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「三井住友カード x ストーリーアンドカンパニー」ミライ募集中。ミライブックが生み出す、感動で溢れる未来

三井住友カード株式会社/ 西條 勇紀氏
株式会社STORY & CO./ CEO 細川 拓氏

体験シェアリングサービスを展開するストーリーアンドカンパニーと、主にカード決済事業を展開する三井住友カード。全く領域の異なる両社がcrewwコラボを経てタッグを組み、感動を生み出す新サービスをスタートさせる。その名も「ミライブック」。“人がいつか叶えたいと夢見るミライの実現をサポートする”という画期的な取り組みを通じ、「世の中に感動を与えたい」と西條氏と細川氏は話す。そんな世の中を感動で包むであろうキャンペーンの展開に至った軌跡について、両者に聞いた。

 
――まずはSTORY & CO.の事業内容と起業のきっかけについて教えてください。
細川拓(以下、細川):弊社は、旅の中での良い出会いが良い変化を生み、それが良い物語になっていく「出会いと変化の物語」というビジョンを掲げて2つのサービスを展開しています。“3時間の小さな旅”と銘打った体験シェアリングWEBサービス「AND STORY」。そしてもう一つは、大学内のカフェで学生と地域の人たちや旅行者が交流できる「U-CAFE」という事業をプロデュースしています。

起業のきっかけは、人の人生の変化を、より良いものしていきたいと考えたから。
大学生の頃にアパレルの会社を起業して、その後大手企業に入社して進学事業とブライダル事業に携わりました。服(おしゃれ)や進学、結婚など人の人生の節目を豊かにすることと向き合っていく中で、「人ってどういうときに変化を求めてアクションを起こすのか」と考えた時に“旅”だなと。
辛いことがあったら傷心旅行、ハッピーな新婚旅行などさまざまな旅の種類があるように、人生に何かしらの変化があると人は旅に出るんですよね。
自分自身も旅の中で「(現地で)どんな人に出会ったか」という部分から人生に良い影響を受けました。

ただ、旅先でローカルの人に出会うというのはそんなに簡単なことじゃない、ということを感じていました。日本では欧米風なコミュニケーションも少ないので交流のきっかけや場がない。交流を通じて出会いが生まれればなと思って、2つの事業を思いついたんです。
現在は設立して2年4カ月(取材時:2018年6月)ほど。2017年9月にリリース後半年たたないうちに東京メトロ様とのコラボも決まって、生まれて間もない事業にしては注目されてくるようになったかなと思います。

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株式会社STORY & CO./ CEO 細川 拓氏

――次にcrewwコラボを開催した理由をお聞かせください。
西條勇紀(以下、西條):弊社の本業の柱は(カード)決済事業なのですが、中期経営計画の中で新規領域の事業にも挑戦しようという方針があって。ただ、急に新規事業をと言ってもノウハウがなく、社内で打合せを重ねながら試行錯誤を繰り返していたんです。そこにcrewwコラボの話を取引先の会社から聞いて、これも試しにとアプローチしたのが始まり。元々は自分たちだけで新規事業を立ち上げようとしていたのですが、crewwコラボを使ってまずはノウハウを集めようと模索しました。
当初はエントリーがあるのか、どういった応募が来るのかと正直不安でしたが、応募数や事業の“匂い”がするものが思っていた以上に集まったというのが率直な感想です。

――その中で一番最初にお会いしたのがSTORY & CO.?
西條:はい、一番目にお会いしましたね。
弊社に集まってきた案件は、チームメンバーがドラフトのように選んでいったんですが、STORY & CO.さんは私のドラフト一位でした。あくまで個人的な印象なのですが、スタートアップの方は尖っているイメージを勝手に抱いていて(笑)。でも、実際に細川さんにお会いしてみて、そういった印象は全くなく安心しました。むしろ、話してみると考え方も近くて、初対面ながら会話がとても盛り上がったんですよね。会社同士というよりも個人同士でインスピレーションがすごく合って、友達になれそうな気もして、その瞬間から自分の中で(協業に対して)ギアが上がったのかなと思っています。

――第一印象から意気投合されたのですね。「AND STORY」にフォーカスした理由は?
西條:新事業検討のコンセプトとして「人に感動を与えられる事業」「世の中をより便利にできる事業」大きくこの2つを掲げていました。まず、“感動”ということを考えた時に「AND STORY」の事業紹介文を見て「これだな」とピンと来たところですね。

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三井住友カード株式会社/ 西條 勇紀氏

――ブラッシュアップの結果生まれたコラボの内容について教えてください。
西條:STORY & CO.さんがすでに展開している「AND STORY」のサービスをベースに、今回は逆に様々な方々から“やってみたいミライ(コト)”を募ろうと。その中から選ばれた「想い」の実現を、我々がお手伝いします。

細川:「ミライブック」というもので、簡単に言うと「あなたの夢の体験叶えます」というものですね。誰しもが持っているけれど、忘れてしまっていた「こんなことやりたかったんだよな」という体験の実現をサポートします。
ただ、「夢」と言い過ぎてしまうと「車欲しい」「家が欲しい」という自身の努力関係なく、棚ボタ的なことが多くなってしまうのではないかと思ったんです。そうではなくて、「やってみたかった!」という実際に自分が動いて掴み取る未来を叶えられるように、展開していきます。

西條:夢の応募はSNSで投稿していただき、それを叶えるホストをマッチングさせる。「AND STORY」は「体験を提供したい」というホストがいて、ゲストが予約をする。しかし今回はその逆。応募者が叶えたい未来を一緒に叶えていくというもの。実は僕自身が今更ながら独学でドラムをやり始めたんです。昔からずっとやりたいと思っていたのですが、ふとやり始めて、これが面白くて。自身の体験を通じてサービスを考えた時、自分の思いに対してトンと背中を押してくれる存在があったらもっと早く始められていたのにと。ぜひこの取り組みが、誰かの背中を押す存在になれたらなと思います。

細川:そして、細田(守)監督の最新アニメ映画「未来のミライ」とのタイアップも決まったんです!元は僕の思い付きで、子供と映画を観に行ったときに予告で見て、「未来」というキーワードが合うなと。それですぐ西條さんに電話して。僕は言う(提案する)だけで簡単なんですが、西條さんは大変でしたよね。

西條:それを連休直前に聞いて(笑)。でも、たしかに面白いタイアップになりそうだったので、ダメ元で配給会社さんに行ってみたんです。そうしたら「できそうですね」と快諾していただいて、スムーズに進みました。

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――映画とのタイアップも決まり非常に楽しみな企画になってきましたね。連携はスムーズでしたか?
細川:分担というより、企画の全体を細かくラリーして作り上げてきたので全部2人で整えていきました。

西條:たしかに、役割を分けてなかったですもんね。

細川:「(両者に)こんな強みがあるから、こういう事業やろう」といった進め方ではなく、「こんなことやりたいよね」という思いがあって、お互いの強みを出し合って2人で形を整えていった。協業する際にありがちなのですが「どっちの役割か」となると、立場的にスタートアップ企業側が背負わなければならない部分が多い。だけど、西條さんはめちゃくちゃ率先してやってくれたんですよね。

西條:企画を形にしたい一心でしたから(笑)。

細川:社内採択を通した後も、西條さんは絶対目的からブレないんですよね。僕の方からしても、(三井住友カード側の)社内の都合もあるからベストではなくともベターであればいいという部分も正直あったのですが、今回は100%ベストで進めることができた。だからこそ、僕も絶対成功させたいという強い思いがありました。

――「ミライブック」に期待すること、その後の青写真は?
西條:この取り組みを単なるキャンペーンだけでは終わらせず、サービスに昇華させていきたいですね。自分がドラムをやり始めたことで叶えたように、新しい世界を切り開いてもっと楽しい人生を送っていただけたら。一人でも多くの方に感動があふれるような人生になってもらえたら素敵だなと思っています。(やりたいことは)もっと早くやっておけばよかったって思いますしね、実体験として。

細川:「AND STORY」を始めたきっかけと一緒なんですが、人生を変化させようと行動するのは難しいんです。だけど、日々を惰性的に過ごして一歩前に踏み出せない人たちがたくさんいるなと。「ミライブック」では一歩踏み出しましょうというよりももっと進んで、一歩踏み出し始めた人が「(踏み出して)良かった!」と本気になれる世界を作っていきたいですね。

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ミライブックキャンペーン

――お二人の想いが詰まった「ミライブック」本当に楽しみにしています。最後にcrewwコラボを通しての感想をお聞かせください。
細川:crewwコラボの良い点は、事業を始める前に高い熱量を持って進められることですね。他のアクセラレーター(プログラム)は、ピッチコンテストのような形式でスタートアップ側が事業案から計画など全部作って2、3分のスピーチで勝負、というところがある。それではここまで高い熱量持てないだろうし、この事業すらも生まれなかった。スタートアップ企業、大手企業、Creww3社が一緒になって作ってきた、この形式だからこそ生まれてきたもの。他のアクセラレーターも全部この形式だったらいいのにと思います (笑)。

西條:イノベーションを起こすには、ITリテラシーや今までの経歴よりも、如何に人生を楽しもうとしているか、また、想い持って突き進めるか、これが大事なのではないかなと感じましたね。あと、人の育成においても良いプログラムだと思いますね。日々の業務では味わえないスピード感で、プログラムに沿って限られた期間の中で経営層にプレゼンして、曖昧なモノを形にしていく作業は、社会人としての成を促し、実績になれば自信にも繋がります。そういった意味でも良いプログラムでした。

細川:新規事業の成功予測は難しいですが、間違いなく人は育ちます。よくある人事の研修プログラムとは比較にならないくらい良いんじゃないかと思いしたね。新規事業には熱意や想いが必要で、既存の業務とは違う仕事になり、会社員としてどうかではなく個人としてのスタンス、心構えが如実表れ、それが結果に繋がります。ちゃんとやりきれるかどうか、形にできるかどうか、という自ら仕事を作る人になれる、そういう人を発掘できるプログラムでもあるのではないかと感じました。

 

■ 「ミライブック」キャンペーン概要
募集期間 2018 年7 月13 日(金)~2018 年8 月31 日(金)
対象者:日本に居住している方なら、どなたでも応募いただけます。
※三井住友カードをお持ちでない方も応募対象となります。
応募方法 Twitter、InstagramにてAND STORYの公式アカウント(Instagram:@andstory.co 、 Twitter:@_and_story_)をフォローし、ハッシュタグ (#ミライブック)とともにあなたが叶えたい「ミライ」を投稿

専用サイト:https://miraibook.andstory.co/
※本サイトはキャンペーン開始日、7 月13 日(金)にオープン

 

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「コワーキングオフィス」から紐解くスタートアップの成長戦略

–BASE鶴岡×BitStar渡邉——creww academy vol. 01 〜スタートアップの光と影〜

Crewwが運営するコワーキングオフィス「docks」で行われたミートアップ「creww academy vol. 01 〜スタートアップの光と影〜」の様子をダイジェストでお届けする。ゲストに招かれたのは、BASE株式会社代表取締役CEO 鶴岡裕太氏と、株式会社BitStar 代表取締役 渡邉拓氏。日本のスタートアップ業界を牽引する両氏の創業秘話を振り返り、「コワーキングオフィス」という視点から、スタートアップの成長戦略に迫った。

 
「スタートアップ」と言えば聞こえは良いが、メディアで取り上げられるような「光」ばかりではない。順調に成長していく企業が存在する一方で、多くの企業は苦戦し、「成功」と言われるステージにたどり着くのは至難である。

今回ゲストとしてお迎えしたBASE株式会社 代表取締役CEO 鶴岡裕太氏、株式会社BitStar 代表取締役 渡邉拓氏の2名も「光」そして「影」も味わってきた経営者だ。今でこそスタートアップ界隈で名の知られる存在だが、創業期には相当な苦労を重ねたと振り返る。

今回行われたミートアップ「creww academy vol. 01 〜スタートアップの光と影〜」には、両名の話を聞くためにおよそ60名の参加者が集まった。事業をスタートしてから現在に至るまでの道のりについて、普段はあまり語られない「影」の部分にも触れながら、軽妙なトークが繰り広げられた。

スタートアップ界のホープたちの起業秘話

セッションの初めに、まずは鶴岡氏と渡邉氏の創業秘話を振り返った。

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BASE株式会社 代表取締役CEO 鶴岡裕太氏

鶴岡裕太(以下、鶴岡):僕は、起業よりもサービス作る方が早かったんです。もともとクラウドファンディングサービスを手がけるCAMPFIREでインターンをしていたのですが、サービス開発をしていたら、投資家の方に「起業しよう」と声をかけられて。

担当してくれた投資家さんは、銀行口座に3千万円を入金しておいてくれたんです。もう、やるしかないですよね(笑)。結局、登記の手続きなど、起業時に必要な業務は全て肩代わりしてくれました。

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株式会社BitStar 代表取締役 渡邉拓氏

渡邉拓(以下、渡邉):僕は大学時代から事業を立ち上げていました。大学時代はサッカー中心の生活だったのですが引退後に目指すことがなくなり、友人たちと「面白いことやろうよ」といったノリで当時はスタートしました。卒業後にスタートアップに一度就職をしましたが、そこでも新規事業を担当し3年ほどで独立。「会社を辞めてもなんとかなる」くらいの気持ちだったのだが、全然なんとかならずしばらくニート暮らしをしていました笑

その後しばらく経って「これだ!」と思う今の事業が見つかって、早速投資家であるEast Venturesの松山 太河さんに話したら、「良い人だから」と投資していただいたんです笑(当時はEast Venturesの渋谷にあるシェアオフィスを借りていました)。そこからがいよいよ事業の本番でした。

「オフィス」から紐解く、スタートアップの成長戦略

続いてのトークテーマは「コワーキングの光と影」。両ゲストは、創業時にシェアオフィスを利用し、事業開発を行なっていたそうだ。創業期ならではのエピソードに、「コワーキングオフィス」という視点から迫った。

――コワーキングの「光」の部分について教えてください。

鶴岡:コワーキングの良いところですね。最初のオフィスには、Crewwの伊地知さんもいたりして、会社自体のフェーズが近かったこともあり、辛さを共有できたことは支えになりました。伊地知さんはしっかりしていて”こうやればいい”というお手本でした(笑)
もう一つ良かったことがあります。メルカリ創業者の山田進太郎さんがいらっしゃったのですが、それは本当に良い刺激になりました。所用で行くときなんかは、鋭い視線を感じましたね(笑)
他にもグノシーさんやフリークアウトさんも一緒にいた期間があったのですが、大人ベンチャーの間近で仕事をしてみて、こんなに汗かいているんだと、このぐらいやらないとだめなんだと、そういうことを間近で見てきた事で、多少の甘えすら消えましたね。

渡邊:場所に情報が集まること、そして人とのつながりは大きいですよね。今でも応援しあえるような関係性ができたし、情報に関してはインターネットでは拾えない“生の情報”が得られるのは大きかったです。事業の課題と勝ちパターンだったり、投資家の情報とか、そういうググっても出てこない情報がコワーキングにはありました。

――続いて、「影」の部分についてもお願いします。

渡邉:良いか悪いかは一概に言えませんが、成長した企業が出て行くので、「早く抜け出さないと」というプレッシャーはありました。

鶴岡:そんなに闇は感じなかったですね。ただシェアオフィスは入居費が安いので、なかなか抜け出せないんですよね。成功して出ていく人もいるけど、シェアオフィスにいることで逆に視座が上がらない可能性もある。伸びるスタートアップなんて、本当に一部なので。だから、周囲に流されない自分の軸を持たなければいけません。

コワーキングを最初に選ぶ段階で、停滞しない戦術を練ったほうがいいと思います。「環境の良さ」や「眺めが綺麗」といったことではなく、入居している企業のレベルで判断するのがいいと思います。

イベントの終盤には質疑応答の時間が設けられ、スタートアップを経営する参加者から、実体験ベースの質問が寄せられた。

鶴岡氏と渡邉氏の回答からは、両氏の事業への向き合い方と、その根底にある考えがどのように成り立っているのかが明瞭に伝わった。

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イベント最後には、ネットワーキングの時間が設けられた。参加者同士が活発に交流し、大いに盛りをみせた。イベントを通じた出会いが、世の中に新たな価値が生まれるきっかけとなれば幸いだ。

「creww academy」は、イノベーションコミュニティスペース「docks」にて不定期で開催される。
 
イノベーションコミュニティスペース『docks』
 
ライター:岡島 たくみ
 
(了)
 

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インターネットの誕生以降の衝撃を。Deep Techから始める技術立国再興戦略

Hello Tomorrow Japan
Abies Ventures
Mistletoe株式会社

自社の有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイデア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできた。新たな取り組みとして注目されているのが、オープンイノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティである。
本記事では、「Deep Techとコミュニティの力で社会を変革する」をテーマに行われた、交流会の様子をダイジェストでお届けする。ゲストはDeep Tech領域に投資をするAbies Ventures、スタートアップエコシステムの構築を行うMistletoeと、DeepTechの力を使って新しいチャレンジをする方々と起業家や投資家を結びつける活動をしているNPO法人Hello Tomorrow Japan。
交流会はVCがピッチを行う“リバース形式”で行われた。日本から世界を目指すアントレプレナーに伴走し、共にスタートアップ界隈を盛り上げる影の起業家たちは、今何を思うのか。次世代のビジネスを創出する取り組みを追った。

 
本交流会は、社会の変革を担うスタートアップとその成長を支えるVCの出逢いの場を提供することを目的に開催されている。「Deep Tech」とは、主にバイオ、ロボティクス、AI、宇宙開発、エネルギー、MRなどの分野において、破壊的イノベーションを生み出す最先端テクノロジーの事を指す。

日本のスタートアップエコシステムは、年々成熟しているものの、中国やアメリカなど、“起業先進国”から遅れをとっています。そのなかでもDeep Tech領域は、長い研究機関を要するビジネスです。そのため、資金調達に多くの課題が伴うこともある。

「日本の未来を担うスタートアップ企業が、チャンスを掴む機会はないだろうか?」という考えから生まれたのが、“VCリバースピッチ”だ。スタートアップから投資家・事業会社に向けたピッチの機会は数多くあるものの、逆のパターンは少ない。

なかでもDeep Tech領域のスタートアップ企業は資金調達・支援環境のハードルもさらに高くなっているという課題感から、スタートアップが「スタートアップ支援コミュニティ」を活用してさらなる飛躍を目指すため、VC各社がスタートアップに自社の投資実行の目的について・投資後のフォローアップの体制についてを論ずる機会を設けることができた。

サスティナビリティのある未来を目指し、次世代の課題を解決する

交流会の中心となったのは、VC3社による“リバースピッチ”。まずは、Mistletoe株式会社の中島氏よりピッチがあった。

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Mistletoe株式会社 Chief Investment Officer 中島徹氏

中島徹:Mistletoeは外部から「ベンチャーキャピタル」として捕らえられていますが、私たちは自社を“collective impact community”と定義しています。メンバーは事業会社出身の者が多く、スタートアップと寄り添うことを主眼に置いています。共に次世代の課題を解決するため、共同創業型の「スタートアップスタジオ」というアプローチをとっています。

アントレプレナーを育て、日本の社会問題を解決することが、私たちのもっともやりたいことです。主に、テクノロジーを介し、人間中心の持続的な未来を作っていくスタートアップに投資を行っています。アントレプレナーのみならず、研究者など、複数のバックグラウンドを持つ人たちと一緒に社会課題を解決していきたいのです。

さまざまな奏者で構成されるオーケストラが素晴らしい効果を生むように、様々なスタートアップ同士が集まる場を作ることで、一社で起こすよりも大きなインパクトを世界に与え、未来をより良くしていくことを目指します。

インターネットに次ぐ技術革新で、世界と戦えるスタートアップを創出する

中島氏に続き登壇したのは、ユニークで高度な技術を有する日本および世界のDeep Techスタートアップに投資を行うAbies Venturesの山口氏。

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Abies Ventures株式会社 Managing Partner 山口冬樹氏

山口冬樹:Abies Venturesは創設間もないベンチャーキャピタルです。Deep Techスタートアップのみに投資を行っています。ドメスティック市場だけではなく、世界を目指すような企業とともにビジネスを創出していきたいと考えています。

インターネットは世界を大きく変えましたが、情報流通や仕組みの革新以外の技術革新でも、世の中を進化させていきたいのです。

日本は久しく技術立国と呼ばれてきましたが、世界に通用するスタートアップはなかなか出てきていません。眠っている技術資産を掘り起こし、世界で戦えるスタートアップを育てていきたいと思っています。

グローバル規模のオポチュニティを、日本に届けたい

最後に登壇したのは、Hello Tomorrow Japanの渡邊康治氏。ワールドワイドに革新的技術の市場展開を促進する活動を行うコミュニティの話があった。

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Hello Tomorrow Japan 渡邊康治氏

渡邊康治:Hello Tomorrowは、リサーチをベースにした先端技術で新しい応用分野を開拓し、様々な産業・社会・環境等の課題の解決を目指すDeep Techスタートアップを支援しています。世界規模のコミュニティをつくっており、大企業やスタートアップを問わず、さまざまなバックグラウンドの方が参加しています。

海外の名だたる大企業がサポーターとして参加しており、お金を出資する以外にも手厚いサポートをしているのが特徴です。年に1回開かれるHello Tomorrow GLOBAL SUMMITには世界中の大手VCが集まり、スタートアップの方が世界レベルのVCと出会えるチャンスもあります。このサミットには3,000人を超えるスタートアップ関係者、投資家、事業会社などが集まり、Deep Techスタートアップの方に非常に有益な機会を提供しているのです。

Hello Tomorrowはパリに拠点を置いているため、メインは海外です。しかし今春東京にもローカルハブとしてHello Tomorrow Japanを設立し、今後本格的に日本でもコミニュティの創出を行うとともに、Hello Tomorrow JAPAN SUMMITを年末に開催する予定です。このコミュニティは、大学や研究所の研究成果など、先端技術をコアにして事業を行うDeep Techスタートアップを対象としています。

日本はまだまだスタートアップエコシステムが成熟しておらず、Deep Techにおいては尚更です。本日登壇されたVCさんとともに、私たちも有益な機会を提供する存在になりたいと考えています。

本日登壇した3名のゲストは、「世界で戦えるスタートアップを創出したい」と口を揃えた。日本が“起業先進国”となり、そして世界で戦うためには、意思のあるアントレプレナーと経験を持ったキャピタリストとの協力が不可欠。

こうした“リバースピッチ”もその一つ。トークセッションの終了後に行われたネットワーキングでも活発な動きが見られ、ここdocksを起点にビジネスが動き出す予感がした。

ライター:オバラ ミツフミ

(了)
 

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中国スタートアップ10社が集結!国際交流でビジネスを加速する「日中企業イノベーション交流会」

中国スタートアップ10社が集結!国際交流でビジネスを加速する「日中企業イノベーション交流会」

自社の有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイデア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできた。新たな取り組みとして注目されているのが、オープンイノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティである。
本記事では、中国の清華大学社会サービスの機能の一つとして先進的なビジネスプロジェクトを提供する清華大学サイエンスパークと国内最大級のスタートアップコミュニティを運営するCreww株式会が合同で開催した「日中企業イノベーション交流会」の模様をダイジェスト形式でお届けする。
交流会は5時間にも及ぶ長丁場で行われ、数多くの登壇者、そして数多くの参加者が訪れた。中国からは10社のスタートアップが来日するなど、非常に熱量溢れるイベントとなった。国内からも大手投資機関が参加するなど、イベントの盛り上がりは最高潮に。日本×中国の新ビジネスが生まれる拠点として、“起業先進国日本”への変革を目指す取り組みを追った。

 

スタートアップから始まる“日本再興戦略”。Creww伊地知氏が描くアクセラレーションの未来

本交流会は「イノベーション」をテーマに、日中それぞれの優れた技術や製品、サービスを双方の市場へ紹介・提供することで、日中間の経済の発展を促進させることを目的として開催されています。

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Crewwと共に交流会を主催する清華大学サイエンスパークは、中国で最も革新的なサイエンスパークを目指して設立された。独自の技術的・人的資源と革新的な若い起業家をつなぎ、秀逸なサービスをハイテク企業や研究開発企業に提供することで、国内外のベンチャー企業ビジネスの拠点になっている。

イベントにはスタートアップから大手企業、大学機関、インキュベーション施設など、さまざまな登壇者が一同に介した。これから始まる日本と中国の最先端ビジネスを一目見ようと、会場には多くの参加者が集結。過去イベントの中でも最高潮の盛り上がりとなった。

セッションの初めに、Creww代表の伊地知天氏が挨拶。「中国と日本の協業には、非常に大きな可能性があると思っています。しかし現在、日本のスタートアップエコシステムはまだまだ成熟していません」と語った。

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伊地知:日本企業の時価総額上位は、そのほとんどが大手企業。しかし海外を見渡せば、テクノロジーを駆使した急成長企業や、若い企業が瞬く間に上位にランクインします。日本は企業後進国とも言われ、また、若い企業を支援するVCや投資家も少ないのが現状です。

Crewwはそうした現状を受け、2012年に立ち上がりました。民間企業がスタートアップエコシステムを創り出し、スタートアップを取り巻く環境を少しでも良いものにしていこうという挑戦です。

これまでに、成長機会を創出することにコミットし、今ではおよそ3,400ものスタートアップがCrewwに登録をしています。スタートアップ同士でナレッジをシェアし、切磋琢磨し合う環境を整えて参りました。

大手企業とスタートアップが協業し、新たなビジネスモデルも生まれています。そして今後はリアルイベントにも力を入れていきます。今日の交流会も、海外諸国から遅れをとる現状を打破し、日本が起業先進国として世界を牽引する存在になるきっかけになればと思っています。

起業先進国・日本へーー。投資家とスタートアップが語る日本の現状とこれから

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イベントの最初のセッションには、東京大学エッジキャピタル、神奈川サイエンスパーク、日本政策投資銀行(DBJ)中川雅晴氏、東京海上日動火災保険 森岡秀祐氏、セブン銀行 松橋正明氏・呉暁雪氏、清華企業家協会(TEEC)日本分会 孔令傑氏が登壇。スタートアップの成長を支える側の視点から、日本の現状と今後の展望をディスカッションを行なった。

起業家の数は徐々に増えつつあるも、日本には、なかなか企業環境が根付かない現状がある。そのボトルネックは、キャピタリストの少なさに起因しているとの声もあるほどだ。起業家と投資家、双方の数が増えていくことが、企業先進国への第一歩となるかもしれない。

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また、続いてのセッションでは「企業マッチングに関する講演」と題し、Creww 李東徹氏、日本貿易振興機構(JETRO)金京浩氏、中関村駐東京連絡処 王洪燕氏、Tus Starインキュベーター 刘博氏が登壇。

日本貿易振興機構の金氏は「日本に対する憧れがあり、日本に留学し、日本で就職しました。現在は、日本貿易振興機構に務め、日本への進出や投資など、支援しています。中国と日本が協力できる分野を見出していければ」と語った。

その後中国のスタートアップ10社がピッチを行なった。コンサルティング企業「ボストンコンサルティンググループ」(BCG)が中国アリリサーチ、百度発展研究センター、滴滴政策研究院と共同で発表した『中国インターネット経済白書:中国インターネットの特色を読み解く』によれば、中国のユニコーン企業の多さと、創業からユニコーン化するまでのスピード感には目を引くものがある。

ピッチ終了後にはネットワーキングタイムが設けられており、今日この場所から新しいビジネスが生まれる熱気が感じ取れた。

本イベントのように今後ますます交流が盛んになれば、日本も世界を股にかけるユニコーン企業が誕生する可能性も考えられる。また、中国企業の日本進出も今後加速していくだろう。

(了)
 

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“民間×行政”で生み出す日露テックビジネス ロシアITスタートアップ使節団 大報告会

“民間×行政”で生み出す日露テックビジネス ロシアITスタートアップ使節団 大報告会

自社が有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイデア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできた。新たな取り組みとして注目されているのが、オープンイノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティである。
本記事では、「docks」で行われたロシアITスタートアップ使節団の報告会の様子をダイジェストでお届けする。ロシアを訪れたIT業界のスペシャリストらが語る、日本とロシアのスタートアップが生み出す新たなビジネスの可能性とは?

 
ロシアは現在、IT技術を用いて国民生活の向上や製品・サービスの品質改善を進める国家プログラム「デジタル経済プログラム」を展開している。ビッグデータやブロックチェーン、IoT、ロボットなど、テクノロジー領域において人材育成やインフラ整備を行なっているそうだ。

日本との関係については、2017年9月にウラジオストクで開催された「第3回東方経済フォーラム」において、日露両政府は「デジタル経済に関する協力に係る共同声明」といった文書を交わしている。

国家間で提携を行いながらデジタル人材の育成が進むなか、2018年2月11日から22日にかけて国際協力に詳しい日本のITスタートアップが「デジタル分野協力」をテーマに情報交換を行なった。日本からは「使節団」と称されたロシア事情に詳しいIT業界関係者が選抜されたという。

今回のイベントでは、使節団参加メンバー各位が現地で得た情報を共有。今後ロシアでのビジネスチャンスを求める参加者達は、普段では知り得ないロシアのスタートアップシーンのリアルに夢中で耳を傾けた。

現地訪問で知った異国の可能性。日本×ロシアで生み出す新たなビジネスとは?

本イベントには、使節団のメンバーであるSAMIの牧野寛氏、ロシアNIS貿易会・長谷氏、スカイライトコンサルティング・小川育男氏、TalentEx CEO・越陽二郎氏、Creww・李東徹氏、Blincam・高瀬昇太氏など、ロシアの現地事情や異国のスタートアップシーンに詳しい錚錚たるメンバーが集まった。

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開催に先立ち、各メンバーが自身とロシアとの関係性、ロシアに赴いた感想などを簡単に紹介。ビデオ通話にて参加した福岡市役所国家戦略特区課長、的野浩一氏は「ロシアに行くまではロシアにスタートアップがあるかさえ分からなかった」という前置きと共に、ロシアに実際に赴いた印象と成果を以下のように述べた。

的野浩一(以下、的野):ロシアを訪問して感じたことは二つです。一つは、ロシアは非常に技術力の高い国であるということ。国家間での連携が進めば、すぐにでも新たなビジネスを創出することができると思います。そしてもう一つは、ロシア側が日本とビジネスをとてもしたがっていることです。

そして、福岡市として今後取り組みたいことを熱く語った。

的野:ロシアに関する情報は、まだまだ日本のスタートアップの人々に行き届いていない。そのため興味関心もまだまだ少ないのが現状です。まずは、この関心を喚起していきたいと思っています。それは福岡だけではできないので、複数の地域や民間企業と手を組み、一緒に仕掛けていきたいですね。

なぜ今、ロシアのスタートアップに注目するのか

報告会が本格的にスタートすると、各方面のエキスパートらが現地で体感した「ロシアのスタートアップシーンの実態」と「日露協力の可能性」について参加者に語られた。今回の使節団を企画から運営まで担当し、自身もロシアでの起業を経験したSAMI 牧野氏は「なぜ今ロシアでスタートアップなのか」を以下のように話す。

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牧野寛:ロシアでは政府が積極的にスタートアップ支援に投資しています。たとえば、イノポリスという都市では、大学の周囲にIT企業が集まる場所を作り、優秀な学生が大学周辺のIT企業へ就職する導線となっています。また、ロシアには日本人が想像している以上にビジネスチャンスが多くります。そして、日本人が想像している以上に、日本とのビジネスを熱望しています。

今回の使節団を経て、ロシアのスタートアップシーンの実際に触れた参加者達は、今後の日露協力に希望を多く見い出した様子が見られた。

また、日本企業とロシアのスタートアップをマッチングしようという新たな試みも着々と進んでいるとのことで、ロシア使節団派遣が新たなビジネス創造に対し大きな一歩となったのを感じられる内容であった。

欧米よりも参入しやすい?ロシア参入への期待と課題

イベントの最後には、質疑応答の時間が設けられた。参加者はロシアでのビジネスに非常に興味を持ち、ロシア参入を意識した質問が数多く寄せられた。

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質問の回答からは、欧米よりも寛容に日本人を歓迎するロシアの風土や、ロシア企業が日本とのビジネスを熱望する様子が伺え、改めてロシアの魅力が確認できた。一方、日露で互いに情報が少ないゆえ、日本の企業に過度な期待が寄せられているなど、認識の齟齬が発生している状況も伺えるなど、今後の課題に関しても明確となった。

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イベント終了後、ロシアの魅力に目を輝かせた参加者が登壇者へ詰めかける様子が見られ、本イベントが日露ビジネスのさらなる発展の一手となったのを肌で感じることができた。
 
ライター・伊集院実穂

(了)
 

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痛い“突然の出費”へのセーフティネット「前給サービス」で、新たなサービスを創出するーMeet the Enterprise vol. 05ーMeet 東京TYフィナンシャルグループ「きらぼしテック」

痛い“突然の出費”へのセーフティネット「前給サービス」で、新たなサービスを創出するーMeet the Enterprise vol. 05ーMeet 東京TYフィナンシャルグループ「きらぼしテック」


自社が有する経営資源や技術に頼るだけではなく、社外からの技術やアイデア、サービスを有効に活用し、革新的なマーケットを創造する「オープンイノベーション」。この市場を創ってきたパイオニアであるCrewwは、大企業が持つアセットとスタートアップの持つエッジの効いたアイディアを組み合わせることで新規事業を創出し、国内に大企業×スタートアップのイノベーションを生んできた。新たな取り組みとして注目されているのが、オープンイノベーションコミュニティ「docks」。大企業の持つアセットとスタートアップが持つ柔軟なアイディア、最新のテクノロジーが化学反応を起こす起点として立ち上がった、リアルコミュニティである。

本記事では、「docks」で行われた東京TYフィナンシャルグループ「きらぼしテック」とのミートアップの様子をダイジェストでお届けします。

 
2017年5月の銀行法改正以降、各銀行においてフィンテックビジネスへの取組みが加速している。Crewwのオープンイノベーションの中にも、フィンテックビジネスに関わるものは多い。今回「Meet the Enterprise」に登壇したきらぼしテック株式会社は、自社グループが取得した特許「前給サービス」を活用することで、フィンテックビジネス進出への足がかりとし、新しい事業領域へ挑戦する。

今回行われたミートアップ「Meet the Enterprise vol. 05 – Meet きらぼしテック – 」には、ニッチな領域でビジネスチャンスを探る熱量の高い起業家たちが集まった。1時間のネットワーキングタイムを終え、きらぼしテック株式会社のプレゼンテーションが開始された。

“痛い出費”のセーフティネットに。スマホで給与申請が可能な「前給サービス」

今回登壇したきらぼしテック株式会社は、東京TYフィナンシャルグループの子会社。自社グループが取得した特許「前給サービス」を利用し「労働者に付加価値のあるツールを提供する」をミッションに掲げている。

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きらぼしテック株式会社代表取締役社長 西村浩司氏

今回紹介された「前給サービス」は、学生を中心とした非正規雇用者が、給料日前にお金を「前払い」してもらうことができるサービスだ。お祝い金や急な入院で医療費が発生したときなど、突然の出費が発生した際に「スマホ申請」で賃金を受け取ることができる。

2005年に特許を取得してから、日本マクドナルド社や大手人材派遣会社をはじめとする654社、総じて108万人の利用者を抱えるまでに成長を遂げた。きらぼしテック株式会社・専務取締役の刈田隆志氏は、「柔軟な給与体制の実現により離職率の低さに効果が出ている」と話す。

刈田隆志:「前給サービス」のプラットフォームを活用することで、データを利用したマーケティング活動、シフト管理のデジタル化、デジタルクーポンの開発などさまざまな可能性がある。刈田氏は銀行マンにはない、スタートアップの柔軟なアイデアで新たなサービスを創出したい。

今、この瞬間から始まるオープンイノベーション。「前給サービス」はフィンテックにニューウェーブを起こせるか

Meetupの後半には、きらぼしテックのサービスに興味を持つ起業家からのピッチが行われた。「前給サービス」という間口の広さからか、ヘルステック、学割サービス、不動産サービス、メディア運営など多岐にわたるジャンルから、それぞれの特性に合った「前給サービス」のオリジナル案が語られ、大いに盛り上がりをみせた。

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ここからディスカッションを通し、リソースや思想がマッチすれば新しいビジネスの誕生へ第一歩を踏み出すこととなる。

以前、「神戸オープンアクセラレータ」でのりそな銀行とスタートアップ各社の取り組みを紹介した。CrewwではこれからもMeetupを発端とした、新しい金融サービスの出現を応援していく。

「Meet the Enterprise」は、オープンイノベーションコミュニティ「docks」にて不定期で開催される。興味のある方は、以下のリンクよりチェックしてみてください。
https://creww-docks.peatix.com/

ライター・半蔵門太郎

(了)
 

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「大手銀行 × スタートアップ × 伝統産業」。コラボレーションの先に見えた新たな“Crewwの役目”とは?【後編】

りそな銀行 地域オフィサー 奥田浩之氏

スタートアップと大企業、さらにローカルが交わる「オープンイノベーション」領域を開拓してきたCreww。同社は2017年1月より、「イノベーションのエコシステムを備えた街」神戸市と共同で「神戸オープンアクセラレータープログラム」を運営してきた。エントリー起業とスタートアップをキュレーションし、神戸市内で新規事業を創出させるプログラムだ。プログラム開始から1年、晴れて1つの新規事業が誕生した。りそな銀行と株式会社ギフティ、株式会社BUZZPORTによるデジタル地域通貨プロジェクト「旅するフクブクロ」だ。「旅するフクブクロ」は“デジタル化された商品券”。専用の電子ウォレットのページに保存された通貨から手続きを済ませることで、スマホ1台で決済が可能となっている。可愛いスタンプで決済が完了する可愛らしい仕様が特徴だ。
前編ではプロジェクトの概要、実証実験の様子をお送りした。後編となる今回は、プロジェクトに参画したりそな銀行の地域オフィサー・奥田浩之氏のインタビューをお届けする。

りそな銀行・ギフティ・BUZZPORTの3社合同で行われたプロジェクト「旅するフクブクロ」。日本有数の酒処「灘五郷」で、キャッシュレス化した新たな地域通貨を提供した。今回のプロジェクトは「大手銀行」「スタートアップ」「伝統産業」の3つの異なる産業が連携してのプロジェクトとなった。

今回は、プロジェクトを主導したりそな銀行の地域オフィサー・奥田浩之氏のインタビューをお届けする。奥田氏は、今回の事例を端に発し、承継者不在の“レガシーセクター”と若い世代が中心の“スタートアップ”がシナジー効果を発揮する事例が増えていくのではないかと指摘する。

銀行が旅行をパッケージング?購買行動を軸にした「ファンコミュニティ」の創出で、地方にお金を還流させる

―― 今回、Crewwの「神戸オープンアクセラレータープログラム」で株式会社ギフティ・株式会社BUZZPORTとの連携が決まりました。実際にエントリーされてみてどんな感触を得ましたか?
Crewwは圧倒的に登録されているスタートアップの数が多く、連携した2社以外にも可能性を感じる企業さんとたくさん話をさせていただきました。自力でウェブ検索で探すとなると非常に労力がかかるので、Crewwを介して様々な経営者とお話できたことはありがたかったですね。

―― 多くのスタートアップとお話を重ねた中で、今回はギフティ、BUZZPORTとの連携を決めました。決め手はなんだったのでしょうか。

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りそな銀行地域オフィサー 奥田浩之氏

銀行の3大機能は「決済、融資、預金」です。しかし、これから銀行が生き残っていくには、機能を高めるだけでは。お客さまに満足して頂くことが出来ません。顧客の記憶に残る質の高いUXを提供する必要があります。今回は質が高く、ユニークなUXを顧客にご提供出来る可能性を感じた2社と連携させていただくことを決めました。

―― 「大手銀行 × スタートアップ」は珍しい協業スタイルだと思いました。プロジェクトを進める中で、難しかったことはありましたでしょうか。
スタートアップと大手銀行で一番異なるのは文化です。銀行の人間とスタートアップの人間では使う言語が異なるので、コミュニケーションに少し難しさがありました。また、スタートアップは非常に動きが早く、逆に銀行側がスピードについていくのに苦労しましたね。スタートアップと関わる中で、逆に私たちの課題を認識できました。

―― 今回の「旅するフクブクロ」、最終的に目指すところとは?
私たちは今回のデジタル通貨を日常のあらゆるものに適用しようとは思っていません。目指すのは「ファンコミュニティのパッケージ化」です。

例えば旅行会社と組み、灘五郷へ行くプランを作るときに「電車や買い物、ホテルもすべてスタンプで決済が可能」というパッケージングです。キャッシュレスで電子スタンプを集めながら旅行する、新しい余暇の楽しみ方を提案することも目指す形の1つだと思っています。

―― 次のフェーズとして、どんなことを想定していますか?
デジタル通貨を広めるために、加盟店を増やすことが先決です。なるべく低い手数料で、加盟店が増えるような収益構造を考えていく必要があると思っています。

Crewwの新たな可能性“レガシーセクター×スタートアップ”で、良質な伝統事業を盛り上げる

―― 今回、地方の伝統産業と関わる中で、業界のさまざまな側面が見えたのではないでしょうか。
地方の産業の多くは経営に問題はありませんが、「次の事業」になかなか踏み出せないことが大きな課題の1つとしてあります。後継者問題も深刻です。今後、Crewwのスタートアップコミュニティ等と更なる連携を目指し、今回の試みに留まらず“レガシーセクター”の課題をスタートアップとコラボレーションすることで解決することができるのではないかと思いました。

―― スタートアップの若々しさを取り入れていくということですね。
地方では行政機関でもアントレプレナーを養成されたり、事業承継に取り組んでおられますが、まだまだ確度は高くありません。レガシーセクターの課題をスタートアップが解決するだけでなく、廃業してしまいそうな事業の「箱」を引き継ぐような動きができれば、面白いことができるのではないでしょうか。

―― なるほど。それは面白そうです。
「伝統産業」などを中心に、スタートアップが入ろうとしても入れない、参入のきっかけにが乏しい業界はたくさんあります。そういった業界にもスタートアップが入っていければ、面白い動きが生まれそうですね。

また、「もったいないなぁ」と思う地方の動きの1つに、良質な事業が廃業に追い込まれたり、ときには非常に安い値段で売買されているといったことがあります。Crewwの提供するプログラムが地方に広がれば、そういった問題も解決できる可能性があるのではないでしょうか。
 
ライター:半蔵門太郎
 
(了)
 
前編はこちら
 
りそな銀行:http://www.resonabank.co.jp/
株式会社ギフティ:https://giftee.co/
株式会社BUZZPORT:https://www.buzzport.tours/

 
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スタンプをポンッ!で決済完了。神戸・灘五郷で行われた、りそな銀行×ギフティ×BUZZPORTによる「デジタル通貨」実証実験に迫る【前編】

りそな銀行 地域オフィサー 奥田浩之氏

スタートアップと大企業、さらにローカルが交わる「オープンイノベーション」領域を開拓してきたCreww。同社は2017年1月より、「イノベーションのエコシステムを備えた街」神戸市と共同で「神戸オープンアクセラレータープログラム」を運営してきた。エントリー企業とスタートアップをキュレーションし、神戸市内で新規事業を創出させるプログラムだ。プログラム開始から1年、晴れて1つの新たな事業モデルが誕生した。りそな銀行と株式会社ギフティ、株式会社BUZZPORTによるデジタル地域通貨プロジェクト「旅するフクブクロ」だ。「旅するフクブクロ」は“デジタル化された商品券”。専用の電子ウォレットのページに保存された通貨から手続きを済ませることで、スマホ1台で決済が可能となっている。可愛いスタンプで決済が完了する可愛らしい仕様が特徴だ。まだ実証実験の段階ではあるが、可愛いらしいテイストで簡便化されたUIは、広く受け入れられていく可能性をみせる。今回は日本を代表する酒どころの1つ「灘五郷」で行われた実証実験の様子をお届けする。

ローカル特有の文化としてたびたび紹介される「地域通貨」。しかし、その成功事例はまだ少ない。その理由は、法定通貨と兌換できないことによる流通性の低さ、「わざわざ使うまでもない」と思わせてしまうユーザー体験の満足度の低さにあった。

りそな銀行・ギフティ・BUZZPORTの3社で行われた本プロジェクトは、そんな地域通貨に新しい風を呼び込む。「旅するフクブクロ」は、「福袋」と「スタンプ」の組み合わせによる楽しいUXを提供。「地域通貨」を使う理由となりうる「付加価値」をつけたサービスとなっている。

スタートアップと大手銀行。この異色のマッチングはCrewwが主催する「神戸スタートアップアクセラレーター」により実現した。今回は神戸の酒心館・菊正宗酒造で行われた「デジタル通貨」の実証実験の様子をお届けする。

スタンプポンッ!で決済完了。思わず買ってみたくなるUXとは?

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「旅するフクブクロ」の使用画面のサンプル

今回の実証実験に参加した100組200名には2万円分のデジタル通貨が支給されている。専用の電子ウォレットのページに保存されたこの通貨を使い、灘五郷の10か店をめぐり様々な福袋を購入することができる。

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ユーザーは使用する金額を記入し、購入するフクブクロを選択できる。酒心館では「2000円」「3000円」と2種類の福袋が用意されており、好きな福袋を選択できる。

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福袋の金額を選ぶとスタンプを押印する画面が表示される。

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店員がスタンプを押すと…

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恵比寿様を模したキャラクターが表示され、「決済完了」となる。

楽しく、思い出に残るUXが「旅するフクブクロ」の特徴だ。スタンプ技術は協業した株式会社ギフティの「Welcome!STAMP」の技術が応用されている。同社はIT技術を用いたギフトサービスが強みのベンチャー企業。先の「Welcome!STAMP」の導入事例には、長崎の五島列島で使えるデジタル商品券「しまとく通貨」がある。

このサービスは「日本酒」のようなコアなファンがいるコミュニティの熱量を上げることを期待されており、プロジェクトに参画したりそな銀行の地域オフィサー・奥田浩之氏はこう語る。

「デジタル通貨によるキャッシュレス化によりファンコミュニティの購買行動がより便利に楽しくなることで、オフライン体験の幅が広がり、ファンが増える契機になれば良いと思う」。

ITに不慣れな層でも安心して使えるUX。単なる「購買行動」が思い出に

今回の実証実験は、日本有数の酒どころとして知られる「灘五郷」の一角を担う「神戸酒心館」で行われた。神戸酒心館の醸造する純米吟醸「福寿」は、山中伸弥教授がノーベル賞を受賞した折、受賞パーティでも振舞われたことで話題になった

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当日、天気はあいにくの雨だったが、店内は多くの人で賑わっており、日本酒の「コア」なファン層の存在を感じた。写真は大阪から足を運んできた女性。友達に勧められ、実証実験への参加を決めたという。実際に使ってみた感想を聞いた。

―― 実際に「旅するフクブクロ」を使ってみていかがでしたか?
スタンプの仕組みがおもしろかったです。財布やポイントカードを出す手間が省け、会計がすぐに終わるのですごく便利でした。友達から誘われて参加しましたが、友達とも盛り上がり、とても楽しい体験になりました。

―― 電子マネーは普段からよく使われますか?
電車のICカード乗車券以外はあまり使いません。

―― 今回「地域通貨」としての電子マネーを使ってみていかがでしたか?
クレジットカードで商品が購入できる形式だと、なんでも買ってしまい、制御がきかなくなってしまう怖さがありました。今回の「旅するフクブクロ」は商品券のように金額が設定されており、無限に使う恐れがありません。使いすぎる心配がなく、安心して買い物ができました。

つづく後編では今回のプロジェクトに参画した、りそな銀行の地域オフィサー・奥田浩之氏のインタビューをお届けする。「キャッシュレス化」が進む潮流の中で、このプロジェクトを実行することの意味は何か。どんな未来を実現したいのか、今後の展望について迫った。
 
ライター:半蔵門太郎
 
(了)
 
後編はこちら
 
りそな銀行:http://www.resonabank.co.jp/
株式会社ギフティ:https://giftee.co/
株式会社BUZZPORT:https://www.buzzport.tours/

 
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「ビックカメラ×ヒナタデザイン」がARで創造する新たな“お買い物体験”とは?【後編】

ヒナタデザイン 代表取締役 大谷佳弘氏
ビックカメラ 吉沼由紀夫氏
ビックカメラ 王睿氏

物流と消費者活動が変化していくなか、小売業態はオムニチャネル化していかなければ生き残りが難しくなる。今回取り上げるのは、ECサイト上で閲覧した商品を、ARを用いて実物大でチェックできるサービス「scale post viewer AR」。同サービスを手がけるヒナタデザインは、家電小売大手のビックカメラと協業。自宅で商品イメージを確認できることで、消費者に新たなお買い物体験を実現しようと奮闘中だ。「crewwコラボ」を通じて協業が決定した、両社の取り組む“EC革命”について話を伺った。

技術への理解が成功の鍵。協業を実現した“ブラッシュアップ期間”

―― 提案とアウトプットに変化があるとお伺いしまいしたが、ブラッシュアップ期間中に苦労された点はありますか?

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ヒナタデザイン 代表取締役 大谷佳弘氏

大谷佳弘(以下、大谷):当初の提案では、お部屋の画像データをお客様にも登録していただき、そこに商品画像データを配置するアプリでした。一方で、当時開発を進めていたARでの画像表示の提案に切り替えましたが、やはり新しい技術を取り入れるのは不安やリスクを伴います。そこを勇気を持って導入を決断していただけたことが、協業のポイントになっているのではないでしょうか。

吉沼由紀夫(以下、吉沼):ヒナタデザイン様のご提案は、我々が持つ課題を解決する上で相性がとにかく良かったのです。実物の確認ができないネットショッピングはもちろん、店舗で購入した場合でも、「自宅に運んでみたら入らなかった」というケースが一定数あります。それではお客様にご迷惑をかけてしまいますし、小売店としてはコスト負担が大きくなってしまいます。

AR技術について詳細は知っておりませんでしたが、ブラッシュアップ期間を通じて理解を深め、確実にニーズのあるサービスだと確信したことが大きかったです。

王睿(以下、王):実際に導入してみて、紹介ページを観てくださるお客様が一定数いらっしゃることを確認できました。まだ導入して間もないですが、ニーズを把握できたことは今後につながってくると思います。

住宅展示場に派生する新たなチャネル。ARで実現する小売販売の未来

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ビックカメラ 王睿氏

―― 今後、今回の協業から新たな取り組みに派生していく可能性はありますか?
王:主に当社のインターネット通販サイトで展開している現在の取り組みを、店舗にも拡げていきたいと考えています。将来的に、たとえば店舗で電子レンジなどを購入する際、自宅のラックに設置できるかどうかを店舗にいながら確認できるようになれば、非常に有意義です。

さらにその先には、自宅のリフォームをご検討中のお客様に対して、リフォーム後の部屋のイメージをシミュレートできるサービスも展開できれば良いですよね。実は、ビックカメラでもリフォームの提案を行なっております。

大谷:他社様との取り組みで、すでに住宅販売サービスと「scale post viewer AR」を掛け合わせた取り組みを実施しています。住宅展示場でビックカメラ様の商品をAR表示すれば、その場で購入される方もいるのではないかと考えています。小売販売の新たな形を提案できれば嬉しいです。

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ビックカメラ 吉沼由紀夫氏

吉沼:「これを買おう」と決めて店舗に足を運んでくださるお客様ではなくとも、たまたま店舗に足を運び、商品に興味を持ってくださった方に強くアプローチができるのではないでしょうか。

アプリをダウンロードしてくださった場合、自宅で再度商品をチェックすることも可能です。紙のカタログにQRコードを付与すれば、捨てられずにずっと持っていてもらえるかもしれません。今回の協業を皮切りに、ますますお買い物体験を向上させていければと思っています。

前編はこちら

 
ヒナタデザイン:http://www.hinatadesigns.jp/
ビックカメラ:http://www.biccamera.co.jp/bicgroup/index.html
ライター:オバラミツフミ
(了)
 
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「ビックカメラ×ヒナタデザイン」がARで創造する新たな“お買い物体験”とは?【前編】

ヒナタデザイン 代表取締役 大谷佳弘氏
ビックカメラ 吉沼由紀夫氏
ビックカメラ 王睿氏

物流と消費者活動が変化していくなか、小売業態はオムニチャネル化していかなければ生き残りが難しくなる。今回取り上げるのは、ECサイト上で閲覧した商品を、ARを用いて実物大でチェックできるサービス「scale post viewer AR」。同サービスを手がけるヒナタデザインは、家電小売大手のビックカメラと協業。自宅で商品イメージを確認できることで、消費者に新たなお買い物体験を実現しようと奮闘中だ。「crewwコラボ」を通じて協業が決定した、両社の取り組む“EC革命”について話を伺った。

高額な家電販売に、ARというソリューション。
“家電のO2O”を実現する、「scale post viewer AR」

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ヒナタデザイン 代表取締役 大谷佳弘氏

―― まずは、ヒナタデザインの事業内容について教えていただけますでしょうか
大谷佳弘(以下、大谷):スマートフォンで簡単に商品の実物大の大きさや色を確認できるアプリ「scale post viewer AR」を展開しています。もともとプロダクトデザインがしたくて会社を立ち上げたのですが、ウェブやUI設計/デザインも行う中で、諸々の試行錯誤を経て現在の事業へとたどり着きました。

―― 開発の経緯を教えていただけますか?
大谷:僕が役員もしているアーキノートという会社で、建築士のためのアプリを開発していたことがきっかけです。建築士の方たちはアイデアを模索する際に、何度かコピー機を使って図面を同じ縮尺に合わせています。それではとても面倒だろうと思い、スマホで写真を撮影し、デジタル画像で縮尺を合わせられるアプリをリリースしました。

すると弊社のクリエイティブアドバイザーをしている建築士が、「実物大でも衣装デザインを見たい」と言うんです。これまでにない発想だっただけに、とても面白いと感じました。実物大で画像を表示するサービスが世界中でなさそうだったので、そこから「scale post viewer AR」が誕生したのです。

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AR表示させたい商品のQRコードをアプリで読み取ると、カメラ越しの画面に実寸大で表示が可能になる。(詳細な使用方法はこちら)

大谷:「scale post viewer AR」は、スマホのカメラで映し出した光景に、特定の画像を実物大の大きさで表示することができます。たとえば冷蔵庫を部屋の中に置きたいと考えたときに、実際のレイアウトを購入前にARで確認できるんです。

今回crewwコラボを通じて協業させていただいたビックカメラ様とは、ECサイトで販売されている商品のうち、48のアイテムをAR表示できるようになっています。高額な商品でも、自宅で購入の意思決定ができるようになるのではないかと考えました。

小売大手が挑む“イノベーションのジレンマ”の打破。
ウェブから仮想空間へとつながる“新たなお買い物体”とは?

―― 小売店との相性が良さそうですね。ところで、ビックカメラ様が「crewwコラボ」に応募された理由を教えていただけますか?

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ビックカメラ 吉沼由紀夫氏

吉沼由紀夫(以下、吉沼):当社は、「より豊かな生活を提案する、進化し続けるこだわりの専門店の集合体」を目指して、事業の拡大を進めてきました。時代とともに変化するお客様のニーズに常にお応えしていくために、取扱い商品の拡大や接客・サービスの充実に努めることはもちろん、当社の店舗が“最新情報の発信基地”となり、新しい買い物のカタチを提案し続けることが重要であると考えています。
現在、当社は実店舗とインターネット通販サイトとを連携させ、今まで以上にシームレスで便利なショッピングの場をご提供できるよう、オムニチャネルの強化に取り組んでおります。そのスピードを加速させるためにも、他社様との協業や、スタートアップのノウハウを取り入れることに、大きな魅力を感じていました。

―― ECサイトを通じた、新たな買い物体験を生み出そうと考えたのですね。
吉沼:そうです。ただ、我々も初めての取り組みでしたので、小売りにとらわれずさまざまなご提案を受け入れようと考えていました。数十社からご応募をいただいた中で、ヒナタデザイン様はとても相性が良かったのです。

―― 実際にコラボをしてみて、社内の雰囲気に変化はありましたか?
吉沼:これまでの商談といえば、弊社に取引先の方が足を運んでくださるケースがほとんどでした。しかし今回のコラボでは、私たちがスタートアップのオフィスにお伺いし、非常にフラットな立場でアイディアを議論することができました。

今までは商品を取引するか、しないかを「判断する」ことが主なやりとりです。今回のようにアイディアをブラッシュアップしていく経験は少なかったので、非常に有意義だったと感じています。

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ビックカメラ 王睿氏

王睿(以下、王):「crewwコラボ」の中でもっとも有意義なのは、提案を受けてから社内プレゼンに至るまでのブラッシュアップ期間にあると思っています。ヒナタデザイン様とのコラボも、最初のアイディアと最終アウトプットは多少変化がありました。お互いのニーズをすり合わせし、また社内のリソースをどう活用するか話し合うことで、これまでにない取り組みができました。

特に今回は、現場でお客様の生の声を聞いている販売スタッフの意見を取り入れながらアイディアをブラッシュアップしていきました。役員が集まる社内プレゼンを、現場のスタッフが担当したケースもあります。「普段では経験できなかったものを得られた」という声が多数あり、素晴らしい知見が得られたと思っています。

後編は2月26日公開の予定です。

 
ヒナタデザイン:http://www.hinatadesigns.jp/
ビックカメラ:http://www.biccamera.co.jp/bicgroup/index.html
ライター:オバラミツフミ
(了)
 
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