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コルクがつくり上げるコンテンツメーカーの未来


株式会社コルク 代表取締役社長 佐渡島庸平

コンテンツのクリエイションには、作家と、それを支える編集者がいる。『宇宙兄弟』『ドラゴン桜』『働きマン』『バガボンド』といった大ヒット漫画に携わってきた編集者として知られる佐渡島庸平さん。2012年9月に講談社を退職し、クリエイターのエージェント会社であるコルクを立ち上げた。

今、求められる境界線を越えるコンテンツメーカー

―― 今回はオフィスが神宮前に移転したばかりということですが、前のオフィスも明治神宮前でしたよね。オフィスが常に渋谷エリアであることには理由がありますか?
他の人にとっての遊びの領域にあるものが、僕らの仕事の領域です。オンオフという概念なく仕事ができることが理想なので、映画をフラッと観に行ってもいいと思います。休日にイベントに行った帰りに会社に立ち寄ったりしてもいい。それに、このエリアだと海外の方でもどんな場所かイメージができるんです。未だ先の話ですが、英語圏、中国語圏も同じ商圏として考えていく時のことも念頭に入れています。

2012年に起業してから3年ちょっと経ち、新しいオフィスになりました。そろそろコルクから大ヒット作を出せたらいいなとは思っています。

編集者であり続けるための独立

―― 佐渡島さんは、新卒で講談社に入り、ヒット作の編集者として活躍していたわけですよね。快適な環境から、自分で会社を立ち上げた理由を教えてください。

講談社を辞めることを決めたのは、『宇宙兄弟』実写映画の宣伝まわりの仕事が一段落して、あとは公開を迎えるだけ、という時でした。やりたいことはできるし、やりがいもありました。それにも関わらず辞めた理由は幾つかあります。

一つ目は作家と同じ船に乗りたかったからです。講談社にいた時も、作家と同じくらい作品に思い入れて仕事をしてきましたが、作家からすればそうは思えない、「いつかは離れ離れになる編集者」なわけです。こちらとしても担当する期間は自分では決められないので、自分が担当している間になんとかヒットを出したくなる。そうすると「作家人生のなかで、今、どのような作品を描くべきか」ではなく、「今、世間で当たるテーマでつくりましょう」というディレクションをしてしまう。僕は作家と何十年という軸で付き合っていきたかったんです。

二つ目は、作家の伝えたいことを届ける手段が「本」に限らなくなってきたことです。作家は頭の中に強烈な世界観を持っています。これまでは、その世界観を伝えるのは「出版」という形が主でしたが、編集者が本だけではなく、様々な形で伝達できるようになったんだというのを証明したかった。

三つ目は会社の看板を背負わないとできない、ということが減ったからです。むしろ社員でいると、受け持つ担当作家が変わったり、部署が変わったり、全く新しいやり方で動くということが難しかったりします。今では作家と直接コミュニケーションを取ることもSNSでできます。会社の看板がないと新人の発掘も難しかった時代から、やり方次第で繋がれる時代になりました。


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―― インターネットが、作家と編集者、作家とファンの関係性を変えたわけですね。

編集者としての仕事の領域も変わりました。売れている作品の売れる要素は、作品の質、作家の知名度、プロモーションといったものに分けられると思いますが、これまでは、編集者はコンテンツ制作に専念し、営業や書店がマーケティングを担うというように分かれていました。作家のアウトプットが本という形を取る必要がなくなったことで、この流れすら変わっていく。今こそ、その流れ自体をつくっていけるチャンスなんじゃないかと考えました。

「この人物がいなくなったら、この作品とプロモーションはすべて変わる」という、取り替えの効かない仕事をするところまで、今一度、編集者の価値を高めたかったんです。作家が作品自体を把握するなら、それ以外のすべてを把握する編集者になるために、出版社の編集者という立場を離れました。

―― そこまで思い入れが持てるのはなぜでしょうか?

楽しいからに尽きます。誰かの魅力を引き出して付き合っていこうという、せいぜい結婚くらいしかないようなことを他人とやる。それが僕にとっては、とても楽しいことなんです。

ITを活用したクリエイターエージェントのコルクに

―― コルクでは、安野モヨコさん、平野啓一郎さん、小山宙哉さんといったような方をエージェントされていますが、彼らのエージェントが決まった上で会社を設立されたのでしょうか?

当初、彼らのような大御所から自分の立ち上げた会社にエージェントの依頼が来ることは考えていませんでした。僕の場合、好きな人と本気で仕事をしたかっただけで、僕が見付けて作品を一緒に作っていこうとしていた漫画家の羽賀翔一さんだけでも独立しようと考えていました。ところが、こんな会社をつくろうと思っているということを打ち明けたら、それなら自分のエージェントもやってくれないかという作家がたくさん現れました。

文学や漫画の作家だけではなく、Webを中心に活躍しているAR三兄弟との出会いなどもあって、徐々に「作家エージェント」から、「クリエイターエージェント」になり、その手段もITを活用する方法含めて具体的に見えてきたところです。

―― クラウドファンディングや、作品に出てくるグッズをECで販売されていましたよね。

今までは、作家とファンの間に出版社がありました。僕自身も、ITを使った手法はほぼやったことがなかった。作家の価値を最大化するということは、編集者の頃から変わりませんが、インターネットを駆使して、ファンが直接クリエイターを支えることができる仕組みをつくっていきたいです。

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―― 何か参考にしているスタートアップや、海外の企業はあるんですか?

エンタテインメントとITというと、多くは動画ビジネスにいっているので、ひとりの作家と何かしていこうという企業は世界的に見てもないような気がしています。音楽は文字に比べて広がりやすいので、一概には言えませんが、テイラー・スウィストやレディガガはエンタテインメント×ITという組み合わせを上手にやっています。

出版社がたくさんの出版物の中からヒットを探すというビジネスモデルですが、コルクのようなエージェントは作家と一生付き合うつもりで付き合って、そのなかで大ヒット作品も出す。そのコンテンツを編み出す作家をファンが支えるという仕組みそのものを企業のひとつの雛形として提案していくところまで、会社を育てていきたいです。

幾つかのエージェント会社ができた方が健全ですし、コンテンツで勝負していくと業界自体が活性化します。コルクの社員が独立してやってくれてもいいくらいです。これからもネットとクリエイターの結び付けは活性化し続け、もっといろんな可能性が出てくると思います。技術や条件が整って、プレイヤーも増えることで、変化は突然やってくるでしょうね。

 



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