岡:コワーキングの良いところですね。最初のオフィスには、Crewwの伊地知さんもいたりして、会社自体のフェーズが近かったこともあり、辛さを共有できたことは支えになりました。伊地知さんはしっかりしていて”こうやればいい”というお手本でした(笑)
もう一つ良かったことがあります。メルカリ創業者の山田進太郎さんがいらっしゃったのですが、それは本当に良い刺激になりました。所用で行くときなんかは、鋭い視線を感じましたね(笑)
他にもグノシーさんやフリークアウトさんも一緒にいた期間があったのですが、大人ベンチャーの間近で仕事をしてみて、こんなに汗かいているんだと、このぐらいやらないとだめなんだと、そういうことを間近で見てきた事で、多少の甘えすら消えましたね。

渡邊:場所に情報が集まること、そして人とのつながりは大きいですよね。今でも応援しあえるような関係性ができたし、情報に関してはインターネットでは拾えない“生の情報”が得られるのは大きかったです。事業の課題と勝ちパターンだったり、投資家の情報とか、そういうググっても出てこない情報がコワーキングにはありました。

――続いて、「影」の部分についてもお願いします。

渡邉:良いか悪いかは一概に言えませんが、成長した企業が出て行くので、「早く抜け出さないと」というプレッシャーはありました。

鶴岡:そんなに闇は感じなかったですね。ただシェアオフィスは入居費が安いので、なかなか抜け出せないんですよね。成功して出ていく人もいるけど、シェアオフィスにいることで逆に視座が上がらない可能性もある。伸びるスタートアップなんて、本当に一部なので。だから、周囲に流されない自分の軸を持たなければいけません。

コワーキングを最初に選ぶ段階で、停滞しない戦術を練ったほうがいいと思います。「環境の良さ」や「眺めが綺麗」といったことではなく、入居している企業のレベルで判断するのがいいと思います。

イベントの終盤には質疑応答の時間が設けられ、スタートアップを経営する参加者から、実体験ベースの質問が寄せられた。

鶴岡氏と渡邉氏の回答からは、両氏の事業への向き合い方と、その根底にある考えがどのように成り立っているのかが明瞭に伝わった。

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イベント最後には、ネットワーキングの時間が設けられた。参加者同士が活発に交流し、大いに盛りをみせた。イベントを通じた出会いが、世の中に新たな価値が生まれるきっかけとなれば幸いだ。

「creww academy」は、イノベーションコミュニティスペース「docks」にて不定期で開催される。
 
イノベーションコミュニティスペース『docks』
 
ライター:岡島 たくみ
 
(了)
 

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インターネットの誕生以降の衝撃を。Deep Techから始める技術立国再興戦略

Hello Tomorrow Japan
Abies Ventures
Mistletoe株式会社

自社の有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイデア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできた。新たな取り組みとして注目されているのが、オープンイノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティである。
本記事では、「Deep Techとコミュニティの力で社会を変革する」をテーマに行われた、交流会の様子をダイジェストでお届けする。ゲストはDeep Tech領域に投資をするAbies Ventures、スタートアップエコシステムの構築を行うMistletoeと、DeepTechの力を使って新しいチャレンジをする方々と起業家や投資家を結びつける活動をしているNPO法人Hello Tomorrow Japan。
交流会はVCがピッチを行う“リバース形式”で行われた。日本から世界を目指すアントレプレナーに伴走し、共にスタートアップ界隈を盛り上げる影の起業家たちは、今何を思うのか。次世代のビジネスを創出する取り組みを追った。

 
本交流会は、社会の変革を担うスタートアップとその成長を支えるVCの出逢いの場を提供することを目的に開催されている。「Deep Tech」とは、主にバイオ、ロボティクス、AI、宇宙開発、エネルギー、MRなどの分野において、破壊的イノベーションを生み出す最先端テクノロジーの事を指す。

日本のスタートアップエコシステムは、年々成熟しているものの、中国やアメリカなど、“起業先進国”から遅れをとっています。そのなかでもDeep Tech領域は、長い研究機関を要するビジネスです。そのため、資金調達に多くの課題が伴うこともある。

「日本の未来を担うスタートアップ企業が、チャンスを掴む機会はないだろうか?」という考えから生まれたのが、“VCリバースピッチ”だ。スタートアップから投資家・事業会社に向けたピッチの機会は数多くあるものの、逆のパターンは少ない。

なかでもDeep Tech領域のスタートアップ企業は資金調達・支援環境のハードルもさらに高くなっているという課題感から、スタートアップが「スタートアップ支援コミュニティ」を活用してさらなる飛躍を目指すため、VC各社がスタートアップに自社の投資実行の目的について・投資後のフォローアップの体制についてを論ずる機会を設けることができた。

サスティナビリティのある未来を目指し、次世代の課題を解決する

交流会の中心となったのは、VC3社による“リバースピッチ”。まずは、Mistletoe株式会社の中島氏よりピッチがあった。

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Mistletoe株式会社 Chief Investment Officer 中島徹氏

中島徹:Mistletoeは外部から「ベンチャーキャピタル」として捕らえられていますが、私たちは自社を“collective impact community”と定義しています。メンバーは事業会社出身の者が多く、スタートアップと寄り添うことを主眼に置いています。共に次世代の課題を解決するため、共同創業型の「スタートアップスタジオ」というアプローチをとっています。

アントレプレナーを育て、日本の社会問題を解決することが、私たちのもっともやりたいことです。主に、テクノロジーを介し、人間中心の持続的な未来を作っていくスタートアップに投資を行っています。アントレプレナーのみならず、研究者など、複数のバックグラウンドを持つ人たちと一緒に社会課題を解決していきたいのです。

さまざまな奏者で構成されるオーケストラが素晴らしい効果を生むように、様々なスタートアップ同士が集まる場を作ることで、一社で起こすよりも大きなインパクトを世界に与え、未来をより良くしていくことを目指します。

インターネットに次ぐ技術革新で、世界と戦えるスタートアップを創出する

中島氏に続き登壇したのは、ユニークで高度な技術を有する日本および世界のDeep Techスタートアップに投資を行うAbies Venturesの山口氏。

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Abies Ventures株式会社 Managing Partner 山口冬樹氏

山口冬樹:Abies Venturesは創設間もないベンチャーキャピタルです。Deep Techスタートアップのみに投資を行っています。ドメスティック市場だけではなく、世界を目指すような企業とともにビジネスを創出していきたいと考えています。

インターネットは世界を大きく変えましたが、情報流通や仕組みの革新以外の技術革新でも、世の中を進化させていきたいのです。

日本は久しく技術立国と呼ばれてきましたが、世界に通用するスタートアップはなかなか出てきていません。眠っている技術資産を掘り起こし、世界で戦えるスタートアップを育てていきたいと思っています。

グローバル規模のオポチュニティを、日本に届けたい

最後に登壇したのは、Hello Tomorrow Japanの渡邊康治氏。ワールドワイドに革新的技術の市場展開を促進する活動を行うコミュニティの話があった。

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Hello Tomorrow Japan 渡邊康治氏

渡邊康治:Hello Tomorrowは、リサーチをベースにした先端技術で新しい応用分野を開拓し、様々な産業・社会・環境等の課題の解決を目指すDeep Techスタートアップを支援しています。世界規模のコミュニティをつくっており、大企業やスタートアップを問わず、さまざまなバックグラウンドの方が参加しています。

海外の名だたる大企業がサポーターとして参加しており、お金を出資する以外にも手厚いサポートをしているのが特徴です。年に1回開かれるHello Tomorrow GLOBAL SUMMITには世界中の大手VCが集まり、スタートアップの方が世界レベルのVCと出会えるチャンスもあります。このサミットには3,000人を超えるスタートアップ関係者、投資家、事業会社などが集まり、Deep Techスタートアップの方に非常に有益な機会を提供しているのです。

Hello Tomorrowはパリに拠点を置いているため、メインは海外です。しかし今春東京にもローカルハブとしてHello Tomorrow Japanを設立し、今後本格的に日本でもコミニュティの創出を行うとともに、Hello Tomorrow JAPAN SUMMITを年末に開催する予定です。このコミュニティは、大学や研究所の研究成果など、先端技術をコアにして事業を行うDeep Techスタートアップを対象としています。

日本はまだまだスタートアップエコシステムが成熟しておらず、Deep Techにおいては尚更です。本日登壇されたVCさんとともに、私たちも有益な機会を提供する存在になりたいと考えています。

本日登壇した3名のゲストは、「世界で戦えるスタートアップを創出したい」と口を揃えた。日本が“起業先進国”となり、そして世界で戦うためには、意思のあるアントレプレナーと経験を持ったキャピタリストとの協力が不可欠。

こうした“リバースピッチ”もその一つ。トークセッションの終了後に行われたネットワーキングでも活発な動きが見られ、ここdocksを起点にビジネスが動き出す予感がした。

ライター:オバラ ミツフミ

(了)
 

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