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スタートアップが知っておくべき弁護士との付き合い方  creww academy vol.07 「弁護士Night」開催


creww academy vol.07

資金調達、人事労務、法令厳守、株主との位置関係…。
創業からシード期のスタートアップは、事業を拡大していく上で様々な問題に直面することが非常に多い。コンプライアンスに対する意識が強い昨今においては、創業間もない企業といえども法令や労務に気を配ることはなおさら重要だ。そのような中でカギとなるのが、弁護士との“付き合い方”。しかし、本来はスタートアップにこそ弁護士が必要なのに、弁護士と接する機会が少ないのが現状。
そこで「弁護士や法務についての疑問」をテーマに、3名の弁護士を招聘しcreww academy vol.07 「弁護士Night」を開催。各人の弁護士としての知見と経験から、スタートアップが抱えるであろう問題について語っていただいた。

 
● トピックス
1. 自分1人で開業、仲間と開業
2. 基盤ができたので新しい事業を始めたい
3. 弁護士との付き合い方
4. 契約書
5. 人手が足りない
6. 有名な企業になってきた
7. 目指せイグジット
 
● 登壇者
①長谷川 紘之
片岡総合法律事務所・パートナー弁護士
②高松 志直
片岡総合法律事務所・パートナー弁護士
③野尻 裕一
野尻法律事務所・弁護士
 

1. 自分1人で開業、仲間と開業

―― 1人で起業する際に注意する点
野尻弁護士:(株式会社など)法人として起業する場合、一番理解しておかなければならないのが「株主とはどういう地位か」という点です。
というのも、株主総会が会社の最高決定機関として会社自体の行く末を決めていくことになる。つまり、1人の場合には株主=自分の意思決定になるのですが、複数人の場合には必ず多数決が必要になるわけで。事業としての思いは同じでも、運営としての思いが同じとは限らない中で会社がスタック(停滞)してしまうことはよくあります。
2人で起業した場合50%ずつの株を持っていたら、何も決まらないということもありうる。
複数名が株主になって会社運営を進めていくのであれば、過半数の株式を保有して最終的な決定権を有するリーダーを決めておく(自らがリーダーになる)ことをお勧めしています。

――【ポイント】
→複数人で起業する際は、必ず最終の意思決定をするリーダーを決めておく
→株主が多くなるに伴って、1人でも事業への思いにズレが生じると株主総会を開くこと自体のハードルが上がる

長谷川弁護士:会社法としては、90%以上株保有している人は10%未満の少数株主に対して株式売渡の請求ができる制度が整えられました。適正対価を払ってその制度を活用することにより、ある程度は少数株主を排除できます。
ですが、1株であっても外部の株主が存在すると一気に株主総会に関する問題が出たり、意思決定に時間が掛かったりするので、その部分は理解しなければなりません。

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2.基盤ができたので新しい事業を始めたい

――資金調達をする際に気を付けること
長谷川弁護士:個人の投資家やベンチャーキャピタルから投資を受ける際、過半数の株式を渡す場合は注意が必要です。会社法上、過半数を渡してしまうと、会社を起業した自分自身の取締役の地位も確保できず、経営から追い出されかねないということになります。
株式会社の場合、様々なことを株主総会で決めるというのは当然のことです。過半数を渡した場合、自分がクビになっても資本の論理でいうと何も文句は言えない、ということになります。

また、投資を受け入れる際に締結する投資契約や複数の株主が出資するときに会社や創業者と締結する株主間契約は、会社法上の株主の権利に加えて、さらに、株主が経営を監視することができる(例えば、定期的に事業の報告をするとか、取締役を1名出させるとか、取締役会等にオブザーバーとして参加させて意見を述べさせるとか、重要な事項の決定については投資家の同意を要件とするとか)ことが定められるのが通常です。会社の立場からは、ある程度の出資だけしてもらって、余計な条項を盛り込んだ契約は交わさない、ということが望ましいですが、なかなかそうもいかないのが現実です。
投資をする立場からすると、特にベンチャーキャピタルなどお客さんからお金を集めて出資する株主の場合は、出資をする以上そのようなことを求めることも必要なのも確かですし、上記のような規定が必ずしも合理性がないわけではないのですが、投資家の方から出された契約書の雛形を唯々諾々と受け入れると経営に重大な制約が生じることもありますので、中身を理解したうえでサインすることが大切です。一般論としては、出資の際に締結する契約については、会社の方からはできるだけ簡素な方がよい、ということを知っておくとよいと思います。

【ポイント】
→少数株という形の出資の場合は、余計な契約はしない
→出資する以上はある程度の口出しはしたいという株主が多いが、契約内容が多くなるほどスタートアップ側が不利になるケースがある
→投資家が契約書を用意するケースが多い。言いなりにならないよう吟味が必要

3.弁護士との付き合い方

――顧問弁護士と相談レベルの弁護士との線引き
野尻弁護士:顧問弁護士というのは日常的に顧問先の会社と接することで、その会社のカラーや働く人のことを分かっているので、弁護士側からしてもフランクに相談に乗りやすいし、色々な側面からアドバイスができます。起業の段階からご相談に来ていただければ、成長の過程・創業者の想いを理解した上でアドバイスができるので、大企業に成長した後の社員との接し方などに、創業者の気持ちを反映できることもあります。
顧問先ではないから仕事を適当にする、ということは絶対にないですが、顧問弁護士になると、継続的な関係を築くことができますので、アドバイスの内容に差が出ることがあります。

【ポイント】
→起業した早い段階で、弁護士との信頼関係を築くと密な相談ができる

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高松弁護士:個人的には、金融法務や情報法務などに特化した業務を展開していることもあり、相談としては、事業スキームの(法的)確認が多いですね。
グレーゾーンを攻める場合の初動の相談では、攻めと守りが大事。守りというのは、最初にスキーム全体に致命的な法的論点の有無を確認すること。システムを先行して構築したにもかかわらず、スタート後にサービス終了の要否を検討する事態を見ることがたまにありますので、早い段階での確認はぜひともやっていただきたいなと思っています。攻めとしては、弁護士と密に相談をすること。実は弁護士というのは、類似の業務を横断的に取り扱っていることが多く、一般的な意味での法的な知見が蓄積されているんですね。そのため、法的なことについてグレーかどうかの線引きも含めて詳細にお伝えすることができると思いますので、攻めとして、弁護士との相談を活用いただくことも一案だと思います。

【ポイント】
→弁護士への初動相談は、攻めと守りを使いこなす
→顧問でなくとも、相談料で準コンサルティング的な使い方も○
(顧問弁護士料相場)
→月5万円で、短時間で終わる数回の相談頻度とする顧問契約が多いと思われる
→月15万を1年間契約する会社もある
→顧問契約の費用・内容は、業種・相談内容・相談頻度によって様々
→起業から間もない段階で、一気に相談しておくこともおすすめ
(ショットの相談料相場)
→何度かの打合せやメール等のやりとりを経る前提で、1回の相談で10万~20万円といった水準となることが多い
→密に相談する場合は、紹介を経て相談するとよい

4.契約書

――事業を進める上で契約書の作成は避けて通れない。インターネット上で公開されているテンプレートの契約書は活用しても問題ないのか
野尻弁護士:最近は特にいろいろな企業間の契約書をチェックさせていただいています。各企業の事業に適合する良い契約書案がネットで拾えるかというと、そのようなことはありません。各企業の事業に合うように、しっかりと契約書を作り込む必要があります。ちなみに、契約書をしっかりと作り込んでいるかどうかで、企業の“格”が分かってしまうことが多いんですね。「この企業は基礎的な検討ができていないな」とか、そういうように感じると、法務部として、その相手との取引には注意するようにと指導することになってしまいます。契約書から、この企業性格悪いな、とかも分かります(笑)。
実際に大手証券会社やベンチャーキャピタルは、契約書をしっかり確認することが多いので核となるサービスの契約書はしっかり作った方がいいと思います。

【ポイント】
→ネットで公開されている契約書の雛形は、形が近いからと安易に使わない。
→ネット上には信ぴょう性が低い情報も多い

長谷川弁護士:弁護士に契約書の確認をお願いする際の注意点として、特に紹介で繋がった場合はメールだけで依頼を済ませない方がいいかと思います。弁護士側からすると、まだ会ったこともない方からメールで来ると、どういう背景で契約まで進んだのか契約相手との力関係がわからないので、(良かれと思い)依頼主に有利な形になるようフィードバックします。そうなると、依頼主が契約相手よりも立場が低いにもかかわらず、強気な契約内容になってしまって「こんな規定無理です」と。お互いにフラストレーションがたまってしまいますし、なによりも依頼主がよく確認せずにそのまま先方へ送ってしまって商談が壊れることもありえます

【ポイント】
→電話でも対面でもいいので、弁護士には取引の背景を伝えるべき
→場合によっては契約が破談になることも
5.人手が足りない

――事業の成長に伴って人材を増やす際に、会社組織として注意すべき点は
野尻弁護士:労働関係法令は、労働者を守るためのものです。労働法を正しく守っていないと、労務に関する紛争が生じた場合、企業側が勝つのは正直難しい。労務に関する紛争の典型的な例として、残業代の請求が挙げられます。企業側から「彼はその時間に仕事をしていなかった」という反論がされることがありますが、具体的な作業の指示を待って社内で待機していることも労働に当たりますので、帰宅させず、会社に残っていることを許容した場合、残業代を支払わないことにするのは無理だと考えてください。
人事労務のポイントは、なんだかんだで“人間関係を大切にする”という根源的な部分もあるかと思います。

【ポイント】
→労働者を守るために労働法があると考える
→人事労務のポイントは、人間関係を大切にすること。

6.有名な企業になってきた

――インターネットが発達してきたからこそ、個人情報の流出やバッシング、広告表現などに気をつけなければならない
野尻弁護士:インターネット上での誹謗中傷はよくあることですが、企業が商品について誹謗中傷されることについては、削除させることは極めて難しいです。「あの商品使ったら死ぬぞ」みたいな酷いウソを羅列されるレベルの批判でないと、裁判では勝つのはとても難しい。そもそも犯人探しが難しいわりにコストがかかる上、犯人を見つけたとしてもそのコメントはネット上から削除できるとは限りません。企業としては、批判には耐えなければならない、不当な批判をされないよう日々気を付けるべしということに尽きますね。

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高松弁護士:個人情報を扱う会員系のサービスを展開する場合、会員データが増えれば増えるほど個人データの価値は高まっていきます。
すると事業者としては、「情報を提携先に共有したい」「データを売りたい」という展開になるかと思うのですが、原則としてデータを譲渡する際は会員本人の同意が必要になります。そのため、データの販売等の展開が予想される場合には、その展開を踏まえた上で、個人情報の取扱いに関して同意書や規約、契約書等に第三者提供等の条項をあらかじめ盛り込むことを検討することも有益です。

【ポイント】
→インターネット上で自社のサービスや商品が批判されても、耐えることが必要
→会員情報を扱うサービスを運営する場合は、ある程度先の事業展開を見据えた規約作成がお勧め

7.目指せイグジット

――スタートアップがイグジットを目指す過程で、弁護士への相談事が増えてくる。その際の相談するべき点や、相談事項について想定しておくべきことは
長谷川弁護士:まず一つは、株に関する基礎的な管理はしっかりしておきましょう。株主は誰なのか、株主名簿は作られているか、株券の管理はしっかりされているか。このような基礎的なことができていない未上場企業は多いのですが、M&Aをする側は株の基礎的な管理もできないような企業は避けたがります。また、労務の問題としては、残業代規則の規定や過剰な労働環境になっていないかどうかの、体制整備も抜かりなく進める必要がある。
そして一番の問題としては、反社(反社会的勢力)が株主に入らないよう気を付けましょう。彼らとの取引が原因で上場できないケースもあるので、必ず契約書には反社を排除する条項を盛り込んでくさい。

【ポイント】
→契約の最低限の部分で反社排除の条項は必ず入れておく
→反社と取引している企業は、社会的信用は地に落ちる
→時価総額数千億の企業でも、反社が関係していて上場できない、M&Aもしてもらえないというケースも

今回の”弁護士Night”ではスタートアップと弁護士の付き合い方という、起業時に想定され辛い部分を取り上げた。普段ではなかなか意識しない点だけに、弁護士の先生方から濃密なアドバイスも多く、ミートアップの場でも盛んに議論が交わされたようで、シード〜アーリーステージのスタートアップにとって有意義な会となったのではないでしょうか。

 

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