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テナント物件情報をITで結ぶ 大手チェーンからも熱い視線


株式会社オルトリズム 代表取締役 紙中良太氏

今も人手を使った情報収集と発信が中心の不動産業界。なかでも企業向けのテナント物件情報は、人伝いによるやり取りが中心となっています。そんな世界にITの力で変革を挑んでいるのが株式会社オルトリズム(東京都渋谷区)です。テナント企業間を直接つなげ、不動産業者を介さずにマッチングするという仕組みの「店舗市場」は、飲食店を多店舗展開する大手チェーンからも注目を集めています。代表取締役の紙中良太さんに起業の経緯とサービスへの思いをうかがいました。

ネット上には出回りづらいテナント物件

――一般の人が買ったり借りたりする住宅物件の情報は、インターネットで収集できますが、テナント物件の情報はネットで入手しづらいものですか?

店舗市場
オルトリズムが展開する「店舗市場」は大手を中心に250社以上が登録している https://tenpoichiba.jp/

住宅物件の場合、誰もが知るような大手不動産業者が多数参入しており、インターネット上でも積極的な情報発信が行われ、ネットで家を探すということは一般的になっていますよね。

ところが、企業向けのテナント物件の世界となると、大手事業者の名前はほとんど出てきません。中心は中小事業者であり、どちらかと言えば狭い世界ですので情報が外に出てきづらい環境です。情報の透明性がなく、仲介会社もいるのですが、なかには、個人でテナント情報のやり取りだけを“商売”をしている方さえいるほどです。つまり、何にいくら払っているか、最終的にいくらかかるかが入居するまで見えません。

こうした現状を少しでも変えたいという思いで開発したのが弊社の「店舗市場」です。テナントさんだけが物件情報のやり取りをできるサービスで、不動産業者の方をはじめ、現在リアル店舗を持っていない方の登録はできません。

たとえば飲食店の場合、退店する際も設備などを残した「居抜き」物件としてやり取りできるため、閉店する側は現状回復をする手間が省けますし、開店する側もスムースにオープンさせることが可能となります。マッチングが成功すると、開店する側には賃料の1カ月分を成果報酬で頂戴しますが、退店する側には20万円のキャッシュバックをお支払いしています。知られていないと思いますが、仲介会社や個人を通すと、この費用が不明瞭で賃料1ヶ月分で済むことはありません。

ビルなどを持つオーナーの方にとっても、後継店舗がすぐに見つかるというメリットがあります。店舗市場に登録していただいている250社のなかには大手チェーンが多いため、大手同士で話が決まって、次もテナントに大手が入居してくれるとなると、オーナーの方も安心ができるわけです。

――企業向けテナント物件の情報をIT化するという目標を掲げて起業したのは、ご自身の経験が大きかったようですね

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中学生の頃から料理人になりたいとの夢があり、独立するためにとにかくアルバイトをしてお金を貯めました。高校を卒業してすぐに都内のフランス料理店で修業をさせていただき、その後に生まれ育った広島の西条(東広島市)に戻って念願の独立を果たしました。

鮮魚を中心とした料理店は盛況となり、上手くいっていたので次の店舗を出店したいと思ったんです。しかし、なかなか良い物件が見つからず、たとえ見つかったとしても二十歳そこそこの若造にはなかなか貸してはくれない。毎日深夜まで店を運営しながら店舗探しを続けていくことに疲れてしまいました。

この時の経験から、多店舗展開のノウハウを学ばなければ飲食店の経営はできないとの決意で再び上京し、急成長中だった飲食ベンチャーの門を叩きました。創業者である社長のもとに何度も通って会社へ入れていただけるよう直談判するうち、「そこまで言うならやってみろ!」と入社が認められ、店舗開発に携わるようになります。

当時、そのベンチャーでは、とにかく飲食店を多店舗展開しており、全国どこかで3日に1店は増やしていたほどです。願っていた新規出店部門の中心で仕事ができましたので、楽しくて仕方がなかったですね。日帰りで新潟から名古屋をまわり東京へ戻ってきたりして、全国を飛び回る日々でした。この時の経験と、不動産業者さんやテナントの方との人脈がなかったら現在の形で起業はできなかったと思います。

――飲食店チェーンの経営や多店舗展開のビジネスに魅力を感じつつ、2013年7月には起業に踏み切ります

その後、出店のペースが落ちてきて、自分の仕事が少なくなってきましたので会社を退職して独立しました。ただ、起業当初は何をするかは明確に決めておらず、さまざまな方とお会いしていくなかで、不動産業者の方などから後継テナントを見つけてくれないか、との要望をいただくようになります。

私の場合は不動産業者の視点ではなく、テナント側の立場で立地や物件の善し悪しを見る習慣が付いていましたので、テナントの方に物件を説明する際にも説得力があったようです。現在の店舗市場の基礎となるようなマッチングの仕事をアナログでやっていたわけです。

この時に感じた業界の不透明感や、マッチングの重要性をITを使って形にしたのが店舗市場でした。お陰様で大半は紹介営業で、参加企業が増えています。大手の方にも仕組みに共感いただけているのはありがたい限りです。

――事業の柱として店舗市場が手堅く成長させている一方で、別会社として「民泊」の分野にも進出されたそうですね

こちらもマッチングの仕事です。実は自社で実験的に民泊を運営したことがあるのですが、すごい反響があり、収益も出まして、市場に未来を感じました。現在は「民泊物件.com」というサイトで民泊を運営したい方のための賃貸物件をご紹介していますが、いい反応をいただいており、今後の成長が楽しみな分野です。

――crewwに参加したのはどのようなきっかけだったのですか?

古くは、弊社の取締役である宮里賢史が大学生時代に米カリフォルニアでcrewwの伊地知天さん(いじちそらと=creww CEO)と知り合ったのが源流のようで、その後、宮里が大手銀行の勤務を経て弊社に参加したので、自然な流れでcrewwさんに登録させていただいていました。

これ、すごくありがたいですよ。連絡したいと思っていた大企業にアタックできるのですから、スタートアップにはまたとないチャンスをくれるサービスです。実際、crewwコラボの参加を機にさまざまな大企業の方とマッチングいただいています。

――大企業との関係が深いオルトリズムさんならではの、彼らと付き合うノウハウはあるのでしょうか

ノウハウというものではありませんが、大企業とお付き合いを考える場合、規模の違いからスタートアップの方はどうしても「何かを与えてもらう」という期待感があると思いますが、弊社では逆に「自分たちから何かを与える」ことを必ず考えて行動しています。われわれから何かを与えられない時には会いに行きません。

また、相手は大企業とはいえ、人間ですからロジックだけでは動かないということは覚えておいた方がいいかもしれません。やはり、つながりが大事です。

――ありがとうございました

 



株式会社オルトリズム「店舗市場」の紹介ページ
紙中良太さんのcrewwでの紹介ページ

 


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