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4月25日(火)「オープンイノベーションカンファレンス2017」レポート【前編】

creww「オープンイノベーションカンファレンス2017」開催

スタートアップ・コミュニティーを運営するCreww株式会社が、スタートアップ企業と大企業によるオープンイノベーションの加速を目指したイベント「オープンイノベーションカンファレンス2017」を4月25日に開催した。当日は大企業で、スタートアップ企業との新規事業創出を担当する500名以上が参加。国内外から第一線で活躍するスピーカーを招聘し、会場は熱気につつまれた。creww magazineでは、その様子をいち早くお届けします。

オープニングスピーチ

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オープニングではCreww株式会社代表取締役 伊地知天が、近年高まりつつあるスタートアップx大企業のオープンイノベーションについて熱く解説。参加者へむけて、『こうしたイノベーションを生み出す人々が集るコミュニティーがcrewwの強み。これからもスタートアップとしてcrewwは高速でPDCAを回し、オープンイノベーションの実例を世に送り出したい』と参加者へのお礼に加え、自社の事業にかける想いを伝えました。

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Session1:大企業が捉えるオープンイノべーションの本質

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そして、有識者によるセッションがスタート。まずは、「Session1:大企業が捉えるオープンイノべーションの本質」と題して、神戸大学より大学院科学技術イノベーション研究科 尾教授、東京地下鉄株式会社より経営企画本部 企業価値創造部の小泉課長、キヤノンマーケティングジャパン株式会社より総合企画本部 経営戦略部 新規ビジネス推進課 野間課長の3名が考えるオープンイノベーションの本質について、具体例を交えた話が繰り広げられました。

スタートアップと共同プロジェクトに取り組む中で「現状の課題からは見えてこない、新しいビジネスの挑戦こそがオープンイノベーションの本質」と語ります。

また、キヤノンマーケティングジャパンでは、コラボを機にスタートアップとの人材交流なども行っており、社内の人材育成にも一役買っているようでした。

Session2:今、必要とされるアクセラレーター

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Session2では「今、必要とされるアクセラレーター」として、TechStars(テックスターズ)のDon Burton(ドン・バートン)氏、オランダのアクセラレーター・Rockstart(ロックスタート)の創業者Oscar Kneppers(オスカー・ネッパーズ)氏と、crewwからTim Romero(ティム・ロメロ)と、CEOの伊地知天(いじちそらと)もセッションに参加し、熱い議論が繰り広げられました。

海外のアクセラレータプログラムの実例も交え「いきなりスタートアップと大きく組むのでなく、考えすぎずまずは小さな取り組みから初めて見る事が大切」「アメリカでは“実験なんだ”と認めることによって失敗しても良い文化がある。失敗したらピボットすればいい」等、日本でも通用しそうなメソッドも多く飛び出す貴重なセッションとなりました。

Session3:事例から読み解くオープンイノベーション

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最後のセッション「事例から読み解くオープンイノベーション」では、モデレーターに株式会社HEART CATCH代表取締役の西村真理子氏を迎え、セブン銀行常務執行役の松橋氏とドレミング株式会社CEO桑原氏による、協業事例を紹介しました。

オープンイノベーションの実現で最も重要なのは「やりたいメンバーを集め、権限を与え、短期間でやりきる」と強く語る松橋氏。「crewwコラボで本当にチャンスをもらった。新しい事業モデルだからマーケットがわかりにくい。そこに理解を示してくれたセブン銀行さんとだから前向きに進められている」とドレミングの桑原氏は松橋氏に感謝しつつ、今後のグローバル展開を目指す両者の熱い想いが語られました。

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「SENSORS IGNITION前夜祭」“起業家の挑戦”をテーマに4氏が本音を語る

「STARTUP IGNITION~起業家たちが挑戦し続ける理由」

日本テレビのテクノロジーエンタテイメント番組と連動した恒例の大型イベント「SENSORS IGNITION(センサーズイグニッション)2017」が虎ノ門ヒルズで行われた前夜、3月22日に初めてとなる前夜祭「STARTUP IGNITION(スタートアップイグニッション)」が開かれました。「起業家たちが挑戦し続ける理由」をテーマに、Synapse売却の背景や、Snapeeeの軌跡など、苦闘してきた細かな軌跡や失敗経験にまで踏み込みながら紹介する一方、登壇者からは自身の反省も踏まえた本音のアドバイスが飛び交う異例の展開。参加した約50人が興味深く聴き入りました。

 

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前夜祭の会場となった「虎ノ門ヒルズカフェ」

SENSORSが主催し、スタートアップ・コミュニティーを運営するcrewwが初めて企画した今回の前夜祭。満員となった会場の「虎ノ門ヒルズカフェ」では、参加者間のネットワーキングの場が提供される一方、メインイベントとして、3人の起業家にスタートアップメディアの運営者が聞き出すパネルディスカッションが行われました。

パネルディスカッションで4氏が議論

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左から池田さん、山本さん、神尾さん、田村さん

「起業家たちが挑戦し続ける理由」のテーマで行われた今回のパネルディスカッションに登壇したのは次の4氏。

株式会社レレレの創業者で、現在は求人サイト「キャリコネ転職」「キャリコネ」などを運営する株式会社グローバルウェイで「グローバルウェイラボ」の室長をつとめる山本大策さん

写真共有サービス「Snapeee(スナッピー)」で知られる株式会社マインドパレットの共同創業者で、昨年10月に創業したジャクール(JaQool)株式会社の取締役として活躍する神尾隆昌さん

学生起業家としてモバキッズ(現シナプス株式会社)を創業し、2017年2月からは新たにDMM傘下としてオンラインサロン「Synapse(シナプス)」を運営する田村健太郎さん

起業家3氏に加え、モデレーターは「起業家と投資家を繋ぐ」をコンセプトとし、国内スタートアップを支援してきたスタートアップ・ブログメディア「THE BRIDGE(ザ・ブリッジ)」の共同創業者である池田将さんがつとめました。

“失敗経験”など聞きづらいことも話す

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終始なごやかな、というより常に本音のトークが繰り広げられた

パネルディスカッションでは3人の起業家に対し、モデレーターの池田さんが「普段は聞きづらいことを聞いていくのが今夜のテーマ」と、これまでの“失敗経験”を引き出しながら過去の経歴と現在の事業概況を尋ねていきました。

グローバルウェイの山本大策さんが会社員時代に個人で作ったのは、コーヒー1杯を飲む時間を一緒に過ごしたい人と出会える「CoffeeMeeting(コーヒーミーティング)」。同サービスが高い評価を得たのを機に独立し、株式会社レレレとして、個人の時間を気軽に売買できるサービス「TimeTicket(タイムチケット)」もリリースしています。

初めに作ったCoffeeMeetingについて、「ユーザ数は今も多いのですが、マネタイズ面では失敗したかもしれません」と話す一方、「CoffeeMeetingでユーザさんの信頼が得られたことで、次に出したTimeTicketの利用につながっている」と明かしました。

現在はレレレをグローバルウェイに売却。社内でも独立的な存在である「グローバルウェイラボ」のチームを率い、新たな働き方に関する新サービス開発を進めている最中だといいます。「レレレ時代はすべてを一人でやってきたが、限界も感じた。今はあえて自分がやらないようにしている」と話します。

ジャクール(JaQool)株式会社取締役の神尾隆昌さんは、“アジア版インスタグラム”として1400万人以上のユーザを獲得して話題を呼んだ写真共有サービス「Snapeee(スナッピー)」の生みの親として知られます。しかし、2016年6月には会社を任意整理に踏み切ることに。

「投資家の方々には損をさせてしまったのに、温かく見守っていただき本当にありがたかった」と振り返る一方、「起業時に戦略がないままサービスのユーザビリティ向上ばかりを追求してしまい、結果としてマネタイズができず、それが敗因となった」と反省の弁を述べました。

現在は、ケンコーコムの元社長として知られる後藤玄利さんらとともに、モバイル翻訳サービスを展開するジャクールを2016年10月に新たに立ち上げ、海外からの訪日客に向けたサービスを急ピッチで開発している最中です。

シナプス株式会社の田村健太郎さんは、一橋大学経済学部在学時の2007年に起業し、2009年にはWeb漫画の投稿コミュニティサイト「MANGAROO」を立ち上げるなど、電子書籍関連のビジネスを展開。2012年に方向転換し、オンラインコミュニティを簡単に構築できるオンラインサロンプラットフォームの「Synapse(シナプス)」 をリリースしました。

元ライブドアの堀江貴文さんら著名人が愛用するなど、Synapseはオンラインサロンのパイオニアとして誰もが知る存在ですが、開始当初は苦労し、「2年くらいは売れなかったですね……」と田村さん。「堀江さんが使ったことで爆発的に伸びたので、堀江さんに足を向けて寝られない」と会場を沸かせました。

そんなSynapseの好調ぶりを見て戦いを挑んできたのは、あらゆる分野で次々と新規事業を立ち上げることで知られるDMM。2016年2月に「DMMオンラインサロン(DMMラウンジ)」を開始し、Synapseと真っ向から競合することになります。

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前夜祭の会場には多数の参加者が詰め掛けた

なぜ競合相手に会社を売ったのか

SynapseとDMMのオンラインサロン分野での戦いについて、モデレーターの池田さんが質問を連続。田村さんは「ある日、亀山さん(DMM創業者の亀山敬司さん)の代理という方が訪ねて来られまして」と明かしました。これがきっかけとなって、2017年2月のDMMへの会社売却につながります。

「2年くらい頑張ってDMMと戦い続ければ、向こうが諦めるでしょうから、そういう選択肢もあった」と話す一方、「でも、DMMと一緒にやったほうが結局はユーザのメリットが大きくなるのではないかと考えた」と売却の背景を明かしました。

「で、いい感じに売れたんですか」と突っ込む池田さんに対し、田村さんは「満足はしています」と答えました。

DMMとSynapseの話題を契機にサービスとユーザの関係に話がおよび、巨大サービスの「Snapeee」を停止した経験のある神尾さんは「ユーザのケアが何もできず本当につらかった」と振り返り、「10社くらいに興味を持ってもらい、譲渡を検討しましたが、若い女性向けということもあって緻密な運用が求められます。他社では難しいことが分かり、断念せざるを得なかった。人生の負い目として今も反省しています」と吐露。

一方、山本さんは「(エンジニアなので)自分で作ったサービスを閉じるのは難しい」といい、「やっぱり自分は起業家には向いてないかもしれません、たまたまリクルート勤務時代に作ったサービスが人気が出ただけ」と分析しました。

一歩を踏み出せば、失敗しても何とかなる

失敗や反省も含め過去の経験が今のチャレンジにどう生きているかを尋ねる池田さんに対し、「投資家の話を全部信用しないこと。特にメディアの方は投資家の話を持ち上げ過ぎですよね」と山本さんが言うと、投資家とスタートアップをつなぐメディア運営者である池田さんが「ついに私に反撃が来てしまいました。すみません・・・」と頭を下げ、会場が湧きました。

起業について田村さんは「失敗しても何とかなりますし、応援してくれる人もいっぱいいる。とにかくやってみた方がいい」とアドバイス。神尾さんも「背水の陣とか命がけとか投資担当者はそんな言葉をよく使いたがりますが、命なんてかけたらダメ。やり切ってからの失敗を糧に、次の起業で恩返しするくらいの心構えでいないと」と言います。

山本さんも「会社を作る必要もないし、とにかく作りたいものを作って出してみればいい。もっと気楽に考えてみていい。その一歩を踏み出すことが大事なんです」と連続起業の重要性や起業のエコシステムに関する提言が次々と飛び出し、パネルディスカッション後も登壇者にアドバイスを求める参加者が相次いでいました。

 

STARTUP IGNITION(スタートアップイグニッション)
SENSORS IGNITION 2016 注目スタートアップの先端技術が集結!(2016年レポート)

 


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オープンイノベーションの知を集結。crewwが4月25日(火)「オープンイノベーションカンファレンス2017」を初開催

creww「オープンイノベーションカンファレンス2017」

スタートアップと大手企業によるオープンイノベーションの知を集結−−−。約500名の参加者を前に、日本におけるオープンイノベーションの本質を豊富な事例をもとにその実態を紹介します。また、多数のスタートアップを成長させ、イグジットに導いてきた海外の著名アクセラレーターを招き、日本での革新的な新ビジネス創出に必要な“解”を探っていきます。

オープンイノベーションの祭典として「オープンイノベーションカンファレンス」を開催

スタートアップと大手企業によるオープンイノベーションの集大成として、crewwは、創業以来初めてとなる大型イベント「オープンイノベーションカンファレンス(Open Innovation Conference)2017」を4月25日(火)の午後に虎ノ門ヒルズで開催します。

現在、日本国内には約5000社のスタートアップ企業が存在すると言われています。crewwは日本が再び世界のリーダーとなるうえで不可欠なのが、スタートアップ企業の先進的な発想や技術を事業とするために、大企業の豊富な経験やインフラを組み合わせることだと考えています。

それは、昨年(2016年)国が初めて主導する形でまとめた「オープンイノベーション白書」にも表れており、スタートアップのユニークな事業と大企業のリソースを組み合わせる「オープンイノベーション」によって、社会に影響を与えうる革新的なビジネス創出が期待できるとしています。

まさにcrewwでは2012年の創業以来、オープンイノベーションの重要性を訴え続け、これまでに大手企業80社以上のオープンイノベーション・プログラムを実施し、スタートアップと大企業のパートナーとして両社をつなげる役割を担ってきました。

今回のカンファレンスでは、crewwが約5年にわたって行ってきたオープンイノベーションの集大成として、「スタートアップと大企業による新規事業創出の最前線」とのテーマを設定。3つのセッションとアワードを通じ、オープンイノベーションの実態と成果を国内外に広く共有するとともに、米国などからも著名アクセラレーターを招聘。世界の最新動向をあわせて知ることにより、日本におけるオープンイノベーションをさらに加速させます。

メインセッションでは「日本を代表する大手3社が踏み出した理由」を解き明かしていきます。
【Session1:大企業が捉えるオープンイノベーションの本質】

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当日行われる3つのセッションのうち、14時50分からのセッション1では、「大企業が捉えるオープンイノベーションの本質~なぜ我々がオープンイノベーションに取り組んだのか」と題し、Crewwのプラットフォームを通じてオープンイノベーションを実施した東京地下鉄(東京メトロ)とキヤノンマーケティングジャパンのプログラム責任者者が登壇します。

日本を代表する巨大鉄道会社である東京メトロや、グループ全体で約19万人の社員を要するキヤノングループのキヤノンマーケティングジャパン、両社がどのようにオープンイノベーションを成功に導いたのかを解き明かしていきます。

神戸大学の大学院科学技術イノベーション研究科で教授をつとめる尾崎弘之氏がモデレーターとなり、超大手ともいえる2社がオープンイノベーションに踏み出した背景と、社内での環境醸成をどのように行ったのかなどについて、その実態に踏み込んでいく貴重な機会となる予定です。

海外の著名アクセラレーターにCEO伊地知天が迫る
【Session2:今、必要とされるアクセラレーター】

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続く15時40分からのセッション2「今、必要とされるアクセラレーター~オープンイノベーションの実現に向けて」では、全米有数のアクセラレーターであるTechStars(テックスターズ)を経て、現在は教育テクノロジー関連アクセラレーターとして活躍するDon Burton(ドン・バートン)氏をはじめ、オランダのアクセラレーター・Rockstart(ロックスタート)の創業者であるOscar Kneppers(オスカー・ネッパーズ)氏が登壇。さらに、日本での連続起業家として豊富な経験を持つTim Romero(ティム・ロメロ)氏や、crewwのCEOである伊地知天(いじちそらと)も議論に参加し、まさに本テーマの最前線にいる4氏が世界におけるオープンイノベーションの現状に迫ります。

日本と比べ、オープンイノベーションのエコシステムが構築されていると言われる米国などの地で、大手企業とスタートアップがそれぞれどのような役割を担い、革新的なビジネスが生み出されているのか。スタートアップにも大手企業の側にも、大きな参考となる最新トレンドに迫ります。

セブン銀行とドレミングの事例から、協業成功へ導く有効な手法と秘訣も公開
【Session3:事例から読み解くオープンイノベーション】

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3つ目の16時50分に開始するセッション3「事例から読み解くオープンイノベーション」では、世界の貧困格差を減らすプラットフォーム事業を展開する2015年創業のドレミング株式会社(福岡市中央区)とセブン銀行(東京都千代田区)による協業事例を紹介します。
両者のオープンイノベーションによる新規ビジネスの詳細や秘話は、この場で初公開となる注目のセッションです。

2万3000台のATMを24時間365日無休で展開するなど、これまでもパートナー企業と革新・改善を積み重ねきたというセブン銀行が行ったオープンイノベーションでは、次世代ATMを活用した新展開として、ドレミングと協業。実際にサービス開発にまで踏み出しています。この春発表予定の協業内容についても深く知ることができます。

セッションでは、今回のオープンイノベーションを担当したセブン銀行の松橋正明常務執行役員と、ドレミングの桑原広充CEOに加え、HEART CATCH(ハートキャッチ)の西村真理子代表取締役がモデレーターとして参加。スタートアップと大企業の協業どのように実現したのかについて、その手法と秘訣を解き明かすとともに、協業によるサービス開発の現状まで踏み込むことで、オープンイノベーションにおける“ゴール像”を考えていきます。

経産省の石井氏らを交え、事例から選ぶ「crewwアワード2017」
【Creww Award 2017】
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これまでcrewwが行った80社以上のオープンイノベーションプログラムから、協業へと進んだ7の事例を選び、さらにこのなかから1チーム(スタートアップと大企業)を大賞として選出する初めての企画「crewwアワード2017」は17時35分にスタートします。

経済産業省から経済産業政策局 新規産業室 新規事業調整官の石井芳明氏をはじめ、グロービス・キャピタル・パートナーズ ジェネラルパートナー COOの今野穣氏、電通ビジネス・クリエーション・センター ポートフォリオ・マネジメント室長の久保田純一郎氏が審査委員となり、事業の成長性やシナジー、将来性という3つの観点から客観的な目で選考が行われる予定です。一般的に公開することが困難な協業事例が多いなかで、オープンイノベーションの“手本”となるような事例はどのような内容だったのか。スタートアップと大企業がペアになり、この場で初めてプレゼンテーションをします。

19時からは第二部としてアフターパーティーが予定されており、crewwが厳選したスタートアップ約40社による展示ブースを設けることで、カンファレンス参加者が大手企業との協業に積極的なスタートアップを知る機会となっています。

カンファレンスへの参加費は8,500円(同時通訳レシーバーレンタルの場合8,900円)で定員は500名。時間は14時30分から21時までを予定しています。チケットは「EventRegist(イベントレジスト)」で取り扱っており、定員に達した時点で締め切りとなります。

 

creww「オープンイノベーションカンファレンス2017」のチケット購入はこちら
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個性的な声が集まるニュースメディア「Voicy」がスポニチと組んだ理由【後編】

株式会社Voicy 代表取締役 緒方憲太郎氏

株式会社VoicyのCEO 緒方憲太郎さんインタビューの後編です。後編では創業経緯やcrewwコラボへ参加したきっかけ、コラボのポイント等を語っていただきました。

大企業の延命を助けるためにスタートアップは存在しているわけではありません。組むことで、世の中のために大企業とスタートアップで何を提供できるのか、互いに尊重した協力ができるかどうかの視点が大事です。

―― Voicyのようなユニークなアプリで起業された緒方社長ですが、もともと公認会計士という“堅い職業”に就いていたそうですね

とにかく人が好きで、その影響なのか色んな人が集まる「会社」という存在が大好きだったんです。大学時代は物理学を専攻していたのですが、卒業後に経済学部に入学しています。寝ても覚めてもテニスに熱中するあまり、“理系”の道を諦めたという面がないわけではありませんが、会社好きだったということも決断した要因です。

社会に出たらとにかく多くの会社に携われる仕事がしたい、と考えた時に浮かんだのが公認会計士でした。経済学部に入ってから猛勉強して卒業の年に資格をとり、大阪の新日本有限責任監査法人でお世話になりました。

―― 4年ほど公認会計士として活躍された後、世界を放浪されたとか

1年かけて30カ国以上を巡ったでしょうか。最終的にはニューヨークで就職して働くことになったのですが、海外放浪中米国ボストンでは医療系NPOを立ち上げたり、オーケストラのマネジメントをしたり、ニューヨークでは日本人のコミュニティを作ったり、現地でも多くの人とつながりを作りながら生活していました。かつてニューヨークで立ち上げたニューヨーク若手日本人勉強会というコミュニティは、今や1900人規模にまでなっているそうです。

―― 帰国後はトーマツベンチャーサポートでベンチャー支援に注力されています

米国でゼロからコミュニティや事業を立ち上げる楽しさを経験したことや、トーマツとご縁があって「一緒に面白いことをしよう」と誘っていただいたのがきっかけです。

無のところから新たな価値を生み出すというスタートアップの支援は、本当にやりがいがあり、まさに天職だと思いました。当時は日本で一番ベンチャー企業をまわった公認会計士かもしれません。今も6社ほどの企業の顧問をさせていただいているのですが、やはり最終的には自分でもやってみたいという思いが強くなりまして・・・。特に、メディアは表現の部分でまだまだ変われるはずだという思いとアイデアも起業前から持っていました。

―― スタートアップ支援の“プロ”だった緒方社長がcrewwを知ったきっかけは何だったのですか

ベンチャー支援を専門にしている企業に勤めていましたから、当然知っていまして、まさにcrewwはライバルですよ(笑)。われわれには監査法人特有の品質の高いコンプライアンスという縛りもありましたので、crewwはしがらみなく自由に素早く動けていいな、との思いを、どこかで持っていました。当時自分のやりたいと思っていることを次々先にやられてしまっている感じでした。

自分が起業してからは、crewwコラボを通じてスポーツニッポン新聞社さんと繋がることができ、本当に感謝しています。

―― スタートアップの失敗も成功も数多く間近で見て来られたなかで、大企業との付き合い方という部分でアドバイスをいただけませんでしょうか

なぜ大企業と組む必要があるのか、深く考える必要があります。言い方は悪いかもしれませんが、スタートアップが唯一、大企業に勝っているのはスピード感、つまり意思決定の速さだけです。それ以外はだいたい大企業のほうが優れています。そのなかで両者にメリットがないのに組んだとしても、誰も得しません。

大企業の延命を助けるためにスタートアップは存在しているわけではありません。組むことで、世の中のために大企業とスタートアップで何を提供できるのか、互いに尊重した協力ができるかどうかの視点が大事です。それがないのに組んでもスタートアップ側にメリットはないでしょう。

また、コラボする際の細かな部分で言えば、大企業側の「稟議」がどういうプロセスになっているのかを知っておくとスムーズに進みます。できうる限り、最終意思決定者に近い人から話をしておかないと、途中で条件が変わってしまうことや、終盤で話がひっくり返されることもあります。頼る人や握る人を選ぶということもスタートアップが上手く大企業と組むために重要だと考えています。

―― 深いアドバイスをありがとうございました

緒方憲太郎さんのcrewwページ
Voicyの公式サイト



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個性的な声が集まるニュースメディア「Voicy」がスポニチと組んだ理由【前編】

株式会社Voicy 代表取締役 緒方憲太郎氏

声で自由に情報を受発信できるユニークな放送局アプリ「Voicy(ボイシー)」が大手メディアから注目を集めています。2016年9月にβ(ベータ)版を公開後、毎日新聞社やスポーツニッポン、西日本新聞などと相次ぎ提携。プロから個性的な素人までがパーソナリティとして、質の高いニュースソースを活用して声で伝えることができるようになっています。株式会社Voicy(東京都渋谷区)を2016年2月に創業した緒方憲太郎さんに、サービスの現状と今後の展開を伺いました。

「声と個性」の表現力が加わることで、より人の感性に訴えられるなど、体温のある情報になり、新しい価値が生まれる

―― 放送局アプリとして開発された「Voicy(ボイシー)」では何ができるのでしょうか

簡単に言いますと、活字メディアの情報を使い、誰もが声による発信ができるアプリです。また、発信するだけでなく聴くことも可能です。

発信者はパーソナリティということになり、新聞やWeb媒体など、弊社と提携しているメディアに載っている記事(一次情報)を声に出して読み、それが自らの“放送局(チャンネル)”のコンテンツということになります。

どんな記事を読むかは、パーソナリティの個性が出ますし、方言や独特の言い回しで読む方もいて、聴く側は自分の好きなパーソナリティの放送を選ぶことができます。

たとえば、プロ野球の結果を伝えるにしても、巨人ファンのパーソナリティと阪神ファンのパーソナリティでは、勝敗によって声色や伝え方も違ってきますし、標準語なのか大阪弁なのかでも変わってきますよね。

選ぶ記事も、面白いと思うニュースを取り上げる人もいれば、スポーツや、地域の情報などを積極的に選ぶ人もいます。チャンネルごと、つまりパーソナリティごとに違うコンテンツになり、そこにまた違ったファンがついてきます。

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声で活字を彩る放送局アプリ「Voicy」

―― Voicyを使えば個人が“ラジオ放送局”を開設するようなイメージですが、声コンテンツの元となる活字コンテンツは自由に使っていいわけですね

活字コンテンツについては、メディア各社とVoicyが提携し、記事をオープンソースにしていただき、声のコンテンツとして活用できるよう許可をいただいています。

現在は毎日新聞社さんやスポーツニッポン新聞社さん、西日本新聞社さんなどからVoicyの主旨に賛同いただいており、現在さらに幅広い分野や地域のメディアにお声がけしている最中です。

私たちとしては、「目」を使う文字コンテンツに、「耳」という流通経路と「声と個性」の表現力が加わることで、より人の感性に訴えられるなど、体温のある情報になり、新しい価値が生まれるのではないかと考えています。

作曲者と実際に歌う方が別であることも多い音楽の世界のように、情報コンテンツもネタの作り手と発信者が役割分担してもいいのではないでしょうか。

―― どのような方がパーソナリティとなり、どんな方が聴いているのでしょうか

現在は一定のクオリティを担保するため、パーソナリティはオーディションという形で選ばれた方がチャンネルを作って放送をしています。といっても、厳密なオーディションで「上手い人を選ぶ」というよりは、世界観を共有して楽しんで個性的に配信していただけるかどうかを確認しています。

ナレーターや声優といった“声のプロ”の方もいますが、まったく経験のない方もいます。今は120名ほどがチャンネルを持っていますが、チャンネル数はオーディションごとに増えています。

たとえば、博多の地元紙である西日本新聞を博多弁で読んだり、総理大臣の一日だけを専門で追いかけている人がいたり、なかには自ら現場に突撃取材をしてコンテンツを作る人も存在します。テレビのようにニュースを綺麗に読む人より、個性のある“素人”のほうが人気はある場合もありますね。

聴く側も年齢や性別がさまざまで一概には言えないのですが、子育て中の方が目立っているかもしれません。寝る時には必ず聴いている、という方もいますよ。

 

緒方憲太郎さんのcrewwページ
Voicyの公式サイト

 


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creww最多となる138件のエントリー 東京メトロのプログラムで3件を採択

creww(クルー)史上最多の138件のスタートアップが参加――。東京メトロ(東京地下鉄株式会社)がcrewwと2016年10月から始めたオープンイノベーションプログラム「Tokyo Metro Accelerator 2016(東京メトロアクセラレーター2016)」では、crewwのプログラムで過去最多となる138件のスタートアップがエントリーし、12月15日に2次審査を通過した6件が最終のプレゼンテーションに臨みました。協議時間が予定よりオーバーするなど、最後まで選考委員が悩み抜いた末に選んだ3件とは。

138件から選ばれた6件が最終プレゼンに臨む

Tokyo Metro Accelerator 2016は、crewwに登録するスタートアップとともに「東京の更なる発展に寄与する新しい価値」(同社)を創り出そうという東京メトロでは初の試みです。10月31日から11月9日にかけて、ローンチの有無や短期的な収益性の考慮も不要という条件でスタートアップからのエントリーを広く受け付けました。

1次審査で138件から33件が選ばれ、さらに2次審査を経て、都内六本木で最後となる公開プレゼンテーションを開催。最終プレゼンテーションまで残ったのは次の6社です。

・株式会社LOCUS(ローカス=東京都渋谷区、瀧良太社長):テンプレート型動画サービス「FastVideo(ファストビデオ)

・プログレス・テクノロジーズ株式会社(東京都江東区、中山岳人社長):視覚障がい者向けナビゲーションシステム「AI CAMERA(エーアイカメラ)

・株式会社ナイトレイ(東京都渋谷区、石川豊社長):訪日外国人解析サービス「inbound insight(インバウンドインサイト)

・株式会社ログバー(東京都渋谷区、吉田卓郎社長):インターネットを介さない音声翻訳サービス「ili(イリー)

・株式会社Tadaku(タダク=東京都品川区、石川俊祐社長):外国人が教える家庭料理教室「Tadaku

・Qrio株式会社(キュリオ=東京都渋谷区、西條晋一社長):モノとスマホをつなげるアクセサリー「Qrio Smart Tag(キュリオスマートタグ)

ユニークさと将来性、インパクトで3社を選ぶ

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採択された3社と東京メトロの奥義光社長(右)、審査委員長の髙山専務取締役(左)

最終プレゼンテーションでは、7名の審査員やマスコミ各社をはじめ、東京メトロの経営層や、自らが担当したスタートアップを応援する立場で訪れた若手・中堅社員などが見守る会場で行われました。

外部審査員として招かれた五嶋一人氏(株式会社iSGSインベストメントワークス社長)や麻生要一氏(株式会社リクルートホールディングスMedia Technology Lab.代表)らから時に厳しい質問も飛び出すなか、6社はそれぞれ15分間のプレゼンテーションと質疑応答を終了。

その後に行われた審査協議は、7人の委員による激しい議論が行われ、予定時間を過ぎても終わらないほどに白熱。予定より遅れて始まった結果発表では、審査委員長をつとめた東京メトロの髙山輝夫専務取締役から「ユニークさや将来性、インパクトを考え抜いて選んだ」と述べ、プログレス・テクノロジーズとログバー、Tadakuの3社に決まったことが報告されました。

視覚障がい者と訪日客に向けた先進デバイス

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プログレス・テクノロジーズの中山岳人社長(左)

今回のプログラムに採択されたプログレス・テクノロジーズは、視覚障がい者向けに骨電動デバイス「ShikAI(しかい)」の開発に取り組んでおり、AI(人工知能)を使った物体認識とビーコン(Beacon=位置情報伝達)を活用することで、駅構内を安心して歩ける環境にしたいと提案。

「世の中を変えていくパワーを持っている」(同社を推薦した東京メトロの担当社員)という将来性と技術力が審査員に評価されました。プログレス・テクノロジーズの中山岳人社長は「視覚障がいを持つ方々のため、さらに開発に注力していきたい」と採択されたことに喜びを表しました。

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ログバーの山崎代表取締役兼COO(左)

また、ログバーは、指輪型のウェアラブルデバイス「Ring(リング)」で知られる話題のスタートアップです。そうした経験を生かした音声翻訳デバイス「ili(イリー)」は、インターネット環境がなくても翻訳が行えるデバイスを開発。これを活用し外国人旅行者の多い駅構内で実証実験を行いたいと提案しました。

「言葉の壁がなくなる時代をともに創りたい」(同社を推薦した東京メトロの担当社員)という先進性と、「場所を選ばず、タイムラグのないコミュニケーションがとれる高い技術」(審査委員会)が評価されての採択となりました。ログバーの山崎貴之代表取締役兼COOは「東京を変えていく機会にしたい」と意気込んでいます。

「シェアリングエコノミー」サービスも採択

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Tadakuの須佐取締役(左)

一方、Tadaku(タダク)は、日本に住む外国人の自宅で世界各国の料理を学ぶ同名のマッチングサービスを展開しており、同社が持つ外国人ネットワークを活用して「東京メトロの沿線で、スタンプラリーを行うなど文化を学びながら“世界一周”ができるイベントを企画したい」と提案。

「シェアリングエコノミー(モノやサービスを個人間でやり取りする共有経済)としてのユニークさ、地域との共生とインバウンドのお客様に対するサービスの新規性」(審査委員会)が評価されて採択されました。採択後に行われた報道関係者向けのインタビューで須佐宇司(ひろし)取締役は「シェアリングエコノミーという観点で、東京メトロさんと何ができるのかをさらに詰めていきたい」と今後に向けての抱負を語りました。

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オープンイノベーションプログラムは「充実した時間だった」と振り返る東京メトロの奥社長

今回のオープンイノベーションプログラムについて、東京メトロの奥義光社長は「まだまだ(自社で)できることがあると知ることができ、充実した時間でした。また、スタートアップの方の知恵や力を借りれば色んなことが実現できると感じた社員たちの目の輝きが変わっていき、意義深かった。今回、提案いただいたスタートアップの方々とつながりを今後も大切にしたい」と締めくくりました。

なお、最終プレゼンテーションの結果、惜しくも選ばれなかった3社には、「東京メトロ24時間券」が各社100枚ずつ贈られました。

 

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「スタートアップと数十億規模の事業を」 国際航業がデモデイを開催

空間情報コンサルティングを事業の柱に据える国際航業株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:土方聡)は、2015年11月に初めて実施した第一回国際航業crewwコラボの現状を報告と、次年度の概要について説明する「crewwコラボ2015 デモデイ&2016オリエンテーション」を東京・渋谷のイベント&コミュニティスペース「dots.」で7月21日夜に初めて開催。スタートアップや大手企業の担当者ら100人以上が参加し、リアルの場でコミュニケーションをはかる絶好の機会となりました。

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会場には100人以上が詰め掛けました

初コラボに予想を上回る数の会社・団体が応募

グリーン・コミュニティの実現を目指す日本アジアグループ傘下の国際航業は、空間情報コンサルティング事業を展開する1947年(昭和22)創業の老舗企業。まちづくりに携わる人々に高い知名度を誇り、多数の官公庁や民間企業を顧客に持っています。

いわゆる「BtoB」「BtoG(官公庁)」として知られる企業ですが、2015年11月に新たな事業展開を目指し、crewwを利用したオープンイノベーションを実施。多彩なスタートアップからの応募を得て、このうち8社とコラボを進めているところです。

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コラボへの期待を語る国際航業の土方聡社長

イベントでは、国際航業の土方聡社長が「2020年の先に向かって、スタートアップの方々と数十億規模の事業を一緒に作っていきたい」と意気込みを熱く語りました。続いて、Creww株式会社の代表取締役である伊地知天(いじちそらと)は「大企業とスタートアップの利害が一致するマッチングを成功させるためにcrewwが間に立ち、両者の成長を加速させていく」とあいさつ。

その後、2015年のオープンイノベーションに参加後に国際航業とのコラボを進めているスタートアップ8社・団体が現在の事業やコラボの進捗状況を発表しました。

高齢者の「未病」対策にアプリを活用

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レイ・フロンティアの澤田典宏取締役COO

最初に登壇したのは、行動情報を可視化する「SilentLog Analytics(サイレントログ・アナリティクス)」を展開するレイ・フロンティア株式会社(東京都江戸川区)です。人工知能などを活用してリアルタイムで人々の行動を分析が可能で、大地震などの有事の際に意思決定にも役立つといいます。国際航業のコラボでは、アプリを立ち上げているだけで行動が自動で記録される「SilentLogアプリ」を活用し、高齢者の未病対策に取り組んだ例が報告されました。

「最初はすぐに止めてしまうなどの問題はあったが、アプリを使った高齢者の6割が歩数増につながった。人気のゲームアプリ『ポケモンGO』と似ていて、外へ出て歩くので健康につながる」と澤田典宏取締役COOは話します。

国際航業新規事業開発本部の藤原康史さんは「当社ではこれまで災害に強いまちづくりや低炭素社会づくりに取り組んできましたが、近年は超高齢化社会に対応するため、高齢者が地域において健康で活動的に暮らせる新しいまちづくりを検討していたところにレイ・フロンティアさんから応募があった。まさに我が意を得たり、だった」とコラボにいたった経緯を紹介しました。

地方自治体のWi-Fiをアプリでつなぐ

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タウンWiFiの荻田剛大社長

続いて壇上に上がったのは、街中の無料Wi-Fiに自動接続してくれるアプリ「タウンWiFi」が人気を集めている株式会社タウンWiFi(東京都港区)です。

わずか2カ月間で90万ダウンロードを突破するなど支持が広がっており、荻田剛大社長は「Wi-Fi利用の比率を上げることで通信容量の制限から解放される。巷では“神アプリ”と呼ばれています」と紹介しました。

一方、地方自治体が各地で提供するWi-Fiサービスとの連携が次の課題となっており、官公庁に強い国際航業とのコラボにより、さらなる発展が期待されています。「現在、自治体との間に立っていただいており、感謝するばかりです」と荻田社長は言います。

国際航業の藤原さんは「タウンWiFiはユーザに便利であることはもちろん、管理者側にも有用なサービスが多く、各地での観光振興やまちづくりに活用してもらうために全国を一緒にまわっているところ」と話しました。

訪日観光客の行動分析が可能に

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ナイトレイの石川豊社長

株式会社ナイトレイはソーシャルメディア解析によって訪日外国人の観光行動を分析できる「inbound insight(インバウンドインサイト)」を展開しています。TwitterなどのSNS上に公開されている投稿内容をリアルタイムで解析。行動場所やクチコミ、国籍、性別、移動経路などを独自にデータベース化し、インバウンドマーケティングに必要となる裏付けデータを提供するサービスです。

国際航業とのコラボでも、データを軸に共同で商品開発などを行う予定だといいます。石川豊社長は「現在社内外を含めてニーズのヒアリングを進めながら、提案活動をしている」と話します。具体的には、自治体などに対する調査やコンサルティング業務をはじめ、国際航業が持つGIS(地理情報システム)データと連携して訪日外国人対策支援や共同レポート等のサービス開発を行っていく考えです。

国際航業の藤原さんは「まさにナイトレイさんはインバウンド観光によって地域活性化を進めている組織が求めているデータを持っている」とコラボにいたった理由を紹介しました。

可愛い支援ロボット「unibo」に期待

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ユニロボットの酒井拓社長

ユニロボット株式会社(東京都渋谷区)は、家族間の交流促進や生活を支援するとのコンセプトで生まれた人工知能を使った生活支援ロボット「unibo(ユニボ)」を展開しています。酒井拓社長は「まさに『ドラえもん』の世界観を実現しようという次世代型のソーシャルロボット」といい、2017年3月冬の発売に向けて開発が進展中です。

国際航業とのコラボでは、高齢者などに向けて、uniboを活用したセルフケアを支援するサービスを進めており、日常生活のリマインダーや、健康と食事の管理、日常会話や見守りなどを行う計画です。今後、国際航業と金沢大学、ユニロボットの3社による実証実験を行うことを検討していくといいます。

国際航業新規事業開発本部の長谷川浩司さんは「uniboは、とにかく可愛いと評判になっている。ユーザーに好まれることは、支援を目的とするツールにとって最も重要なポイント。」と、今後の開発への大きな期待を示しました。

競合も含めた貴重な購買データを収集

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BearTail(ベアテイル)の黒﨑賢一社長

全自動の家計簿アプリ「Dr.Wallet(ドクターウォレット)」が話題を集める株式会社BearTail(ベアテイル、東京都千代田区)は、スマートフォンのカメラで撮影されたレシート類を約2000名のオペレーターが手入力することで、高い精度の読み取り率を誇ります。これまで120万超のダウンロード数にいたったといいます。

利用ユーザごとにさまざまな実購買データを得られるのが特徴で、「たとえば、『Tポイント』だと加盟店内におけるデータしか収集できないが、Dr.Walletはコンビニなど世の中にあまり出回らないデータも集められる」と黒﨑賢一社長は話します。

国際航業とのコラボでは、同社が展開する電気料金プラン最適化サービス「エネがえる」との連携をはじめ、同社が持つ空間情報データと連携し、商圏分析サービスなどを展開していく考えです。

国際航業の長谷川さんは「BearTailさんのデータを見た弊社の役員が『これはすごい』と驚いていた。競合のデータも取れるのは貴重だ」と話しました。

話題の音声認識を使って観光地振興に

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アイコトバの田中謙二社長

スマートフォンに向かって特定のキーワードをしゃべるとクーポンが提供されるサービス「しゃべってクーポン」が話題を集める株式会社アイコトバ(東京都渋谷区)。「グーグルの検索でも2割が音声によるものとなっており、これからは音声認識の時代。次に来るキーテクノロジーだ」と田中謙二社長は話します。

クーポンを発行するコストがほとんどかからず、なおかつユーザ自身が商品名などを“喋る”ことで認知度が向上する可能性が高くなります。安価で効果の高い集客サービスとして今後の浸透が期待されています。

国際航業とのコラボでは、自治体向けの観光PRにアイコトバの仕組みを活用していく予定だといい、たとえば、観光地でクイズ形式の質問などをスマートフォンに通知。それに答えるスタンプラリー形式で、特産品やグッズなどがもらえる形のサービスを考案中です。

国際航業の長谷川さんは「観光インバウンドやDMO(観光施策)などのコンサルティング調査業務などにも展開していきたい」と話しました。

ビジネス向けビデオチャット基盤を活用

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FacePeer(フェイスピア)の真鍋憲士取締役

続いて、ビデオチャットのプラットフォーム「FaceHub(フェイスハブ)」を展開するFacePeer株式会社(フェイスピア、東京都港区)から真鍋憲士取締役が登壇しました。

WebRTC(Web Real-Time Communication)という技術を活用することで、Skypeやgoogleハングアウトとは異なり、インストールやアカウント登録をせずにブラウザ上で手軽に使える点を説明。「ビジネス現場向けに使いやすくなるよう、『1対複数人』や『複数人対複数人』の通信を可能とするなど、さまざまな機能を追加して開発した」とFaceHubの特徴を紹介します。

国際航業とのコラボでは、自治体への営業支援や、導入済みソフトのカスタマーサポート、国際航業が展開するメガソーラーのメンテナンスにFaceHubを活用することが検討されています。

国際航業の長谷川さんは「FacePeerの多田英彦社長からとにかく熱いプレゼンテーションをいただいた」とコラボ時の様子を振り返っていました。

新たな形の防災を考える取り組み

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一般社団法人防災ガールの田中美咲代表理事

最後に登壇した一般社団法人防災ガール(東京都渋谷区)は、東日本大震災を機に若い世代への防災の必要性を伝えることの重要性を痛感。「防災をもっとオシャレにわかりやすく」とのコンセプトで全国の20~30代の女性中心として立ち上がった団体です。

これまで、渋谷区と共同で拡張現実技術を利用した位置情報ゲーム「Ingress(イングレス)」を活用した若者向けの避難訓練を企画するなど、これまでなかった視点から防災対策につながる活動を展開してきました。

防災・減災対策やまちづくりを得意とする国際航業との相性も良好で、「国際航業が持つ空間情報データを活用して、女性や若者に地図を好きになってほしい」とリクエストを受け新しいプロダクトを提案。「自分自身もIngressを使った避難訓練に参加したが、新しい形の防災を感じた」(国際航業・長谷川さん)とコラボが決定しました。

その第一弾として、3Dハザードマップを使ったトートバックを作成。国際航業とともにクラウドファンディングの「CAMPFIRE(キャンプファイヤー)」でプロジェクトを実施しました。

2016年コラボのテーマは社会課題の解決

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2016年のコラボ詳細を発表する国際航業の長谷川さん

8社・団体からの報告後、スタートアップとの窓口になってきた国際航業の長谷川さんと藤原さんが登壇し、2016年のcrewwコラボの詳細が発表されました。

今年は「社会課題の解決につながるビジネス」というテーマで、安全・安心や環境、気候変動、エネルギー、健康・福祉、まちづくり、技術基盤形成、食料、教育といった幅広い分野での課題に取り組むコラボを実現したいと紹介。

「社会に必要な事業にこそ、大きなビジネスチャンスがある。みなさん(スタートアップ)のパートナーとなる新規事業開発部のチームも新しいメンバーを加えて増強し、オフィスも新たに丸の内の国際ビルに構えた。(コラボに関する)予算もしっかりとったので、より大きな事業を一緒に作っていきましょう」(長谷川さん)と宣言しました。

crewwの担当者である李東徹は「2016年のコラボは事業化の可能性が高いテーマになっています。大きな構想を描いたうえで、ビジネスにつながる提案をお待ちしています」と会場の参加者に訴えました。

その後、会場では交流の場が設けられ、来場者が熱く語り合う様子も見られました。

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会場では参加者が交流する場も設けられた
 

2016年の国際航業によるcrewwコラボページ
レイ・フロンティア株式会社
株式会社WiFiシェア「タウンWiFi」
株式会社ナイトレイ
ユニロボット株式会社
株式会社BearTail
BearTail黒﨑賢一社長のcrewwインタビュー記事
株式会社アイコトバ
FacePeer株式会社
FacePeer多田英彦社長のcrewwインタビュー記事
一般社団法人防災ガール

 

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東京メトロの豊富な経営資源を開放する オープンイノベーションへ熱い意気込み

東京メトロ(東京地下鉄株式会社)がcreww(クルー)とともに行うオープンイノベーションプログラム「Tokyo Metro Accelerator 2016(東京メトロアクセラレーター2016)」の実施に際し、10月27日に都内でオリエンテーションを開催。首都圏の交通インフラになくてはならない同社が挑む新たな価値創造。約120のスタートアップが参加し、熱心な質疑応答が続きました。

東京の発展に寄与するアイデアを募集

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Tokyo Metro Accelerator 2016

Tokyo Metro Accelerator 2016は、東京メトログループが持つ1日707万人におよぶ顧客へのアプローチをはじめ、195.1キロの鉄道ネットワークと179の駅、337編成(2728両)の車両、駅構内にある店舗や商業ビル、駅構内の広告媒体やデジタルサイネージ、鉄道運行などに関するデータといった経営資源を解放することで、スタートアップとともに「東京の発展に寄与するための取り組みや事業」(同社)を創り出そうという試みです。

2016年10月31日(月)から11月9日(水)までの間にスタートアップからのエントリーを受け付け、11月11日(金)に1次選考、12月5日(月)の2次選考、12月15日(木)のプレゼンテーションと最終選考により、東京メトロとコラボレーションするスタートアップが選ばれるという流れになっています。

ローンチの有無や短期的な収益性の考慮不要

東京メトロでは、鉄道の安全運行や、コンプライアンスの遵守を前提に「可能な限り経営資源を解放する」(奥義光社長)との意気込みです。同社の事業と競合する可能性のある内容であったり、サービスのローンチ前であったり、コラボ後すぐに収益が見込まれない場合であったとしても「大丈夫ですので、応募してください」(同社)との姿勢です。

また、コラボ内容によっては、東京メトロと相互直通運転している各社に声をかけることもあるといいます。

crewwでは「今回のプログラムでは、東京メトロの課題を解決しようという視点は必要がなく、まずは自社サービスの成長や、東京の発展に寄与するためという考え方で応募してください」と呼びかけています。

一方で「法人個人問わずどなたでも応募可能ですが、単なるサービスの売込みではなく、コラボレーションであるという点に注意してください」(creww)といい、エントリー時には、2000字以内のテキストに(1)どのようなビジネス・サービスなのか、(2)狙っている市場やビジネスモデル、(3)短期的にやりたいこと、(4)中長期的な協業ビジネス、(5)座組みや役割、実施効果――といった点を盛り込んでほしいと説明しました。

東京メトロ・奥社長「つながり大切にしたい」

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東京メトロの奥社長

10月27日にベルサール六本木コンファレンスセンターで行われたオリエンテーションでは、東京メトロ奥義光社長や、crewwアドバイザーである出井(いでい)伸之・クオンタムリープ代表取締役、crewwCEO・伊地知天(いじちそらと)が登壇し、今回のイノベーションプログラムに関する意気込みが語られました。

東京メトロを代表して奥社長は「今回のイノベーションプログラムを通じ、スタートアップの方々とのつながりを大切にするとともに、互いの強みを発揮しながら新たな価値を創造していきたい」とあいさつ。「今から楽しみでわくわくしている」と期待感を示しました。

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クオンタムリープの出井氏

今年8月からcrewwのアドバイザーに就任したソニーの元社長で、クオンタムリープの創業者である出井氏は、日本のスタートアップやベンチャーを成長させるためにもっとも欠けているのが資金だといい、「大企業が資金提供者になるべきだ」と指摘。「すべての大企業が実践すればベンチャーはあっという間に育つ。その意味でも今回の東京メトロの取り組みは大変ありがたい」とエールをおくります。

「スタートアップにとって大きなチャンス」

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crewwのCEO・伊地知

東京の発展に寄与するアイデアを募集

crewwのCEOである伊地知は、これまでに70社以上の大手企業とイノベーションプログラムを行ってきたことを紹介し、「東京メトロさんが登場したことはスタートアップにとって大きなチャンスで、われわれもこれまでのノウハウや知見をフルに活用していく。多くの参加をお待ちしています」と呼びかけました。

また、今回のプログラムの責任者であるcreww執行役員の水野智之は、「東京メトロさんとプログラムを開催することは、crewwの企業アクセラレータープログラムを始めた時からの念願だった」と報道陣に明かしました。

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懇親会会場では活発なコミュニケーションが行われていました。

オリエンテーション後には、懇親会が行われ、東京メトロで今回のプログラムの審査委員長をつとめる髙山輝夫専務取締役が「社内が一丸となって、今回の取り組みを成功させたい」とあいさつ。参加したスタートアップと交流を深めました。

Tokyo Metro Accelerator 2016のページ(2016年10月31日~12月15日)

 


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生き方や働き方の多様性を実現するための器としての会社 ポーラスタァで実現する「子育てしながら働く」ということ

株式会社ポーラスタァ 代表取締役 高沖清乃

現代社会における女性の働き方を模索し、web会議やクラウドの活用で働き方の多様性を実現している株式会社ポーラスタァ。メンバーは現在7名。全員がママで、子どもの数は合計16人。全員が子持ちのメンバーのため、デュアルライフや移住の可能性の追求、副業推進、子どもの夏休みにあわせた長期休暇取得などを実施している。理想とも言える働き方の作り上げ方は?

――スタートアップといえば、急成長して、M&Aないし上場してイグジット、という絵を描くものですが、株式会社ポーラスタァの場合、サービス開発や従業員の環境作理に向かっていますよね。それを崩すような買収の話を断ったという話も伺いました。

何が本当の成長で、その時期のイグジットなのか、考えて答えを出している結果、今の会社の姿があります。

――莫大な利益を上げたり、媒体の数字を積み重ねたりするだけが、会社の社会的貢献ではないということですよね。

「ポーラスタァ」は北極星という意味なんです。航海のときに、たとえ地図がなくても”北極星”の位置がわかれば、目的地へ行くことも、家に帰ることもできます。わたしたちは、情報の海の中で「北極星はここだよ」と発信し続けることをミッションにしてきたのですが、それは経営の姿勢としても現れてきているのかもしれません。

例えば、私たちが10年前に会社を立ち上げ、8年前に媒体をスタートさせた当時と違い、現在は働くお母さんというもの自体が一般化しつつあります。だけど、まだ時間いっぱいオフィスにいて働くことが評価されるという事実もあると思うんです。それだと、子育てをしながら働く人には非常に不利なんですよね。

現在の子育ての、ボトルネックになっていることのひとつは「仕事」。正確に言えば、「仕事」そのものではなく、「働き方」だと考えていました。「こどもと本当はこんな風に過ごしてみたい」「本当はこんなママでいたい」というような想いを邪魔してしまうのも、残念ながら働き方が原因になることがありますよね。

会社だからといって、全員が同じ働き方をする必要はないし、制度で縛らなくてもいい。自分の状況やお子さんの状態によって働き方を変えられて、やるべきことをしていれば評価されるという会社があってもいいのではないかと考え、半期毎の面談により目標と働き方を決めています。大体週2~5日勤務ですが、時間や曜日は確定していませんし、テレワーク(リモートワーク)も取り入れてます。

――他社からの理解はどのように得ていますか?

クライアントには契約前から事情を伝え、納期には少し融通を利かせてもらえるようにしています。それで取れなかった仕事ももちろんありますが、当社を理解し、仕事を継続している会社は考え方が合う会社なので、より濃密な関係を築けています。

――それが実現できたのは、高沖さんご自身の体験が大きいのでしょうか? 昨年は、ヨーロッパや長野に家を建てていましたよね

はい。2015年、私が実家のある長野県伊那市に家を建てて、デュアルライフがスタート。東京の家を解約して、長野に移住するまでの間、1ヶ月ほど家族でヨーロッパを周りました。ヨーロッパに出かけたことがなかったので、フィンランド(ヘルシンキ)・エストニア(タリン)・イタリア(ローマ・トスカーナ・ヴェネツィア)・スペイン(バルセロナ)にステイをすることに。実際の暮らしのなかで文化や習慣を体感してみたかったので、ホテルではなくAirbnbを活用し、現地のアパートメントを借りて生活しました。

今回のインタビューでは語りつくせませんが、「自分の国の言葉」「違う国の言葉(しかも種類がある)」を認識し、違いを認めて、善悪ではなく相手と話したい一心で相手に通じる言葉で語ろうとする様子に人が本来持つ力のようなものを感じたり、私自身、現地の多様な間取りやインテリアを暮らしの中で体験できたり、実り多いものでした。

それに至るまでも2年ほどかけて、日本国中を旅行していました。きっかけは仕事がなにかと忙しく、つい家と保育園(会社)の往復になりがちだったので、まずは動いてみました。日本の中にも山がある場所、海がある場所、ビルが多い場所、雪が降る場所、年中暖かい場所、お年寄りばかりの場所など、いろんな場所があると、実体験を持って伝えられて良かったですよ。

子連れ旅行に関しては、「こととりっぷ」http://www.kototrip.com/という個人ブログにまとめています。

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――夢のような働き方が実現されていますが、サービスの方も次々と展開されていますよね。

働くお母さんのための情報誌である「ニンプス」を定期購読誌を妊娠月数別に臨月まで毎月発刊していました。この冊子を作る1年前からゼロスタートでWebを制作して、現在の月間のWeb訪問者は30万人程度まで伸びました。第1子だと国内では月間50万人が限界値なので、現状のこの数字が限界に近い状況です。「ニンプス」という認知は無いにしても、妊婦さんは妊娠中に1度はご覧になられていると考えていいのではないでしょうか。

特にWebは人をあおって動かす傾向があるので、その様な書き方は一切しないと決め、ネガティブではなく明るくポジティブな内容にし、未来に対して明るく前向きになれるように作っています。

――そこにも数字至上に陥らない想いがあるんですね。そこから、幾つかのサービスをリリースし、2015年2月にフォトアプリ「Baby365」をリリースされましたよね。

Baby365は、 いくつもの印刷所から「難しすぎる」「うちではムリ」と断わられていたんです。アプリの制作はどんどん進んでいるのにフォトブックの見通しが立たないなど、困難はありましたが形にすることができました。今後はたくさんの方の工夫や想いが詰まったこのサービスを展開していきたいと思っています。

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photo by 平林直己

 



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立ち上げから運営、投資面までネットメディアを一気通貫支援

株式会社メディアインキュベート 代表取締役 浜崎正己氏

株式会社メディアインキュベート (東京都中央区)は、その名の通りインターネットメディアを展開する事業者に向け、取材や編集、書き手の手配といった実務面を始め、マネタイズや投資にいたるまで一気通貫の総合支援企業を目指し、今年(2016年)3月に創業しています。メディア運営経験が豊富な代表取締役の浜崎正己さんに、現状と今後の展開について伺いました。

新聞社のネット版から動画CGMまで多彩な経験

――浜崎社長はさまざまなメディアに携わってこられたとのことですが、起業までにどのような道を歩んで来られたのでしょうか

大学時代は「メタバース」や「セカンドライフ」などのキーワードで当時話題となったインターネット上の仮想世界に興味を持ち、研究をしたことを契機にネットの世界を知ることになりました。ただ、卒業後に就職したのは、建機レンタルの大手企業です。

入社したのが2011年の春でしたので、東日本大震災の復旧や復興需要でとにかく多忙でした。この時の営業マンとしての経験は後に生きてくるのですが、やはりネット業界で働きたいとの思いが募り、大手商社系のデジタルメディア企業に転職しました。

この会社は通信キャリアの公式サイトを請け負う事業や電子書籍の流通事業、広告代理店事業を得意としていたのですが、そこで著名夕刊紙のサイトを担当させていただくことになりました。もともと新聞記者になりたいとの夢もありましたので、とにかく仕事が楽しく、やりがいがありましたね。

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――新聞社のネットメディアに携わったことが後のメディア支援業につながるのですね

現在、この夕刊紙のサイトは飛躍的に発展しているのですが、紙でやっている新聞のネットメディア刷新に携われたことは大きな財産になっています。会社は離れましたが、お付き合いは続いています。

――その後はいわゆる著名な“ネット企業”で勤務されています

GMOモバイルやザッパラス、ユーチューバーのマネジメントで知られるUUUM(ウーム)などで勤務し、ポータルサイト運営や動画メディアに携わりました。新聞からポータル、動画CGM(消費者生成メディア)まで多彩なメディア運営の現場にいられたことは幸運でした。

このほか、韓国のコミュニティメディア企業が日本法人を立ち上げる際に創業メンバーとなり、韓国本社に滞在していたこともあります。ここでは、スタートアップの熱気というものを肌で感じることができました。

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メディアインキュベートのWebサイト http://media-incubate.com/

――そして、今年(2016年)3月30日にメディアインキュベートの創業に踏み切ります

ネットメディアの新規事業を立ち上げたいとの思いを常に秘めていましたので、「そろそろ」ということで、自らが生まれて1万日目に会社を設立しています。

スタートアップの世界では、著名な支援企業としてサムライインキュベート(榊原健太郎CEO)さんがありますが、まさにサムライさんの“ネットメディア支援版”になりたいとの思いから、メディアインキュベートという社名をつけました。

――メディアの立ち上げや運用を支援し、メディアに特化した投資を行うとのことですが、具体的にどのような事業を展開していますか

ネットメディアの立ち上げという部分は、すでにいくつかの話が進んでいて、この秋にもスタートするVR(バーチャルリアリティ)専門メディアに深く関わらせていただいています。

運用面では、記事の提供や書き手(ライター)、クリエイターのアテンドといった編集面をはじめ、育成講座なども行っています。メディアのコンサルティング業務もお受けしており、大手新聞社からもご依頼をいただいています。

このほか、メディア運営面では、他企業と連携してメディアに最適化したCMS(コンテンツマネジメントシステム)も開発中です。

加えて、起業に関するイベントを定期的に開いたり、アーティストへの支援業務といった点までカバーしたりしています。今後はメディアや運営企業への投資という面にも力を入れていきたいと考えているところです。

――自社がメディア運営を行うこともあるのですか

はい、メディアインキュベートマガジンというメディアを立ち上げており、特に「地方創生」に興味を持っていますので、そうした内容を中心に取り上げています。

また、8月からはサイバーエージェントが運営する映像配信プラットフォーム「FRESH! by AbemaTV(フレッシュbyアベマTV)」に公式チャンネルを開設し、ゲストの方々を招いての対談やインタビューなどをまじえた番組を作り、定期的に生中継を行っているところです。

会社としては、ネットメディアのなかでも特に「動画」という部分に注目して支援にも力を入れていきたい考えです。

――crewwとはどのように出会われたのでしょうか

登録したのは2年くらい前で、まだ起業する前だったと思います。最近は大手新聞社やテレビ局などのメディア企業がcrewwでオープンイノベーションを行っているケースも目立っていますので、われわれもこれから積極的に応募しなければと思っています。

スタートアップが単独で大企業とお付き合いするのは難しい部分が多々ありますので、“文脈”を作って懸け橋となっていただけるcrewwさんの仕組みは大変ありがたいですよね。

――さまざまな企業で勤務し、大手企業とともにメディア運営業務を行ってこられたなかで、スタートアップが大手企業と付き合うために、気を付けるべき点などのアドバイスをお願いいたします

アドバイスと言うとおこがましいのですが、私自身が感じたことは、大きな組織であっても、最終的には人と人のお付き合いだということです。当たり前ですが、互いのメリットが一致するような付き合いをしなければならないと強く感じています。

――ありがとうございました

 

株式会社メディアインキュベート・浜崎正己さんのcrewwページ